08/02/03 14:21:21 O4lqYl89
>実に複雑な議論である。内容の紹介を数行ですませられるようなものではない。ここで論じられているのは、
>簡単な要約をするなら身も蓋もなくなってしまうような微妙な問題だからである。それにしても、中世哲学の
>テクストを読み解きながら、これほど鮮烈な問題意識を明確にしえたということにまず一驚を喫する。本書の
>中心となる「媒体」といった問題は、現代の哲学に関わっている多少なりともセンスのいい人間ならかならず
>引っかかる主題だが、中世哲学の普遍論争といった領域でそれが示されると、問題の射程が一層に深まってくる。
>個々の理論に振り回されるのではなく、兎に角一つの問題意識でスコラ学の概念の森を駆け抜けていったさまは
>見事というほかはない。概念の精緻な分析の果てに目の前が開け、突如として鮮やかな光景に直面するその感覚を、
>著者自身がこんなふうに語っている。「概念を使いこなせる者とは、鑿の一振りができあがりの姿にとって何を意味するのか、
>瞬時に分かる仏師に似ている。〔......〕正しいスコラ学者は煩瑣な概念の微妙な操作が直下の生にどう関連するか、
>知っていたはずだ。スコラ哲学にはリリシズムがあふれているのだ」(p. 212)。こういう言葉で中世哲学を語る者を待っていた。
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