07/08/09 12:17:57 uk5x3wsX
URLリンク(geopoli.exblog.jp) (地政学を英国で学ぶ)
「パワー」を「コントロール」する:その1~3
地政学関連の古い文献を集めているのですが、最近読んだ中で面白いと思ったものに『地理とマルクス主義』という
本がありました。実はマッキンダーなどは歴史観がマルクスの唯物史観理論とけっこう似通ったところがあり、この
点については小著でも以前指摘したとおりです。
具体的にどういうことかというと、マルクスが「人類の歴史は階級闘争の歴史である」というようなことを言って
いたのに対し、マッキンダーは「人類の歴史は、ランドパワーとシーパワーの闘争の歴史である」ということですね。
地政学というのは基本的にリアリズムに属する国際関係の見方をしますので、当然のように「パワー」や「闘争」と
いう面を強調します。
実はこれ、マルクス主義でもまるっきり同じで、彼らの理論や論理の作り方などを見ても、「パワー」や「闘争」と
いう面を見る部分はけっこう似ているわけです。その良い例が、マルクス主義(というか従属理論)の影響を強く
受けているウォーラスタインの「世界システム」というアイディアですが、この人の(ニセ)地政学も、完全に
パワーという観点から分析したものでした。
そういう意味では、あまり指摘されることがないのですが、地政学やリアリズム、そしてそれに立脚した戦略学
という学問は、実はマルクス主義の理論と非常に近いのです。
ところがマルクス主義の理論と地政学等をハッキリと区別するものがあります。
私はこれがそこにこめられたルサンチマン(英語だとリゼントメントですな)が存在するかどうか、という部分
が重要ではないかと考えております。
966:名無しさん@お腹いっぱい。
07/08/09 12:20:08 uk5x3wsX
地政学・リアリズム・戦略学というのはマルクス主義の思想とけっこう近いものがあると指摘しましたが、
ここで共通するのは「パワー」に注目する、という部分です。しかしながら、純粋なマルクス主義と地政学
その他をわけるものがあります。それがルサンチマンではないか、という話を前回しました。
なぜなのかというと、答えは簡単。
地政学などは、あくまでも「自分が使う学問」なのであり、「恨みをバネにして民衆の怒りを代弁する」
ようなマルクス主義思想とは相容れないからです。これはジョン・ルギーか誰か(忘れた)が言っていた、
「セオリーとは誰かが何かの目的のために使うものである」という名言にすべて言い表されております。
マルクス主義ですが、マルクス自身の生涯や性格などを見てもわかる通り、とにかく「権威・権力に
たてつけろ!」という思想で満ち溢れております。
彼の主著である『資本論』などを読んだ方はわかると思われますが、冷静な経済の分析や数学的な
計算のあとに、「だから資本家や上流階級たちをつぶさねばならない」という余計なコメントが
わんさかつけられております(笑
つまり、彼の場合はあくまでも「左」の観点から、支配構造というものを説明するために「パワー」
という概念を使っているのですね。
ところが戦略学、リアリズム、地政学というのは、国家が国益争いを行う際に、パワーがどのように
使われるのか、そしてそれをどのように活用して(!)いけばよいのか、という立場から論じられ
ております。
しかもここで重要なのは、地政学などでは「パワー」という要素に注目しながらも、それが支配構造
の批判に向けられるというよりも、それを自分の有利な方に持っていこうということを提案している点です。
よって、極端にいえば、「資本家や上流階級をつぶせ!」ということよりも、むしろ逆に「(自分から
資本家や上流階級になれたらなって、)パワーをコントロールせよ!」ということを説いているわけですね(笑
そういう意味では思想的には「完全に右」なわけです。