07/03/04 22:22:22
冷気の残り香は重かった。
朝6時20分。体重の重みを感じながら眠い目を擦り、俺は部屋のカーテンを開けた。灰色のコンクリートがやたら目立つ港町。すでに活動を開始している漁師たちに、数匹のノラ猫がじゃれている姿が見えた。
俺は着替えを済ますと、一部が赤く錆びた鉄の螺旋階段を音を発てて降りる。3階建て、建築40年を過ぎ壁が剥げ書けている安アパートの駐車場には、愛車のカワサキゼファー400が無愛想な面構えで待っていた。
ようやく日が昇った時刻とはいえ、肌を刺すような海辺の風にのって海岸線を走る。やがて見えて来た赤煉瓦の施設、奥には桟橋に繋がれたネイビーグレーの巨大な艦影が朝日を浴びながら並んでいた。それは俺が帰る場所。俺の仲間がいる場所。
愛車のエンジンを止め、ゆっくりと降りるとポケットに仕舞っていた身分証明書を営門にかざす。
「おはようございます」
警備隊の海士は元気に敬礼をしてくれる。
これから一日が始まる。今日がどんな日になるか、考えるだけでワクワクする一日が。