08/12/10 17:43:20 2ME7cAyT0
遠景近景 (64)「想像力」の欠落した医師
URLリンク(www.yomiuri.co.jp)
昨年の12月10日、大腸がんの手術を受けるために入院してから、ちょうど1年になる。幸い発見が早かったために、
大腸を15センチ切除しただけで大事に至らなかったが、がんをほぼ撃退したとして仕事に復帰し、
1年後73歳で亡くなった筑紫哲也さんの例もあるから、安心はできない。
1年が過ぎた今も、医師から「がんです」と宣告されたときの衝撃は忘れられない。麻生首相は、医師には
「社会的常識が欠落している人が多い。価値観なんかが違う」とおっしゃったそうだが、これだけでは
麻生首相の真意が奈辺にあるかわからない。しかし、想像力の欠如している医師は少なからず存在するような気がする。
私の言う「想像力の欠如」とは、患者に対する思いやり、デリカシーの欠如ということである。70歳で亡くなった
作家の吉行淳之介さんは、放射線の医師からがんであることを告げられた時「シビアなことを、おっしゃいますなあ」
とショックを受け、それ以後、病と闘う気力が急速に薄らいでいったという。
私にがんの宣告をした医師も「これからオリンピックに出るわけじゃなし、肉は厳禁。お酒もだめ」と追い打ちをかけた。
『ハラスのいた日々』や『清貧の思想』で知られる中野孝次さんの『ガン日記』(文春文庫)にも、食道がんにかかった中野さんが
「で、もしいかなる方法もないとすると、あと生きるのはどのくらいです?」と聞くと、「あと一年ですね」と
オウム返しに答える若い医師が登場する。
セネカと唐代禅僧の語録に親しみ、死に対する心構えをしてきたという中野さんは、「自分に余命一年と知って以来、
まわりのものすべてに対し愛しさの増すを覚える。すべてが愛おしく」と書かれている。
私にはとてもムリだ。