08/05/11 11:14:02 kfWDWPrg0
琉球新報 記者の余録
書けなかった“誠実さ”
URLリンク(ryukyushimpo.jp)
「○○病院に入院していた妊婦が分娩(ぶんべん)中、医療ミスのせいで胎児とともに命を落とした」―。
数年前のある日、本社にこんなファクスが寄せられた。事件だと思い、事実を確認すべく当該病院の医師を訪ねた。
当初は難しい取材になると思ったが、意外にも当事者である医師が丁寧に対応してくれた。実際に分娩中の妊婦の容体が急変し、
別の病院に搬送したが母子ともに助からなかったのだという。医師は起きたことは起きたこととして話をし、
保身のための発言はしなかった。
医療ミスかどうか。その時点でいえたことは、警察が医師から事情を聴いているということだけだ。
取材を続けていて分かったのは、その医師の患者に対するまじめな姿勢であり、常に患者との信頼関係を築く
努力をしているようにも感じられた。記事にすべきかさんざん迷った。
結局、“ミス”には触れず「事実関係」だけを書いた。取材中、医療関係者からは「治療のかいなく患者が命を落とすこともある。
それが医療現場だ。それをいちいち書くのか」との声もあったが、知っていて書かなければ、
事実を伏せることになるのでそれはできなかった。
読者に予断を与えないためでもあるが、あの医師の誠実さは記事の「事実関係」には含まれていない。
現在、医師不足が社会問題化しているが、あの記事を思い返すと、なんだか心残りでもある。(大城誠二、社会部)