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社説:[医師不足対策]歓迎するが特効薬とは
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医師不足に悩む離島や山間部などに暮らす住民にとって、朗報と言っていいだろう。
政府は来年4月から大学医学部の入学定員を各都府県で最大5人、北海道では最大15人増やすことを認める方針だ。
増員分の医学生の入学金と授業料全額などを自治体が肩代わりし、卒業後はへき地などの病院や診療科を指定して9年間の勤務を義務付ける。
計画通り進めば深刻な医師不足に歯止めをかける効果はありそうだが、事はそう簡単にはいきそうにない。
まず、直面する緊急の医師不足対策とはならない。医学生が卒業するまで最低でも六年。今まさに医師が不足、
あるいは、いない地域に住む人々にとって6年間は長過ぎる。
もう一つ、へき地や離島で働く医師が計画通りに確保できるかどうかだ。確かに入学金や授業料を免除し、
生活費の一部を奨学金として支給するなど資金的な援助は医学生を集める有効な手段になる。
ただ、卒業後の9年間、勤務地が限定される条件付きの制度が医学生にどこまで受け入れられるか疑問が残る。
医師の労働環境の過酷さは指摘されてきた。社団法人日本病院会が昨年七月に行ったアンケートによると、
宿直をしている病院勤務医のうち、約9割が翌日も通常と同じように勤務せざるを得ない状況で、約6割は月3回以上の宿直をこなしているという。
日本医労連が2月に発表した調査では1日の平均労働時間は10.5時間で、最長連続勤務時間は平均32.3時間。
60時間以上の連続勤務を経験した医師もいた。不足が深刻な産科、小児科、離島、へき地で勤務する医師の実態はさらに厳しい。
医学生の定員枠を増やしたり、医学生に援助することは大いに結構だが、医師の労働環境改善も緊急の課題だ。
政府は、医師不足の解消に向けた長期的な計画に加え、当面の課題に対処する具体策を実行すべきである、それには
大学、医師会、国民を含めた幅広い真剣な議論が必要だ。