09/08/17 21:19:24 87Y+89S60
夏休みに自転車でどこまでいけるかと小旅行。
計画も、地図も、お金も、何も持たずに。国道をただひたすら進んでいた。
途中大きな下り坂があって自転車はひとりでに進む。
ペダルを漕がなくても。何もしなくても。
ただ、ただ気持ちよかった。
自分は今、世界一早いんじゃないかと思った。
子供心に凄く遠いところまできた事を知り、一同感動。
滝のような汗と青空の下の笑顔。
しかし、帰り道が解からず途方に暮れる。
不安になる。怖くなる。いらいらする。
当然けんかになっちゃった。泣いてね~よ。と全員赤い鼻して、
目を腫らして強がってこぼした涙。
交番で道を聞いて帰った頃には
もう晩御飯の時間も過ぎてるわ、親には叱られるは、
蚊には指されてるわ、自転車は汚れるわ。
でも次の日には全員復活。
瞬時に楽しい思い出になってしまう。絵日記の1ページになっていた。
今大人になってあの大きな下り坂を電車の窓から見下ろす。
家から電車でたかだか10個目くらい。
子供の頃感じたほど、大きくも長くもない下り坂。
でもあの時はこの坂は果てしなく長く、
大きかった。永遠だと思えるほどに。
今もあの坂を自転車で滑り落ちる子供達がいる。
楽しそうに嬌声を上げながら。
彼らもいつの日にか思うのだろうか。
今、大人になってどれだけお金や時間を使って遊んでも、
あの大きな坂を下っていた時の楽しさは、もう二度とは味わえないと。
もう二度と、友達と笑いながらあの坂を、自転車で下る事はないだろうと。
あんなにバカで、下らなくて、無鉄砲で、
楽しかった事はもう二度とないだろうと。