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あぶない食べ物の筆頭といえば、古来フグだろう。美味なだけにあきらめきれず、フグは食いたし命は惜しし、となった。
江戸期の俳人蕪村もそのくちだったか、〈河豚(ふぐ)汁のわれ生きてゐる寝覚めかな〉と詠んでいる▼
その河豚汁を、ギョーザと言い換えねばならないような事態である。正確には中国製冷凍ギョーザ。農薬の混入したのを食べた人たちが、中毒の症状を訴えた。
千葉と兵庫両県で、3家族の10人がめまいや嘔吐(おうと)、全身のしびれに襲われた▼うち3人は一時重体に陥った。
「スーパーに並ぶ食品で命の危険にさらされるとは思いもしない」と息子が死に瀕(ひん)した母親は憤る。ほかにも不調の訴えが相次いでいる。
こんなことでは昔のフグなみに、口に入れるのが「肝試(きもだめ)し」になってしまう▼人件費の安い中国は、今や「世界の工場」と呼ばれる。
だがその産品に、輸出先の国々で逆風が吹きつのっている。残留農薬や有毒物質の混入など、消費者を逆なでする問題が後を絶たないからだ▼
笑えない話を、中国人ジャーナリストの莫邦富(モー・バンフ)さんが本紙に寄せていた。江蘇省の農婦が農薬を飲んで自殺を図った。
病院に運ばれたが、命に別条はなかった。なんと農薬が「偽農薬」だったからだという。粗悪な品が出回る社会を象徴するような悲喜劇だろう▼
おりしも中国は、日本の正月にあたる春節が近い。帰省者を迎え、家族がそろって、湯気の立つ水餃子(ギョーザ)に舌鼓を打つのが習わしだ。
おいしいものを笑顔で食べたい。その思いに、国の違いなどないはずである。
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