07/04/25 11:36:20 ZJQyIkH80
「で、何故だ?」と かの王は問うた。
メロスは答えた。
「さぁ・・・強いて申さば、信義とでも申しましょうか。」
「信義?」王が目を瞬かせた。理解できないというしるしである。
「牧人としての信義、と申すか」
「人としての信義でござる」
王の声が穏やかになった。
「その信義、あくまで立て通すつもりか」
メロスの返事がよかった。
「やむを得ませんな。」
それが自分にとっては自然のふるまい、と云っているのだった。
「立て通せると思うか」
「手前にもわかりませぬ」そしてメロスは微笑った。
王はこの微笑に痺れた。
「余もそち達の仲間に入れてくれまいか」そう叫びかけて危うく留まった。
メロスが拒否するのが目に見えていたからである。
拒否したら今度こそこの男を斬らなければならない。だが斬るには惜しい男ぶりである。
王は咄嗟に言葉を捜し、云った。
「気に入った。今後、どこででもその信義立て通せ。余が許す」