07/10/20 14:36:08 I24gesQ30
>>668
判例タイムスの解説です。最高裁判例の判例タイムスや判例時報の解説は,当該事件を担当した
最高裁調査官の手になることが多いので,その意味では標準的な解説といえるでしょう。
これまでの下級審においては,弁護士の懲戒を請求しようとする者が置かれた状況は,訴訟を提起
しようとする者のそれと同様のものであるという考え方から,弁護士に対する懲戒請求についても,訴
えの提起の違法性が争われた最三小判昭63.1.26民集42巻1号1頁,判タ671号119頁が判示
した基準に準拠して不法行為の成否を判断するものが見受けられた(例えば,東京高判平9.9.17
判タ982号216頁,名古屋地判平13.7.11判タ1088号213頁,東京地判平17.2.22判タ118
3号249頁など)。本件の原審も,基本的にこのような基準を用いたものと解される。
しかしながら,本判決は,弁護士に対する懲戒請求について,訴えの提起の違法性に絞りをかけた
前掲最三小判昭63.1.26の基準と比較して請求者に対してやや厳しい注意義務を課し,訴えの提
起の場合よりも不法行為の成立範囲を広く認め得る基準を採用した。両者の文言を比べると,前掲最
三小判昭63.1.26の基準では「通常人であれば容易にそのことを知り得たのに」とされている部分が,
本判決の基準では「通常人であれば普通の注意を払うことによりそのことを知り得たのに」とされており,
同じく「著しく相当性を欠く場合に限り」とされている部分が,単に「相当性を欠くと認められるときには」と
されている。この差異は,裁判を受ける権利が憲法上の権利であるのに対し,弁護士の懲戒請求権は
公益の観点から一般に認められた法律上の権利であること,紛争解決を目的とする民事訴訟の提起
と被懲戒者である弁護士に非難を向ける懲戒請求とは性質が異なり,懲戒請求は,むしろ,告訴・告発
の制度に類似する側面があるといえることなどを考慮したものであると考えられる。