08/05/21 21:08:31
まず窃盗罪についてですが、窃盗罪が成立するためには、判例上、主観的要件として「故意」だけではな
く、「不法領得の意思」すなわち「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法
に従い、利用し処分する意思」が必要とされています(大判大正4年5月21日)。
まず、前段の「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として」振る舞う意思についてですが、グリ
ーンピース・ジャパンのスタッフは、共同船舶の船員らによる業務上横領罪の証拠として検察庁に告発す
るための証拠として確保したのであり、決して、自分のものにしようという意思はありませんでした。
また、後段の「その経済的用法に従い、利用し処分する意思」については、鯨肉の経済的用法としては、
通常、食用に供したり、売却したりすることが考えられますが、グリーンピース・ジャパンのスタッフに
はかかる意思は全くなく、あくまで、業務上横領の証拠として確保する意思しかありませんでした。
事実、5月15日に東京地検に告発状を提出した際にも、確保した鯨肉の現物を東京地検に持参して、担
当検事にも、証拠として提出することを説明しています。
従って、グリーンピースのスタッフには、窃盗罪が成立することはないと考えます。
次に、建造物侵入罪が考えられますが、この成立のためには、一般人が立ち入りを禁止されている区域で
あることを要するところ、西濃運輸のトラックターミナルは、荷物の発送のために一般人も自由に出入り
が許されている場所ですので、これには該当しません。
また、一般人が自由に出入りが許されている場所であっても違法な目的による立ち入りは本罪を構成する
ことがありますが、前述したように、グリーンピース・ジャパンのスタッフには、違法な目的はありませ
んでした。したがって、この意味でも、建造物侵入罪が成立することはないと考えます。
また、グリーンピース・ジャパンのスタッフには、業務上横領罪の証拠確保目的しかなかったことからす
れば、上記いずれについても、違法性阻却事由が認められると思います。
以上のとおり、グリーンピースのスタッフに鯨肉持ち出し行為について、刑事責任を問うことはできない
と考えます。
URLリンク(www.greenpeace.or.jp)