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淀川水系に医薬品残留物 藻類に影響も 京大教授ら研究グループ調査
6月22日6時12分配信 産経新聞
大阪、京都、滋賀の3府県にかかる淀川水系で、解熱剤や抗生物質など医薬品類の残留物質が77種検出され、藻類を使った実験で一部の物質に強い毒性が観察された
ことが21日、京都大の田中宏明教授(環境工学)らの研究グループの調査で分かった。
医薬品物質の水環境への混入は厚生労働省などの調査で判明しているが、生物への実験結果が明らかになるのは初めて。
食物連鎖による生物濃縮で人体への影響も予想されるため、田中教授らは早急な対策を訴えている。
調査は、淀川水系の本川、支川、下水処理場付近の計33地点で採水し、京大付属流域圏総合環境質研究センター(大津市)で分析した。
河川水からは、強心剤や高脂血症剤、抗不整脈剤、胃酸抑制剤など77種の物質が検出され、調査地点でほぼまんべんなく医薬品物質が出たという。
さらに、生態系への影響を調べるため、藻類のミカヅキモを使い、淀川水系で検出されたものと同じ医薬品物質を与えて、それぞれ成長のスピードを調査。
その結果、解熱鎮痛剤や抗生物質など5物質が、藻類の成長を阻害する強い毒性を持っていることが判明した。
中でも薬用せっけんなどに含まれる物質「トリクロサン」が、除草剤と変わらないほど強い毒性がみられたという。
現段階では、ミカヅキモのみの生態調査しか実施していないため、他の水生生物への影響は不明。
田中教授によると、病院や家庭で日常的に使用される医薬品は、主に屎尿(しにょう)として下水に排出。
従来の下水処理技術ではほとんど除去できず、河川にそのまま流入する。
畜産業や水産業でも、感染症防止や肉質向上などの目的で多くの医薬品が使用されており、処理されず直接環境中に放出されている可能性があるという。
国立保健医療科学院の秋葉道宏水道工学部長は
「浄水場では医薬品物質が除去できるため、今のところ人体への直接的な影響は報告されていないが、生態系への影響は今後解明していくべきだろう」と話している。