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「農地収奪」に懸念 G8首脳宣言
2009年7月10日 10時22分【ラクイラ(イタリア中部)=松井学】
主要国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)は8日公表した首脳宣言で、農業と食糧安全保障を「優先課題の核心」に挙げた。
食糧増産が必要だと訴える一方で、先進国や新興国が海外の途上国で農地を確保し、自国向けに作物栽培しようとする「農地収奪」の動きに強い懸念を示した。
貧しい途上国側に犠牲を強いかねない農地収奪の動きに対しては新たな植民地主義を生むと、国連食糧農業機関(FAO)も警告している。
サミット首脳宣言は、先進・新興国の政府や企業が途上国の農地を購入したり、長期の土地貸与契約を結ぶ例などを想定し、こうした農業投資に倫理を求め、商談上の原則づくりを促した。
日本政府は、9月の国連総会の時期に「原則づくりの議論を日本が主導したい」(政府同行筋)との考え。総合商社の海外投資を促し、日本の食糧安保につなげるためだ。
豊かな国が途上国の農地を取得する動きは中東産油国や韓国、中国が一足先に強めている。
農地不足や食糧需要の急拡大が背景だ。
韓国企業は昨年、アフリカ大陸の南東、マダガスカルで130万ヘクタール規模の農地を期間99年の貸与契約で確保した。
面積はベルギーの国土の半分に相当する広さ。
リビアはウクライナで石油、ガスと引き換えに農地25万ヘクタールを確保、サウジアラビアの投資集団はインドネシア、スーダンで160万ヘクタール規模の米作地を確保した。
世界的な食糧不足や価格高騰を見込んで、欧米の投資ファンドも農地確保に踏み出した。
途上国の政府、企業は、投資資金を呼び込み、遅れた社会基盤の整備などに充てるため農地の貸与、売却にむしろ前向きだ。
農業生産が主体の途上国が先進・新興国向けの食糧供給地となり、さらなる貧困を招くことを避けるには、国際的な農業投資にも歯止めのルールが欠かせない。
(中日新聞)