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レバノン 「大麻は生活の糧」 大物ブローカーが正当化
7月13日2時30分配信 毎日新聞
武器密輸などが横行するレバノン・ベカー平原北部で、大麻ブローカー、ヌーハ・ザイタール容疑者(37)が取材に応じた。
「政府は人々を苦しめるだけ。大麻は生活の糧だ」。大麻栽培を正当化し、当局を恐れぬ言動から秩序の崩壊を防げないレバノンの現状が浮かび上がる。【ベカー平原クナイセ村で高橋宗男】
村は当局の権限が及ばぬザイタール容疑者の「王国」だった。約100メートル四方を塀で囲んだ自宅を武装した男たち十数人が守り、周囲には約180ヘクタールもの大麻畑が広がる。
長身194センチのザイタール容疑者は、ジーンズの尻に短銃を差す。レバノン当局は殺人罪(欠席裁判で宣告)のほか、麻薬取引に関する1000以上の容疑で手配中だ。
それでも、本人は「容疑はすべてでっち上げ。私は大麻栽培農家に過ぎない」と反論する。大麻の代替作物を奨励する政府の政策についても
「他の作物を育てても政府は買い取らない。ベカーの農民にとって換金作物は大麻だけだ」と強調し、「大麻栽培を合法化すべきだ」と主張した。
警察と政府軍は2年間、収穫前の耕作地破壊作戦を実施していない。06年の第2次レバノン戦争、07年のパレスチナ難民キャンプの戦闘が人員を割けなかった理由とされ、大麻栽培を野放しにする結果を招いた。
90年代半ば以降、容疑者は水道のない村に22本の井戸を掘った。村の一部に1日6時間しか供給されない電力も同氏が発電機で補う。
「何も与えようとしない政府に従う必要はない」。そう強調する彼を約1000人の村人は英雄視している。
レバノンの麻薬中毒患者支援に取り組むNGO「ユース・アゲインスト・ドラッグ」によると、07年に確認された麻薬常用者は3年前の約8倍にあたる2500人。
うち35%を大麻吸飲者が占め、若齢化が深刻という。