03/07/22 20:39 SCaxeSMo
それは1990年前後の頃だったと思います。東京都北区豊島1丁目の(株)東都交通に勤めていた
尾身さんという人が、ある日まったく身に覚えの無い「乗車拒否」で東京タクシー近代化セン
ターから呼び出されました。センターに苦情が入ったのです。相手はドイツ人と連れの女性で
六本木交差点近くでタクシーに乗車拒否をされたというものだったのです。しかし本人曰くそ
んな事実は無く、日報からもそこを走ってないのです。連れの女性はナンバーをうろ覚えでし
たが、車色とナンバーから該当するタクシーすべての乗務証をその女性に見せたところ、彼を
選んで間違い無いと言ったそうです。うろ覚えだったナンバーから該当する車を全てリストア
ップするなんて、なにもそこまでして”犯人探し”をしなくてもよいものを、なぜそこまでし
たのでしょうか。ハッキリ言ってその後の責任は東京タクシー近代化センターにもあったと私
は思います。「乗車拒否」の疑いをかけられてしまった彼は事実無根である事を主張しました。
そして、身の潔白を晴らす為、最終的な行動を取ったのです。この方は組合の委員長もやられて
いて責任感の強い人でした。それゆえ悩んだと思います。数日後、彼は行方不明になりました。
そして栃木県の黒磯の山中で排気ガスを車内に入れ自殺していたのが見つかったのです。遺書に
は乗車拒否はしていない旨が書かれていました。この事は新聞ニュースでも報道されました。
また、久米宏さん司会のニュースステーションの中の特集というコーナーでも全国放送されました。
やってもいない疑いをこんな方法でしか晴らす事ができなかったなんて、今思い出しても全く信じら
れません。この出来事を思い出すたびに心が痛みます。インターネットでは情報が古くて全く出てこ
ないこの話は、東京タクシー近代化センターからすれば永久に葬りたい話かもしれません。しかし、
疑いをそこまでしなければ晴らす事ができなかったという事実と、妻子を残して先立ってしまった彼の
無念さを思うと、当時は「尾身事件」として業界で語られたこの出来事を後世に伝えたいという思いに
無性に駆られるのです。