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「ボノボの社会に学んで友好を」
鴨志田 千絵(学生 35歳 京都市)
ボノボという動物をご存知だろうか。アフリカ大陸中央のコンゴ民主共和国に生息する
この動物は類人猿の仲間であるが、他の類人猿によく見られる暴力的な行動が、ボノボの
社会ではほとんど見られないという。ボノボ同士の緊張状態を緩和し、争いを回避して
親和度を高めるうえで重要となるのが、すり合わせによる緊密なコミュニケーション行動
であるといわれている。
さて、日本放送協会が一部与党政治家の政治的圧力を受けて、日本軍による従軍慰安婦
強制連行を題材とした番組を改竄した問題で、この問題を報じた朝日新聞の記者が、取材
した日本放送協会幹部に対して、記事掲載後にすり合わせを求めていたことが、インター
ネットの某巨大掲示板などで盛んに批判されているらしい。問題の記事における協会幹部
の証言内容の記載が正確なものであったなら、掲載後のすり合わせは不必要な筈であり、
それ故に朝日新聞の報道は間違いだというのが彼らの主張であるようなのだが、「燕雀は
鴻鵠の志を知らず」とも言うように、瑣末にこだわり大局を見誤った、実に小人的な物の
見方と言わざるを得ない。そもそも、朝日新聞記者が言ったとされる「すり合わせ」を、
証言のすり合わせと解釈するのが間違いだ。これはどう見ても、ボノボのすり合わせを
指している以外に考えられない。
不幸にもこの協会幹部は、取材に対する自らの証言に関して記憶違いをしていたようだが、
そもそも問題の本質は日本軍によるアジア諸国への戦争犯罪であり、この歴史的事実を封殺
しようとした与党政治家による公共放送への不当な介入である。若干の証言の違いという
小事に拘って、歴史への真摯な反省と謝罪という大義を見失っては何にもならない。同じ
報道に関わる者として、恩讐を越えて社会正義の実現の為に協力しようというのが、朝日
新聞記者のすり合わせ提案の真意であったと私は考える。
ボノボにとっては「親和」と「愛」こそが社会の第一義であり、良識の府たる朝日新聞の
記者たちは、その素晴らしさをよく理解しているに違いない。他の日本人もこれに学ばなけ
ればならない。アジアへの「隣人愛」と「友好」、それに「反省」と「謝罪」が加われば、
もう何も言うことはない。