05/01/30 05:10:53 bDqhUPX0
「嘘では夢を守れない」
倍賞 史郎(大学講師 42歳 千葉県)
5歳の甥と4歳の姪にせがまれて遊園地に連れて行った。そこで奇異な光景を目撃した。
どうやら犬を象ったらしい着ぐるみを、幼い子供たちが取り囲んではしゃいでいる。
「ワンワンとお話する」と言って着ぐるみに駆け寄る幼児の姿も見られた。子供たちは
着ぐるみの中に人間が入っているとも知らず、犬の人形が人間のように話していると
思い込まされているのだ。
長年科学的に真実を追究してきた者の誇りとして、このような子供騙しの嘘を看過する
わけにはいかない。私はすぐさま着ぐるみに近づき、その正体を子供たちに暴いてみせた。
幾人かの子供は泣き出した。騙されていたと知ってショックを受けたのだろう。
するとどうだろうか。遊園地の係員と思しき数人がやってきて、私をいきなり取り押さえ、
むりやり事務所のような場所へと連れ込み、ヤクザ紛いの口調で恫喝してきたのだ。
どうやら、子供の夢を壊すなという主旨だったようなのだが、これはおかしな話である。
子供の夢を守るのに、なぜ非科学的な嘘を信じ込ませる必要があるのだろうか。その夢が
嘘と知れた時に子供たちが受ける心の傷は、計り知れぬほど大きいものとなる筈だ。現に
それ以来、いくら誘っても甥と姪は私と一緒に出かけようとはしなくなった。遊園地側の
仕組んだ心無い嘘が、彼らのトラウマとなったのである。欺瞞や幻想に頼ったところで、
結局は子供の夢を壊すことにしかならないのだ。
問題は子供の夢だけに限らない。戦前戦中の歴史的事実に関して、従軍慰安婦の強制連行
は無かっただの、韓日併合には良い点もあっただの、偏狭なナショナリズムを満足させる為
に、とんでもない嘘八百が平気でまかりとおるのが日本の社会である。いくら大らかな性格
であるO型の私でも、このような風潮に怒りを覚えずにはいられない。こんなことでは、
アジア諸国との友好と平和という、日本人として当たり前の夢すら守ることはできない。
私は声を大にして言う。嘘や幻想に逃げ込むな。真実に向き合うことこそ、真の夢と希望
を守る唯一の道なのだと。