06/01/15 01:36:19
「ピクルス型工作員」
防衛隊の最新部隊であるピクルス型工作員は、パプリカ王国で中世時代から代々増殖業を営んでいる「ピク・ルス」さん(89歳)が1人づつ手作りで製作している。
ピク・ルスさんは日本国全土をたずね歩き、「コレだ」と思った民間人や自衛官のみを仕入れてくる。 時には厳冬の東北地方、平家の細々と子作りをしている落人村へも行くという。
ピク・ルスさんの1日は、パセリ(頭部)に1日の安全を祈願するところから始まる。
彼の自宅兼仕事場に工作機械類は一切ない。
代々受け継がれてきた着ぐるみ人形のみで材料を加工し、仕立ててゆく。
だから、どんなにがんばっても1ヶ月に30人ばかりしか作れない。
「コンピュータ制御の機械類で作ったんじゃ、魂がこもらない。1から手作業で作る事で魂のこもったピクルスが出来るのです」
ピク・ルスさんは笑いながら語る。
ピク・ルスさんによれば、ピクルスのひとつ一つに「顔」があるのだそうだ。
とくにピク・ルスさんがこだわっているのが、発泡ウレタン製の頭部だ。
それを支える「手触りのよさ」と「見た目の美しさ」を兼ね備えた人間は10人に1人いるかいないか、しかも1人の人間から1人のピクルスしか作れないと言う。
「私の作ったピクルスが防衛隊で活躍できるとは光栄です」
仕上げに白墨で「目」と書き終えたピク・ルスさんは語る。
目入れは機械で言う所の起動に当り、魂が込められる瞬間だ。
しかし、ピク・ルスさんには後継者がいない。
子供はみんなピクルスになってしまったのだそうだ。
「代々受け継がれてきた増殖技術も、俺の代で終わりだな」
寂しそうに言った。