06/04/21 03:04:59 W+bdkR4u0
強迫病 [独] Zwangskrankheit
シュトラウス E. Straus とゲープザッテル V. E. von Gebsattel は、あらゆる強迫神経症の重症例を強迫病と称し、
その本態は神経症とは異なるものと考えた。シュトラウスによれば、強迫神経症の重症例では、死、死人、腐敗物
といったものがつねに主題となること、これらに対する際限のない防御、魔術的な交通(Kommunikation)、生活空間
の萎縮および歴史的なるものの平坦化(病者には開始と完了のリズムがもはやみられず、歴史的な分節が失われ
る)が例外なく存在することを指摘し、このような構造をみただけでもこれを神経症と称することは疑わしいとする。
この疑問は、遺伝研究の成果や慢性の経過、精神療法がわずかしか効かないことによっても補強されると述べて
いる。ゲープザッテルの意見もシュトラウスとほぼ同質である。彼によれば、強迫病者の生成抑止(Werdenshemm-
ung)には、うつ病の場合とは異なり、たんに生成が阻害されるばかりでなく、生成方向の逆転が認められ、病者は伝
染、解体、腐朽といった反形相(Antieidos)の支配にひきわたされる。強迫病者の人格は、潜在的には健康であるが
、無力化されてしまっている部分と、病的な現存在を規定し、支配している、すなわち現実に働いている部分とに分離
してしまう。このような分離性(seiunktiv)の人格分裂は、統合失調症にみられる解離性分裂や葛藤神経症にみられる
機能性分裂でも自己実現の確実性は侵害されるが、それが分離性分裂のおいてみられるごとく廃棄されてしまうこと
はない。軽症のいわゆる強迫神経症の構造は、機能的分裂に属しているが、強迫病にみられる分離性分裂は、神経
症とは本質的に異なった構造を示している。これを要するに、シュトラウスもゲープザッケルもともに明言はしていない
が、強迫病(重傷強迫神経症)の規定にはなんらかの生物学的な内因性障害の存在を想定しているのである。
↑の執筆者は下坂幸三氏