10/09/07 22:00:24 FTTuGlhi
「んんあああっ!!」
必死の叫び。だが当然助けはやってこない。俺は吐き出す間も与えず、手早くガムテープを貼り付け詮をした。
そしてトドメのばかりにさっきのハンカチを、巻きつけ首の後ろで頬がくびれるほどきつく結びつける。
「んんっ、むうあっ、んっ!」
顔を真赤にしたまま何やら言っているが、もちろん理解は出来ない。
「良く似合ってるぜ。捕らわれのお姫様」
少しずれたハンカチをしっかり鼻に被せてやる。自分の匂いをじっくり楽しむといい。
湿めりけのある布が鼻にかかった不快感で、わずかに少年の顔が歪み小さく唸る。
……ヤバイなこのまま自宅に、連れ帰りたいなんて思っちまった。
「それと、これは俺からのプレゼントだ。風邪を引くといけないからな」
後部座席から、毛布を引っ張り出して少年にかける。我ながらなんて優しいんだ。
「うんんっ、ぐうあっ!」
「そんなに喜ぶなよ。次はもっといい返事聞かせくれ」
なおも抗議の声を上げる少年を無視して、俺はトランクを閉めた。
閉めても微かに声と、もがく少年の動きが分かる。哀れなものだな。
「さて、まだまだ暑くなるなこりゃ」
運転席に戻り、キーを捻りエンジンをかける。冷房が充満し体の汗が引いていく。
全く同じ車内とはいえエライ違いだと思う。おそらく俺が同じ事をされたら、耐える自信はまるでない。
今頃奴は今まで以上の暑さを感じ、自分の無鉄砲な正義感を悔いているだろうか?
それとも、より俺達への怒りを燃やしているかもしれない。纏わり付く猿轡と格闘しながら。
「次開けた時もあんな目が出来るかな?」
俺は笑いながらそう言って、車を走らせ始めた。
以上っす。失礼しました。