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支援SS ある日の風景 ~玲於奈~ 1/7
デートに着ていく服がない! というのはたいがい女の子の悩みだと思っていた。いざ
自分がその問題に直面するまでは。
時はすっかり葉桜の季節。デートは明日、約束したのは昨日。
そしてお相手は完璧超人と名高い向坂環であり、自分はヘタレキング略してヘッキーと
呼ばれて久しい俺こと河野貴明だ。
去年までは、こんなことで悩んだことはなかった。だいたい、悩む相手がいなかった。
遊びに行くのは雄二かこのみくらいだったし、あいつら相手にいちいち服を悩んだりす
る必要はなかった。テキトーにそこら辺の引き出しから引っ張ってきた季節ものを乱雑に
合わせてコーディネイト。起きてからおおよそ20分で家を出発できた。
だが、今年は―、正確には1ヶ月ほど前からだが、そういうわけにはいかなくなった。
いや、実際には今まで通りでも構わないのだ。向坂環―タマ姉は、身だしなみには口
うるさいが、服装の流行に目くじらを立てるような人物ではない。
ただ、それは流行に疎いわけでは全くなく、通常の女性であれば「何あれダサい」とな
るところが、タマ姉の場合は「着せ替え人形発見!」となるだけに過ぎない。
そう判定されてしまったが最後、その日一日はタマ姉のおもちゃになること必至。男物
を選んでくれるだけならともかく、折に触れて女装させようと躍起になるからたまったも
のではない。
結局、なんやかや必要以上に神経を使わないといけない。クラスメイトからは「あんな
美人と付き合いやがって!」なんて言われるが、当人にしてみれば、良いことばかりじゃ
ねーよ!と文句のひとつも言いたくなる。
―とはいえ、文句ばかり言っていても仕方ない。そういうわけで、デート前日の土曜
日に商店街にやってきたというのが、俺がこの場にいる理由なのだ。
そこまでは、まぁ、理由は明白で疑問に思うところはない。
ただひとつ、いつもと違っていたのは……
「まったく、どうしてあなたとショッピングしなければいけませんの!」
きいきいと甲高い声が、俺の歩くすぐ横から聞こえてくる。
向坂の血縁を示す薄い赤毛をボブカットに、強気な瞳も颯爽と歩みを進める女の子。
タマ姉の九条院時代からの後輩、玲於奈嬢その人だ。