10/02/22 01:06:39 BxvguJ7Y0
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エルノラはふんわりと”あくび”をした。
穏やかな朝の光の中だった。
その呼気が、まだ冬の冷たさが残る、春の目覚めの大気にとけあい、
部屋中に広がっていくのを、少女はねむけまなこにぼんやりと見つめていた。
エルノラは、朝が大好きだった。
この朝のひとときばかりは、ほこりと煤にまみれた部屋の中も、すみずみまで輝いてみえる。
それは、夢の終わりと現実のはじまりの、ちょうど混じり合った幻想の時間だった。
ほこりたちが、光のシャワーの中で軽やかに踊りだす・・・。
だが、そんな時間はとつぜんに終わった。
「エルノラ、早く起きておいで。朝食の用意はとっくにできてるんだよ。エルノラ!」
怒ったような声が、階下から響きわたる。
それと同時に、工房の中に充満している特有の”えも言われぬ香り”が寝室に逆流し、
少女の空想の世界を、現実へと引き戻す。
「はぁい!」
エルノラは大急ぎで服を着替えると、備え付けの粗末なベッドを整理し、階下にむかった。
今日も忙しい一日がはじまる。
その一日が、彼女の人生で一番長い日になることを、まだエルノラは知らなかった。