ToHeart2 SS専用スレ 26at LEAF
ToHeart2 SS専用スレ 26 - 暇つぶし2ch2:名無しさんだよもん
08/10/10 23:11:31 TIVdHR620
AQUAPLUS『To Heart2』公式サイト
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3:名無しさんだよもん
08/10/10 23:13:16 TIVdHR620
立てました

ToHeart2 SS専用スレ 26
スレリンク(leaf板)

スレ梅ヨロ

4:名無しさんだよもん
08/10/10 23:14:23 TIVdHR620
誤爆… orz

5:名無しさんだよもん
08/10/11 11:15:12 5uAb61Kt0
>>1から読んで>>3でリンクに飛ぶ
そしてまた>>1から読み……

6:名無しさんだよもん
08/10/12 00:34:43 D80222KT0
>>5
草壁さんのタイムリープの真相に気付いてしまったようだな…

7:雄二の光源氏大作戦
08/10/15 17:39:11 xNaIxXwD0
前スレ>>691氏の書き込みに触発された作品です。
前スレを埋めるために書いていたのになぜか長くなるわ詰まるわ……、まぁ、とりあえず前編を投下
してみます。

一応、「PS2版姫百合姉妹エンド」→「ADミルファエンド」更に「シルファエンド」をこなしてい
る状態(珊瑚&瑠璃はレベル2.5、イルファさんとシルファはレベル3、ミルファはレベル4)を想
定しています。
その割りに幼馴染ズが強いのは仕様ですのでそこらはひとつ……。

8:『雄二の光源氏大作戦』前編(1/8)
08/10/15 17:41:45 xNaIxXwD0
「あ~~あ、ったくよ~~。毎日毎日やってらんねーぜ」
 いつもの朝。いつもの通学路。
 ……そしていつもの雄二の愚痴である。
「ユウくん、毎朝同じ事言ってるね~~」
「ほーんと、よく飽きないわよね。家でもしょっちゅうぶつぶつ言ってるのよ?」
「あははは……」
 この春からこっちもはや聞き慣れて(というか既に耳タコ)しまった雄二の愚痴に、このみとタマ姉
は「やれやれ」といった風に肩をすくめた。
 夏休み明けには少し収まったかと思ったのに、秋になって「彼女たち」がやってきてからは前より酷
くなったような気がする。迂闊な相槌をうつとさらに鬱陶しく絡まれるのは既に経験済みなので、俺は
曖昧な「タカくんスマイル(嫌なネーミングだ)」で誤魔化す事にしている。
「だってよー、さすがに珊瑚ちゃんたちの前では愚痴れねーし、イヤミや注文は今のうちに言っておか
 ないとなー」
 おや、雄二のヤツ今日は少し冷静なのか?
「あら、ようやく自分の行為がみっともないって気が付いたの?」
 しかし雄二はタマ姉のそのツッコミに、
「いーや。昨夜いい事を思いついたんだ」
 踏ん反り返って妙なセリフを投げ返したのだった。

          『雄二のト☆キ★メ☆キ♪光源氏大作戦!~前編~』

「「「いい事~~??」」」
 雄二は自信たっぷりの様子だが……激しく嫌な予感がする。
 雄二がこういう態度をとる場合はロクな事を言い出さない。はっきり言って胸の薄い、まのつく先輩
が「いい事」を思い付いた時とおっつかっつである。
 タマ姉も、このみすら同じ感想だったのか、俺たち3人の口から出た言葉は計ったようにタイミング
もトーンもぴったり合っていた。しかし雄二はそれに気が付いた様子もない。
「そうさ。俺はミルファちゃんを見ていて思ったね」
 ……ミルファには悪いが、嫌な予感が3倍(当社比)に膨れ上がった。
 春に珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんの姉妹、そしてイルファさんと知り合って約半年。

9:『雄二の光源氏大作戦』前編(2/8)
08/10/15 17:44:31 xNaIxXwD0
 この秋口、突然の転校生として俺たちの前に「河野はるみ」ことミルファがやってきてから俺の周り
はさらに騒々しくなった。クマ吉の時から暖めていたというレベル3の恋心だけを拠り所に突撃してく
る彼女は、当時の俺にしてみればまさにラブモンスター。いかに姫百合家とのお付き合いで多少は女の
子に慣れたとはいえ、ミルファの過剰なスキンシップと愛情表現にはほとほと参ったものだった。
 思い出すのも辛いあの事件を境に少しは落ち着いたような気もするけど……イルファさんの陰謀(?)
で我が家に送り込まれたシルファちゃんとの「専属メイド(もしくは三号)の座争奪戦」は今も静かに
続けられている。
 ん?一号と二号?どうやら彼女らいわく、一号は珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんで、二号は永久欠番らしい。
 ちなみにそれを聞いたイルファさんは「二号は……うふふ」と言っていたりしたのだが……。
 それはまぁ、さておき。
「で? 何を思いついたのさ」
 どうせそれを聞かないと話が進まないのだ。
 気は進まないが、仕方なく雄二に先を促すことにした。
「それだ。……ミルファちゃんはまだよく思い出せないらしいけど、ようは彼女がお前に惚れ込む様に
 なった原因って、クマ吉の頃にずっと一緒にいたすり込みなんだよな?」
「あー、このみも覚えてるよー。タカくんの頭にずっとくっついてたんだよねー」
「そうそう、それだ。イルファさんが瑠璃ちゃんに懐いてる理由も生まれたばかりの頃の出会いだって
 言うし……」
「そういえばイルファがそんなコトを言っていたわね。初めて外に連れ出してくれたのが瑠璃ちゃんだ
 とかなんとか……」
「だろう!? つまりはそういう事なんだよ、貴明!」
「さっぱりわかんねーよ」
 このみとタマ姉がそれらしい相槌をうったのが嬉しかったのか知らんが、雄二は勢いこんで俺の眼前
に迫ってきた。無責任に煽るなよ、二人とも……そんな単純な話じゃないんだから。
「わっかんねーかなー」
 雄二はいらいらした様子でがりがりと頭を掻いている。まぁ、わからなくもないんだが……。
「要は……ロールアウト前のメイドロボと一緒にいれば懐いて貰えるんじゃないか……と言いたい?」

10:『雄二の光源氏大作戦』前編(3/8)
08/10/15 17:47:34 xNaIxXwD0
「そうっ! まさにそれだよ! さすが親友。いや、心の友と書いて心友!」
 いらねーよ、そんな友達……。
「……で? 俺にどうしろと?」
 すると、それまでの尊大な態度はどこへやら、雄二は腰を直角に折り曲げて頭を下げるとぱんっ!と
掌を合わせ、
「珊瑚ちゃんに頼んでくれっ! なに、作ってくれとまでは言わん。珊瑚ちゃんのことだからまた新型
 OSの開発とかやるんだろ? その時でいいから是非!この向坂雄二の元に一台!」
 などと頼み込んで……というか拝み倒してきた。
 いやまぁ、途中からこのオチは予想出来たけど……わが友人ながらなんと情けない……。
「雄二……あなたねえ……プライドってものはないの?」
「ユウくんの株価、今年の最安値を更新中でありますよ……」
 案の定タマ姉もこのみも呆れ顔だ。そりゃそうだろう、どう考えても。
「プライド? 株価!? そんなの関係ねー! そんなのなくすくらいでメイドロボちゃんに懐いて貰
 えるんなら、俺は何も惜しくなどないっ!!」
 いや、ちょっとかっこいいセリフだけど中身は果てしなく情けないぞ、雄二。

 と、そんなアホにかまけて油断していたためか。俺は後方警戒をうっかり怠っていた。

 ……だだだだだだだだだだだだだだだだだ!
「ダーリンっ! つっかまえたぁ~~~!! ……あれっ?」
 どかぁ~~~~~~~~~~んっ!!
「えあばーーーーーっぐ!!」きらーん☆
「わぁ~~っ! タカくんがぁ~~っ!」

            ~~~~しばらくお待ちください~~~~

「いててて……」ぴよよよよ……
「お、おはよ、ダーリン。朝から星になるなんて、さすがダーリン。いい技持ってるねっ♪」
「死ぬかと思ったよっ!!」
「大丈夫なんかい……あいかわらず頑丈やなぁ、バカ明は」
「あ、おはよー、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん」
 くそっ、何事もなく会話が進むこの空間はなんなのだろうか……。

11:『雄二の光源氏大作戦』前編(4/8)
08/10/15 17:49:38 xNaIxXwD0
「おはよーさん、貴明、このみ、タマねーちゃん。雄二もおはよーさん」
「おはようふたりとも。おはよう、ミルファ。前方不注意はダメよ? ぶつかったのがタカ坊だからよ
 かったようなものの、ノーブレーキで突っ込むなんて……」
 よくねーよ。
「あ、あははは……いつもみたいに避けられると思ったんだも~ん」
 てへっ♪と舌を出すミルファ。……可愛いからって許されると……
「ゴメンね~~、ダーリン。頭とか打ってると悪いから、保健室に行って休む? ひざまくらしてあげ
 るから、そうしよ? ね? ね?」
 ……うん。それも悪くないかな~~なんて思っていると、背後からじっとりとした瑠璃ちゃんの視線
を感じる。
「ミルファ~? そうやって授業サボる気やろ。イルファに言いつけるで?」
「そうね……ミルファの事だから膝枕で終わるとも思えないし……」
 タマ姉もうんうんと頷いている。
「「ソ、ソンナコトハアリエマセンデスヨ?」」
 二人の疑り深い視線を受けて、俺とミルファはマリオネットのようにプルプルと首を振って疑惑を否
定したのだが……。
「タカくんもすっかりその気だったみたいでありますね」
「二人とも息ぴったりや~~♪」
 このみと珊瑚ちゃんのツッコミの前に、その努力は敢え無く撃沈するのであった。

「ゆ、雄二? 今朝はずいぶん静かじゃない? あいさつくらいしなきゃ」
 このままではいけない。
 俺は流れを変えるために、妙に大人しい雄二に話を振る事にした。
 雄二のヤツ、さっきから何事かを悟ったような顔をして場を見守っているのだ。
「ふ……ふふふ……」
「雄二? ついにアイアンクローが脳に来たとか?」
「どーいう意味よ、タカ坊」
 どうもこうもない、そのままの意味ですよ、タマ姉。
 などという言葉はおくびにも出さず、俺は雄二の顔をのぞきこんだ。
 すると……
「貴明っ!!」がしっ!

12:『雄二の光源氏大作戦』前編(5/8)
08/10/15 17:53:58 xNaIxXwD0
 がばっ!と、いきなり滂沱の涙を流した雄二にがっちり肩を掴まれた。
 はっきり言って気色悪い。
「な、なんだよっ」
「俺にもこの幸せ空間を味あわせてくれるよな? 心の友と書いて心友よ……」
 あ?ああ、あの話か……それにしても……
「お前には、これが幸せ空間に見えるのか……?」
「ええ、とっても幸せそうに見えましてよ? この恋愛ノーメンクラトゥーラ……!」
 ぎりぎりと雄二の指が肩に食い込む。さすがタマ姉の弟、はっきり言ってイタイイタイ……。
 ……顔に張り付いた笑みの下には、さぞかし凄い顔が隠れてるんだろうなぁ。
「貴明と雄二、らぶらぶ?」
 そこに、タイミング良くというか悪くというか珊瑚ちゃんがやって来た。
 かくん、と小首を傾げて俺たちの様子を不思議そうに見つめている。
「やあ、おはようっ! 珊瑚ちゃん!! 実はね、貴明が珊瑚ちゃんにお願いがあるって言うからさー」
 そうさわやかに(顔だけ)言いながら、雄二は珊瑚ちゃんの方に俺を追いやる。
「お願い~? なぁに~? 貴明―」
 俺は今、すっごい嫌な予感がしている。
 珊瑚ちゃんの無垢な瞳。そして素晴らしい才能。
 それが雄二の歪んだ(?)欲望に裏打ちされた情熱と出会ったら……。
 ……というか絶対に悪い事が起こる。
 それぞれは真っ直ぐでも、混ぜたら危険な二つの何かに違いない。
「あのね、ユウくんが珊瑚ちゃんにクマ吉ちゃんみたいなメイドロボを作って欲しいんだって」
 こっ!このみぃ~~~!!お前はなんという空気の読めない……

            ◇  ◇  ◇  ◇

「……という訳なんだよ」
 放たれた言葉は取り返しが付かない。
 お昼休みの屋上で、俺は極力当たり障りのないように雄二の希望を珊瑚ちゃんに説明した。
「雄二……情けないヤツやとは思っとったけど、ホンマしょうもない事考えるなぁ」
 ……つもりだったが、瑠璃ちゃんにも雄二の真の意図は見え見えのようだ。

13:『雄二の光源氏大作戦』前編(6/8)
08/10/15 17:58:37 xNaIxXwD0
「はい、ダーリン。あ~~ん……ゆーじ君ってほんっっと好きなんだねー、メイドロボ」
 それどころかミルファにまで疑われている。どうでもいいがお前もメイドロボだ。
「ごめんね、珊瑚ちゃん。こんなおばかな弟の頼みなんて無視していいんだからね」
「そりゃねえだろ姉貴……って、いだだだだ!ギブギブギブ!!」ミシミシミシ……
「まったく、こんなんじゃ心配でおちおち卒業も出来ないわ……」ギリギリギリ……
「死ぬ死ぬ死ぬ!脳が砕け散る~~~~!!」べきっ!ぽい
 べきっとかいいましたよ?
「ユウく~~ん、生きてる?」つんつん
「ま、まぁ、わざわざって事ではないんだけどさ、もし将来そんな話しがあるなら……ね?」
 大人しくもきゅもきゅとタマ姉の弁当をつついていた珊瑚ちゃんだったが、
「ごちそうさま、タマねーちゃん♪」
 箸をおいて手を合わせると、
「わかった、まかせときぃ~。実はちょうど開発中の子がおるんや~」
 と、にっこりと笑った。
「「「ええ~~~っ!!??」」」(俺とタマ姉と瑠璃ちゃん)
「それホント!? 珊瑚ちゃん!!」
 それを聞いて、それまでボロ雑巾だった雄二ががばっと復活した。
 ……本当に人間か?
「よかったね~~、ユウくん」
 このみはのほほんと喜んでいるが……大丈夫なのか?
 そして雄二はと言うと、
「キタキタキター! 俺の時代がキターーーー!!!」
 今にも空でも飛びそうな勢いだ。むしろ飛ばせておいた方が世の中のためかも知れないが。
 ……主に屋上から?
 珊瑚ちゃんは早速メモ帳とシャープペンシルを取り出して何がしかをメモしたりしている。
「さ、珊瑚ちゃん、いいの? 別に無理しなくてもいいんだよ?」
「大丈夫や~。それに、貴明のお願いで無理な事なんかなんもあらへんよ~」
「いや、俺のお願いってわけじゃ……」
 するとそこで、ミルファが何かを思い出したようにぽんっ!と手のひらを叩いた。
「思い出したよ~。今さんちゃん、私たちの量産OSを作ってるんだよね?」
 おいおい。

14:『雄二の光源氏大作戦』前編(7/8)
08/10/15 18:01:50 xNaIxXwD0
 なんて巡り合わせの悪い……いやいや。
「そうや~。いっちゃんたちの人格を基盤にした量産型だいこん・いんげん・あきてんじゃーや」
「そんな大事な事に、雄二の我が侭を付き合わせなくてもいいのよ?」
 タマ姉が心配するのも無理はない。
 事は来栖川エレクトロニクスの大事なプロジェクトじゃないのか?
「どうせ色々なパターンでのテストとデータの蓄積が必要なんやで? こないだいっちゃん預かっても
 ろた実績もあるし、問題あらへん。これ以上貴明には頼めんしな~」
 そう言うと、珊瑚ちゃんはミルファに微笑みかけた。
 ……これはあれだ。大騒ぎになる前振りだ。最近すっかり危機の匂いがわかるようになってきた。
 とはいえ回避は出来ないのだが……案の定、
「ダーリンにはもう専属メイドロボ兼三号さんのミルファちゃんがいるもんね~~♪」
 ミルファは「我が意を得たりっ!」とばかりに飛び付いてきて、
「あら、じゃあ本妻は私でいいのね?」
 タマ姉がさりげなく茶々をいれ、
「ちっが~~う! 1号兼2号はさんちゃんと瑠璃ちゃんだもん!」
「ウチを勝手に人数に入れるなぁ~~! さんちゃんも貴明にはわたさへ~~ん!」
 ミルファの爆発に瑠璃ちゃんが巻き込まれ、
「じゃあこのみが一号になる~~♪」
「本妻の座はわたさへんで~~♪」
 わかっているんだかわかっていないんだかわからないこのみと珊瑚ちゃんが乱入し……あれ?
 いつもの「かーっ! この恋愛帝国主義者めー!」とかがない。
 ……見ると、
「いやあ、今日も平和で結構結構~~」
 そこにはすっかり腑抜けた(?)雄二が太平楽を決め込んでいた。
 ……なんかそのすっかり「勝った!」という顔がむかつく(笑)

「ふんふん。背は高からず低からず、ないすぼでーのおねえさまタイプやな?」
 騒ぎがひと段落すると、珊瑚ちゃんは雄二に「メイドロボの好み」を聞きはじめた。
 なんだかどうやら本格的に「雄二用メイドロボちゃん」計画が動き始めたらしい。
 こんな事でいいんだろうか?

15:『雄二の光源氏大作戦』前編(8/8)
08/10/15 18:04:54 xNaIxXwD0
「そうだねー。あのちょっと時代がかったエプロンドレスを着ていてなおわかる色気があってさあ、で
 も下品なのはいけないとおもうんだよねえー」
「色っぽくてなおかつ上品?」
「そう、そうなんだよ~~」
「この子の名前、なんにする? 雄二の好きなようにつけてもえ~よ?」
「ホ、ホントか!? ここはやっぱ『リナ』しかないだろ! いや、将来何かのきっかけで緒方理奈ち
 ゃんとお付き合いする事になった時に紛らわしいから『リーナ』にしよう!」
 熱く語る雄二だが……珊瑚ちゃんも熱心に聞いてはいるが、果てしなく不安だなぁ。
 それはさておき、知り合う事すらありえないからな、雄二。

「わかった。ウチにまかせときぃ」
 メモ帳をしまうと薄い胸を叩いて安請け合いをする珊瑚ちゃんの様子に、みんな(雄二除く)は思い
切り不安そうな表情だ。
 ……もちろん雄二はひとり舞い上がっている。幸せなヤツである。
「それで……家の方に来るの?その子。いつ頃になるのかしら」
 イルファさんの修行で多少は慣れたにしろ、潜在的にメカニカルなものに苦手意識を持っているタマ
姉がおそるおそると言った風に切り出した。
 すると珊瑚ちゃんはぷるぷると首を振ってこう答えた。
「ちゃうよ~。り~なはまだOS調整段階やし、ボディだって雄二の注文を形にするには時間かかるや
 ろ。とりあえずみっちゃんみたく、仮ボディで連れてくるわ。まず学校でだけ遊んだって」
「了解! 待ってろよリーナ。ご主人様が思いっきり可愛がってあげますからね~♪」
 う~~ん。果てしなく不安だ……。
「でもそんなに上手くいくかなぁ? 少なくともひっきーはすり込みで、とかじゃないよね?」
 俺の不安を増幅するように、ぼそりとミルファが計画の先行きに疑問を呈していたのが印象的な、天
気だけは気持ちのいい秋の午後であった。


                 ~~続く~~

16:中の人
08/10/15 18:07:22 xNaIxXwD0
オチは考えてあるんだけど途中経過部分で詰まっているのは秘密です。

よし、これで後半書く気合が入ったぞと(マテ

17:名無しさんだよもん
08/10/15 18:17:10 +CRXpw1h0


18:名無しさんだよもん
08/10/15 18:27:55 5/oTyOEq0
※おっつ‐かっつ

[形動]《「おつかつ(乙甲)」、また「お(追)っつすが(縋)っつ」の音変化かという》ほとんど差がつけられないさま。
   優劣の差がないさま。また、時間などの差がないさま。おつかつ。「二人の力量は―だ」「父と母は―に外出した」


19:名無しさんだよもん
08/10/15 23:53:58 8B33tk1E0
乙すぎるGJ

なんか気になったところだけ
誤:味あわせる
正:味わわせる

20:名無しさんだよもん
08/10/16 00:17:36 vDSF5JkC0
>>16

続き待ってます

21:名無しさんだよもん
08/10/16 06:36:19 sdEUS0+e0
乙彼

22:名無しさんだよもん
08/10/17 22:17:43 Q9OlF1Ms0
前スレに埋めネタ投下しようとしたら512k超えてるとか言われて落とせなかったんだけど専ブラのせいとか?
まだ500kくらいのはずなんだけど


23:名無しさんだよもん
08/10/17 22:50:55 GibjhD9D0
何でもいいからここに投下してしまえ。そう神からのお告げがありました。

24:名無しさんだよもん
08/10/17 23:22:42 Q9OlF1Ms0
じゃ、落としてみる
今回は昔を思い出して実験的に書いた変な形態のものなのでお願いをしておきます

・支援は入れないようにお願いします
 投下するものを見てもらえれば理由はわかるかと思います
・投下に時間がかかると思いますが、最後(14/14)を投下するまで放置で
・専ブラよりもwebブラウザのほうが楽しめるかも?

それから、たぶん書庫に収録するのは面倒かと思いますので、収録は無しでもOKです
>書庫管理人様

では


25:∞愛佳いぢり 1/14
08/10/17 23:26:04 Q9OlF1Ms0
 ─放課後。
 今日も俺は書庫にやってきた
 中では俺の彼女の愛佳が先に来て待っているはずだ。

 がちゃ。

「あっ、たかあきくん。」
 司書机で今日の作業の準備をしていた愛佳が俺を出迎えた。
 今日の作業は何かな?
「今日は本の整理だけだから、けっこう簡単だよ。」
 そっか。じゃ、ちゃっちゃと済ませて帰りに二人でどこかでデートしよう。
「えっ、デ、デート……う、うん。」
 頬を染めてはにかみながら答える愛佳がかわいかった。

 カートに乗った本を一冊一冊、分類にしたがって本棚に納めていく。
 愛佳は本棚の裏側で作業している。
 ……今は何やってるのかな?
 気になって、俺は棚の裏を覗き込んでみた。すると……

 高い棚に本を納めようと背伸びしている…… >>30 6/14へ
 ……なんか食べてる? >>37 13/14へ


26:∞愛佳いぢり 2/14
08/10/17 23:29:03 Q9OlF1Ms0
「たかあきくん、大丈夫?」
 ……ああ、大丈夫。
 今俺は愛佳の膝枕で、書庫のソファーの上で介抱されている。
 俺が悪いのに、愛佳は本当に申し訳なさそうな顔で俺を介抱している。
 胸が痛むな……
「……そう思うんだったら、もうあんな悪戯しないで。」
 すいません……
 そうだ、お詫びに帰りにアイスでも奢るよ。ダブルで。
「えっ……本当に?」
 もちろん。
「……えへへ、楽しみにしてるね。そうと決まったら早く作業終わらせちゃお?」
 了解。さっさと終わらせますか。

 >>38 14/14へ


27:∞愛佳いぢり 3/14
08/10/17 23:32:02 Q9OlF1Ms0
 じゃあ、肩車してあげる。
「えっ、で、でも……今日はブルマ持って無いし。」
 エッチだって何回もしてるんだし、別にパンツでも恥ずかしがる事も無いのに。
 他に誰も見て無いよ?
「そ、それとこれとは別!」
 そう言うものなのかな?
 まあ、見ないようにするから。ほら。
 俺がしゃがんで四つん這いになると、愛佳は渋々俺の首の上に跨ってきた。
「み、見ないでね。」
 俺は本棚を手がかりにして、愛佳を肩に乗せたまま慎重に立ち上がった。
「わ……高いねぇ。これなららくちんだよぉ。」
 普段とは違う視界のせいか、愛佳はちょっぴりご機嫌だ。

 愛佳が作業している間、俺は立ってるだけで手持ち無沙汰だ。
 ちょっと悪戯してみたくなってきたな。

 太ももに触ってみる >>36 12/14へ
 ちょっと揺らしてみる >>29 5/14へ


28:∞愛佳いぢり 4/14
08/10/17 23:35:04 Q9OlF1Ms0
 愛佳と別れて再び作業へと戻ろうとしたところで、愛佳が俺の制服の裾をつんつんと引っ張った。
 どうかしたの?
「あのっ、あのね……今日、たかあきくんの家に行って良いかな?」
 いいけど、どうして?
「あのね……さっきのキスの……続き、してほしいなって……だめ、かな?」
 ……えっと、それって……
 愛佳は真っ赤になってうつむいたまま、答えなかった。

 >>38 14/14へ


29:∞愛佳いぢり 5/14
08/10/17 23:40:09 Q9OlF1Ms0
 チョッとふらついた振りして愛佳の身体を揺らしてみた。
「はわわわ!」
 愛佳が俺の頭にしがみついてきた。

 ぷにょん

 この頭頂部に感じるぷにゅぷにゅした感触は……
 最近ちょっぴり大きくなった愛佳の胸!
 調子に乗って俺はさらに揺らした。
「たっ、たかあきくん、やめてぇぇぇ!」

 ぎゅううううううう!

 まっ、愛佳っ、そこ首、首だからっ、締まってるって、チョークチョーク!
 ……きゅう。

「あれっ、たかあきくん? ……たかあきくん!?」
 ぐぅ……息が……

 >>26 2/14へ


30:∞愛佳いぢり 6/14
08/10/17 23:43:03 Q9OlF1Ms0
 棚の裏では、愛佳が爪先立ちになって棚の一番上に本を入れようとがんばっていた。
「う~ん、うにゅ~。」
 一番上の棚は愛佳の身長だと少々つらい位置だ。
 困ってるなら俺を呼べば良いのに。
「あ、たかあきくん……うーん、ごめんねぇ。手伝ってくれるかな?」
 さて、どうやって手伝おうかな。

 肩車するかな >>27 3/14へ
 抱っこして持ち上げる >>34 10/14へ


31:∞愛佳いぢり 7/14
08/10/17 23:46:06 Q9OlF1Ms0
 口の周りに残った「お弁当」の定番のとり方は、これだよな。
「ひや……」
 ぺろり。
 愛佳の小さくてかわいい唇の周りをぺろりと舐めた。
「ふわ……」
 そのまま、愛佳の唇を奪う。
 舌を滑り込ませると、愛佳も舌を絡ませてきた。
 愛佳の口の中はわずかに残ったチョコが唾液と交じり合ってすごく甘い。
「ふ……む……ん……」
 舌をなぞるたびに、抱きしめた愛佳の身体がぴくん、と跳ねた。

 愛佳の口内をたっぷり舐った後で唇を離すと、腰が抜けたのか俺が支えていないと立っていられない状態だった。
 ……ちょっとやりすぎたかな?
「い、いきなりすぎるよぉ……気持ち良すぎちゃって……」
 ごめん。でもキスしたくなって……
「あ、あたしも……」
 そう言いながら、愛佳はもう一度唇を重ねてきた。

 >>28 4/14


32:∞愛佳いぢり 8/14
08/10/17 23:49:04 Q9OlF1Ms0
 ポケットに入ってるの、ゼリービーンズでしょ?
「うっ……うん。」
 渋々ポケットから出した愛佳の手に握られていたのは色とりどりのゼリービーンズだった。
「お腹が空いちゃって、チョッとだけ食べてたの……ちょっとだけだよ。」
 はいはい。
 ……俺もひとつ貰おうかな。
「うん。はい、どうぞ。」
 愛佳の手から2粒ゼリービーンズを取り上げて口に放り込む。
 そして、素早く愛佳を抱き寄せると唇を重ねた。
「は……んっ」
 二人の舌の上でゼリービーンズが踊る。
 その甘さをしっかりと味わった後で、ゼリービーンズを一粒だけ愛佳の口に残して唇を離した。
「い、いきなりすぎるよ……」
 でも、気持ちよかったでしょ。
「うん……」
 愛佳の大きな瞳が、どこかとろんとして俺を見ていた。

 >>28 4/14へ


33:∞愛佳いぢり 9/14
08/10/17 23:52:04 Q9OlF1Ms0
 口の横についてるの、チョコじゃない?
「へっ?」
 あわてて愛佳は小さな鏡を取り出して自分の顔を確認してしゅんとなった。
 やっぱりつまみ食いしてたんじゃん。
「……うう、かくなるうえは、」
 愛佳はすぐ傍にあった分厚い辞典を手にとってその重さを確認した。
「ふむ……」
 目撃者を消そうとするのはやめれ。
 そんな事より、口を拭くのが先だろ。
「そ、そうだね。」
 愛佳がポケットからハンカチを取り出して口を拭おうとする。
 あ、ちょっとまった。
「何?」

 俺が拭いてあげるよ >>35 11/14へ
 口についた「お弁当」は…… >>31 7/14へ


34:∞愛佳いぢり 10/14
08/10/17 23:55:11 Q9OlF1Ms0
 じゃあ、抱っこして持ち上げるからその間に本を入れなよ。
「うん。じゃ、じゃあ……お願いね。」
 愛佳のウエストの辺りに腕を回して持ち上げる。
 愛佳は小柄で体重も軽いけど、それでも人一人を持ち上げるからけっこう大変だ。
「……もしかして、重い?」
 まあ、軽くは無いかな?
「や、やっぱり……」
 ど、どうかしたの?
「この間……体重測ったらチョッと増えてて……」
 ずる。
 いや、そう言う意味じゃなくて……
「じゃ、じゃあ元から太ってたって言う意味?」
 そうじゃないって……作業はまだ終わらないの?
「は、はうう、ごめんなさい! すぐ片付けるから!」
 そう言いながら、愛佳がじたばたしながら本を押し込み始めた。
 こら、そんなに暴れるとお尻がぷにぷに顔に当たるんだけど。
「ひやぁぁぁ、たかあきくんえっちだよぉ。」
 だから、この体勢辛いから早くして……

 >>38 14/14へ


35:∞愛佳いぢり 11/14
08/10/18 00:00:22 gyKStmuZ0
 俺は自分のハンカチを取り出すと、愛佳の口元を丁寧に拭ってあげた。
「……なんか、慣れてるね。」
 ……そうかな?
「うん……なんか、妹の面倒を見てるお兄ちゃんみたい。」
 あー、なんとなく判るな。
 昔はこのみ相手にけっこう似たようなことやってたような気がする。
「ちょっと羨ましいな。」
 このみが?
「うん……あたしはいつも面倒見るほうだから……」
 俺でよければいつでも甘えてくれて良いけど?
「えへへへへ。じゃあ、後で甘えてみようかな。」
 了解。じゃあとっとと仕事終わらせてデートしに行こう。
「うん!」

 >>38 14/14へ


36:∞愛佳いぢり 12/14
08/10/18 00:03:10 gyKStmuZ0
 視線を横にずらすと、左右には愛佳のぷにぷにした白い太ももがある。
 悪戯心が涌いてきて、俺は愛佳の左の太ももをするり、と撫でてみた。
「うひゃぁぁぁう!」
 愛佳がおかしな悲鳴をあげた。
「や、やめてよぉ、たかあきくん。」
 ……ふむ、これはけっこう面白いかも。
 今度は右の太もものほうに顔を向けて、唇を這わせてみた。
「う……や……あぁぁんん。」
 こんどはちょっと色っぽい悲鳴が上がった。
「や、だめぇ……へんな気分になっちゃうよぉ。」
 後頭部の辺りの温度が少し上がった気がする。
「だめだってばぁ!」

 ごきっ。

 おおお!くっ、くびがぁ。
「だ、大丈夫!?」
 愛佳が俺の唇を太ももから離そうと俺の頭を捻じ曲げたせいで、俺は首を痛めた。
 …いてぇ。

 >>26 2/14へ


37:∞愛佳いぢり 13/14
08/10/18 00:06:02 Q9OlF1Ms0
 よくよく見れば愛佳は本を仕舞う作業の合間に何かポケットから取り出して口に運んでいた。
 一体何をつまみ食いしてるんだか。
 ……おいっ、この食いしん坊めっ!
「ひやっ! ひゃいっ! って、あたしは食いしん坊じゃないぃぃぃ!」
 そんな拳を振り上げて抗議しても、今つまみ食いしてたの見てたんだから。
「そ、そんなこと……ないですヨ。」
 微妙な敬語がますます怪しい。
 ……そのスカートのポケットに何か入ってるでしょ?
 多分……

 ゼリービーンズだろ? >>32 8/14へ
 口についてる茶色の汚れは…… >>33 9/14へ


38:∞愛佳いぢり 14/14
08/10/18 00:09:10 gyKStmuZ0
 なんだかんだで今日の作業も終わり。
 靴を履き替えて二人で外へ出た。
 どちらが言うともなく、自然に手を繋いで校門をくぐる。
 少し前までは、こんな些細な事すらぎこちなかった俺たちだけど、今では隣に居る事が自然で、お互いが愛しい。

「たかあきくん。」
 何?
「何時までもずっとこうしていられると良いよね。」
 俺はこの先もずっと愛佳と一緒に居たいと思ってるけど、愛佳は違うの?
「……たかあきくん、意地悪だよぉ。」
 そう言いながら、愛佳は繋いだ手を強く握り返してきた。
「あたしだってそう思ってるんだから。たかあきくんより、もっともっと。」
 そう言って、愛佳はとろけるような笑顔で笑って見せた。


               ~ Fin ~


 最初から >>25 1/14へ


39:名無しさんだよもん
08/10/18 00:10:20 gyKStmuZ0
アドベンチャーノベルだっけか?
昔そう言うのが流行った時期がありましたよね
それを思い出してささっと書いたものなので内容は薄いですが、萌えていただければ幸い
名前は最近流行の∞ぷちぷちとか、そんなのりで

安価ミスあったらやだなぁ
まあ、一発芸みたいなものなので間違ってても雪辱戦をやるつもりも無いですが

さて、現実逃避はこれくらいにして、書きかけのSS続きを書く作業に戻りますわ
おそまつさまでした ノシ

40:名無しさんだよもん
08/10/18 00:33:57 eZSI2Srm0


41:名無しさんだよもん
08/10/18 06:16:04 7iE/MRI20

なかなか面白かったよ

42:名無しさんだよもん
08/10/18 12:02:37 kVqkIOyg0

すげぇ懐かしいw
この手の奴って、必ず一つは理不尽なゲームオーバーがあってへこんだものです

43:名無しさんだよもん
08/10/20 21:25:49 TxImgiJx0
 今からSSを投下します。
 小牧姉妹SSです。内容は一応ほのぼの系かな……
 本編は11レスを予定しています。
 規制による投稿の停止が予想されますので、投稿が止まった時はスレを通常進行させて下さい。

44:こたつにみかん(1/11)
08/10/20 21:27:45 TxImgiJx0
寒かった。
 どうみても十月の半ばとは思えない寒さだった。
 先週くらいまでは例年にない小春日和が続いていたから、余計にそう感じる。
 冬の始まりを告げる冷たい風は、俺の薄手のジャケットを容赦なく突き抜けてくる。
 やっぱ見栄なんか張らずにジャンパー着てくるんだったなあ……
 でも、こんなに急に寒くなるなんて思わなかったんだよ。
 ああ、寒い寒いマジで寒い……
 ぶつぶつとそんな愚痴を心に流しながら、そしてどうにも縮こまる手足をさすりながら、俺は歩く。ひたすら歩く。
 なんのために? それはもちろん、彼女を迎えにいくために。


「何の用?」

 しかしそこで待っていたのは冷たい声。
 ある意味、さっきの秋風に負けないくらいの冷たい視線で俺を見下ろしている。
 なんで俺が睨まれなきゃいけないの?
 もちろん、わざわざ寒い中を迎えにやってきた俺のお姫様はこんな意地悪小姑などではない。

「愛佳は?」
「姉になんの用」
「いや、ちょっとさ、」 
「用が無いならとっとと帰れ」

 …………ちっ。
 くそう、一言くらいはなんか言い返してやりたい。いや、してもいいと思う。
 でも一言いえば十倍に返ってくるのは分かってるし。
 デート前にくだらないことで延々と言い争いをしたくない。しかもここは恋人の家の玄関口の前だ。
 くそ、もういい。さっさと用件を済ませてしまおう。

45:こたつにみかん(2/11)
08/10/20 21:29:28 TxImgiJx0
「愛佳と出かける約束してたんだ。さっさと呼んできてくれ」

 俺がそう言うと、郁乃は何故か驚いたような顔をした。

「えっ、約束? してたの? 嘘じゃないよね……?」

 なんだよそれ。嘘なんかつくもんか。

「ちゃんとしてたぞ。嘘だと思うなら、本人に確認すればいいだろ」
「う~ん、そうだけど……」

 なんで疑う。嫌がらせか? でもなんとなくそんな雰囲気じゃないし。
 じゃあさっきから何をこいつは戸惑ってるんだ?
 日曜の朝に恋人の家に誘いに来ても、別に驚くようなことじゃないだろ?
 それにこうやって俺が愛佳を迎えに来るのは、今日が初めてでもないし。
 
「なんか、まずいのか?」
「あー……えっと」

 郁乃の返事は、やはりはっきりしない。
 こいつがこんな風に言いよどむとこなんて、いままでにもあんまり見たこと無い。
 いったい何があったんだ? 

「うーん、じゃあとりあえず家にあがったら?」

 少しばかり考え込んだあげく、結局郁乃はそう言った。
 しかし俺には話しの流れが分からない。

「なんで?」
「ん、なんて説明していいのか……」


46:こたつにみかん(3/11)
08/10/20 21:30:14 TxImgiJx0
 おいおい、やめてくれよ。
 お前にそんな顔されたら、俺も不安になるだろうが。

「とにかく、見てもらったほうが早いから」

 しかし聞き返す間もくれず、郁乃はさっさと家の奥に帰って行った。
 ……えっと、どうする?
 一人玄関に置いてかれ、少しばかり途方にくれる。
 だがまあ、迷っていても仕方ないか。
 
「じゃあ、おじゃまします」

 適当なスリッパを手に取ってずいずいと居間に上がらせてもらう。
 勝手知ったる彼女の家、だ。


 そして。

「あ、そういうこと」

 小牧家の居間に通された俺は、一目で郁乃の言いたいことを理解した。
 そこにあったのはこたつとみかん。そして愛佳もそこにいた。だが。

「寝てるよ……」

 今日俺とデートしてくれるはずだったお姫様は、何故かこたつの中で爆睡中だった。
 しかも着てるのはドレスではなく、どてら。
 えっと、たしかに今日がデートの予定だったよな? なんで寝てるの?

「デートを忘れたわけじゃないけど、きっとこたつがあったかくて気持ちよく寝ちゃったんでしょうね」
「なるほど」

47:こたつにみかん(4/11)
08/10/20 21:30:54 TxImgiJx0
 なんというか、さすがは愛佳だとしか言いようが無い。

「なあ、愛佳はいつからこうなんだ?」
「昼ご飯を食べたあたりから、ずっとかな」
「そうか……」

 現在時計は3時32分をまわったところ。
 小牧家の昼ご飯の正確な時間はさすがに知らない。
 が、まあ少なく見積もっても2,3時間はここでこうやって爆睡してたわけか。
 さすがに俺もちょっとばかり頭が痛くなってきた。
 あー、それにしてもこたつに寝てる愛佳にはどてら姿がやたら似合うなあ。
 そのかわり女の子としていろんなものを失ってる気もするが。

「あたし、まさか今日がデートだとは思わなくて」
「そりゃそうだろうな」

 愛佳のこの姿から今日がデートだと推測できるものは居ない。
 俺自身でさえひょっとしたらデートの日を間違えてしまったのではないかと思うほどだ。
 なるほど。事情はよくわかった。
『で、どうするの?』
 と瞳で尋ねてくる郁乃。しかしそんな目をされてもなあ。
 実際のところもはやどうしようもないだろう。今から着替えさせたって、きっと時間に間に合わないだろし。
 それよりもなによりも、愛佳がこたつで寝ているこの光景を目にして、いろんな意味でのヤル気がふっとんでしまった。
 なーんにも考えていなさそうにうつぶせで寝てる愛佳の後頭部が平和すぎる。
 とてもじゃないが『いまからデート』っていう色気が出ない。
 俺もいっぱしの男であって、当然その日のデートの前日の夜には明日はちょっときめていこう、
 とかあわよくばきめてみよう、とか多少なりとも目論んだりするわけだが……
 なんかもういいや。

「いいよ。もう寝かせておいてやってくれ」
「そう……なんというか、ごめんね」

48:こたつにみかん(5/11)
08/10/20 21:31:55 TxImgiJx0
 いや、お前に謝られてもなあ。
 しかし郁乃に哀れみの篭った目で見られるって、どんだけ堕ちたんだよ今の俺の立場。
 これで『かわいそうに』、とかこいつに言われたら余裕で死ねるな。
 それにしても、これからどうするかなあ。
 もうウチに帰るかな。でもまた寒い中歩いていくのもツライなあ。 
 
「じゃあ、おわびっていうか、ここでちょっと休んでいったら?」

 今の俺はそこまで可哀想に思えるのだろうか。
 郁乃がここまで優しい言葉をかけてくれるとか、かつてなかったはずだ。
 しかし頼むからもうやめてくれ。いっそ罵られた方がなんぼかマシだぞ。

「ほら。このこたつ、あったかいよ」
「んー……」

 こたつねえ……そりゃまあ入りたいわな、正直。
 でも、なんといっても女の子二人の空間であった。そこにちょっとばかり遠慮する気持ちはある。
 けど寒いしなあ。ちょっとだけでもあったまりたいなあ。

「とりあえず、入ってみればいいじゃない。だって、うちのこたつって掘りごたつだし」
「とりあえずの理由になってないな」

 郁乃の誘いにツッコミ入れつつ、ちょっと興味が沸く
 堀ごたつ、というのは普通の卓上こたつとは違って、彫り抜いた床に腰掛けて温まるというちょっと手の込んだ本格的な暖房器具である。
 普通のこたつに比べて座るのが楽だしけっこう気持ちいい、と誰かから聞いたことはあったかな。
 でも俺自身が体験したことはまだない。

「ふーん、堀りごたつってのは珍しいよな。普通の家にはあんま無いだろ」
「退院が決まったら、お父さんが家に用意してくれた」

49:名無しさんだよもん
08/10/20 21:52:11 7mlRONqv0



50:こたつにみかん(6/11)
08/10/20 21:55:59 TxImgiJx0
 そっか。普通のこたつじゃ郁乃は辛いもんな。
 なるほど、こたつにもバリアフリーが必要なんだなあ……と妙なところで感心させられてしまう俺だった。

「でも一番気に入ったのは、お母さんみたい」
「あはは」

 そういうものかな。そんなにいいものだろうか。
 やっぱりちょっとぐらい入ってみようかな?

「それじゃあ、ちょっとだけ」
「ん、どうぞ」

 失礼してこたつぶとんを少しめくって両足を忍ばせる。
 俺の家にはこたつはない。
 久しぶりに入ったこたつは、ふんわりと眠くなるあたたかさだった。
 でもこたつの陣地中央のいちばんいい場所を愛佳の足が占領していることには……もう笑うしかないな。
 こたつの温もりに浸されて、冷たく凍えた手の先にしっとりと熱が伝わっていく。
 それは痺れるような感覚でもあった。

「あー、あったけぇ」

 思わず漏れたその声を聞いて、郁乃は『おじいさんみたい』と少しだけ笑った。

51:こたつにみかん(7/11)
08/10/20 21:56:47 TxImgiJx0
 頭寒足熱、という言葉がある。
 足元を暖めて頭は冷やすと心地よい、という人間の身体の性質を表現した言葉である。
 頭を暖めすぎると、人はだんだん気分が悪くなる。
 それに空気が暖かすぎるとなんだか息苦しくなるしな。
 だからエアコンが苦手で、こたつが好きだという人もけっこういる。
 久しぶりに俺が感じたこたつの温もりは、なんだか安心できるような優しい暖かさだった。

 しかし、そうなると背中や肩は少し寒く感じる。 
 あ、だから郁乃はあったかそうなセーターを着てるんだな。
 愛佳はどてらか。こっちもさすがというかなんというか。
 二人ともこたつ慣れしているなあと無意味なところで感心する俺だった。  

 郁乃も入り口で出会ったときよりもずっとリラックスしているように見える。
 寒いのは苦手、だと以前に言っていたことがあったな。
 もっともそれは病気のせいでもあるらしいが。
 こたつの温もりの中から呼び出されたのがさっきの不機嫌の原因だったのかもしれない。
 こたつの空間には微かに甘いみかんの香りが漂っていた。
 玄関口にはみかんのダンボールが3段で積まれている。
 どうやら”こたつにはみかんを常備”というのは小牧家の常識らしい。

「みかん、たべていいよ」
「ありがと」

 俺がじっとみかんを見ていたことに気付いたのだろう。
 郁乃は眠そうな声でそう言った。
 こたつのもたらす温もりのせいか、郁乃の声はいつもよりやさしげだった。
 そうなると、どこまで甘えていいのか試してみたくなる。

52:こたつにみかん(8/11)
08/10/20 21:57:22 TxImgiJx0
「ついでにみかんの皮も剥いてくれ」
「……なんであたしが」
「こたつがあったかいから、手を出したくない」
「あんたねえ」

 郁乃はあきらめたような溜息をひとつ。
『お姉ちゃんと一緒のこと言うし……』と、俺のためにみかんの皮をむいてくれた。
 文句を言ってる割には、みかんを剥くその手つきは感心するくらい丁寧だ。
 きっと姉にもそうしてむいてやるのだろう。
 俺の居ない空間で姉妹の過ごす時間というものを、なんとなく想像しながら、俺は郁乃がくれたそのみかんをありがたくいただいた。


 郁乃がむいてくれたみかんを二つほど食べながら
 こたつがくれる温もりに浸って、ぼんやりとテレビを眺めていた。
 もう三回以上は視聴した定番テレビドラマの再放送。
 あたりさわりの無いバラエティ。
 まあ、番組の内容なんてきっとどうでもよかったのだろうけど。

「ねえ」

 郁乃の声。
 でも突然だったし、俺もちょっと眠かったので、それが俺への呼びかけであることを意識できなかった。
 
「あのさあ」
「なんだ?」 
「彼氏としては、こんなのでも可愛いって思うの?」
「こんなの?」

 郁乃は隣で寝ている『こんなの』をあごでしゃくった。
 指をさすのも面倒ってことか?
 あごでさされた『こんなの』は、いまだに微動だにすることなくお休みでいらっしゃる。
 よく寝てるなあしかし。

53:こたつにみかん(9/11)
08/10/20 21:58:22 TxImgiJx0
「彼女のみっともない本性を知って幻滅するっていうのは、恋愛によくあるパターンだと思うけど」

 彼女の妹は少しばかり意地の悪そうな口調でそう言った。
 こいつ、恋なんて知りもしないくせによく言うよ。
 まあしかしどこぞでよく聞く話ではある。
 俺はいまだにこたつにへばりついたまま微動だにしない俺の恋人をじっと観察した。
 ずっとねこけたせいで、彼女の髪はぐしゃぐしゃだった。
 しかもよだれでふやけた頬がこたつ板にはりついていた。
 古くさいどてらをきこんでぶくぶくに着膨れた俺の彼女は、こたつに突っ伏して実ににだらしない寝顔を浮べている。
 まあ常識的に言って、惨状ではある。
 だがしかしだ。
 
「幻滅するもなにも、最初っから愛佳はこんなもんだったぞ」

 俺はめんどくさそうに(実際めんどくさかった)そう答えた。
 愛佳の彼氏として半年ばかりの月日がたった。
 が、彼女が一筋縄ではいかない女の子だということは、なんとなく分かってきている。
 いまさらこんなことに動じる俺ではない。  

「なんっつーかさ、愛佳はこれでいいんだよ」
「そうかもね……」

 郁乃のそれはすこしばかり感心したような声だった。しかし、その上でどうでもよさそうな返事でもあった。
 どっちなんだよ。
 恋人の妹、というすこしばかりやっかいなポジションに立っているこの郁乃は実際面倒な奴だ。
 今日は少しばかり大人しいようだが、こいつには何度痛い目に遭わされたことか。
 いや、それにしても愛佳はぐっすりとよく寝てるなあ。

「しかしいつまで寝てるんだろうな」
「晩御飯まで」

 郁乃はあっさりとそう答えた。その返事には何の迷いも感じられなかった。うん、さすがは妹。 

54:名無しさんだよもん
08/10/20 21:59:05 8mJB8Pmi0
支援

55:こたつにみかん(10/11)
08/10/20 22:00:09 TxImgiJx0
 郁乃が言った通り、晩御飯の時間きっかりに愛佳は目覚めた。
 俺の姿を見るなり、言葉にもならない悲鳴を上げて二階に逃げこんでしまった。
 しばらくして降りてきたときには、髪もちゃんとしてデート向きの服を着ていた。でも遅いってば。 

「うー、どうして早く起こしてくれなかったの?!」

 そしてその後で愛佳が言った言葉がこの文句だぞ。 
 なんで俺が文句を言われなきゃならない。

「いやー、俺もまさか愛佳がこたつで寝てるとは思わなかったからさ。ちょっと動揺しちゃったんだよ。悪かった」
「うっ……」

 意地悪く返してやると、愛佳もさすがに黙り込んでしまう。
 だって、どう考えても悪いのは愛佳だしなあ。 


56:こたつにみかん(11/11)
08/10/20 22:00:44 TxImgiJx0
「あ、あのね。たかあきくん。あたしも家ではいつもこんなにだらしないわけじゃないんだよ。
 ね、郁乃、そうだよね?」

 追い詰められた愛佳は郁乃に助けを求めた。
 しかし妹はにべもなく首を横に振る。

「諦めなよお姉ちゃん。もう今更取り繕ったって、なんにも取り戻せないと思うよ」
「うー、そんなあ……」

 家族にさえ擁護してもらえず、追い詰められた愛佳はついに一言。

「う~~。こたつにみかんが載ってるからいけないんだよぉ~~」

 頭を抱えてうなだれながら、そう呟くのだった。
 なんだそりゃ。
 わかるようなわからんような言い訳をする愛佳のふてくされた顔を、俺は郁乃とふたり苦笑して見守るのだった。 
 やれやれ。
 こんな愛佳を彼女に選んだ俺としては、なけなしの貯金をはたいてでも家にこたつを用意しなければならないな。
 などとどうでもいいことを考えていた、ある秋の寒い一日。

 その後の俺と愛佳がどこかに出かけたのか、それとも三人仲良くこたつでぬくぬくとした時間を過ごしたのかは―
 まあ、ご想像にお任せしよう。
 かくして、小牧家はいつもどうり平和である。 


57:こたつにみかんの作者
08/10/20 22:01:51 TxImgiJx0
以上になります。
支援くださった方、どうもありがとうございます。

58:名無しさんだよもん
08/10/21 00:05:07 bDKosZXE0



59:名無しさんだよもん
08/10/21 01:48:50 patWHtBq0

なんかほのぼのまったりしてていいなぁ

60:名無しさんだよもん
08/10/21 08:40:24 64VbR17OO
>>57
実に乙。
実にハートフル。
ざっつ、ToHeartって感じでいいよいいよー。
堀炬燵ってホント極楽だもんな。愛佳でなくても出て来なくなるじゃろさw

61:名無しさんだよもん
08/10/21 20:50:00 q/ZHAiHV0
和むわ~

62:名無しさんだよもん
08/10/21 21:20:34 YqP1qVMh0
無意味に殺伐としたSSが減ってきていい感じだね。

63:名無しさんだよもん
08/10/21 23:57:16 OXxAooop0
>62
そこで「ほのぼのしたSSが増えてきていい感じだね」と言えないのが
世の中をマイナスにすることしか考えられない人間の哀しい性だねぇ

64:名無しさんだよもん
08/10/23 16:52:25 2XnZIuKL0
減ってきたって、そもそも殺伐としたSS落としてるのは最近じゃ約1名しかいなかったじゃん
>>62はそいつのこと念頭に置いてんだろ

65:名無しさんだよもん
08/10/23 21:46:42 /8UJQ+VV0
というか特に殺伐としたのってあった?全体的にハートフルだと思うんだけど。

66:名無しさんだよもん
08/10/23 23:26:46 O6ahh3rn0
あっただろ?俺キャラの人のとか。
叩かれたせいかここ最近は方向性変えたみたいだな。読点とか文体とかクセがあるから
誰だかすぐ判ったけどw

67:名無しさんだよもん
08/10/23 23:43:41 9sRLmSZg0
>>66
あの読点の多さはマジ読みにくいというか見苦しいね
スレ汚しだから投下しないで欲しい
だいたいさ、もうSS落とさないとか言ってなかった?

68:名無しさんだよもん
08/10/24 00:09:12 oN1Ba+yw0
またお子様が幼稚なこと言って騒いでるのか
見えない敵と戦いたいのなら脳内でやってくれんかね

69:名無しさんだよもん
08/10/24 02:22:22 yYiK0i560
荒れるとわかってて投下するんならそれは荒らしと同じ
自覚があるんだったらもう作品投下するべきではない

わかってんのか?ああ?

70:名無しさんだよもん
08/10/24 03:45:04 KaTFKFKjO
>>69
前半部分は、それなりに同意するが、最後の一行が余分
お前も荒らし変わらん
半年ROMれ

71:名無しさんだよもん
08/10/24 09:50:32 lqY29nr60
>>69
必死だねw
そもそも例の作者が投下してるってのが君達の勝手な決めつけでしょう?
「俺はちゃんとわかってるんだぜ(キリッ」とか言われても周りにはどうでもいいこと
妄想で他人を批判してるから幼稚だって言ってるんだけどね
例の作者であろうがなかろうが叩くのは問題を起こしてからでOK
他人を荒らし扱いする前に自分が荒らしだってことに気が付こうね^^

72:『雄二の光源氏大作戦』後編
08/10/24 19:50:59 Yv58y36Y0
>>7-16に貼らせて頂いた『雄二のト☆キ★メ☆キ♪光源氏大作戦!』の続きを投下します。

前回も書いた事ですが……本作品は「PS2版姫百合姉妹エンド」→「ADミルファエンド」更に「A
Dシルファエンド」をこなしている状態(珊瑚&瑠璃はレベル2.5くらい?イルファさんとシルファ
はレベル3、ミルファはレベル4。ステディはミルシルのみ)を想定しています。
新型メイドロボが登場しますので、オリキャラがお好きでない方はスルーして下さい。


73:『雄二の光源氏大作戦』後編(1/17)
08/10/24 19:53:13 Yv58y36Y0
 その日の放課後、俺は張替え予定の掲示物を携えて校内を一人、徘徊していた。
 いつもならこの手の外回りの雑用は先の生徒会から引き続いて今生徒会でも雑用係一号の雄二がやる
のが普通なのだが、ここ1週間の雄二ときたら舞い上がってしまって役に立たない。
 珊瑚ちゃんに頼んだ例の「リーナ」の仕上がりは順調らしく、先日「もうじき外にも出られるように
なるで、そしたら生徒会室に連れて行くで~」と言われてからというもの、昼休みも放課後も生徒会室
でワクテカしていやがる。
「まったく、生徒会長っていってもやっぱり実感わかないよなぁ……」
 というわけで、仕方なく今日のところは俺とミルファ(ちなみにミルファは生徒会雑用係2号である)
が手分けして外作業をやっていた。
 ……それにしてもやはり荷が重いよな。いくらタマ姉に「辛うじてでもまーりゃん先輩に対抗出来るのはタカ坊だけ」と唆されたと言っても引き受けるべきじゃなかったよなぁ。
「まぁ、愚痴を言っても始まらないか……」
 そんな事をぼんやり考えていたせいだろうか?
 俺が廊下を歩いていた小さな白い影に気が付かなかったのは。

          『雄二のト☆キ★メ☆キ♪光源氏大作戦!~後編~』

 ぼむっ!

 ん? 今何か蹴飛ばさなかったか? そんなに重いものではないようだったけど……
 それでも何か気になってきょろきょろと前方を見回すと。
「ね、猫!?」
 俺の前方数メートルに、白い猫(?)がよろよろと起き上がろうとしているのを発見した。
 って、何で校内に猫? まさか「はるみちゃんの猫」が戻ってきたとか??
「うわっ! うわっ! 大丈夫かい!?」
 慌てて駆け寄った俺だったが、
「ぬ、ぬいぐるみ???」
 そう、その猫はどう見てもぬいぐるみだった。
「動くぬいぐるみ……珊瑚ちゃんのロボット、だよな?」
 気付いててみればここはコンピューター室にも程近い。

74:『雄二の光源氏大作戦』後編(2/17)
08/10/24 19:56:04 Yv58y36Y0
 その猫型ロボットは何が起こったかわかっていないのか、おどおどと辺りを見回している。
 そして俺の姿を認めると、
「あ……」
 まるで怯える様に、じりじりと後ずさりながら震えはじめた。
 無理もない。いきなり知らない男に蹴飛ばされたのだから当たり前だ。
 ……それにクマ吉の例もある。もしかしたら女の子かもしれないじゃないか?
 そう考えた俺は極力驚かさないようにそっと荷物を置くと、極力身体を低くして目線を近付け、穏や
かに話しかけることにした。
「ごめんね、前をよく見ていなかった俺が悪かったね」
 この通り、と頭を下げる。
 珊瑚ちゃんの作る「友達」が人間と同じデリケートな心を持っているのはよくわかっているつもりだ。
 傷付けてしまった事をよく詫びたかったのだ。
 すると。
“ぽんぽん”と下げていた頭が優しくたたかれた。
 もふもふの肉球?なので妙にくすぐったい。
 顔を上げるとネコちゃんは何度もぷるぷると頭を振っている。
 なんとなく、“もういい”と言っている様な気がする?
「そうはいかないよ。いくらなんでも蹴飛ばしちゃうなんて、俺が俺を許せないよ」
 すると、ネコちゃんはじぃ~~っと俺を見つめると、“すりすり”と俺の手に頭をすり付けてきた。
 ……どうやら、許して貰えたみたいだ。
「大丈夫? どこも怪我はない?」
 そっとネコちゃんを抱き上げてたずねると、ネコちゃんはどこか嬉しそうにと頷いた。
 うん。良かった。さて……
「ところでキミは、珊瑚ちゃんのロボットだよね?」
“こくこく”
 やっぱり。……ん? この人間くささはまさか?
「え~~~っっと……もしかしてもしかしたら……リーナちゃん??」
“こくこくこくこく”
 なんとなく目を輝かせてリーナちゃんが頷く。
 やっぱりそうか……なんとなく普通のマスコットロボットじゃないと思ったんだよ。

75:『雄二の光源氏大作戦』後編(3/17)
08/10/24 19:58:59 Yv58y36Y0
「そっか。俺さ、キミのご主人様予定の向坂雄二の友達で、河野貴明っていうんだ。よろしくね?」
 しーーん
 あ、あれっ? リーナちゃんが固まってる?
 やべっ! やっぱりどこか壊れた?
「リーナちゃん? 大丈夫?」
 クマ吉と同じリモートコントロールなんだろうけど……わかっていてもやっぱり焦るものは焦る!
 こ、こういう時は……
「さ、珊瑚ちゃ~~んっ!!」
 俺は慌ててコンピューター室に向かって駆け出していた。

            ◇  ◇  ◇  ◇

「大丈夫や~。ちょっと一度にたくさんの情報が入ってフリーズしてただけや~」
 あの後、珊瑚ちゃんに少しシステムをチェックしてもらうと、リーナちゃんはすぐにまた動けるよう
になった。今は珊瑚ちゃんの腕に抱かれて生徒会室に向かう途中だったりする。
「だめやで~、り~な。まだまだ外に慣れてないんやから、冒険はもう少し落ち着いてからや」
「まったく、急にいなくなるからあせったで」
 珊瑚ちゃんの腕の中のリーナちゃんは、瑠璃ちゃんにも注意されて、少ししゅんとしてしまっている
ようだ。しっぽがなんとなく元気なさそうに揺れている。
「まぁまぁ。クマ吉もよくあっちこっちうろついてたじゃない? そういう人間らしさもDIAならで
 はなんでしょ?」
 あ、ぴくんとしっぽがはねた。
「まぁ、そらそうなんやけどな」
 どこか納得していない風の表情ではあったが、珊瑚ちゃんははにかむように微笑んだ。
「とりあえず、あとは雄二をマスター登録すればみっしょんこんぷりーとや~」
 ん? マスター登録?
 あれ? 確かDIAって……
「DIAはマスター登録がない、って聞いた様な気がするけど?」
「いっちゃんらにはあらへんよ? でも、量産機でそれはまずいやろ~いう話でな? り~なのOSに
 はマスターに対する“好意”を誘導するスクリプトが組まれてんねん」

76:『雄二の光源氏大作戦』後編(4/17)
08/10/24 20:03:28 Yv58y36Y0
 少し寂しそうな表情で珊瑚ちゃんはそう教えてくれた。
 そうか……量産機のリーナちゃんは、最初から「メイドロボ」なんだ……。
 あくまでロボット達とは友達でありたい彼女にとって、それは「鎖」に感じるんだろうな。
「そっか……。仕方のない事なんだろうけど、なんだかちょっと寂しいね」
 また少し、リーナちゃんのしっぽが揺れた気がした。

「やっほ~、雄二~。り~な連れてきたで~」
 さっきまでの沈んだ雰囲気は何処へやら、珊瑚ちゃんは元気良くリーナちゃんを掲げながら生徒会室
へと突入した。……もしかしたらあれは「るー」なのか?
「うほっ! 待ってましたよ珊瑚ちゃん! 愛しのリーナちゃんは……お、そのぬいぐるみだね?」
「あ、ダーリンお帰りー。掲示物の張り替え終わったよー、ほめてほめてー」
「わぁ~~、可愛い~~! このみにも抱かせて~~」
「相変わらず連れて来るのは女ばかりね」
 生徒会室には最近いつも詰めている雄二をはじめ、外回りを済ませたらしいミルファや、また書記に
なったこのみ、何故か会計監査の郁乃ちゃん(このみに引っ張り込まれた)ら、いつもの生徒会の面子
が集まっていた。
 副会長の小牧さん(郁乃ちゃんが生徒会入りする事になったら「空いてるポスト、なんでもいいです
から!」と言ってきたのでお願いした。おかげで根回し等がすごく楽)や会計の草壁さん(いつの間に
か「なら私は会計という事でいいですよ」と、イスに収まっていた)は見当たらないが……多分クラス
会かクラブ会との交渉だろう。そろそろ年末イベントの準備がはじまっている。
 会長は雑用か?とか、女ばっかだな?とかそういうツッコミはなしの方向で。
 ……どうせ既に「河野ハーレム」とか「小牧さん=かいちょー、河野=裏会長」とか言われてるよ。
 まぁ、そんな何かを解説する様な回想はさておき。
「ほならいくのん、パソコン借りるで~~」
「いくのん言うな。……また怪しい改造する気?」
「今日は改造ちゃう~。り~なのマスター登録するんや~」
 今日は、かよ。
 郁乃ちゃんもちょっと呆れたような顔をしたが、諦めているのかちょっと肩をすくめただけで何も言
わずに素直にパソコンを明け渡した。

77:『雄二の光源氏大作戦』後編(5/17)
08/10/24 20:06:41 Yv58y36Y0
 ちなみにこのパソコンは生徒会活動の為と言う名目でコンピューター室からパチって来たものだ。
 まぁ、もちろん役には立っているが、実質郁乃ちゃんと雄二のおもちゃ状態である。
「したら、いくで~」
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ…………
「おおっ、相変わらず見事なキーボード捌き」
 雄二が感心したようにつぶやく。
 ほんと、いつ見ても「眼にも止まらぬ」ブラインドタッチである。
 ものすごい勢いで幾つものウィンドウが開き、「何か」が進行している。
「あたりまえや。ウチのさんちゃんは天才やで」
 何故か瑠璃ちゃんが胸を張るのもいつもの事だ。
「このみぃ、そろそろり~な寄越してんか~」
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ…………
「はぁ~~い」
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
「瑠璃ちゃん、ケーブル取って」
「これやな? さんちゃん」
 固唾を呑んで成り行きを見守る一同の緊張をよそに、来栖川エレクトロニクスのコンピューターを呼
び出したらしい珊瑚ちゃんは、鼻歌交じりでリーナちゃんをコンピューターに繋いだ。
「マスター登録は無線で出来へんねん。ちゃんと有線で接続せんとあかんからホンマは雄二を研究所に
 連れていかなならんのやけど、ウチにかかれば……」
 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ
「よっしゃ、出来たでぇ。雄二、こっち来てり~なの前に座って~な」
「はいはい、っと」
 う~ん、なんとなくリーナちゃんは緊張しているみたいだなぁ。
 しっぽとかなんだか突っ張ってるみたいだよ。
「いよいよ俺の時代が来たって感じだな! 最新型の試作機のご主人様になれるなんて、男冥利に尽き
 るね。全く、持つべきものは真の友と書いて真友だ!」
 雄二の方はすでにめちゃくちゃ浮かれている。
 なんだかなぁ。
「うわっ。ちょっと引くわね……。マジでキモいわ」
 この件に関しては郁乃ちゃんの意見に全面的に賛成だな。

78:『雄二の光源氏大作戦』後編(6/17)
08/10/24 20:11:17 Yv58y36Y0
「そんなヘンな事言ってるとリーナに嫌われるよ~?」
 いつも冷ややかな郁乃ちゃんのみならずミルファにも引かれてる雄二って……。
 やはりヤツとの友情は考え直した方がいいのだろうか?
「大丈夫大丈夫。優しくするよ~、リーナちゃん」
 ……
「そういう事じゃないんだけどなぁ……」
 能天気な雄二の様子を見つめながら、ミルファがポツリとつぶやいた。
 う~~ん、この間もミルファはこの作戦に懐疑的だったけど、なんか気になるな。
「何か気になる事があるの?」
 なので、思い切って尋ねてみる事にした。するとミルファは、
「うーん、上手く言えないんだけど……私がそうだし、お姉ちゃんやひっきーも、誰かを“好き”と思
 う気持ちってすごく特別だから……リーナにも心があるなら、どうなのかなぁ~って」
 何度も首を捻って、やはり上手く説明出来ないようだった。
「好きと思う気持ちが心になる……みたいな事を言ってたね、そういえば」
 ちょっときょとんとするミルファ。
 ああ、そういえばそれを言っていたのは「はるみちゃん」だったかな?
「それ、はるみが言っていたの? ……でも確かによくわかるかな~」
 そりゃあ、はるみちゃんはキミだからねえ。
「うん、やっぱそこが気になるのかな。好きは思うものなのに、好きにする事なんて出来るのかな?」
 わかったようなわからないような……。
 でも確かに俺もちょっと不安になってきた。
 そんなに上手くいくのかな……。
 ……
「したら雄二、自己紹介してや~」
「お、おう。……はじめまして。俺が向坂雄二、キミのご主人様だよ~」
 そんな俺たちの不安をよそに。コンピュータのモニターに雄二の映像や声紋?が取り込まれ、目まぐ
るしくプログラムが流れていく。
 そして最後にゆっくりと、その一文が表示された。

『はじめまして、ご主人様。HMX-18diaリーナと申します。よろしくお願いいたします。』

79:『雄二の光源氏大作戦』後編(7/17)
08/10/24 20:16:17 Yv58y36Y0
               ◇  ◇  ◇  ◇

 リーナちゃんがやって来てから2週間ほどが過ぎた。

 最初はどうなる事かと思っていたが目立ったトラブルもなく、珊瑚ちゃんによると順調にデータも蓄
積されているとの事だった。
 雄二に対するリーナちゃんの『好意』にも特に問題は見られないらしい。
 正直雄二は舞い上がったままで見るに耐えないと思っていたが、実は案外上手くやっているのか?
“きーんこーんかーんこーん……”
「さて! 愛しいリーナちゃんと、愛をはぐくみますか!」
 放課後のベルが鳴るや、今日も雄二はいそいそとカバンを手にとって教室を駆け出していった。
 なんでも今日は色々とプレゼントを持ってきたらしい。
 昼休みはリーナちゃんは調整中とかで渡せなかったので、雄二は一日悶々としていたのだ。
「早く行ったところで珊瑚ちゃんたちが急いでくれるわけでもないのにな」
 誰へともなしにそんなコトをつぶやいていると、。
「それにしても向坂君、すごい荷物ですねー」
 さしもの小牧さんも呆れ顔である。
「なんかね~、リーナのボディが出来たら着せたい服とかを持ってきたみたいだよ~」
 ミルファはにやにやと笑っている。
 何故かリーナちゃんはミルファに対する懐き(ぱっと見猫のぬいぐるみにしか見えないから、そうい
う扱いでも仕方ないだろう?)が悪いためか、最近のミルファは心配するより生暖かく見守っていると
言う感じが強い。
 イルファさんやシルファちゃんとも色々トラぶるし、イルファさんとシルファちゃんの仲も良好とは
言えないし、DIA同士は色々相性に問題があるのだろうか?
「あら、ではメイド服とかでしょうか? ティータイムにでもちょっとお借りしてみたいですね」
 あいかわらず草壁さんはにこにこと能天気である。
 そういえばリーナちゃんは結構草壁さんには懐いているように見える。
 珊瑚ちゃんいわく、
「優季ねーちゃんは『お淑やかなお嬢様の鑑』みたいな感じがするで、見習いたいんちゃうか~?」
 という事らしいが……。

80:『雄二の光源氏大作戦』後編(8/17)
08/10/24 20:20:33 Yv58y36Y0
 まぁ、言わんとする事はわからないでもない。
 特にミルファあたりにも見習って欲しいと切に願うものである。
「……ダーリン、今何か失礼な事考えてなかった?」
「滅相もない」
 謂れなき疑惑?はノータイムで否定したが、ミルファはまだ横目で睨んできている。
 まったく、『女の勘』まで働くなんてDIAは高性能にもほどがあるよ、珊瑚ちゃん。
 や、やばい。どう言い逃れたものか……。
「と、とにかく生徒会室に行きましょうよ~」
 おそるおそる小牧さんがそう言い出してくれなかったら、思わず土下座してしまう所であった。

「タカ坊、これから生徒会?」
 生徒会の面々とともに廊下に出たところでタマ姉に呼び止められた。
 生徒会を引退したタマ姉は、朝や昼は行動を共にすることが多いが、さすがに放課後は進学の準備な
どを進めている。とはいえ図書館で勉強して帰りは一緒、などという事も珍しくないのだが。
「小牧さんと草壁さんもご苦労様」
「こんにちは、向坂先輩」
「こんにちは、向坂先輩。先輩はこれから図書館ですか?」
「私はご苦労様じゃないの~?」
「ミルファはタか坊と一緒にいたいだけでしょ? ……そのつもりだったんだけど、雄二が浮かれて妙
 なものを学校に持ってきたでしょう? それが心配になったから様子を見に来たの」
 あいかわらずミルファとタマ姉は仲がいいんだか悪いんだか……。
 どちらも「赤い人」だけあって下手につつくとぼうぼうに燃え上がるからなー、一人一人でさえ「火」
なのに、二人合わさると「炎」になるから厄介だ。
「……ダーリン、今何か失礼な事考えてたでしょ」
「奇遇ね、ミルファ。私もなんだかそんな気がしたの」
「め、滅相もない」
 断定かよ。勘弁してくれ。こんな時だけ息ぴったりですね、あんたら。
「まぁまぁ。早く生徒会室に行かないと~」
 ううっ、小牧さんが天使に見えるよ……。
「今日の仕事の段取りが終わったら、ゆっくり話し合ってくださいね♪」

81:『雄二の光源氏大作戦』後編(9/17)
08/10/24 20:24:26 Yv58y36Y0
 ブル~~タス!お前もか~~!?
「そうね。小牧さんの言うとおりだわ。……タカ坊、後で二人でゆっくり話し合いましょう」
 何故かそこで獲物を狙う豹のような目になるタマ姉である。
「あらあら、大変ですね、貴明さん」
 草壁さんに突き落とされたところで俺たち一行は生徒会室の前に辿り着いた。

 ……ん??

「お姉ちゃん? 何でこんなところに……」
 生徒会室の前には瑠璃ちゃんと、そして近未来的なメイド服に身を包んだ青いショートボブヘアの女
性……イルファさんが立っていた。
「あら、貴明さん、みなさん、こんにちは。……環様、ご無沙汰しております」
 そう言うとイルファさんは優雅に一礼した。
「久しぶりね、イルファ。元気にしていた?」
「ええ、おかげさまで。この度は妹までお世話になってしまい、申し訳ありませんでした」
 以前イルファさんが向坂家でテストを行って以来、イルファさんとタマ姉は本当に仲が良い。
 というか、これが理想的な主人とメイドロボの関係なんだろうな~~。
 ……これ以上思考を巡らすとまたミルファに睨まれそうなので、俺は物思いを中断して瑠璃ちゃんに
状況を尋ねてみる事にした。
「瑠璃ちゃん、どうしてイルファさんがここにいるの? 何か忘れ物とか?」
 我ながらアホな質問だとは思ったが、案の定瑠璃ちゃんに肩をすくめられてしまった。
「なにが悲ししゅうて放課後に忘れ物届けさせなあかんねん。……リーナが本体に同調出来たから、早
 速連れてきたんやて」
「「「ええっ?」」」
 あれっ?でも……
「ミルファの時は一度引き上げて、本体になるまでずいぶん時間かからなかった?」
「あれはミルファちゃんが色々ワガママを言ったり、暴れて壊れたり壊したりを繰り返していたからで
 すわ。リーナちゃんは大人しい子ですし、もともとフォーマットは出来ていましたから」
「お姉ちゃんっ!」
 あー、そういえばそんな話も聞いたような聞かないような。

82:『雄二の光源氏大作戦』後編(10/17)
08/10/24 20:27:38 Yv58y36Y0
「だ~~ってぇ~~」
 口を尖らせたミルファはぶつぶつとなにやら言い訳している。
「ダーリンは大きなおっぱいが好きだ、って言うし……」
 そこかよ。それはもういいよ。
 タマ姉は『ふふん』って感じで威張ってるし。
「やっぱりそうなんですね~。ミルファちゃんも向坂先輩も大きいですもんね~、胸」
「大丈夫ですよ。小牧さんも結構あるじゃないですか」
「草壁さんほどじゃないよぉ~~。草壁さんは元が細いからいいけど……」
 だから胸はもういいから……。
 っていうか何故こんなところでおっぱい談義をせねばならんのだ。
「そ、それはさておき、じゃあもうリーナちゃん来てるの? 生徒会室の中?」
「そうや~。今雄二に挨拶しとる。別に席外すほどの事でもないんやろうけど、なんとなくな」
 まぁ、気分はわからなくもない。
 不器用ながら、瑠璃ちゃんはとても優しいコなのだ。
 ……すると、廊下の騒ぎを聞きつけたのだろう。生徒会室の扉が開けられた。
「貴明~、みんな~、る~~♪」
「「「る、るー!」」」
「廊下でなにしとるん? 別に部屋に入ってもええのに。今、り~なが雄二に貰うたメイド服に着替え
 終わったトコや」
「ちょ、雄二ってば、目の前で着替えさせたの!?」
 珊瑚ちゃんはいつもの調子であっけらかんと放った言葉だったが、耳聡いタマ姉は瞬時に目の色を変
えた。……確かにこの生徒会は女子生徒が多いから着替え用のスクリーンはあるのだが……主にまの付
く先輩の盗撮対策に。
「せやかて、雄二やないとあんなビラビラしてパーツいっぱいある服、着せられへんもん」
 あああああ~~、タマ姉の怒りゲージが~~
「ふふふふっ……雄二ったら……」こきっこきっ
 雄二よ、線香くらいは上げてやるぞ。
 向坂の墓に入れるかどうかはわからんけど。

 ともあれ。ぞろぞろと生徒会室の中に入っていくと、

83:『雄二の光源氏大作戦』後編(11/17)
08/10/24 20:33:30 Yv58y36Y0
「やっぱりよく似合うね~~」
「……恐れ入ります。ご主人様」
 そこには思い切り鼻の下を伸ばしまくった雄二と、黒を基調にした、スカートが短めだからフレンチ
タイプ……だったかな?のメイド服に身を包み、黒いロングヘアが印象的な楚々とした佇まいのメイド
ロボが背を見せて立っていた。
「いいよいいよ~~。……お、みんな来たみたいだな。ど~~だ貴明、羨ましいだろ~~」
 その言葉にゆっくり振り返ったメイドロボちゃんは……
 黒くてストレートのロングヘア、濃い緑色の瞳の、切れ長の眼が印象的な落ち着いた感じのする顔立
ちに、小振りなイヤーバイザーが付いている。顔やスタイルのバランスは似ているが、背はイルファさ
んたちよりも少し高めのようだ。微妙にタマ姉に似ているような気がするが……まぁ、雄二の好みを総
合するとまんまタマ姉だからなぁ。
「なんだか向坂先輩に似てません?」
 早速草壁さんに突っ込まれているよ。
「雄二の好みどおりにしたんやでぇ~?」
「ゆ、雄二……あなた……」
 タマ姉もノリがいいなぁ、最近。
「んなわけねーだろ! ……おい、そんな目で俺を見るな! つか全然違うだろうが!!」
 みんなにじっとりとした視線を向けられてさすがの雄二もジタバタしている。
 けっ、ざまーみろ。俺もいつもそんな想いしてんだよ。
 それにしても雄二には似て見えないんだろうな。不思議なもんだ。
「ふわ~~、これがリーナちゃん……きれい~~」
 ともあれ、総合すると小牧さんのこの呟きが一番しっくり来る感想ではあるのだが。
 そうして再び皆の注目が集まったところで、リーナちゃんは一歩前に出ると優雅にお辞儀をした。
「改めてはじめまして、と申し上げた方がよろしいでしょうか。HMX-18dia、リーナと申しま
 す。今後ともよろしくお願いいたします」
 そして更に、
「小牧様。いつも可愛がって頂いてありがとうございました。ご主人様ともども、これからもよろしく
 お願いします」
「はっ! はいっ! こ、こちらこそどうじょよろしく~~」
 丁寧に一人ひとりに挨拶をする気のようだ。うわー、出来た子だなー。

84:『雄二の光源氏大作戦』後編(12/17)
08/10/24 20:38:14 Yv58y36Y0
 ……どうでもいいけど小牧さん、噛んでるよ。
「草壁様。ようやくこの姿でお目にかかることが出来ました。色々教えていただきたく思いますので、
 よろしくお願いします」
「ええ。まずは一緒にお茶でも淹れましょうね」
「光栄です」
 ああ、やっぱり草壁さんに憧れてるってホントだったんだ。
 草壁さんもまんざらではない様子でにっこり微笑んでいる。
「環様。イルファ姉さまに続いてしまって申し訳ありませんが、よろしくお引き回し下さい」
 そしてリーナちゃんはタマ姉の前で深々と頭を下げた。
 その様子にそれまでは表情を強張らせていたタマ姉もようやく顔をほころばせた。
「私の方こそよろしくね、リーナ。それより雄二のワガママに付き合わせちゃって申し訳なかったわ。
 変な要求なんか突っぱねちゃっていいんだからね? 私が許すから」
「……そう、なんですか?」
 んん?
「当たり前よ。特に夜は、姫百合さんの所でも研究所でも戻っていいから」
「おいおい、姉貴ぃ~~」
 リーナちゃんは真剣に何かを考え込んでいるようだ。
「わかりました。がんばりますので、色々教えて下さい」
「よし。みっちり、仕込んであげるわね」
 どうやらこの二人は上手くいきそうだ。
 まぁ、あまり心配はしていなかったけどね。
 次にリーナちゃんは……
「リーナってば、私はシカトなの?」
「ミルファ姉さまには何度かお目にかかっていると思うのですが……」
 あれ? なんかバチバチって……
 っていうかミルファがじりじりと俺とリーナちゃんの前に移動している。
「リーナ……あんたやっぱり……」
 え? リーナちゃんにじっと見られているような……やっぱりって……
「貴明様……」
「は、はいっ!?」

85:『雄二の光源氏大作戦』後編(13/17)
08/10/24 20:43:12 Yv58y36Y0
 それまでの控えめな声音とは打って変わったリーナちゃんの声に、ついつい俺の返事は裏返っていた。
 なんというか、すごく背中がむずむずする。
「やっとこの姿で御目文字が叶いました……」
「リーナ、ちょっと待ち……うわわわ、お姉ちゃん!なにするのよぅ~~?」
「はいはい、ミルファちゃんはこっちに来ましょうね~~♪」
 うわ、イルファさんすごいいい笑顔だ(汗)
 じたばたしながら引き摺られていくミルファを尻目に、リーナちゃんはすっと俺の前に進み出てきた。
 それにしてもこの雰囲気はなんなんでしょうか……。なんか周囲のみんなも固まってるし……。
「初めてお会いした時からずっとお慕い申し上げておりました……」
 う、うえぇぇぇっ!?
「「「えええぇぇ~~っ!?」」」
「貴明様はずっと私をただのロボットではなく、一人の女の子として扱って下さいました。そんな貴明
 様に良く思われたい、褒めていただきたい……そんな気持ちが私の中で日に日に大きくなっていきま
 した……」
 コノコハ、ナニヲイッテイルノダロウ……
「この身はご主人様にお仕えする一介のメイドロボに過ぎませんが、暖かい気持ちを、人を愛する心を
 下さったのは貴明様です……」
 ア、ユウジガマッシロニモエツキテイルヨ?
「貴明様に愛して頂けるミルファ姉さまが羨ましい……貴明様にお仕え出来るシルファ姉さまが羨まし
 い……でも私はご主人様の物。草葉の陰で、貴明様の想い出をよすがに生きていく他ないと思ってお
 りましたが……」
 クサバノカゲッテアナタ、ユウレイジャアルマイニ。
「せめて、せめてこの気持ちだけでもお伝え出来れば本望と思っておりましたが、環様が通いでも良い
 と仰って下さるなら、是非、是非私も貴明様の妻の末席にお加え下さいっ!!」


 …………はっ! お、俺は今なにを聞いた!?
「貴明さすがや~~。メイドロボキラーや~~♪」
「あんたミルファやシルファだけでは飽き足らず、リーナまでかいな……」
「うわぁ~~~ん!! ダメダメダメっ!! もうダーリンの妻の席はいっぱいなのぉ~~っ!」

86:中の人
08/10/24 20:51:19 4la7kdG/O
ついにさるさんにタイーホされました……。
ほとぼりが冷めた頃に再び続きを投下いたします。

87:名無しさんだよもん
08/10/24 21:14:34 TmoR0PYd0
wktk

88:名無しさんだよもん
08/10/24 21:39:26 tv44fdBX0
なんか雄二涙目→ダッシュ フラグがビンビン立ちまくってる予感。

89:『雄二の光源氏大作戦』後編(14/17)
08/10/24 22:06:15 Yv58y36Y0
「仕方ないですわね。リーナちゃんが粗相をしないように私も一緒に貴明さんの寝所に……」
「それはもっとダメ~~っ!!」
「こ、河野くん……まるで人間磁石……磁石だけにロボがよくくっつく……」
「お姉ちゃん、それちっとも上手くないから」
「貴明さんってばもう……第一夫人の座はまだ空いてるみたいですからいいですけど……」
「本妻の座はわたさへんで~~♪」
「このみもこのみも~~♪」
「さんちゃんアカンっ! ヘンタイがうつるっ!」
「みんなダメぇ~~っ!!」
 な、なんか、阿鼻叫喚の地獄絵図??
 いつの間にやってきたのかこのみや郁乃ちゃんも加わり、生徒会室は混沌の坩堝と化していた。
「ちょ、何故こんな事に……ってあだだだだだっ!姉貴っ!ぎぶっぎぶつ!!」ぎりぎり……
「ゆ・う・じぃ~~。アンタが余計な事ばっかするから……」みしみしみし……
 うわ~~、なんかいつもより歪んでないか?頭蓋骨的に。
「歪むっ!砕けてしまいます~~……がくっ」ばきっ!ぽいっ
「ど~~だ雄二、羨ましいだろ~~」
 うわ、郁乃ちゃん。それは容赦なさすぎだよ……?
「ふんっ! 使えない弟ね。……リーナぁ? メイドは年中無休、24時間営業よね~~?」
 お姉さま……なんかすごい音がしましたよ?
 それ、一応あなた様の弟なんですが……。
「そ、そんなぁっ!?」がーーーーーーーーーーん!
 うわぁい、リーナちゃんの後ろにでっかい効果音が見える。
「おんやぁ~、タマちゃん。一度口にした言葉を違えるのかにゃぁ~?」
 げげっ、いつの間にか窓枠にまーりゃん先輩!?
「ま、まーりゃん先輩……」
「ほれ、ぽちっとな。『……特に夜は、姫百合さんの所でも研究所でも戻っていいから』」
 おいおい、いつから聞いてたんですか、アンタは。レコーダーまで仕込んで……。
「うううっ……」
 畳みかける様にまーりゃん先輩はタマ姉ににじり寄る。

90:名無しさんだよもん
08/10/24 22:08:10 KjUW+bGv0
支援

91:『雄二の光源氏大作戦』後編(15/17)
08/10/24 22:10:07 Yv58y36Y0
「向坂の家は武士の末って言ってたよな~、タマちゃん?『……変な要求なんか突っぱねちゃっていい
 んだからね? 私が許すから』」
「それは雄二が変な事を……」
「武士に二言は~~??」
「ぅあ、ありません……」
 すげー、タマ姉が言いくるめられてる。
 ……って、感心してる場合じゃないし!?
「うししっ、良かったのう、り~な。タマちゃんのお許しが出たぞえ?」
「はいっ! ありがとうございました! えっと……あなた様は……」
「うむ。まー神様とあがめたまへ」


 まぁなにはともあれ。
 何とか生徒会活動を終え(まーりゃん先輩に妨害されて大変だったが)、姫百合家と幼馴染一同は俺
の家に集まって来ていた。
「まぁ、リーナちゃんがそう言うんじゃ仕方ないよね~~。とほほほ……」
「申し訳ありません、ご主人様。精一杯お仕えしますので、お許し下さい」
 とりあえずリーナちゃんの希望通り(?)、彼女は雄二のメイドロボとして向坂家に仕えつつ、人間
のメイドさんと同じようにに休みを貰ってプライベートは自由に行動する事に決まったようだ。
「それにしても例のスクリプトは働かなかったの?」
 そう珊瑚ちゃんに尋ねてみると、
「ちゃんと働いとるで? リーナ、雄二にもちゃんと懐いとるやないか」
 きょとんとした顔でそんなコトを答えられた。
 でもそれなのに他の男に恋をするなんて、ねえ?
「好意と恋は違うってことだよ、ダーリン」
 するとミルファがしたり顔で答えた。
「ぷぷぷっ。おぽんちのくせにウマい事を言ったつもりれすか?」
「うっさいわね、根暗ロボ」
 そこにシルファちゃんが飲み物を持って現れ、すかさず茶々を入れた。
「二人ともいがみあわないで……で、どういう事?」

92:『雄二の光源氏大作戦』後編(16/17)
08/10/24 22:13:40 Yv58y36Y0
 ミルファに話を振りなおすと、彼女はう~~んと首を捻りながら説明してくれた。
「言葉通りなんだけど……それになんて言うかな、ダーリンもゆーじくんも優しいのは一緒なんだけど、
 受ける印象は全然違うんだよね。ゆーじくんに好意は持てるけど恋にはならない、ダーリンには恋せ
 ずにはいられないって気持ちは、わからなくもないかなぁ?」
 見ると、シルファちゃんもその言葉にうんうんと頷いている。
「ゆーじがシルファやリナリナを見る目はめいろろぼを、可愛いとは思われているみたいらけろ、やっ
 ぱりお人形さんを見る目れす」
 言葉を繋いだシルファちゃんは、ちょっと苦しそうに「お人形さん」と言った。
「れも、ご主人様がシルファたちを見る目は女の子を見る目れす。多分ミルミルもリナリナもそれがう
 れしいんらと思います。シ、シルファも、ご主人様にそんな風な目れ見られるのが……すごく、すご
 く嬉しいんれす。らから……」
 シルファちゃんはつっかえながらも、最後は熱っぽい瞳で力強く言い切った。
「らから、シルファはご主人様に恋をしたんれす」
 あ~~。嬉しいんだけど、みんなの前でそういうセリフはちょっと照れるかな……。
「うんうん、わかるわかる~~。いつもはムカつくけど、今日はシルファが可愛く見える~~」
 ぐっと拳を握り締めてミルファが、
「そうっ! そうなんですよ! やっぱり姉さま方も同じ気持ちだったんですね!」
 身を乗り出してリーナちゃんがその言葉に同意する。
「ミルミルぅ~~! リナリナぁ~~!」
 なんだかミルファとシルファちゃんとリーナちゃんは妙に意気投合したらしく、呆然とする俺の横で
がっしりと抱き合っている。
 ……イルファさんもなんだか頬を赤らめてくねくねしてる?
「これは……いい話、なのかしらね?」
「あはは……とりあえずこのみはちょっとうるっと来ちゃったかな」
「このみは単純やなぁ」
「みんならぶらぶで、ハッピーエンドや~♪」
「……俺はハッピーじゃないやい。結局貴明のヤツの当て馬になっただけじゃねーか」
 いじいじと不貞腐れる雄二。
 ま、そう言うな雄二よ。賭けてもいいが、きっと俺にとってもあまりハッピーエンドじゃないから。

93:『雄二の光源氏大作戦』後編(17/17)
08/10/24 22:17:46 Yv58y36Y0

 それからというもの……

 ぴんぽーん
『ダーリーン♪ 朝だよ~~。今日はお休みだよ~~、一緒に遊ぼうよぅ~~』
『また懲りずに現れたれすね、ミルミルっ! 今日のご主人様はシルファとお買い物に行く予定なんれ
 す! おぽんちめいろろぼと遊んれる暇はないれすよっ!』
『なんですってぇ~~!? あんたはいつも一緒にいるじゃない。今日は私が一緒にいるの!』
 どかーん!がしゃーん!
 ああ、何が起こってるんだろうなぁ……。
 がらがら。
 おや? 窓が開いたぞ?
「おはようございます、貴明様。昨日環様からお給金を頂いたのですが……いつもお世話になっている
 お礼にお食事にでもまいりませんか? ホテルのラウンジなど、この季節気持ちいいですよ?」
『むっ! ご主人様の部屋に正体不明の熱源1れす!』
『な、なんですってぇ! ……さてはリーナ!』
 うわー、何が仕掛けてあるんだろー、この部屋……。
「ちっ、気付かれたようですね。貴明様、さ、お早く」
「そうはいくかぁ~~!!」
「クセモノ~~!!」

 頼む……平和な休日をギブミー。
 こうして今週も河野家の日曜日は騒がしく始まり、暮れていくのだった。
 こんなでも、雄二は羨ましいって言うんだろうなぁ……orz

                  ~~終わり~~

94:中の人
08/10/24 22:42:35 Yv58y36Y0
以上で終わりになります。
支援、ありがとうございました。

ちょっとキャラクター出し過ぎてごちゃごちゃしちゃったかなーと反省しきり。
次はもっと落ち着いた作品を書きたいものです。

>>88
そりゃまぁ、雄二涙目はお約束でしょう??

95:名無しさんだよもん
08/10/24 22:42:53 /Q1nPGKe0
超乙!
おいしくいただきました。

同じようなオリキャラでも、例の奴とはレベル違うよねぇ~
全然嫌味も違和感もなかったし
次回作も期待しますよ~

96:名無しさんだよもん
08/10/24 23:05:07 pk16hrQM0
>>95
折角の良作投下なのに、あんな糞作家引きあいにすんなよ…

ともあれ>>94氏乙
すげー面白かった

97:名無しさんだよもん
08/10/24 23:06:31 ZDp4yG0y0
>>94
乙乙

イイヨイイヨ

98:名無しさんだよもん
08/10/24 23:32:26 uV76eOHI0
オリキャラ出した時点で同レベルだろ

99:名無しさんだよもん
08/10/25 01:15:53 3FKhz1940
オリキャラよりまーりゃん先輩が出てくるとつまらないってことは分かった

100:名無しさんだよもん
08/10/25 01:21:31 r/dIDrlu0
ADの再現率は高いのに、ADの再現率が高いと貴明その他が気持ち悪いってのは
もう作家さんの書き方とかの問題じゃないよなあ、コレw

101:名無しさんだよもん
08/10/25 06:27:39 cpsdsbMR0
超乙

102:名無しさんだよもん
08/10/25 10:28:18 //8mASAD0
ちょい質問。

オリキャラを嫌う理由を教えてくれない?
オリキャラだらけってのならともかく、納得いく内容なら、面白ければ何でも良いんじゃない?

103:名無しさんだよもん
08/10/25 11:00:52 4JSlXwUu0
納得いく内容じゃない、面白くない。
それってオリキャラ以前にSSがつまらないだけじゃん。

オリキャラを出す是非については、面白さとは別の話をすべきだよ。
つまらないから出してはいけない、面白いなら出して良いなんて主観の話をしても意味ないでしょ。

104:名無しさんだよもん
08/10/25 11:06:52 //8mASAD0
>>103
そうじゃなくてさ、一般論としてオリキャラを嫌う人、って多いでしょ?
そこを聞きたいんだって。
オリキャラが出た時点でダメ、って>>98が言ってるでしょ。
オリキャラが出た時点で本当にダメなのかなーと思ったわけさ。

105:名無しさんだよもん
08/10/25 11:20:07 bf1PGgOF0
二次創作の中に、書いている作者個人を直接または半直接的に感じ取れてしまうものがあると、
とたんにその版権世界から現実に引き戻され、幻滅してしまう
作者個人の願望や実体験をへたくそモロに書くこともしかり
もし、ものすごく上手い人で、
そんな個の気配を微塵も感じさせないSSに仕上げられるなら、
またはオリキャラそのものをプロットにおいて強力な武器にできるなら、
もしくは、神や職人とあがめられオフラインでも名が通ってお遊びを赦される人ならともかく、
それほど腕に自信がない人(=ネット以外では書けない人)は、
どうしてもここでエキストラ要員が必要という場合以外、
オリキャラの使用はハナから捨てておいたほうがいい

106:名無しさんだよもん
08/10/25 11:23:04 4JSlXwUu0
>>104
>>98は別にダメっていってないんじゃね?
オリキャラだしたという時点で同レベルだとしかいってないし。
>>95が「作家として上だ」みたいなこといってたからそれに対する批判なんじゃないの?

一般論として嫌う人が多い理由ねえ。
たとえば、読みに来る人は作家のオリキャラが出張ってるSSじゃなくて原作の作品のキャラのSSだから、とか。
あとは、二次創作は原作をリスペクトして作る物だと考えている人には、オリキャラは原作を汚す行為とも言える、とかかね?
まあ人によっていろいろあると思うけど、
逆に、出してもいいと思える人は、どういう考えでオリキャラを出してもいいと思っているのか聞いてみたいな。

107:名無しさんだよもん
08/10/25 11:38:27 //8mASAD0
>>105
ふむ。納得のいく理由だね。

>>106
結局そこに尽きるわけなんだろうな<原作キャラのSSが読みたい
汚すとか言われてもそこはなんとも言えんけど。

書いてる人間は、色々同機はあるだろうけど基本的には書きたくい事を垂れ流してるだけだからね。
何故出していいと思っているかと聞かれても正直戸惑う。
出していいも悪いも勝手に出てくるんだもん、ってところかな?

108:名無しさんだよもん
08/10/25 13:08:11 r/dIDrlu0
結局、読者装ってオリキャラ肯定してる作者だったのかw

俺は正直オリキャラ出ようが出まいがどーでもいいんだけどさあ
94さんのSSに関しちゃ、オリキャラのリーナ?よりそれ以外の設定の方が引っかかるかな
貴明生徒会長とか愛佳郁乃優季が生徒会メンバー入りしてるとか
前提となってる設定が脳内、しかも作中でダラダラと説明加えるのがキッツイw
まぁこのSSがコレで終わるならまだマシだけど、同設定でコレの続編とか書かれるとアウトだわ~

109:名無しさんだよもん
08/10/25 13:21:24 4JSlXwUu0
>>107
読者としての疑問かと思ってたけど作家かよ。
実力がなくつまらないSS書いてる人がオリキャラ肯定を叫んでも無意味。
実際の作品でありと思わせるしかない。
読者としてなら作家をバカにしすぎ。考え無しに出てくるから出してるって作家をなんだと思ってるんだよ。

110:名無しさんだよもん
08/10/25 15:12:03 3hlC6KPtO
>>108&>>109
ちなみに他の作家だけど作者じゃない。
しかしそんなに作者が反応するのが嫌いかねえw?

111:名無しさんだよもん
08/10/25 16:42:18 +CgzkG2HO
>>110
エロパロ板のss読み控え室見て来い。書き手として書き込むのは禁止だ。

つまり、そういうことなんじゃないのか?

112:名無しさんだよもん
08/10/25 19:35:57 mr2ziuLM0
今からSSを投稿します。
いわゆる卒業式SSです。時期はずれかとは思いますが。
本編は19レスの予定。
恐らく規制にかかると思いますので、投稿の停止はご容赦下さい。



113:河野貴明の卒業式1/19
08/10/25 19:37:59 mr2ziuLM0
それは記念すべきその日に相応しい言えるほど、よく晴れた空の下で。
 俺はその日、少しばかり早起きして一人学校へと向かった。
 その行為に別に深い意味は無い。
 ただなんとなく、その日は少し早く目を覚ましてしまっただけだ。
 別に卒業を控えてセンチメンタルな気分になって、なんとなくひとりで登校してみたくなった……
などという心境ではなかった。はずだ。

「おはよ」
「で、お前がなんでここに居る?」

 そして。
 何故だか校門の前で不機嫌を絵に描いたような表情を浮べて立っていたのは、半年前まで車椅子登校していた少女。
 愛佳の妹。口の悪い下級生。

「あたし、卒業生にこれを渡す係」

 これ。と言って郁乃が捧げたその手には卒業生の胸を飾る小さな花飾り。
 きっと卒業生が式に参加するにあたって、身に着けておくものだろう。 
 そんなものを郁乃が卒業生に手渡しするなんて。
 はっきり言って意外だった。

「お前がよくそんな係を引き受けたもんだな」
「ジャンケンで負けたから」
「うへえ」

 実に嘆かわしい。卒業生を見送る係がジャンケンで決定かよ。
 卒業する身として、これは感慨もわびさびもあったものではないな。
 とはいえこれも時代の流れか。
 こんな面倒なだけの役目を喜んで引き受けてくれるような可愛い後輩は、もはや絶滅寸前だろうな。
なんだか無性に悔しい俺だった。


114:河野貴明の卒業式2/19
08/10/25 19:38:37 mr2ziuLM0
「よし。せっかくだから、お前がそれを俺の胸元に着けてくれ」
「えー」

 なんだよ。そんな露骨に嫌そうな顔するなよ。
 だが『なんであたしがそんなこと……』とぶつぶつ言いながらも、いちおう郁乃は俺の希望を聞いてくれた。

「胸を針で刺さないでくれよ」
「じゃあ動かないでよね」

 少しばかりの時間をかけて、女の子の小さな手が胸元に花を飾る。
 花飾りは桜の花びらをあしらった素朴なものだった。
 ふと家から学校へと続く路に並ぶ美しい桜並木を思い出す。
 うん、これは卒業には相応しいかもしれないな。  
 そう思うと俺も少しばかり気分は良かった。

「なあ。お前から卒業するセンパイになにか送る言葉はないのか?」
「……」

 郁乃は少し黙ったあと、

「二度とくるな、馬鹿」

 と、一言だけ言った。



115:河野貴明の卒業式3/19
08/10/25 19:39:14 mr2ziuLM0
 郁乃と別れて俺は校舎の方へと歩き出す。
 朝の早い学校は静かだった。
 この学校を生徒として歩く時間は今日が最後だろう。
 しかし、こうして一人校内を歩いてみても、その実感はほとんどない。
 当たり前だが、毎日普通に登校して見てきたこの景色はいつもとまったく変わるところはない。
 俺が体育の時間に走ってきたグランドも、昼休みにジュースを買っていた自販機もいつもと同じ姿でそこにある。
 明日も、あさっても、これからもずっとそこで走ったり、飲み物を選んだりしている自分の姿しか思い浮かばない。
   
 でも現実は違う。
 今日、俺はこの学校を卒業する。
 そして、春にはこの街を出て地方の大学に進学することが既に決まっていた。
小さな頃から生まれ育ったこの街を、俺はもうすぐ出て行く。出て行かなければならない。
 ……さて、そろそろ体育館に行こうかな。もうすぐ卒業式も始まるだろう。

116:河野貴明の卒業式4/19
08/10/25 19:39:51 mr2ziuLM0
「ふう……」  
 
 卒業式を終えて人の列と共に体育館から出てきた俺の口から漏れたのはさめた溜息。
 式はあくびが出るほど退屈で、特に校長先生の長いお話は今日も健在だ。別の意味で泣けた。
 あんたは何年校長やってんだよ、と言いたくもなるな。
 大事な生徒を送り出すっていうのに、あんな形式どうりの言葉だけでいいもんかね。
 でも、あれで泣いてる女の子もいたみたいだな。
 あんな式で泣けるとか。全然分からんなあ。
 
「でも、それも違うのかな……」

 俺は今まで卒業式で泣いたことは無い。
 小学生のときも中学生のときもそうだったな。校歌とか君が代とか、わりとどうでもよかったし。
 つまり俺自身がそういう人間だということなんだろう。
式がどうとか、思い出がどうとか、そんなことは多分関係が無い。

 けどどうしようか。このまま何事も無く家に帰るっていうのもなんとなくわびしいもんだな。
 一応、今日が最後なわけだし。

「貴明ー! 卒業記念にみんなでラーメン食いにいくけど、お前も来いよ!」

 少しばかり遠くで騒いでいた集団が俺の名を呼んだ。
 なんでそれが卒業記念なんだよ、と思わなくもなかったが。でも悪くはないか。
 まあ他にすることも無いし、それでいいかなとも思った。
 連中に手を挙げて応えようとしたその時。 

「待ってくれ!」

117:河野貴明の卒業式5/19
08/10/25 19:46:00 mr2ziuLM0
 そのとき、不意に聞きなれた声が俺を呼び止める。
 
「雄二?」

 振り向くと、長く見慣れた―だがここ数ヶ月は見かけなかった幼馴染の姿がそこにあった。

「雄二。お前卒業式にも出てなかったのか?」
「ああ。今さっきここに着いたとこだ。式にもなんとか出たかったけど……
 やっぱ無理だった。なにしろ時間が無くてな」

 お前そこまで忙しいのかよ、と内心不満に思わなくもなかったが俺は口には出さなかった。
 雄二が本当に忙しいのは事実なのだろう。
 ただなんとなく納得出来ないだけだ。
 ちいさな頃からずっと一緒だった幼馴染の雄二が、卒業式に出られないとか。

「今日も来ないのかと思ったぞ」
「無理言ってなんとか抜けてきたんだ。でもすぐ帰らなきゃな」
「マジかよ……」

 とんでもない忙しさだ。
 これが本当に雄二の生活だなんて、どうにも信じる気になれない。

「とにかく貴明、大事な話があるんだ。ちょっと屋上へ行こうぜ」
「あ、ああ」

 それははっきりとした口調だった。
 反論する余地はなく、その勢いに俺は頷かされる。
 いつになく、押しの強い雄二がそこにいた。


118:名無しさんだよもん
08/10/25 19:59:36 oXlm8W490
支援

119:河野貴明の卒業式6/19
08/10/25 20:09:29 mr2ziuLM0
 雄二と上がった屋上には、俺達二人以外にだれもいなかった。
 なにしろ卒業式の後だ。今更わざわざ屋上に昇る奴は滅多に居ない。
 つまり、雄二はだれも来ない場所で俺と話したかったということだろうと、改めて気が付いた。

 何故、この男がずっと学校に顔を見せなかったのか。
 実は俺達の中で一番早く卒業後の進路を決めたのがこの雄二だった。

 それは俺達が三年生になったばかりのある日のことだ―

『向坂家の長男として、事業を継ぐことにしたんだ』
 
 雄二がそう言った時、俺も心底驚いたものだ。
 それは雄二が一番嫌がっていた道だったからだ。

『なんでだ? お前は家を継ぐのだけは絶対イヤだって言ってたじゃないか』
『上手く言えないけどさ。ホントはイヤじゃなくて、俺には無理だって思ってたんだ。
 でも家出した姉貴とか見てると、そんなこと言ってる場合じゃないって思えてきてな』

 雄二が言ったように、タマ姉は雄二とは逆に向坂家とは絶縁して一人自立した道を歩んでいる。
 自分でバイトして生活費を稼ぎながら、奨学金を貰って大学に通っているらしい。
 きっとハンパじゃないほど毎日が忙しいのだろう。
 この街を離れて以来、俺達にもほとんど連絡は無い。

120:河野貴明の卒業式7/19
08/10/25 20:10:12 mr2ziuLM0
『姉貴は誰にも頼らず、自分の力だけで何かを掴もうとしてるんだろうな。
 まあ、姉貴だったら出来るかもしれないけど、俺にはそんな真似できそうにないし。
 でも御曹司っていうのは、俺が持ってるすごいチャンスには違いないからな。
 俺みたいな凡才は、チャンスがある時には頑張っておかないと、後で後悔するんだよな』
『……うん』

 そんな雄二の言葉にその場は頷いてみせた俺だけど、本当はそんな気持ちさっぱり分からない。
 いつもだらけていてやる気のなさそうだった雄二に、なんだか置いていかれたような気がした。
 いや、『気がする』じゃないだろうな。
 こうして決意を持った雄二は、間違いなく俺の先を進んでいると思った。
 そして雄二は進路を決めたその次の日から、ほとんど学校に来なくなった。
 だから今日こうして会えるのも、ほんとうに久しぶりということになる。

 その、やたら忙しいはずである雄二だが、何故かさっきから黙ったまま屋上から見える景色をずっと眺めていた。

「仕事、どうなんだ?」 

 何を話していいのか分からなかったので、俺は一番気になっていたことを雄二に聞いた。

「仕事ってほどのことはまだ出来ないさ。とにかく修行中だよ。研修とか、勉強とか」
「これからどこ行くんだ?東京か?」
「ああ。東京の本社。その後はアメリカ。半年くらいは家に帰れないってさ」
「……」 

 そうか、と頷くことさえ出来なかった。
 俺はといえば四月から大学生。まだ社会人の経験すらない
 それに比べて大会社の御曹司として将来重大な役目を担うかもしれない雄二が、今どんな苦労をしているのか。
 はっきり言って、俺には想像もつかない。 


121:河野貴明の卒業式8/19
08/10/25 20:11:41 mr2ziuLM0
「半年は……長いよな」

 それだけ言うのがやっとだった。

「ああ、でも本音を言えばそこまで俺の神経が持たないかも。
 それよりも途中で失格だって言われるのが先かもな。
 御曹司っていっても、最低限の仕事も出来ない奴はいらないって親父にも言われてるし。
「……厳しいな」  

 そう話している最中にも、ちらりと腕時計に目を走らせる。
 その面影がいかにも社会人、という感じで。
 なんかこう、俺の気持ちがざわついてしまう。

「まあ、やってみるさ。それしかないもんな」
「……」

 絶句するしかなかった。
 なんだよこれ。
 こんな雄二に俺は何て言ったらいいんだろう?
 頑張れよ、とか? すげえよ、とか。  
 だめだなあ。
 どんな言葉もすごく軽い気がして。

「おいおい。なんて顔してんだよ、貴明」

 だがそんな言葉と共に、俺は不意に肩を叩かれた。
 もちろん、雄二にだ。

122:河野貴明の卒業式9/19
08/10/25 20:13:02 mr2ziuLM0
「俺は、ちゃんと半年たったら帰ってくるさ。
 いままで俺とお前、十八年も付き合ってきた仲じゃねえか。
 それに比べたらたった半年だ」

 雄二はニヤリと笑ってそう言った。
 それはさっきまでの雄二とは違う、俺のよく知るガキっぽい雄二の笑顔だった。 

「半年たったら、また会おう。
 俺はそれだけを言いたくて、わざわざお前に会いに来たんだぜ」

 嬉しかった。ただ、素直に。  
 だから心から言えたんだと思う。

「ああ、また会おうな、雄二。元気でな。頑張れよ」 
「おう! ありがとな」

 堅く手を握り合って、幼馴染の親友と別れた。



 屋上を降りて校舎の方に戻ると、意外な二人が俺を待っていた。

「センパイ! 卒業おめでとうッス!!」
「……おめでとう」
「おお」
 
 眼鏡をかけたキツネっぽい娘と、ちょっと巨乳の元気な娘。
 山田さんと、そして吉岡さん。
 中学までこのみの同級生だった二人だ。

123:河野貴明の卒業式10/19
08/10/25 20:13:39 mr2ziuLM0
 わかりやすく言ったら、ちゃるとよっち。
 まさか今日、俺の卒業を祝いに来てくれるとは思わなかった。

「驚いたな、ふたりともわざわざ来てくれたんだ」
「当然ッスよ。だってセンパイがあたしたちの卒業式の日に迎えに来てくれたこと、忘れてないッスよ」
「義理と人情は大切。受けた情は忘れない」

 二人とも、そんなこと覚えていてくれたんだな。
 これは素直に嬉しかった。

「そんなセンパイの卒業を祝って……」
「祝って?」 
「”送る言葉”を歌います」

 山田さん……ちゃるはいきなりそう言った。
 歌うのかよ!ここで!!
 校門前だぞ? みんな見てるんだぞ?

「暮れ~なずむ町の~♪」

 歌ってるよ、マジで!
 とか、茶化すのも失礼なくらいちゃるはとても真剣に歌っていた。
 本気で歌っていた。周囲の目など気にもしていない様子だった。
 その歌からは、俺の卒業を祝ってくれる真っ直ぐな気持ちが感じられた。
 山田さんはどこまでも純粋な娘だ。
 でもそれだけにやはり恥ずかしい。

124:河野貴明の卒業式11/19
08/10/25 20:14:57 mr2ziuLM0
「ちゃる、空気読めないのもいいかげんにするッス
 センパイが困ってるッス!」
「そうなの?」
「い、いや、まあね。ちょっと恥ずかしいかな」
「ごめんね、センパイ……」
「ううん、ありがとう。でも、嬉しかったからさ。ほんと」
「うん。センパイがそう言うなら、よかった」
「まったくもう、ちゃるってば……」
「いや、ほんとありがとう。二人が見送りにきてくれたこと、すごく嬉しく思ってるよ」
「お世辞はいいッスから。 
 ほら、本命がセンパイのこと待ってるッスよ」
「本命?」
「このみに決まってるじゃないッスか」

 ああ、そうか。
 このみもやはり来てくれているんだな。でもなんでここに居ないんだ?

「なんでこのみは二人と一緒じゃないんだ?」
「なに言ってるんッスか。後でセンパイと二人っきりにするために決まってるじゃないッスか」

 ……なんか、それは余計なお世話だと言いたい。

「みなまで言うことないッスよ。最後なんだからこのみに言いたいこととかしたいこととか、いっぱいあるんじゃないッスか?」
「したいことってなあ……」

 何を言ってるんだ、この子は。

125:河野貴明の卒業式12/19
08/10/25 20:16:11 mr2ziuLM0
「ほら、アレとかアレとか、あるっしょ。
 ここであたしたちはおさらばするから、このみとよろしくやっるッスよ」
「アレ……って、何をすればいいのさ?」
「そ、そんなこと女の子言わせちゃだめッスよ!
 分かるっしょ? ア・レ!」

 わかんねえよ。

「ま、まさかセンパイ!アレがしたいとかいわないでくださいッスよ!
 駄目ッス!いきなりアレなんて! しかも外で!
 男はそれでいいかもしんないッスけど、女の子はいろいろ大変なんッスから!」 
「はあ……」

 アレアレっていわれても……
 代名詞ばかりで会話が全然分からない。

「そ、それじゃあアレはよしとくから」
「わかったならいいッス。せめて今日はアレとかアレくらいにしといてくださいッス。
 このみもセンパイも初心者なんッスから」
「ああ。わかった」

 本当はまったく意味が分からなかったが俺はそう言った。
 そうでもしないと、話がいつまでも終わらないと思ったから。

「じゃあ、そろそろ俺はこのみに会ってくるよ。あんまり待たせてもアレだろうし」
「それがいいッス」
「じゃあ、二人ともまたね」
「あ、ちょっと待つッス」
「?」

126:河野貴明の卒業式13/19
08/10/25 20:19:27 mr2ziuLM0
 何故だか微妙な空気。
 そして後輩二人は頷きあって俺の両脇へとずずいっと移動してきた。

「な、なに?」
「これでセンパイとお別れって……ほんとはすごく寂しいッス……」
「先輩。わたしたちのこと、どうか忘れないで」
「うん、忘れないって。二人とも本当にありがとう」
「じゃあ、最後に永遠の友情を誓って最新のフォーメーション”Z”をセンパイに捧げるッス」
「え?」
「いくよ、ちゃる!」
「うん」
「センパイ、この感触忘れちゃ駄目ッスよ」
「忘れさせない」
 
 ぎゅう。

「わ、ちょっと、胸が!! すごいことに!」

『おい、貴明のやつ寺女の女の子二人に挟まれてるぞ』
『卒業式までハーレムか。さすがは河野貴明だよな』
『伝説は永遠に学校に残るな……』
「は、ははは。はあ……」

 卒業生たちの冷たい視線と、二人からの柔らかな感触を同時に感じて。
 確かに俺はこの二人のことをいつまでも忘れずにいられそうだ。


 後輩二人にも別れを告げ、俺はこのみに会いに行く。 
 別れを惜しんでかいつまでも連中が、校庭にも校門に未だにだらだらとしていた。
 連中がいる校庭を抜けて学校の裏庭に訪れる。


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