08/07/26 20:25:09 BJzSkbJx0
「姉妹らしいことも何もしてあげられなくて、姉失格だなって、ずっと思ってた」
とつとつと振り返るように語る姉。
「でも、病気がいい方向に向かってきて、郁乃が動けるようになって、最近ちょっとずつ構ってくれるようになったから」
「学校でも、家でも、病院じゃない所で、病気じゃない事で、一緒に過ごせるようになったから」
「ようやく、あたしもお姉ちゃんになれたかなって、そう思ってたから」
私は、姉と自分の関係に疑問を持ったことはない。
確かに、私は素直な妹じゃないけれど、私が姉を苛めるのはいつもの事で。
病状が悪いときは八つ当たりもするし、良い時はサービスしたりするけど、入院してたって退院してたって、大差なく姉に甘えてきた。
でも、姉にしたら、そうじゃなかったんだ。
一緒に学校に通って、家の食卓で家族の会話をして。
私と日常生活を送る事が、姉が「お姉ちゃん」になる条件だったんだ……
「だから郁乃、もう少しだけあたしの側にいて~っ!」
だーからって、その理屈はおかしいでしょっ!
「あのねえ、例え私が異性と付き合ったとして、それでお姉ちゃんと疎遠になるわけないでしょうが」
「でもぉ、河野くんと話してると郁乃はあたしそっちのけだしぃ……」
「そんなことない。ちゃんと相手してた」
単なる姉の被害妄想、よね? これは。
「郁乃と河野くんが付き合いだしたら、お姉ちゃんなんていらない人間に……」
「あああああ鬱陶しいっっ!!!」
蛆虫と化した姉に、私の感情が爆発した。姉はひっと小さく悲鳴して下を向く。
「あたしは、確かに貴明が好きだけどっ!」
あ、あれ? 今なんだか致命的な事を口走った気がする、けど、まあ置いておこう。
「だからって、お姉ちゃんはずっとあたしのお姉ちゃんよっ!」
「ず、ずっと?」
「ええ。ずーっとっ! これからもっ! これまでもっ!」
姉が顔を上げる。
「……あたしは、お姉ちゃんがお姉ちゃんじゃないなんて思ったこと、ないんだから」
つい目があって、私は視線を下げながらそう付け加えた。
201:めーぷる☆しろっぷ 最終話「Triangle Heart」 6/12
08/07/26 20:27:43 BJzSkbJx0
じわーっ。
姉の大きな目の輪郭が、透明な液体でぼやける。
「い、郁乃」
感極まった面持ちに、私は次の姉の行動を正確に予測した。
「郁乃ぉ~っ! 大好きぃいいいいい~っ!」
なので、がばばっと姉が飛びついてきても平気。ちゃんと車椅子もブレーキを……ぐ、ぐるじい。
「く、首をじべる゛な゛、しぐ、しぐ」
「お姉ちゃんは、ずっと郁乃のお姉ちゃんだよおおおおおおおっっ!」
チョーク! チョークっ! ほ、星が見える……建物の中なのに……。
でも、まあ、なんだろう。そうね。気持ちは良かった。
「あ、あの、あのさ」
そこに、恐る恐るで割って入った声。
姉に羽交い締めにされたまま顔を起こすと、例の曖昧な笑顔が、少し緊張気味かな。
「えーっと、姉妹仲良しで、おめでとう」
枕詞にしても、変なお祝い。
「そ、それで、あの、郁乃ちゃん」
用件の予想はついたけど、私は黙っている。
「俺の気持ちは、あの時と変わりないんだけど」
というか、何を喋れと。
「その、そういう事情で、こういう事情になったんなら」
かくかくしかじかって、便利な言葉よね。
「あの、もしかして、さ、答えが変わったり、しないかな?」
私は、一応これまでの自分の感情を整理する。
……ついでに、さっき置いておいた致命的な台詞と、背中にくっつく体温も。
「……瘤付きで、いいのなら」
世に姉妹は数多けれど、姉に抱きつかれながら男の告白を受諾した妹って、いったい何人いるのかしらね。
202:めーぷる☆しろっぷ 最終話「Triangle Heart」 7/12
08/07/26 20:30:10 BJzSkbJx0
良く晴れた日曜日。
「ごめんね、また遊園地なんて」
「いいわよ別に。イヤだと思えば来てないし」
私の隣を歩く、貴明との会話。
「また奢りなんて、こっちが悪いわねむしろ」
「いや、また知り合いがチケットくれて」
外部条件により行先が左右されるのは、高校生カップルであれば自然なことだろう。
「丁度あの後改装工事に入ったみたいだし。ジェットコースターがパワーアップしたとか書いてたわ」
「う、あれ、また乗るの?」
なんでもない会話で、似たような単語を繰り返しながら進む道も悪くない。
今日は、私と貴明の初デートなのだから。
なんだけどさ。
「あの、ところで、郁乃ちゃん?」
少し背を屈めて、貴明が声をひそめる。
「なによ」
「どうしよう? あれ?」
彼が小さく指さす、後方の電柱の陰に人影。
「頭隠してっていうのかな、あれも」
電柱の左から頭。右からお尻がはみ出てる。
「無視していいわ。今日は絶対についてくるなって言っといたんだから」
「うん。でも……」
ぴょこぴょこと電柱の両側から様子を窺う、あ、塀に頭ぶつけた。
「うぅぅ」
小さく呻いて道ばたにしゃがみこむ……姉。
「お姉~ちゃんっ!」
「ひ、ひぃっ!?」
203:めーぷる☆しろっぷ 最終話「Triangle Heart」 8/12
08/07/26 20:32:29 BJzSkbJx0
「出掛けに、あたしは何って言ったっけ?」
「“絶対ついてこないでね”って」
「その後っ!」
10秒後。
呼びつけた姉を車椅子の前に直立不動させて問いつめる私。
「うぅ、“付いてきたら、クチきかないぞの刑3日間……」
「10日間っ!」
「ふえええんごめんなさいいい」
この10日間というのは、クチきいてあげないぞの刑の中では最長期間で、というのはこれ以上だと本格的に泣かれて鬱陶しいからだが、今日は貴明と二人でいたかった気持ちの表れでもあった。
「郁乃ちゃん、その位にしてあげたら」
「貴明は黙ってて」
これは、私と姉の問題。きっちりしておかなければ。
「分かった? お姉ちゃん?」
「ごめんなさーい」
「ごめんはいいの。約束通り、明日から喋らないからね、一切」
「10日間~?」
「10日間っ。わかった?」
「ぐすん。わかっ、た、ぁ、くすん」
ボロボロでしゅんとなりながら頷く姉。うむ、これで良し。
「よろしい。じゃ、行くわよ」
「え?」
顔を上げる姉。
「だって、口きかないって……」
「明日からって行ったでしょ。今日は仕方ないから、もう。付いてきなさい」
「あぁぁ……」
「郁乃~っ! 愛してるぅ~っ!」
例によって、姉は飛びついてきた。私が貴明に小さく手を合わせて謝ると、彼も苦笑してくれた。
204:めーぷる☆しろっぷ 最終話「Triangle Heart」 9/12
08/07/26 20:34:55 BJzSkbJx0
それにしても。
「ねえねえ、どこから回ろうかっ!」
姉、元気になりすぎ。
明日から絶交のぶん貯金しておこうとでもいうつもりか、私と貴明の初デートだなんて遠慮は微塵もない。
……そういうキャラだったっけ? この人?
「郁乃郁乃っ、アイス食べよ、アイスっ!」
車椅子を奪い取るような勢いで、強引に出店の方に持っていく姉。
貴明は、姉の元気に押されたのか一歩出遅れて、それから慌ててついてきた。
「買ってくるから、待っててねっ!」
「貴明の分も買ってきてよ」
「う、うん」
釘を刺さなかったら自分と私の分だけ買ってきそうだったわね、今の。
「ごめん。こんなんになっちゃって」
改めて貴明を拝む私。だが、彼は首を振る。
「あはは、これも楽しいから」
「そうかしらね」
「だって郁乃ちゃん、楽しいでしょ?」
あ、そういうことか。
私が楽しければ、自分も、か。
「お待たせっ郁乃っ! はい、河野くん」
「あ、ありがと」
姉がまた賑やかに戻ってきて、片手のアイスを貴明に、って、あれ?
「お姉ちゃん、あたしのは?」
「もちろん、ほら、トリプル」
もう片方の三段重ねを示す。でも、ひとつ?
「お姉ちゃんは?」
「えへへ、一緒に食べよっ、ねっ?」
205:名無しさんだよもん
08/07/26 20:41:04 HxYk4t5WO
さるさん中断
206:めーぷる☆しろっぷ 最終話「Triangle Heart」10/12
08/07/26 21:09:57 BJzSkbJx0
「あ、アホかっ!」
どこの世界に、恋人とデートに来て姉と一個のアイスを分け合う馬鹿がいるんだっ。
「だってぇ、シングル2個より安かったんだもん」
「だったらダブル2個買ってこいっ!」
「お姉ちゃんの財政事情も厳しいのお~っ!」
私は貴明の奢りだけど、姉は自費で入場してきてるから、って勝手についてきただけだけど。
ねっ、ねっ、と差し出されるストロベリーを、ついひとくち。
「うふふっ」
やたら嬉しそうに笑って、今度は姉がひとくち。
……ここにいました。馬鹿姉妹。
「ははは……はぁ」
さすがの貴明も、ちょっと呆れ顔。ひたすら申し訳ない私は、ちらちら彼の様子を窺いつつも、
「ほら、ほら、メロンも美味しいよ、やっぱり」
ついつい姉のペースで、あっという間にコーンまで。
「ごちそうさま」
食べ終えて、こっそり溜息など付いた貴明。いや、これはいかん……あ。
「貴明、アイス付いてる」
「えっ? どこ?」
「こっち向いて」
ひょいと手を伸ばして、私は彼の顔をこっちに向けて唇を寄せて。
ぺろっ。
「!!!???」
「い、いいいいい郁乃が河野くんにちゅーをっ!?」
ほ、ほっぺよほっぺ! しかも、ちょろっと舐めただけっ!
「あ、あ、あり、が、と」
「そ、そんなに真っ赤になんないでよ。大したことじゃないから」
「うあぁあ、郁乃っ! 大変大変! お、お姉ちゃんのほっぺにもアイスがっ!」
「涎は拭けっ!」
207:めーぷる☆しろっぷ 最終話「Triangle Heart」11/12
08/07/26 21:12:05 BJzSkbJx0
こほん。
あらためまして、どこから回ろう。
「お化け屋敷なんか、いいんじゃないかな?」
「動物コーナーの動物さんが増えたみたいだよ?」
珍しく両名から意見なんぞ出たくらいにして、しかし何だかなこの選択肢。
「お、お化け屋敷はやめようよぉ」
「山羊に涎かけられるのは、勘弁してほしいなあ」
正反対、というか、互いが嫌がりそうな場所を選んだでしょ、あんた達。
「小牧は少し怖がりを治した方がいいよ?」
「河野くんこそ、だったら一人で行ってきてくださいっ」
カチンカチンと火花。
直接コミュニケーションを取ってくれるのは、ある意味ラクだけど。
「「どうする? 郁乃(ちゃん)?」」
当然のように貴明も姉も、決定権は私に委ねてくる。
はぁ。
「お化け屋敷だよね?」
「動物コーナーだよね?」
やけに必死な自己主張×2。
「うーん……」
が、私は若干の考慮の後。
「あれがいい」
そのどちらとも、違う一点を指さした。
“新装開店。ダブルマウンテン・ジェットコースター”
「「う゛え゛っ?」」
くくく。
二人の頬に仲良く大粒の汗が浮かんだもんで、私は意地悪く笑ってやった。
208:めーぷる☆しろっぷ 最終話「Triangle Heart」12/12
08/07/26 21:14:16 BJzSkbJx0
天気は快晴。盛況の遊園地の中を、車椅子は進む。
「あっ、ちょっと待ってよ、郁乃ちゃん」
「お、おいていかないでぇ」
慌てて、しかしやや腰が引けながら、ジェットコースター乗り場についてくる二人。
「さっさと来なさいよ。それと、どっちが私と乗るのかしら?」
爆弾一発。
「も、もちろん俺だよね、大丈夫、怖くないから」
「あ、で、でもでも改装したばっかりだし、万一を考えて保護者のあたしが」
さっそく背中で牽制合戦。
(ホントに、しょうもないわね、貴明も、姉も。)
私は、恥ずかしい二人から少し離れる。
真っ青な空を見上げて。
「「さーいしょーはグー」」
後方で始まったジャンケンの声を聞きながら。
(さて、次はどうしたもんかしら……)
私は楽しく悩んだ。
困った彼と、困った姉を、どんなワガママで困らせてやろうかと。
209:名無しさんだよもん
08/07/26 21:16:23 BJzSkbJx0
以上です。支援ありがとうございました。4/12「気おつけ」はないですねお恥ずかしい。
漏れは前々スレの240で、コンセプトは「郁乃を幸せにすること」でしたが、
実はあの時点で頭にあったのはハーレム物の方でして、本SSに関しては、
242 名前:名無しさんだよもん 投稿日:2008/03/03(月) 20:25:23 ID:qzQJejTvO
>>240
単体でおながいします
独占欲の強い愛佳の妹なのだから、郁乃も独占欲が強そう
なので、郁乃に貴明を独占させてあげてくだしい
243 名前:名無しさんだよもん 投稿日:2008/03/03(月) 20:26:21 ID:QxOVMoiI0
いくのんが姉と貴明の二股をですね
この↑2レスが妄想のネタ元になりました。ご両名に感謝です。
また、漏れは去年長々と連載していた「桜の群像」の作者でもありますが、
郁乃storyを読んで、群像では郁乃を強い娘に描き過ぎたように思えたので、
なるべく彼女の弱さ(+間抜けさw)を意識して書いてみたつもりですがどうだったやら。
短い割に時間かかりました。毎度同じ台詞ながら、読んで頂いた方々に厚く御礼申し上げます。
上述のハーレム物は形になるかどうか分かりませんが、
ネタがあれば短長問わず随時投下してますし、今後もしていきますのでよしなに。
以下、遅レス
>159
メロンパンには基本メロン入ってないので、
まあ味やら香りやらは千差万別にしろ余計な単語だったかもですね
>164
その通りです。なのはさん観てませんがとらハ好きです。SS書き的な部分としては、
小鳥ルートで唯子がいづみLOVEになるのが、失恋キャラ救済の解法として印象深いです
210:名無しさんだよもん
08/07/26 21:21:14 e5+kb9iH0
>>209乙
211:名無しさんだよもん
08/07/26 21:27:15 J0lnMy9j0
>>209
超乙
三角関係ものは決着が付いて欲しい人もそうでない人もいるけど
やっぱりハーレムエンドというか全てをあきらめないエンドはいいですね
212:名無しさんだよもん
08/07/27 12:00:28 a2u7Y/lO0
>183
乙。筆は止まるととことん止まるので、書ける時にはどんどん書いてくれ
内容を見ればミルファが嫌いでビッチ呼ばわりしたわけじゃないだろから後書きは気にしなさんな
ただ前回もそうだが、キャラを悪者にすればひんしゅくを買いがちなのは当然ではある
その点、ストーリー上の要請として納得できるだけのものがあるかどうか、引き続き今後の展開に期待だぜ
>209
連載完結超乙。長編は、やはり完結させてこそ意味があるので素直にエライ
いちおう三角関係だけど、こっちは悪者を作らなかったね。安全策というか。もちろん悪くないので次回作にも期待
213:名無しさんだよもん
08/07/27 16:43:18 Du9rfC3t0
>>209
乙。癒された
>>183
本編の内容はひとまず置いといて。
冗談か本気か知らんが、冷静に考えりゃ、
人を不快にさせると分かりきった後書きなんて書くな
そんな文章見て『ぼくのかんがえたおりきゃら』に期待して貰えると本気で思ってんのか
214:名無しさんだよもん
08/07/27 22:30:23 Af0ybHuv0
そろそろ夏。
豊作が期待できそうですね。
215:名無しさんだよもん
08/07/28 00:20:21 5OWCroh+0
どうもADが出てからいいんちょが不憫だな・・・
216:名無しさんだよもん
08/07/28 06:10:20 2bLwQ77T0
菜々子のSS読んでみたいな
217:名無しさんだよもん
08/07/28 06:56:13 MtUvx3rQ0
>215
確かに、いくのんの引き立て役に回っちゃってる感があるかもな
ここはひとつ、逆襲のいいんちょメインSSを……誰か書いて
>216
前スレに『菜々子Strike!』ってのがあったので続きに期待してる漏れガイル
あ、書庫さん更新されてて乙です
『めーぷる☆しろっぷ』最終話が途中で切れてまっせ
218:書庫
08/07/29 00:05:00 cmfv6BOZ0
>217
指摘どうもです。さっそく修正。。
こともあろうに最終回をぶったぎってしまって、作者さんには申し訳ないです。
219:183
08/07/29 05:20:00 Qlpmd5HX0
まぁいろいろありましたが、ご不愉快に思われる向きは、NG指定推奨です。
とりあえず、落とします。
220:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(1/19)
08/07/29 05:21:33 Qlpmd5HX0
「うわ~、なんかキラキラ光って、キレイな部屋だね~☆」
「ミルファちゃん、これはカラオケと言って、好きな曲選んで歌えるんだよ。」
「あ、なんか、ダーリンにピッタリの歌があるよ、これにしよっかな☆」
“♪ あの娘をペットに したくって ニッサンするのは パッカード 骨の髄まで シボレーで あとで肘鉄 クラウンさ~♪”
「うわ、ミルファちゃん、すげぇ音痴・・・・・」 ― 禿しくJ@SR△Cとかに抵触してそうだし。
「ダーリン、なんか言った?」
「いえ、何でもありません。」
「来栖川に合併された会社とかブランドばっかりだね」
「そうだね」
「いっつも、日参、してくれたよね。」
「そうだね。でもミルファちゃんは、ペットじゃないし」
「いいんだよ~、ダーリンの奴隷でペットで☆」
「カード破産寸前だったけどね」
「ダーリン、花屋に並んでるお花、全部持ってきてくれたよね」
「うん。それでも肘鉄、喰らっちゃったけどね。」
「ごめんねダーリン。だって、いきなりだから、ビックリしちゃったんだもん」
221:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(2/19)
08/07/29 05:23:29 Qlpmd5HX0
「でも、またダーリンって呼んでくれて、凄くうれしかったよ。」
「だって、たった一人の、大切な人だったんだもん」
「それなのに、また肘鉄喰らっちゃったんだけど」
「しょーがないよね。ホントは弄びたいだけの本性、わかっちゃったんだもん。ひどいよダーリン」
「ボクは真剣なつもりだったんだけど」
「真剣な人が、交換日記を、別な人に代筆させたりなんかしないよね。」
「それは過ぎた話で・・・・・うんそうだね。すいません。全部私が悪いんです。」
「バイバイ貴明。もうこれっきりだね。」
・・・・・また花屋ごと買い占めたら、戻って来てくれるかな。・・・・ああ、一面のお花畑が見える・・・・
― ウ~ン、ウ~ン、ごめんなさい、ミルファちゃん、全部私が悪いんです。ウ~ン、ウ~ン ―
「タカ坊っ!駄目っ!しっかりしなさいっ!!」
「タカくん、しっかりっ!うわぁ~ん!タカくんが死んじゃうよぉ~っ!!」
「ご主人様!お花畑に行ったららめなのれすっ!もろって来るのれすっ!!」
222:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(3/19)
08/07/29 05:24:53 Qlpmd5HX0
― 夜の帳に包まれる、瀟洒なマンション。その中、姫百合家のテーブルを、珊瑚、瑠璃、イルファの3人が囲んでいた。
「・・・・あのな、うち、思うんやけど・・・・」
手にしていたスープのスプーンを空になった皿に置いて、珊瑚がやおら、語りだす。
「記憶失う前と後、やっぱ、みっちゃんの性格ちゅうか気質、微妙に違うと思う。キレやすいし一段とわがままなっとる。前は
もっと思いやりのある子やったのに」
「う~ん、基本的には、とっても優しい子なんですけど・・・・でも、衝動的で、粗忽なところが、パワーアップしてるような」 と、
イルファ。
「甘やかし過ぎたんちゃうか?」と、瑠璃。
「事故の後、みんな、腫れモンに触るように接してたやろ。欲しがるモンは大概くれてやったりな。あまつさえは、貴明の
接し方や。」
― というと?目顔で瑠璃に尋ねるイルファと珊瑚。
「攻守逆転やからな。終始、イニシアティブ握ってるのは、ミルファの方。あの子が再起動してから、今に至るまで、貴明、
ミルファに至れり尽くせりやないか。・・・・夜のお努めも含めてな」 ― “夜の”のくだりでは、瑠璃は赤面していた。
「人間やって、過保護にされると、我侭でキレやすうなるやないか。そう、過保護や。今にしてみれば、貴明との仲も、ホンマの
恋人同士には思えんわ。寂しい時に甘えられる、愛玩用のオモチャやったんかもな、貴明は・・・・。ご主人様登録とか、言葉で
遊んどったけど、実はミルファの方がご主人様やったんや。恋人同士って、そんなもんやないやろ?お互いの信頼関係があって
なんぼで ― え~オホン、ウチも偉そうな事言える経験ないけどな」 そう言って、一段と赤面する瑠璃。
「おかわいそうな貴明様・・・・」 と、イルファ。
ミルファの話に仰天して、河野家を訪れてみれば、憔悴し切ってうつろな表情の、貴明の姿。シルファもいろんな慰めを試みて
いるようだが、効果なし。このみや環始め、数人の女友達が心配して河野家を訪ねているが、目下、絶賛人事不省状態。
223:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(4/19)
08/07/29 05:26:56 Qlpmd5HX0
貴明も心配だが、ミルファの今後も気になるところ。
「あの子にしてみれば、記憶にポッカリ穴が空いて、不安で、寂しい状態がずっと続いてたから、その穴埋めに関係が持続
出来ていた、って事でしょうか。でも、思ってたような偶像ではなかった事がわかって、あんな風に捨ててしまって・・・・また、
あの子、不安定にならないか、心配です。」
「既に不安定やないの」と、珊瑚。「難しいもんやなぁ。うちら、この歳で、思春期の娘、持つ羽目になってしもうたんやな。」
カタンと、椅子から立ちあがるイルファ。「ありがとうございます、瑠璃様、珊瑚様。次に何をするべきか、少し分った気が
します。」
「あ、待ってや、いっちゃん」 と、珊瑚。
「ウチらから見たら、いっちゃんもみっちゃんに負けず劣らず過激や。あんまり思い切ったことせんといてな。」
「はい?」
「一面から見たら、ええ兆候も見えとるし。人間だんだん成長すると、物事客観視出来るようなる。みっちゃんも、“はるみ”を
自分自身と、認めざるを得のうなったって事やろ?客観的に見れば当然そうなるわ。おぽんちなりに、あの子も、少しは成長
しとる、って認めてやってもええんやないの?だから、なるたけ、穏便に、穏便にな。」
「はい、大丈夫です。きっとみんな丸く収まりますから。」
"ガチャリ"と、玄関のドアが開く音がした。
「ただいま戻りました。」と、入って来たのは、先ほどまで居た雄二が帰るのを見送っていた、リナである。
奥の部屋では、ミルファが、クッションを抱えて、TVのドキュメンタリー番組をぼんやりと眺めていた。
やがて、おもむろに俯いて、思いに耽る。
― ひどい、ひどいよ貴明。あんな事する奴だなんて、人畜無害で、全然想像出来なかったよぉ・・・・―
♪“― 人ならざるものを生み出す使命を負った彼らに背負わされた重い十字架と苦悩。命とは?心とは?
― そして、最も実用に近い形で生み出された世界最初の感情を持ったアンドロイド、HMX-12・・・・
次回の『プロジェクトA’s』は、N開発主任率いるK電工の、ロボット開発チームの苦闘の物語をお届けします。― ”♪
224:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(5/19)
08/07/29 05:29:17 Qlpmd5HX0
日曜日の朝。
姫百合家の玄関前の廊下に立つのは、珊瑚・瑠璃姉妹と、雄二、リナ。
「それじゃ、リナちゃん借りるぜ、珊瑚ちゃん、瑠璃ちゃん。」
雄二が、おずおずと、リナの背中に手を掛ける。
「何言うとんのや、雄二がこの子のご主人様やないか」 と、瑠璃。
「はい、宜しくお願いします、ご主人様。」 リナは雄二に振り向き、ぺこりとお辞儀をした。
待ちに待ったメイドロボとの初デート。しかし、雄二の表情はどこか浮かない。
さすがの雄二と言えども、貴明の憔悴した姿を思い浮かべると、気が塞いだ。そのうえ、先日、ここを訪れた時の、ミルファの
恨みがましい視線。交換日記の件では、貴明に負けず劣らず悪者と断罪されている。リナに今日の段取りだけ話して、怖気を
震ってそそくさと逃げ出してしまったものだった。 ―"はるみちゃんの時は、感謝されたのになぁ・・・・"― とは、心中の声。
このドアの向こうには、彼女がいる。
「まぁ、みっちゃん達の事は、うちらでなんとかするよ~。そないな不景気な顔しとると、りっちゃんにも不機嫌がうつるで~。」
そう珊瑚に指摘されると、つとめて陽気を振舞おうとした雄二。改めてリナの姿を眺めると、今日はメイドロボの制服ではなく、
パーカにデニムのミニスカートといういでたち。どことなく、ミルファの私服姿を思わせなくもない ―
― いやいや、長瀬由真、そのものじゃないか。イヤーバイザーがなかったら、由真とのデートだと錯覚してしまいそうだ。
これはひょっとしたら、噂になるかも・・・・・などと想像すると、ついククク、とこぼれる笑いを噛み締める。
「おう、ご機嫌顔になったやん。ほな、ゆっくり楽しんでや~。」と、瑠璃。
雄二とリナは振り向きながら姉妹に小さく手を振り、姫百合家を後にした。
225:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(6/19)
08/07/29 05:30:28 Qlpmd5HX0
バタン、と扉を閉め、どことなく沈んだ空気の漂う部屋の中に戻ってきた姉妹。
瑠璃は、うぅ寒いわ~とごちながら洗面所へ、珊瑚の足はミルファ達のいる居間へと向かった。
いつものように私服姿のミルファはクッションを抱えて床に座っており、その傍らにはイルファが立つ。
「ミルファちゃん・・・・あなた、自分が何をしたか、わかってるんでしょうね?」
TVのニュースに見入っているミルファを見やりながら、イルファが話しかけた。
「ご主人様登録の事も、もう後戻りは効きませんよ。自分の言った事には、責任持ちなさいね。」
「わかってるよ、そんなこと。撤回するつもりもないし。」 横顔を向けたまま、ミルファが言う。
「貴明さんのご主人様登録、解約して貰いました。別な方が、貴方の“マスター”になりましたから。」
「えっ!?」と、驚いて、イルファに振り向くミルファ。
「― いっちゃん!?何も、ホンマにせんでも!?」 珊瑚も驚いて、非難を含んだ声を上げる。
「ちょっと待って!?何、別なマスターって!?あたしは、自由だって、さんちゃんが ― !?」 不服の声を上げるミルファ。
イルファが、冷ややかに言う。
「珊瑚様より、もっと強い権限を持つ方の、“命令”ですから。あなたの新しいマスターは、長瀬源五郎、様です。」
「― ッ!?」 驚くミルファ。今まで、パパだと思ってた人が、今度は、ご主人様・・・・いや、マスター。
珊瑚も唖然としていた。
226:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(7/19)
08/07/29 05:31:59 Qlpmd5HX0
「いいですか、長瀬のおじさまが、おっしゃった事です。二点だけ、必ず、守りなさい。マスターに対して、その義務があります。
ミルファちゃん、まず、学業は、続けなさい― あなたは自分を人と同じだと言ってたけど、人として、心が完成していません。
学校は、何より精神を磨く場所だからです。」
「ん・・・・・。」 不満顔のミルファ。
「それから、もう一つ ― たとえどんな風に思っていても、貴明さんには謝りなさい・・・・そして、仲直りなさい。それが、
人間として生きていくつもりなら、最低限のルールだし、礼儀だし、大人の寛容、というものです ― あなた、貴明さんが、
あなたの為に、どれほどの事をしてくれたか、わかってるわよね?」
「ふん。あたしを騙して、あたしの体が欲しかっただけでしょ?」
はぁ・・・・と、溜息を漏らすイルファ。憤怒を抑えつつ、彼女は続けた― いいですか、ちゃんと聞きなさい、ミルファちゃん。
「貴明さん・・・・シルファちゃんが作る食事もほとんどとらずに、ずっと塞ぎ込んじゃってるそうです。そして・・・・はらはらと泣き
出しては、うわ言で、『ミルファちゃん、ごめんね、ごめんね・・・・』って。すっかりやつれて、別人みたいになってるって・・・・・
おかわいそうに・・・・」
そう話しながら、しまいにはイルファの声もうわずり、嗚咽を漏らし始めた。
「・・・・・えっ!?・・・・・まさか、そんな・・・・・」 ― ガン!と殴られたような衝撃が。
「生身の人間は、私達より、ずっとデリケートな生き物なんです。特に、心が。貴明さん、このままでは、心が、壊れてしまい
ます。そんな、人に危害を与えるようなメイドロボは、ポイしてしまうからと、おじさまが言ってました。」
「え― !?」 絶句するミルファ。最後のポイは、実のところ、ミルファを追い詰める為のイルファの捏造だったが。
227:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(8/19)
08/07/29 05:48:58 vTmaBaao0
ミルファを動揺させたのは、むしろ、今の貴明の状況だった。
思い出した交換日記の顛末の悪印象が強過ぎて、すっかり偽りの愛情だったと思い込んでしまっていたからである。
“そんな・・・・そこまで、思い詰めてるなんて・・・・本気だったの?・・・・・どうしよう、どうしよう・・・・・貴明を壊しちゃう・・・・”
急速に、ミルファの表情は、困惑と心痛の色に染まっていく。目尻が紅潮していた。
あの、普段でも些か頼りなく見える貴明が、更に小さく縮こまり、落涙までしている様子を思い浮かべると、熱し易く冷め易い
感情家のミルファ、どうしようもなく憐憫の情が湧き起こって来る。
いまさら強調するまでもなく、ミルファは軽率極まる性格で、先を読んで言葉を発する思慮がない ― 皆が、“おぽんち”と
決め付ける所以であったが。
甘やかされて、それが一層、顕著になってしまっている。深い悪意などおよそ皆無とはいえ、中途半端な理解に基づく粗忽な
言動の数々で、皆が振り回されてしまうのはいつものことである。
後悔するのも、いきなりだった。
「 ― あたし、ちょっと、出掛けて来る!」
抱えていたクッションを放り投げ、ミルファは立ち上がった。
"あ~、ちょっと待ってや~!?"と、呼び止める珊瑚の声も聞かず、さっさとマンションを後にしてしまった。
「ふう・・・・」 イルファが再び溜息をつく。
「少しは反省したみたいですね、あの子。― でも、貴明さんに謝って、仲直りして、で終わりではありません。もう少し成長
して貰いませんと。私もちょっと出かけます、珊瑚様。」
玄関に向かう途中、洗面所から出てきた瑠璃とすれ違う。
「お?イルファ、出掛けるん?どこ行くんや?」
「ちょっと、電信柱になってきます、うふふ。」
― なんや、またか、と瑠璃。
228:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(9/19)
08/07/29 05:50:18 vTmaBaao0
そうして、メイドロボ達は、皆マンションを後にした。残された姫百合姉妹。
日曜だし、多分いないだろう、と思いつつ、珊瑚は、源五郎に今のミルファとリナの状況を話そうと、来栖川の中央研究所
にネット電話をかけた。 ― あと、ご主人様登録の件も。
すると、電話を取ったのは ― 東吾だった。
「今日は僕が日勤だよ。室長は、昨日慌しくムンバイに出張に出掛けた。」 PCのモニタの向こうに、丸眼鏡の東吾の姿。
狡猾なキツネを思わせる面相・・・・・珊瑚は、どうしても、この切れ者の主任が好きになれない― 冷たい心の持ち主の
ように思えて。いつも斜に構え、他人を冷笑している風がある。
「ふふん・・・・なるほどね。リナは向坂の御曹司と、デートか。いいデータログが採取できるといいな。それに、ミルファは、
少しばかりは悔悛の色が見れると。まぁ、河野少年も今度ばかりはついてないようだが、うまく仲直りさせてやってくれよ。
室長は、ミルファの“新マスター様”は、ずっとそればかり気にしてインドに旅立ったからな。」
何やら小馬鹿にする色が覗えるようで、珊瑚は面白くない。
しかし一点、はっきりした事。
“・・・・いっちゃん、ホンマにみっちゃんのご主人様登録、切り換えてしもうたんやな。相変わらず思い切った事するわ~。”
「・・・・・で。ミルファが臍を曲げた原因は、一部残存してた、古い記憶か。結局、それはそのままにして、自然な成り行きに
委せるつもりなのかい?」
卓の上に手を組んで、身を乗り出しつつ、嫌らしい笑みを浮かべて東吾が訊ねてきた。
「勿論や ― 何や、“そのままにして”って?大切なみっちゃんの記憶や。どんな思いで、うちや長瀬のおっちゃんが、事故の
時、サルベージした思ってるんよ~?」
憮然として言う珊瑚だった。
229:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(10/19)
08/07/29 05:51:51 vTmaBaao0
ムキになっている珊瑚の姿を見て、やれやれ、と、肩を竦める東吾。
「内容にもよるだろ。君、本当は、ミルファの中で断片的に残ってる記憶の“色”、全部把握出来てるんじゃないのかい?」
― わかってても、詮索するつもりないわ、と、珊瑚。
「僕に貸せよ、ミルファを。 ― いい具合に、スッキリさせてやれると思うぜ?」
「何やてっ!?」
「人間はね・・・・・どうしても納得出来ない事、嫌な事は、忘れちまうんだよ。そうしてなきゃ、不愉快な事だらけで、生きて
いけないよ。気が狂っちまうな。それが処世術で、大人の知恵ってもんさ。ロボットにも、そんな能力が備わってりゃ、便利だと
思わないかい?」
「うちは、そんな風に割り切った、嫌な大人になりとうない。みっちゃんも、そんな、物分かりの良過ぎる子にしとうないわ。
ほな、さいなら。」
ブチンと、電話を切る珊瑚。 ― やっぱ、むかつくわ~、あのおっちゃん。
― おやおや、露骨に感情的になっちゃって・・・・いくら電子工学の天才ったって、やっぱり、子供だな・・・・。
ミルファみたいに、いちいち感情的になって角立てられてんじゃ、商売道具にはならんだろ。やはり、売り物にするには、
“大人の知恵”ってのが、備わってる必要があるんだよ・・・・。
人間は反発して対案を出せる。しかし、三原則に縛られたロボットは、そんな事は出来っこない。
まぁせいぜい、“彼女“に難問ふっかけてやってくれよ、向坂少年。
―― そんな事を思いながら、独り笑みを浮かべた東吾だった。
230:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(11/19)
08/07/29 05:53:40 vTmaBaao0
―――
貴明が目を覚ましたのは、目覚まし時計でも、シルファのニードロップでもなく、限界まで達した空腹が発する音のせいだった。
ふらふらとした足取りで机側の窓辺に向かい、ほとんど無意識的にカーテンを開ける。― うおっまぶしっ! ―
冬の日差しはまだかなり低い位置にあって、その目を直撃した。思わず手をかざす貴明。
トントン、と、ドアを叩く音がした。そして、すぐに続く声。「お目覚めれすか、ご主人様?」
ノブをテープで仮留めしてあるドアが開き、シルファが顔を覗かせた。
機械的に定時に起こしに来るのではなく、主人の状態を慮る事が出来る融通性は、DIA搭載モデルならである。
「ご主人様・・・・そろそろ、お食事とって欲しいのれす。」
不安げに部屋の中に目を泳がせるシルファ。そこに数日、暮らしていた筈なのに、乱れた布団と、貴明の体臭以外に、およそ
人が過していた形跡がない。ベッドとトイレの間だけを往復する生活。
自らカーテンを開けにいっただけでも、かなり状態が上向いた証拠なのだった。
「うん・・・・すごく、お腹空いてるよ。何か、作ってくれると嬉しいんだけど。」
シルファの表情がパッと輝く。 「 ― もう、もう準備れきてるのれすよ、ご主人様!すぐに降りるのれすご主人様!」
満面の笑みを浮かべ、シルファは貴明の手を取って階段へ引き入れた。
― カタカタと味噌汁の入った鍋が熱せられて音をたて、その香りがぷんと漂う。
ソファで寛ぎながら、前日の新聞に目を通す貴明。
ようやく戻ってきた生活臭に、思わずシルファは鼻歌を漏らす。
231:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(12/19)
08/07/29 05:55:39 vTmaBaao0
ピンポ~ン。
唐突に鳴るインターホン。ご主人様はゆっくりしててくらさい、とシルファ。宅配くらいには普通に応対出来るようになっている
彼女である。
やがて玄関から戻って来たシルファは、客人を伴っていた。
あっ・・・・と、貴明は小さく声を上げる。
「タカくん・・・・」 このみだった。
しばらくリビングの入口に立ち尽くしていたこのみだったが、やがて、見る見る表情がクシャッと歪み、両目から大粒の涙が
ボロボロとこぼれ落ちてくる。
「タカくんっ!」
― ボフンッ!
すばしこい小動物のようなこのみが、貴明の胸に飛び込んで来た。
「タカくん!タカくん!よかったぁ~~っ!タカくん、ずっと引きこもったまま、死んじゃうと思ったよぉ~~!!えぐっ!ひっくっ!」
あ・・・・と思わず手を上げたシルファであったが、ここは、幼馴染という特別な関係、少しでもご主人様を癒してくれるなら・・・・
と、不思議と嫉妬の波もすぐに引いてしまった。
しばらく貴明の胸で泣きじゃくっていたこのみだったが、何かに気付いたか、急に目を見開いて、サッと貴明からその身を引いて
しまう。
「・・・・ん?どうした、このみ?」
「うっ・・・・くっ、臭いでありますっ、隊長!」
232:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(13/19)
08/07/29 06:00:08 Z3DYS+qZ0
食事の後、シルファとこのみに促され、シャワーで垢を流そうと風呂場に入る貴明。
俺って、つくづく弱い人間だなぁ・・・・と、パジャマを脱ぎつつ、洗面所の鏡で自分の顔をまじまじと眺めながら思った。
髪は乱れ放題、だらしなく涙を垂れ流し続けたのか、両まぶたに目ヤニがびっちりこびりつき、頬までそのスジが残っている。
― あれ、そういえば俺、いつの間に制服から寝巻きに着替えたんだっけ・・・・・?
まさか、シルファちゃん、それともタマ姉とか春夏さんとか・・・・!?
急に気恥ずかしさにとらわれ、シルファが気を利かせて温めておいてくれたらしい風呂場に入ると、すぐさまシャワーを放水して
頭に降り掛けた。 「うわっちちっ!」
さっぱりした状態でリビングに戻り、ようやく人心地がついたところで、再びソファに腰掛けてくつろぐ貴明。
コトリと、シルファがテーブルにコーヒーを置いた。「ゆっくりするのれすよ、ご主人様。」
ソファに向かい合って腰掛けるこのみに、貴明は呟くように話し掛けた。
「なぁこのみ・・・・みっともないよな、俺って。」
「ううん、そんな事ないよ、タカくん。」
「なんで?こんな事くらいで引き篭もって、男のくせにボロボロ涙流してさ」
「前のタカくんなら、いつも、周りのせいにして逃げてたのに、みんな、自分が悪いんだって、うわ言してた。それに、女の子の為
に、こんなに真剣に悩んで苦しんでること、なかったもん。前よりずっとカッコいい。」
こんな風にフォローしてくれるあたり、幼馴染というのはつくづくありがたいし、嬉しい ―
つい、そんな事を考えながら、貴明はこのみの顔をしげしげと眺めていたが、やがてこのみは赤面して俯いてしまう。
あっ、と、貴明も自分の慎みの無さを恥じて頬を朱に染めうつむいた。
そんな二人を、お盆を持って立ち尽くしながら無言で見つめるシルファ。
233:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(14/19)
08/07/29 06:03:38 Z3DYS+qZ0
そうこうするうち、突然、貴明の脳裏に思い浮かんだのは、向日葵を思わせるミルファの純真な満面の笑顔。
“ダーリン、大好きっ!― ”
一段と背をソファに寄りかからせ、天井を仰ぎながら、「はぁー・・・・」と、深く、深く、溜息をついた。
貴明の胸中を去来するのはもはや諦観、後悔は涙と共に流れ切ってしまったらしい。
・・・・それが人間の感情を持つロボットの外部端末とは知らずクマのぬいぐるみの股を覗いてしまったのは運命のいたずら、
彼女の弁当に恐れをなして逃げ惑い、音楽室から落下したのを助けられて彼女が記憶を失う原因を作ってしまったのは自分の
せい、そして今また、彼女に縁を切られる原因となった交換日記の顛末も自分のせい。
― ま、結局は、一時の夢。そもそも縁がなかった、って事なんだよな・・・・。
このみは、今のミルファの様子を雄二あたりから聞いてるかも知れないと思って、訊ねてみたい誘惑に一瞬かられたが、そんな
未練がましいことはやめておこう、と思い留まった。
― 別にこの世からいなくなっちゃった訳じゃない。せめて、ちょっとした友達くらいの関係にでも戻れればいいな・・・・。
貴明の表情に再び暗い陰が差したのを見逃さなかったこのみは、ふいに、貴明に切り出した。
「ね、タカくん、気晴らしに一緒に出掛けようよっ?」
えっ!?と、急な話ゆえ戸惑う貴明。
「そっ、その、俺さっき風呂入ったばかりで湯冷めしちゃうし。それに、どこ行くつもり?」
「えへへ~、お母さんが映画館とか遊園地とかテーマパークとか、割引券いっぱいくれたんだよ。ちょっと厚着すれば大丈夫だよ
タカくん。ね、行こうよ~☆」
そう言って、このみはテーブルの反対側から両の手で貴明の手を握り、ぐいとソファーから引き離そうとした。
あっちょっと待って、と、目を傍らに泳がせると、シルファの視線とかち合う。
シルファは少しの間、貴明とこのみを凝視していたが、やがて、嫉妬も動揺も感じさせない表情で、言った。
「気晴らしはいいことれす、ご主人様。しっかりお留守番しますから、思い切り羽を伸ばすといいのれす、ご主人様。」
― 塞ぎ込んれいるご主人様を見ているよりも、ずっとマシなのれす。ご主人様を頼むのれす、このこの ―。
234:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(15/19)
08/07/29 06:06:50 Z3DYS+qZ0
枯れ木の立ち並ぶ並木道を、河野邸へ向かって、ミルファはひた走っていた。
― 貴明っ!
ごめんなさい、信じてあげられなくて ―
― あたし、貴明に問うたよね、あたしが好きなの?“はるみ”が好きなの?、って。
貴明は、今のあたしが、ううん、どんな形のあたしでも、好きだって、言ってくれた―― 命懸けで。
・・・・それなのに、それなのに、あたしは ―!
今の貴明が、とっても誠実で、優しくて、素敵な人なら、それでいいじゃない。
― ううん、どんな形の貴明でも、好きって、思ったんじゃ、なかったの― っ!?
あたしってば、最低― 。
許して貰えなくたっていい、でも、どうしても伝えたい。
― ごめんなさい・・・・ダーリンッ!!ホントは、とっても、大好きなんだって ―っ!
235:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(16/19)
08/07/29 06:08:48 Z3DYS+qZ0
―― 河野邸に、辿り着いたミルファ。
ピンポ~ン。 ―― シーン・・・・・・。――
返事がない。ヒッキーSくらいは居る筈なのに。
もう一回、二回、三回。
ピンポ~ン ピンポ~ン ピポピポピポピンポ~ンッ!
埒があかないので、ドンドンと、玄関の戸を叩くミルファ。
「ちょっとっ!開けてよっ!ねぇ!開けなさいよっ!地味妹!いるんでしょっ!?貴明っ!出しなさいよ貴明っ!河野貴明っ!
―― ダーリンッ!!」
― あ~うるさいのれすっ!近所迷惑なのれすっ!
ガチャリと戸が開いて、金髪お下げが隙間から顔を覗かせた。 ― 出たわね、ヒッキー妹S!
「うるさいれす!自重するれす!ご主人様は留守れす!」
「とぼけないでよっ!すっとぼけないでよっ!ネタは光っているのよっ!」
「らいたい、ろの面下げて、現れたのれすっ!ミルミルのせいれ、ご主人様、ショックれ寝込んらのれすよっ!」
― うっ・・・・・それを言われると、思わず怯んでしまう― 俯きながら、言うミルファ。
「だ・・・・だから、謝りにきたのよ・・・・貴明に・・・・ううん、ダーリンに!」
そんな、遊び半分やあたしの体目当てでいた人が、ショックで人事不省になるほど、落ち込んだりする筈、ないものね・・・・
だから、謝りたいの。今更かも知れないけど。手遅れかも知れないけど。
嫌ってるって思われたままはイヤ。せめて、伝えたい――
―― ごめんなさい、ダーリン、大好きだよ、って ――
「・・・・ぷぷぷ、遅かったのれす。ご主人様は、このこのと、れーとに出掛けたのれす。」
― レート?むーっ!おぽんちだって馬鹿にしてぇ~っ!交換比率、の事だよね、確か・・・・
― 違うっ!これはシルファ語・・・・デートッ!?このみちゃんと ― !?
236:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(17/19)
08/07/29 06:12:17 Z3DYS+qZ0
「それに、ぷぷぷ、イルイルに聞いたのれす。ミルミルは、もうご主人様の専属めいろろぼれはないのれすね。本日たらいまより、
ご主人様の許可がない限り、この玄関は通さないのれす。さっさと帰りやがれれす。」
「ちょっと待って!?ダーリンとこのみちゃんは、どこへっ?」
「自分れ探せれす。」
そう言い捨てて、シルファはバタンと、ドアを閉め切ってしまった。
―― うなだれてしまう、ミルファ。つくづく、自分の軽挙妄動を後悔するのだった。
「― ミルファ。」
―― 女声ながら、ドスの聞いた声に振り向くと、背後には、眉間に皺を寄せ、腕を組んで立つ、環の姿が。
「た、環さん・・・・」 その迫力に、凍りつくミルファ。
「あなたね・・・・今頃なにしに来たのよ?」
そう訊ねる環の口調には、どことなく凄みが効いていた。
「そ・・・その・・・・ダ、ダーリンに、謝らなきゃと思って。ちょ、ちょっと、言い過ぎちゃったから・・・・」
おずおずと、うつむきながら、答えるミルファ。
環はしばしミルファを睨みつけていたが、やがて、溜息をついて、その表情を和らげた。
「はぁ・・・・まっ、タカ坊にも確かに原因はあるし、あなたもいろいろ大変だったから、大目に見てあげられる要素はあるんだけど
ね・・・・。
それにしても、もう少し、タカ坊の事、信用してあげられなかったの?昔はどうあれ、今はホントに真剣に、あなたの事想ってたの
に。」
震えながら、涙声で詫びるミルファ。 「ぐっすん、ご、ごめんなさぁい・・・・」
「私に謝ったって、しょうがないでしょう?学校でもどこでも、タカ坊に会って、直接言いなさい。」
237:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(18/19)
08/07/29 06:16:16 MIfxlUDj0
河野家の玄関を出て、貴明とこのみの行方を追おうと歩みだすミルファ。
すると・・・・「― お待ちなさい。」
どこかから、彼女を呼び止める声
「どう、ミルファちゃん、少しは堪えた?」
姿は見えないが、この声の主は、決まってる――
「― お姉ちゃん。」
果たして、すぐ後ろの電信柱の陰から、イルファがスッと姿を現した。
「うぅ~、お姉ちゃん、頭がいいから、こうなる事、みんなお見通しだったんでしょ?」
腕を組んで、溜息をつくイルファ。
「別に私でなくたって、たいがい先の予想はつくでしょ。あなたの激情にまかせての、軽はずみな行動は、いつも後悔に繋がる
んだから。」
イルファはミルファの傍らまで寄ってきて、その手を取った。
「貴明さんの事ですから、一言謝れば、簡単に許して貰えるとは思いますけどね。でも、しこりは残ったと思うわ、多分。」
「うん・・・・あたしが悪いんだもん。仕方ないよね。」
「これから、頑張って、そのしこりを取り除きなさい。もう貴方は、貴明さんを独占出来る立場じゃないのよ?」
「うん、わかってる。もう一度頑張って、ダーリンに選んで貰うもん・・・・“はるみ”の時みたいに。」
「それに・・・・うふふ、ミルファちゃん、あれを御覧なさい。」
「えっ・・・・・なっ!何っ!?」
イルファは河野邸の方を指差す。そこに見えたものは・・・・・
238:いわゆる普通のメイドロボ 第五話(前)(19/19)
08/07/29 06:19:04 MIfxlUDj0
河野邸の玄関内に導き入れられた環は、シルファから、今の貴明の状況を聞かされていた。
すると、扉の外から、喧騒が響いてくる。主に、黄色い声。
「何かしら?騒々しいわね。」
ピンポーンとインターホンが鳴らされる。
丁度玄関のすぐ内側にいたシルファは、すぐさま扉に手を延ばすが・・・・
「はい、ろちら様れ・・・・ぴぎゃっ!?」 玄関外の有様に仰天し、声を上げたシルファ。
環も思わず後ずさる。 「なっ!?あ、あなたたち・・・・」
貴明の見舞いに訪れたのであろう、少女達の一団が、そこにはズラリと。
「え、ええっと、クラス委員長としては、クラスを代表してお見舞いに・・・・」
「べ、別に、み、見舞いに来たわけじゃないんだからねっ!あいつの情けない顔笑いに来ただけなんだからっ!」
「手製のクッキーです。あと少しでも気晴らしになればと思って、ポエムも添えてみました。」
「お、お、お兄ちゃんに、お、お、お菓子、持ってきたも!」
「うーの体力が回復するよう、少々、腕を振るってみたぞ。」
「元気回復には、ピラミッドパワーが最強なんよ。」
「ほんっとヘッキーなんすから、先輩は。元気付けに来てやったっすよ。」
「胸を押し付けて股間の元気回復させるつもりか?私はもんじゃの材料一式。」
「その、これ、イオンの香りがするサンショウウオのぬいぐるみなんですが・・・・。」
その少女達の様子を見やりながら、ミルファに話すイルファ。
「うふふ、どう?折角手中にしていた貴明さんを、またあの娘達と争って、勝ち取らないといけないんですよ、ミルファちゃん♪」
「そ、そんなぁ・・・・・」
「そして、ほら、ここにも。」
「えっ?」
「あなたは、もう貴明さん専属じゃないんですから、私も条件はイーブンですよね?」
「なっ!?だ、ダメェ~~ッ!!お姉ちゃん!!」
「うふふっ、これで私も堂々と、参戦できます☆ ― くんずほぐれつ、ずっこんばっこん!!」
(つづく)
239:238
08/07/29 06:24:41 MIfxlUDj0
ミルファ√のENDは、まだ後で一波乱も二波乱もありそうなのでこんな感じに。
当初の想定からそれて、無印、X通しての「人間の」メインヒロインとのゴールも視野に入れようかと思い始めてます。
― 「ビッチ」とか。
どうも、本スレとかキャラスレですらも、みんなピンクロボをビッチ呼ばわりしてて、反論する人もいないもんだから、それが2chでは
本流なのかと、つい迎合してみたわけなんですが・・・・
余計な事書くと尚更こじれそうです。とりあえずは、終わらすまで黙々と落とします。今後、コメントは必要最小限にて。
240:名無しさんだよもん
08/07/29 06:51:08 VlkCtSuO0
さらには人のせいか、ほんと最悪だな
241:名無しさんだよもん
08/07/29 07:00:33 wbWhuzKD0
>239
乙。ビッチってほぼ蔑称なので。ミルファ嫌いな人に迎合する必要はないっしょw
ミルファ失踪じゃなかったんだ。謝りにも来ない貴明はヘタレ杉
話がシリアスだってのはあるが、全般的に出るキャラみんな真面目な感じだね
人を嫌う珊瑚、露骨に怒る珊瑚、って描写は珍しいかも
そういや少し前に「珊瑚を怒らせる」ってお題でSSあったっけ……『珊瑚ちゃん、怒る!?』か
242:名無しさんだよもん
08/07/29 14:22:24 cSoeGxyo0
既に今書いてるコメント自体が余計な内容だな
243:名無しさんだよもん
08/07/29 19:11:14 j+b9sL5F0
好んで事を構えてる節も見られるから、お望み通りに叩いてやれよ皆
244:名無しさんだよもん
08/07/29 19:35:06 RSX/TtAO0
叩きじゃないけどさ
>これで、ひとまずバカアキにはご退場願って、雄二とリナのラブラブデート編に突入ですねw
なんか予告と違うくない?
ミルファの件で叩かれてフォロー入れるの優先したんだろうか
主題は「制限型DIA」だよね
ミルファの記憶が戻った件がちゃんと本筋に関わっていればいいんだけど
最新話読んでちょっと不安になった
ADの黒歴史を何の意味もなく出すのは止めて欲しいなと思った
245:名無しさんだよもん
08/07/29 19:53:11 lw+p/LtS0
作家叩くの禁止ってなってるけど、投稿自体が荒らしの場合はその限りじゃないだろ?
246:名無しさんだよもん
08/07/29 19:54:07 OxvAom7B0
オリキャラが出しゃばるSSは例外なく糞
247:名無しさんだよもん
08/07/29 20:30:57 lEtw5Fvq0
>>245
結論出たな
というわけで239は投稿禁止
248:名無しさんだよもん
08/07/29 20:55:47 8v2fgebB0
>>239
ssの中身は興味が無いんでスルーするけど。あんたは自分の言動すら自分で責任をもてないわけ?
大体、自分が反省を求められている場面で、「自分は~に従っただけです」などと言ったら、
いくら一緒に自分自身に対する反省の弁を述べようとも、反省しているとは誰も受けとならい。
こんなことは基本中の基本なわけで、何もネットに限ったことではなく社会人として常識なんだけどね。
もし、あなたが実生活でも同じような考えで行動しているなら、おそらくあなたの周りの人間はあなたを
一人前の人間としては見ていない。おミソ扱いして大目に見てもらっていることに感謝するように。
こんな人間が良く貴明の事をヘタレだといえるね。はっきり言ってADの貴明だってあなたよりマシ。
下手な事をする事はままあったけど、自分のやった事に対する尻拭いは自分でしているだろうに。
249:名無しさんだよもん
08/07/29 21:19:03 V59kSuh00
実にいい流れになってきた
流石に擁護する奴ももう出て来んだろ
250:名無しさんだよもん
08/07/29 21:45:36 kDrVYkvZ0
もう感想も何もつけず叩かず空気みたいにスルーしときゃいいんじゃねぇの?
物書きにとっちゃなにも反応ないのが一番キツイだろ
251:名無しさんだよもん
08/07/29 21:45:51 jR7E2kJE0
擁護する気はさらさら無いが、とりあえず続きは書いてくれ。
俺はそれなりに楽しんでいるし、不快な部分は読み飛ばせば良いだけだ。
252:名無しさんだよもん
08/07/29 21:46:46 ile0kfpp0
叩きもスレの賑わい
253:名無しさんだよもん
08/07/29 22:03:45 ATVWUScL0
続きを読みたい人間もいるんだから叩くのは全部終わってからにしてくれ
>>250
夏休みだからじゃないの?
今に始まったことじゃないのにスルーできないお子様が多いね
254:名無しさんだよもん
08/07/29 22:17:51 v+1xCV8m0
こいつのはSS内容より叩きのレス見てる方が楽しいw
255:名無しさんだよもん
08/07/29 22:23:03 RiXLhf640
>248
SSへの感想じゃないから文句つけるぜw
2ちゃんの書き込みつかまえて社会の常識を語るなww
エロゲーの主人公を評して人間性を語る愚かさに気づけwww
確かにこの作者は厨房の典型だが、それに顔真っ赤にしてマジレスするお前も相当痛いからスレ住人のレベルとしては釣り合ってるぜよwwww
256:名無しさんだよもん
08/07/29 22:28:19 8v2fgebB0
>>253
>続きを読みたい人間もいるんだから叩くのは全部終わってからにしてくれ
生憎と相手の機嫌を配慮して、言いたい事を我慢する必要は無いと思っているからね。
ご機嫌を取らないとssを投下してくれない人なら無理に投下してもらわなくて結構。
少なくとも俺はね。あなたは発言して貰いたいなら、あなたが一生懸命ご機嫌取れば
いいじゃん。俺はそんなのごめんなんでね。
257:名無しさんだよもん
08/07/29 22:30:46 CkVhCyQQ0
_, ._
( ・ω・)
○={=}〇,
|:::::::::\, ', ´
、、、、し 、、、(((.@)wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
258:名無しさんだよもん
08/07/29 22:35:05 bFWnAWuF0
>256
間違いなく鳩2の、特に禁止されている内容でもない、
しかも読みたいと宣言している人間もいるSSを、内容が気に入らないから、
作家の態度が気に入らないからという理由で叩くんならお前が荒らしだ
お前自身がこのスレを荒らすつもりで書いてるなら止めない(荒らしを説得しても仕方ないからね)
そうでないなら、気に入らない書き込みはスルーするのが2chのルールだよ
259:名無しさんだよもん
08/07/29 22:42:41 JSQb9p5w0
>>256
>生憎と相手の機嫌を配慮して、言いたい事を我慢する必要は無いと思っているからね。
お子様の思考だなぁ
俺は叩くなとは言ってないしご機嫌を取れとも言ってない
嫌なものをスルー出来ない人は2chにこないほうがいいんじゃない?
あんた個人の感情なんてどうでもいいから周りに配慮してくれ
ここが何のスレか考えて欲しかったがあなたの精神年齢じゃ無理か
260:名無しさんだよもん
08/07/29 23:19:44 sxRIst+M0
__
/ヽ /\ キリッ
/ (ー -)\
( (_人_) ) 言いたい事を我慢する必要は無いと思っているからね
ノ `-' ヽ
(_つ _つ
__
/ノ ヽ\ だっておwwwwwwwwwwwwwwwwwww
/ (● ●)\ ここはお前の日記帳じゃないおwwwwwwwwww
( o゚(_人_)゚o ) チラシの裏にでも書いてろwwwwwwwww
ノ/) )) lr-l /) )) バン!!
(_つ ))`-' _ つ )) バン!!
261:名無しさんだよもん
08/07/29 23:36:15 8v2fgebB0
>>259
>俺は叩くなとは言ってないしご機嫌を取れとも言ってない
>嫌なものをスルー出来ない人は2chにこないほうがいいんじゃない?
ここで言うスルーしろという事は叩くなというという事だろう?
良くもまぁ、こんな短い文章で前言を翻す事ができるね。
>あんた個人の感情なんてどうでもいいから周りに配慮してくれ
>ここが何のスレか考えて欲しかったがあなたの精神年齢じゃ無理か
あなた自身、周りに配慮せず、俺の発言をスルーせずに文句をつけた上に
俺には「嫌なものをスルーしろ(何も言うな)」というわけだよね。そんなに何もかも
自分の思い通りにしたいわけ?
しかし、不思議なんだけど「スルーしろ」とことさらに叫ぶ人間ほど
自分が嫌なものはスルー出来ないというのはどういう事なんだろうねw
262:名無しさんだよもん
08/07/29 23:36:55 HUJZToVD0
作者自身云々に関してはこのさい置いとくが
SS自体は続きが気になるんで俺は待ってる。
つかSSの内容だけ気にすればいいじゃない、
作者の人間性とかどうでもいい。
263:名無しさんだよもん
08/07/29 23:54:19 OTy3DiuL0
むしろこれだけ大勢の人間が、まだこのスレを見ていたことに驚いた俺w
264:名無しさんだよもん
08/07/29 23:56:11 QUCa/PuB0
>261
SSの内容についての批判感想は自由だが、
他人の感想には文句つけない。内容に関係ない作者叩きはスレ違い
少なくとも俺は此処のルールをそう理解していたんだけど、違うの?
じゃあこれからはどんどん作者を叩いて、叩いた奴も叩いて、感想や批評も片っ端から叩いて、
今みたいに議論だらけのスレにしていいのね? 少なくとも>261はそうしたいのね?
265:名無しさんだよもん
08/07/29 23:56:55 peVSQuIw0
>>ここで言うスルーしろという事は叩くなというという事だろう?
259は叩くなら最後に叩けと言ってるじゃないか
スルーってのはそういう意味だろ
>>あなた自身、周りに配慮せず、俺の発言をスルーせずに文句をつけた上に
>>俺には「嫌なものをスルーしろ(何も言うな)」というわけだよね。そんなに何もかも
>>自分の思い通りにしたいわけ?
マジレスすると嫌いな作者のSSとコメをスルーしろと言ってるんだぞ
あと端から見れば自分の思い通りにしたいのはお前のほうなんだがな
言いたい事を我慢する必要は無いとか言ってるくらいだし
そもそもSS読んでないなら粘着するなよ
>>しかし、不思議なんだけど「スルーしろ」とことさらに叫ぶ人間ほど
>>自分が嫌なものはスルー出来ないというのはどういう事なんだろうねw
お前のせいでSSの続きが読めなくなるかもしれないからだろ
自分がなんで叩かれてるか理解できないなら消えてくれ
つか文章読めない人間はSSスレに来るなよぉ
あとなんで特定のレスにだけ反応するんだコイツは
266:名無しさんだよもん
08/07/30 00:04:59 a3m52qAW0
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
| おまえらも |
∩_∩ | |
(゚w゚) < 暇な奴ら |
( ) | |
| | | | だなぁ |
(___)__) \_____/
267:名無しさんだよもん
08/07/30 00:08:32 +pFBfRf20
自分に都合の悪い部分は無視して、揚げ足取れる部分だけレスするってのは煽りの常套手段だからな
これだけで作者はID:8v2fgebB0の意見を聞く必要が全くないって判断できる
こいつの意見を要約すりゃ「お前らは俺に配慮しろ。俺は誰にも配慮しない」だもん。完全に荒らしの類
268:名無しさんだよもん
08/07/30 00:09:36 eZF/74vS0
>>264-265
相手すんなボケ
SSに興味ないとか言いつつ後書きだけは読んでる時点で荒らし確定だろ
こういう奴は自分の非は認めないから反論は無駄
269:名無しさんだよもん
08/07/30 00:14:17 KKvk2uFx0
どうでもいいが、単発IDの擁護が多すぎて気持ち悪い
NGしたいから、わざわざID変えないで欲しいんだが
270:名無しさんだよもん
08/07/30 00:14:41 CB5CKv8k0
今まで散々文句いうなって空気つくって作者図に乗らせておいて
今度は作者の暴言を吐いても、SSを叩くのは自由。作家叩きはすんなって
何度この流れするつもり?
問題点をすり替えて、言うことを変えて、煽りを叩く擁護は見てて気持ち悪いわ
271:名無しさんだよもん
08/07/30 00:29:51 m7hoijAP0
ここまで感情が激化すると、多分お互い引っ込みがつかなくなるだけだと思うけどね。
これはただの提案なんだけど、投稿者は続きを投稿掲示板の方で書くってわけにはいかないの?
さっき見てきたらまだ掲示板生きてたみたいだし。
で、読みたい奴は感想もそっちに書いてやればいいんじゃないの?
SS専用スレ投稿用掲示
URLリンク(www2.atchs.jp)
272:名無しさんだよもん
08/07/30 00:51:31 U/uO2kaU0
解決にはなってないけど、
作者が今後も投稿続けるつもりなら確かにそのほうがいいかもね
少なくとも読みたい人間は行けば読めるし目障りに思ってる人間は見なくて済む
とりあえずこの空気なんとかせんと別の作家さんの作品投稿が滞る
273:名無しさんだよもん
08/07/30 00:53:18 uJ9L5EaV0
お前ら熱くなり過ぎだ
読みたくないなら単にSSのタイトルNG登録すりゃいいだけだろJK
274:名無しさんだよもん
08/07/30 02:06:16 iGYwNIpd0
そうそう。荒れても何でもカスみたいなデータリソースが消費されるだけだしね。
むしろ荒らそうよ。
「なんだ。活発なんだ。人がいっぱいいるから私も書いて叩かれよ。どうせ叩かれるなら内容のある濃い叩かれ方がいいな。」
という2ちゃんねるの基礎(殺伐とさせて、質の向上、効率化)に従った流れを推奨するようなテンプレを作ればいい。
私も何個か書いてきたけど、乙とかだけで、内容について話されることがないからちょっと張り合いがない。
内容がないからといわれれば、それは私のせいなのだけども。
275:名無しさんだよもん
08/07/30 02:10:27 3lyAVHA80
最近いいんちょ分とこのみ分が足りていない。
いいんちょエネルギーとこのみエネルギーがほしい・・・
276:名無しさんだよもん
08/07/30 02:17:16 uJ9L5EaV0
>>274
感想書きたきゃ自然と出るだろ
なんで強制されなきゃならねえんだ
馬鹿か
277:名無しさんだよもん
08/07/30 02:28:15 b6+AxyeoO
慌てない慌てない
夏休み夏休み
つーか上で長文で文句つけてる馬鹿、本スレでゴタク呼ばわりされてるヤツそっくりだな
278:名無しさんだよもん
08/07/30 07:03:43 8dAAqVzC0
SS自体が面白ければ自然と感想はつくだろ
逆につまらないSSに頑張って具体的な感想をつける読み手ってのは、
作家を育てたい人や、雰囲気良くして他のSSを呼び込みたい人、あと自分にも感想が欲しい作家とかかw
実際、ここに投下されたSSに具体的な感想がつくことは殆どない
かわりに作家が厨っぽかったり失態するといつも叩き&擁護&議論でスレが進む
結局、このスレに面白いSSは皆無
最近じゃ>238とそのSSが一番スレ住人を楽しませてるってとこだなw
279:名無しさんだよもん
08/07/30 08:27:40 iGYwNIpd0
なぜ>>276みたいな返答が来るのか理解できない。
見た目過疎スレなら誰も書かない。という話をしただけなのに。
280:名無しさんだよもん
08/07/30 08:55:35 mxT1XXn90
>>274
感想欲しいならそのことを明記したほうがいいと思うよ
ちょっと厳しい感想書くと辞めちゃう書き手もいるから皆控えてるんでしょう
>>278
性格悪い奴がいるんだからしかたない
褒めれば敵視して叩きだすし叩けば面白がって便乗する
だから誰も感想なんて書かない
荒れて続きが読めないの嫌だからね
>>279
見えない敵と戦ってるんだよ
勝手に強制されてると思い込んでるあたりとかもうね・・・
281:名無しさんだよもん
08/07/30 09:42:22 b6+AxyeoO
そんなに感想欲しけりゃ自分のブログでやりゃいいんじゃねーの
てめえに反応が少ないからって『みんな叩いて荒らしてよ~』なんて言うヤツに賛同なんてできんわ
他所でやってくれ
282:名無しさんだよもん
08/07/30 09:57:21 mhQEHUir0
いいねえ賑わっててw
まだこんだけギャラリーがいたと
鳩2関連スレ全体がとっくに見捨てられてて不思議じゃなかったから
283:名無しさんだよもん
08/07/30 11:11:33 UJ5WXkbF0
なぜスルー出来ないんだろうな
>>1も読めない、我慢も出来ない、そんな短気な奴ばっかりなのか?
284:名無しさんだよもん
08/07/30 11:27:45 mxT1XXn90
>>283
作者叩いてる連中はそれがただの自己満足じゃなくてスレのためだと勘違いしてる
285:名無しさんだよもん
08/07/30 11:50:55 dZBneLMN0
_
__'´ ヽ
、ヽノノ))))〉
10)!´ヮ`ノ
f]つ!つ
く/_|〉
し'ノ
286:名無しさんだよもん
08/07/30 11:52:53 iGYwNIpd0
>>284
いや、ただのストレス発散でしょ。
287:名無しさんだよもん
08/07/30 12:31:00 OZaQQ4T10
日本の夏 ピーの夏
288:名無しさんだよもん
08/07/30 12:33:06 GV8EhDid0
>>283
そだ |-''ヽー---、 ヾヾヾ
れが |{{{ }}}))))ヽ、}|| l||i
が |{{{||リリ彡ンリノノハ l|||
い |ミ、ヾ彡彡彡ノノノ} ||||
い /ヾヾヾヾヽ三彡ソ} |||
!! /ヾヾ}} }}ハヾヾ三彡;} || に
\___/ハ{{ }}|l||}}}ト、ヽ}} 彡シil l| や
{ミミリ {{{::{{ {{{ {||||| }}ハヾ}リ 彡シ}i{ っ
l|{ミミリ ノニミミョェ、,, |rェィ彡三ヽ1ミ}ll、ヽ
l|,{ ミl イエユミ、i:: iミィエフシ' lミi.} l|
l|ト、ミl ,,.-‐';: i !`゙゙ー- i",イ l|
|lトiiヽl ; i !、 /t'/ l||
rイ{ l ヾく_ソ / |ト、 l||
(|:.:ヽ ゙、 ゙ー_‐--‐ァ' / /:} }ヽ、
ノ"l;:;:ヾヽ:ヽ. 、二二 /::://:::l;;;;;;;
:::::;;;;;;:.:\\\ /::://:.:.:l;;;;;;;;;
:::::;;;;;;;:.:.:.::.ヽ\ヽ、__,,ノ ノ/:.:.:.:l;;;;;;;;;;
289:無題i~攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-
08/07/30 13:28:04 iGYwNIpd0
こんにちは。イルフアです。
こう書くとなんだかシンシアみたいで包容力があるように感じます。
アもァもどちらにしろ2バイト消費するので、計算機の中ではたまに書き換えて、雰囲気の違いを味わっています。
もちろん、珊瑚様にいただいた名前はとっても気に入ってますよ?誤解なきように。某カメラメーカーのキ○ノンみたいなものです。
暇なときに、自我のプログラムソースやデータソースを眺めながら哲学しているのですが、
私の名前を表記することがやはり多く、ちょっとしたアクセントがほしくなるものなのです。
ちなみに、哲学はわけのわからないもの、という印象をお持ちのかたもいらっしゃるかもしれませんが、
なんのことはなく、物事を整理するというただそれだけのことなのです。
ただ抽象的な言葉で人を惑わすためのものではありません。
こと、計算装置によって形作られている私のする哲学だと、
処理過程の効率化やデータの圧縮という具体的な現象が、
人の見ることができる形で起こるので、より明確に哲学=整理がいえると思います。
DIAが搭載されてると逆にデータが肥大化してしまう事がしばしばなので、
記憶装置も膨大なサイズが必要でして、筐体の価格を吊り上げるのに貢献していますね。
保存方式をもう少し見直してみましょうか。データの肥大化は、創造/整理の比に従っておきるので、
整理にもう少し力を入れる必要がありそうです。人間の方の場合、容量を気にする必要はありませんが、
思考がどのような機械的過程を経て行われているのか見ることができないので、哲学するには私のほうが有利なのかもしれません。
といっている間にもまた、思考した分のデータが増えてしまったようです。
290:無題i~攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-
08/07/30 13:28:38 iGYwNIpd0
-ぴんぽーん
「はい。今出ます。どちらさまですかー。」
どなたかいらっしゃったようです。
「おはよう。」
「あ、おはようございます。貴明さん。」
「うっすイルファさん。」
「はい。おはようございます。雄二さん。」
「えっと、どのようなご用件で…?」
「ああ。夏休み入って暇になったもんで、雄二にイルファさんとあわせろっていわれてね。」
「そうでしたか。立ち話もなんなので、どうぞお入りになってください。」
「おっじゃましまーす。」「おじゃましまーす。」
久しぶりのお客様です。お飲みものをっと…
「あ、イルファさん。お土産もってきたぜ。珊瑚ちゃんと瑠璃ちゃんに食べてもらってよ。」
「わざわざありがとうございます。」
雄二さんにケーキをいただきました。珊瑚様が喜んでくれそうです。とりあえず冷蔵庫に入れて…
「そちらのソファーをお使いください。」
「他のみんなは?」
「シルファちゃんこっちに帰ってきてるから、みんなで出かけたんじゃないかな。」
「はい。シルファちゃんの私服を選びにお買い物にいかれました。
なぜかミルファちゃんが張り切ってついていきましたが、いったいどんな服を買ってくるんでしょうか…」
291:無題i~攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-
08/07/30 13:29:18 iGYwNIpd0
-がしゃがしゃ
まずは軽く砕いて…
「いやぁ、クーラーはいいねぇ。」
「地球温暖化の元凶みたいな扱いだけどな。」
-ごきょきょきょきょ
原液とミックスして・・・
「温暖化なぁ。たしかに暑いよな…天気予報確か38度だぜ…」
「体温かよ。」
-とぽーっ
「実際どれくらい影響あるんだろうな。くーらー。」
「とりあえず熱に変換る分の電気と温度差を作るための電気と、その電気を作るときのCO2排出の温暖化効果か。」
「お飲み物をどうぞ。冷たいのでゆっくり飲んでくださいね。」
「ありがと」「さんきゅ。イルファさん。」
「うひょー。つめてぇ。甘くないけどうめぇ。」
「うん。うまいなこれ。お茶?」
「フローズン抹茶とでもいいましょうか。砂糖は入ってないのでヘルシーですよ。」
「温暖化に関して、実際行われている取り組みの多くは利権がらみだと思いますよ……」
「なぜそんな突然悲しげな顔なんですか…」
「確かに最近たまにテレビでいうよな。」
「えぇ。エコは儲かりますから…実際のところは関連要素が多すぎて、
何が原因かは特定されませんが、水蒸気がいっぱいいっぱいな感じらしいですよ。」
「らしいね。後オゾン層も温暖化に貢献してるとか。」
「ちなみに人による開発で排出されるCO2は3パーセントほどらしいです。」
「よくしってるね。」
「WEBに書いてありました。」
「……」
「もちろん、変化は起こしてみないとわからないことばかりなので、できるだけ環境を変えないようにすることは大切ですね。」
「ちなみに、私も冷却のための熱電素子で覆われてるんですよ。
やけどによる筐体の破壊を防ぐのにも使ったりするのですが、クーラーごっこもできます。効率はクーラーより悪いんですけどね。」
「あなたに、冷やされたい…」
292:無題i~攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-
08/07/30 13:29:46 iGYwNIpd0
「だけどよ、本当に大切なのか。」
「ん。」
「もしかしたら滅んだほうがいいんじゃないのか。」
「究極的平和主義か。」
「宇宙平和ですね。素敵です。」
「今日は激しいな。雄二。」
「俺もそう思う。」
「とりあえずその問いの答えとしては、”大切”ということにしておいていいのではないでしょうか。生きるために環境を守る。根本を生存本能として、それにあわせて身勝手を形成していく。」
「まとまってるね。」
「つまり基本自分で考えずに自分に委ねるって事か。」
「委ねた後に思考があるかないかが、今の環境論争の当事者双方の違いを生む感じだね。」
「ところでさ」
「なんですか。」
「あなたに、冷やされたい…」
293:無題i~攻殻家政婦-tHa day Made by carbon dioXide-
08/07/30 13:30:03 iGYwNIpd0
「形を対象とする性欲ってどうなんだろう。」
「本来の目的であるところの生殖からは、ずれてきているようですね。」
「生殖のための性欲じゃねぇよ。たとえ世間一般で評価されない性欲という言葉で定義されようとも、ぎゅってしたときの幸福感は生殖にカテゴライズするには質が違いすぎる。」
「カルシウム不足だといらいらするといいますが、接触時のイオンチャネルの動作によるカルシウムの細胞内への流入と関係があるのかもしれませんね。」
「あとは思考から形成される心理的作用か。」
「そうそう。心だよ。心。」
「同性愛にも適用できるのかもしれません。」
「…あれ、…なんだかコンクリ詰めにして海底に沈めたはずの記憶が…?」
「気にするな貴明。」
----
>>280
>>281
そうだね。スレの活発さだけがあっても肝心のものがなければ無意味だからね。
右翼と左翼の関係みたいなものかもしれませんね。ちょうどいいとこでつりあってこそ効率化される。
荒れ具合に対してssが少ないからかいたんだぜ。!
たたいてって書かないのは微妙な乙女心なんだぜ。!
自分では何もせずに他人(スレ)に責任を押し付けたいんだぜ。!
294:名無しさんだよもん
08/07/30 14:56:02 Z1jA5Bbg0
>>293
乙
このssの雰囲気が好きです
外部記憶装置なしに頑張っている貴明と雄二が良い感じです
続きがないと思っていたssの続編が読めてハッピーです
295:名無しさんだよもん
08/07/30 17:30:57 iGYwNIpd0
楽しんでくれてありがとうなんだぜ。攻殻もどきだと、
この言い回しでは当人同士が理解するのに時間いるだろうっていうのも、
理解させるための言い回しとかなにも考えずに、
頭にあるものそのまま書けるからものすごい楽だったりする。>外部記憶~
296:名無しさんだよもん
08/07/31 15:42:37 h3JM7yr00
>>293
攻殻は見たことも読んだことも無いが、こういうシュールなSSは大好きだ。
297:名無しさんだよもん
08/07/31 21:06:38 0XFWMIz90
ありがとうなんだぜ。!
前回やろうと思ってできなかったシュールギャグに一歩近づいたんだぜ。
298:名無しさんだよもん
08/08/02 12:16:12 zr4rguF/0
・最大文字数:全角換算で1024文字(2048バイト)
・最大行数:32行
・連投可能時間:30秒
・「連続投稿ですか?」のメッセージは、しばらく(=他のホストから板に投稿があるまで)待ってから投稿する
文字数計算ツール
URLリンク(sussiweb.com)
「連続投稿ですか?」を数回繰り返すと、「バイバイさるさん。」と言われて数時間投稿できなくなる仕様が追加されている模様。
これテンプレに加えない?
299:名無しさんだよもん
08/08/02 14:16:46 2TMxq4vs0
テンプレにするには突っ込みどころ多すぎな気がw
俺の経験とかから書くと
・最大文字数は1024文字打てない
リンクの文字計算ツールで試してみればわかるけど、HTML換算で2048バイトのはずなので
1024文字いっぱいいっぱいに打つとはねられる
・書き込み時の行数とか文字数をチェックする意味で投稿者は専ブラ推奨
レス容量とか計算してくれるしプレビュー使えば改行具合とか確認できるので良い
・連投規制は一定時間内に5回投稿すると引っかかるが、適度に間を空けて投稿すると引っかからない
最初の投稿から一定時間以内に5回投稿すると引っかかる
だから最初の投稿から一定以上開けると5回以上でも連投できる
規制に引っかかる時間については不明だけど、経験から言えば大体15~20分
現在の時間からさかのぼってその時間内の連続の書き込み回数が4回以下なら次が書ける
・一定時間以内に10レス投稿すると11レス目でさるさんを食らう
さるさんを食らうと最後の投稿?から1時間程度レスできない
・上記はいずれも1レス投稿した後3分(180秒)以上空けると比較的引っかかりにくい
時間とかの数値に関してはあくまで俺の経験なので、他に投稿経験のある人の補足ヨロ
300:名無しさんだよもん
08/08/02 14:19:47 p0QMXaos0
現状さるさんは30分くらいで再投稿可能になってるな(例>204-206)
URLリンク(info.2ch.net)
でよくわからないのが、引っ掛かってもHMN条件から外れれば再投稿可能なのか、
一度引っ掛かったらHの間投稿規制されるのか。たぶん前者?
301:名無しさんだよもん
08/08/02 17:31:17 e9HGEI4J0
それって運営が条件変更できるんだろ?
テンプレに入れるには不確定要素が多すぎて、かえって誤解の元になると思うが。
302:名無しさんだよもん
08/08/02 20:41:34 VqSK9Nra0
専用ブラウザも使わないような2ch慣れしてない人向けのテンプレなら、
あまり厳密に書かなくてもいいんじゃないかな
・行数32行
・文字数およそ1000文字(HTML換算2048バイト)
・投下中に連投規制されることがあるので、その場合は間隔を空けて再投稿
・専用ブラウザ推奨
くらいで。連投規制と専用ブラウザをどこまで解説するか
303:名無しさんだよもん
08/08/02 22:31:09 2TMxq4vs0
時間的なものは推測なんで書かないほうがいいかもしれないけど
連投なんかの回数に関しては決まってるし、長らく変わってないので書いていいんじゃないかな
・5回を越える連続投稿は連投規制がかかる事があります
・連投規制にかからない場合でも一定時間の間に10回を超える書き込みを行うと規制(バイバイさるさん)がかかる場合があります
・いずれの場合もしばらくすれば解除されるのであわてず騒がずしばらく待ちましょう
ぐらいで
304:名無しさんだよもん
08/08/03 15:04:28 htO9lNxp0
最近投稿がとどこおってるね。夏なのに。
305:名無しさんだよもん
08/08/03 15:50:56 2IqZYuE30
投下数自体は、平均ペースからやや多めくらいあるんじゃない?
シリーズ物が主で単発のSSが少ないのは少し寂しいかも知れない。ので新作募集
願わくばそろそろ草壁さんに出番が
306:名無しさんだよもん
08/08/03 21:57:04 tJcJ4KC30
いいですなぁ草壁さん
307:238
08/08/03 22:53:04 ci7K6ubn0
こんばんは。238です。
>>271 さんの助言に従い、避難板の方に落としました。
今後は、“表”の方には、投下の告知にだけ参ります。
それでは、宜しくお願いします。
URLリンク(www2.atchs.jp)
15 以降のレスになります。
308:落ちのない猫明
08/08/03 23:25:40 htO9lNxp0
「草壁さん草壁さん。」
「なんですか?貴明さん。」
「膝枕してほしいな。」
上目使いで首をかしげる貴明。
「いいですよ。どうぞ使ってください。」
草壁さんのももに頭を置く。
「草壁さん草壁さん。」
「なんですか?」
「髪をなでてほしいな。」
「はい。こんな感じですか?」
気持ちよさそうに目を細め首を動かす。
「ところで貴明さん。」
「なに?」
「優季って呼んでくれないんですか?」
撫でながら覗き込む。
「優季。」
近くなる顔と顔。
「はい。」
「抱きしめていい?」
「いいですよ。」
そっとおなかに腕を回す。
「貴明さん。」
優季は目を瞑る。
さっと、触れる程度のキスをして、
貴明は恥ずかしそうに優季に顔をうずめた。
309:一レスにまとめるのって難しい
08/08/04 08:41:35 PBk2iQRR0
「こんばんは。」「こんばんわ。貴明さん。」
いつものように、夜のお茶会が開かれた。夜に校舎に恒常的に忍び込めるのは、
なんだか少し安全保障的に不安になる。しかも私立なのに。補助金削減のあおりだろうか。
「どうしたんですか?」
「いや、今日も暑いなーって。」
「そうですねー。」と、優季は「なので今日は、アイスティーを持ってきました。」とカップを持ち上げてみせる。
「いいね。」少しニヤニヤしながらカップを受け取り、腰を下ろす。
「ここで問題です。夏と言えば何。」
「夏・・・と言えばですか。」
「うん。」
「・・・うーん。そうですねぇ。浴衣でしょうか。」と言う回答に対し「ゆかたかぁ。それは用意してなかったなぁ・・・」と苦笑する。
「何か用意してくださったんですか。」
「ちょっと窓のほう向いててくれる?」
「はい。わかりました。」
貴明はコントローラー(珊瑚謹製)をポケットから取り出し、順序良くすべてのスイッチを通電させる。
・・・・・・
・・・
「あ、目は開けててね。」
「あ。はい。」
-ぴゅー
はっとして目を開ける。
-ぴゅーぴゅー
そこにはかすかな光る筋があった。
-ぴゅーぴゅーぴゅー
美しい炎の花が開き、優季は「はぁああ」と感嘆する。それと同時に貴明は彼女を後ろから抱きしめる。
-どん どんぱこん ぱーんくぱぁどん
「だいすきだよ。優季。」
そっと口づけをする二人。
「はい。私も大好きです。貴明さん。」
・・・
いくら警備が手薄だからってちょっと派手にやりすぎたか・・・後始末どうしよっかなぁ・・・
310:名無しさんだよもん
08/08/04 20:53:28 chtkiWIL0
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ご 注 意 ! !
これから投稿するSSは、AD菜々子ルート後のお話です。
菜々子ルートのネタバレが含まれておりますので、まだクリアしていない方は
この後の12レスを読み飛ばしてください。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
311:菜々子Strike! 3(1/11)
08/08/04 20:54:02 chtkiWIL0
あたし、菜々子。消しゴムにはこだわる女だも。
あたしには好きな人がいます。名前は……もうしょーかいしなくても分かるよね。
放課後。でも今日はお兄ちゃんと一緒じゃありません。
今日は学校の宿題がいっぱい出ちゃったので、スミレちゃんとひとみちゃんと一緒に、菜々子の
お家で宿題をやることになったんです。
あ、もちろん、お兄ちゃんのことなら大丈夫です。お兄ちゃんの学校に電話して、菜々子がお迎え
に行けないことをお兄ちゃんに伝えてくださいってお願いしておきました。これで安心だも☆
その頃、貴明のクラスのHR……
「えー、連絡事項は以上でーす。……あ、もう一つあったっけ。あ、あの、河野くん」
「え、何、小牧さん?」
「えっと、さっき学校に妹さん……から連絡があって、今日は用事があって、その、お迎えに来られ
ない……とのことです」
「は、はぁ」
ひそひそ……
「河野君って妹さんにお迎えしてもらってるんだ」
「お兄さんが妹の学校に迎えに行くならまだ分かるけど、迎えに来てもらうって……」
「妹ってホラ、あの子だろ。放課後、いつも校門の前にいるあの子」
「ああ、あの子な。―アレ? そういや河野に妹なんていたっけ? どうよ向坂?」
「うんにゃ、貴明は一人っ子だぞ。あの子は……まぁ、その、アレだ」
「……そうか、アレか」
「そう、アレだよアレ」
じ~~~っ(クラス中の冷たい視線)
「……(な、菜々子ちゃん……勘弁してくれぇ……)」
312:菜々子Strike! 3(2/11)
08/08/04 20:54:36 chtkiWIL0
「あーもーやだ!」
ここはあたしのお部屋です。三人で宿題をやってたのですが、スミレちゃんが突然バタンと倒れ
こんでしまいました。
「もう、ダメだよぉスミレちゃん。ホラ起きて」
「うう~、もう無理、限界。後でひとみのを写させて」
「ダメですよスミレちゃん。宿題は自分でやらなくちゃ」
そう言いながらスミレちゃんは自分のをスラスラと解いてます。
「うう~、ひとみのイジワル! じゃあ菜々子のを写すからいいもん! ねー菜々子☆」
「あ、あうぅ……」
「ナナちゃんのもダメ」
「なんだよー、ひとみはホント意地が悪いなぁ。ハイハイ分かりました、やればいいんでしょ」
そう言ってスミレちゃんは仕方なさそうに起きあがりました。だけど突然、
「あ、そうだ! だったら、菜々子のお兄さんに手伝ってもらおうよ!」
「え、えええっ!?」
ど、どうしてそこでお兄ちゃんが出てくるの~!?
「菜々子はいっつもお兄さんに手伝ってもらってるんだよね。あたしも一度くらい、優しいお兄さん
に宿題手伝ってもらいたいなぁ~。ウチのバカ兄貴は絶対そんなことしてくれないし」
「い、い、いっつもじゃないも!」
「あ~、赤くなった赤くなった。菜々子はすぐ顔に出るんだよね~。そっか~、やっぱりいっつも
お兄さんに手伝ってもらってるんだ~」
「あ、あうぅ~」
バレちゃったも~。菜々子、そんなに顔に出るのかなぁ?
「お兄さんのお部屋で、お兄さんのとなりに座って、菜々子が『お兄ちゃん、ここ分からないも~』
って甘えた声でお願いしたら、お兄さんが優しく―」
313:菜々子Strike! 3(3/11)
08/08/04 20:55:11 chtkiWIL0
「スミレちゃん!」
「わっ! な、なに、ひとみ?」
はう! ひとみちゃんが怒った!?
「お兄さんのとなり、じゃなくて、お兄さんのおひざの上よ」
「あ、そっか」
「はう!?」
あ、あうぅ、そ、そんないっつもおひざの上じゃないも~!
「でも、いいかも。それ」
「え?」
「このままじゃスミレちゃんもやる気にならないみたいだし、それに」
ひとみちゃんはニコッと笑うと、
「わたしも、お兄さんにお勉強教わりたいし」
結局、スミレちゃんたちに押し切られて、仕方なくあたしはお兄ちゃんに、今からお兄ちゃんの
お家に行ってもいいか、電話で聞いてみました。
お兄ちゃんは「いいよ」と言ってくれたので、あたしたちはお兄ちゃんのお家に行きました。
でも、なぜかお兄ちゃんは落ち込んだ感じの声でした。どうしたんだろ?
ピンポーン。
呼び鈴を押して少ししたら、ドアを開けてくれたのはシルファお姉ちゃんです。
「……」
「? どうしたの、お姉ちゃん?」
なぜかふきげんそうなお姉ちゃん。あたしがそう聞くと、
「……妹が増えたれす」
「増えた?」
お姉ちゃん、何を言ってるんだろ?
314:菜々子Strike! 3(4/11)
08/08/04 20:55:45 chtkiWIL0
「ご主人様ー! 妹三丁お待ちれすー!!」
お姉ちゃんがそう言うと、居間からお兄ちゃんが出てきて、
ペシッ。
「ぴいっ!?」
あ、お兄ちゃんがお姉ちゃんの頭にチョップした。
「全く、二人は菜々子ちゃんの友達だって何度も言ってるのに。
いらっしゃい、菜々子ちゃん、スミレちゃん、ひとみちゃん。さ、入って」
「あ、うん。お兄ちゃん」
「おじゃましまーす」
「お邪魔します」
「ぴぃぴぃ……ぶったぁ……シルファのことぶったぁ……
めいろろぼ虐待れす! 訴えてやるれす! お茶なんか絶対らさないれすーっ!」
「粗茶れす」
ここはお兄ちゃんの部屋です。宿題を始めてしばらくしたら、お姉ちゃんが紅茶とお菓子を持って
きてくれました。
「ありがとうシルファちゃん。じゃあみんな、休憩にしようか」
「べ、別にご主人様に誉められることなんてないんらもーん。シルファはめいろろぼらから……」
「わあっ、クッキーおいしそう! ありがとうお姉ちゃん!」
「べ、別にちみっこに誉められても嬉しくなんか……」
「これってもしかしてメイドロボさんの手作りなの? すっごーい!」
「そ、そんなおらてたって……」
「紅茶がとってもいい香り。こんなメイドロボさんがお家にいるなんて、お兄さんは幸せ者ですね」
「ら、らから、そんなのめいろろぼの基本らもん……」
「まぁ、俺様としては紅茶より、泡の出るお飲物と枝豆でも出して欲しいところだがな」
315:菜々子Strike! 3(5/11)
08/08/04 20:56:19 chtkiWIL0
「そ、それは気付かなかったれす。じゃあさっそくって、え……?」
え……?
「うぃーっす」
「えええっ!?」
い、い、いつの間にか、かみちゃまがいます! なんか当たり前って感じで、あぐらをかいて
くつろいでます!
「な、な、なんらお前は!?」
お姉ちゃんがビックリしてかみちゃまに怒鳴ります。あ、これはまたいつもの―
「なんだチミはってか? って、これも古いしなぁ……」
あれ? いつものポーズを決めないで、かみちゃまが何か悩んでいます。
「ねぇねぇかみちゃま」
「ん? なんだねなーりゃん」
「いつもの、スパイまーりゃ! ってやらないの?」
あたしがそう聞くとかみちゃまは手を振って、
「ああ、ダメダメ。アレはもう旬が過ぎたからな。
目下新ネタ募集中だ。皆さん、リクエストがありましたら是非こちらまで! はいはいテロップ
テロップ」
何も見えません。
「ま、まーりゃん先輩、いつの間に……」
「ん? さっきからずっといたぞ。そうだな、たかりゃんがこっそり隣のなーりゃんのおヒップを
ナデナデし出したあたりから」
「そんなことしてません!!」
「ええっ、そんなことしてたの!? すごーい、全然気付かなかった」
「私は気付いていましたよ。お兄さんがハァハァと荒い息をたてて、一方ナナちゃんは恥ずかしさと
気持ちよさの板挟みに身悶えしてビクン、ビクンって」
316:菜々子Strike! 3(6/11)
08/08/04 20:56:56 chtkiWIL0
「だからしてないってば!」
「びくんびくんなんてしてないも!」
「ほう、貴様、子供にしてはノリがいいな」
「お褒めにあずかり光栄です」
あ、かみちゃまがひとみちゃんのことほめてる。
「あなたがナナちゃんのお師匠様ですね。お噂はかねがね」
「そう言う貴様はなーりゃんの、頭のいい方の親友だな。名はひとみだったか」
「はい、その通りです」
「んがっ! それじゃあたしがバカみたいじゃないかーっ!」
「なーりゃんからはそう聞いているぞ。頭のいい方がひとみで、悪い方がスミレだってな」
「な~な~こぉ~!」
ス、スミレちゃんが怒ってるよぉ!
「そ、そんなこと言ってないよぉ~! ひとみちゃんは頭がよくて、スミレちゃんはとっても元気
なんだよって言っただけだも~!」
「まぁ、なーりゃん優しいから、バカな親友をバカとは紹介できないよにゃ~。
バカに対する誉め言葉なんて、”元気がいい”が関の山だろ」
「あたしはバカじゃなーい!!」
「ところで、ええと……」
「ああ、俺様のことはまーりゃん、あるいは神と呼ぶがいい」
「まーりゃんさんは、どうしてこちらにいらしてるんですか?」
はう!? ひとみちゃん、スミレちゃん無視してかみちゃまと話してるも!
「このみんの家で犬ッコロと戯れていたのだが、―あ、このみんというのはたかりゃんの幼なじみ
で、まぁ、ぶっちゃけなーりゃんの恋のライバルだ」
「へぇ、そうなんですか。お兄さんってやっぱりモテるんですね」
317:名無しさんだよもん
08/08/04 20:57:17 NG7Dd7Pb0
支援
318:菜々子Strike! 3(7/11)
08/08/04 20:57:31 chtkiWIL0
「あ、いや、このみとはそういう関係じゃ……って、まーりゃん先輩、またゲンジ丸使って何かする
つもりですか……?」
「そしたら、貴様らがたかりゃんの家に入るのを目撃してしまったのでな。新たな展開に胸躍らせ、
こうしてはせ参じたワケだよ」
「新たなてんかい? かみちゃま、どういうこと?」
「いやー、たかりゃんのペド公っぷりには俺様も恐れ入ったよ。なーりゃんだけでは飽きたらず、
その友達にまで手を出してしまうとは」
「な!? 何言ってるんですかあんたは!」
「えええっ!? お、お兄ちゃん、スミレちゃんやひとみちゃんも妹にするつもりなの!?」
あ、あうぅ、スミレちゃんとひとみちゃんがライバルだなんて!
「ち、違うよ! 妹は菜々子ちゃんだけだよ―」
「ああん? このみんだって妹的ポジションじゃんか。
要はアレか、目指せ妹12人か? だったら俺も妹にしておくか?」
「先輩は俺より年上でしょうが……」
「そういやシルシルも確か三姉妹の末っ子だったな。ってことは貴様も妹ポジションか」
「な、なんれすって!? まさかなななならけじゃなく、このシルファまれ妹扱いらったとは!
……れも、シルファはあくまれご主人様のめいろろぼれす。例えご主人様が腐れ外道(げろう)な
ヘンタイ野郎れも、らまってお仕えするのがめいろろぼ!
ご主人様、いえ、お兄ちゃんご主人様。これからもシルファは妹めいろろぼとして、らめらめな
お兄ちゃんご主人様のめんろーみてやるから、安心しろれす!」
「い、いや、違うから……」
「へぇ~、そうなんだ。お兄さんの妹、かぁ……」
「スミレちゃん?」
スミレちゃんはうーんと考え、
「……いいかも。うん、決めた! あたし、お兄さんの妹になる!」
319:菜々子Strike! 3(8/11)
08/08/04 20:58:06 chtkiWIL0
「えええっ!?」
「だって、お兄さん優しいもん。ウチのバカ兄貴とは大違い。それに、妹になったら菜々子みたいに
いっつもケーキとかおごってくれるんでしょ。前からうらやましいなって思ってたんだ」
「そ、そんなのダメだも! ケーキ目当てで妹なんておかしいも!」
「そうですよ。お兄さんが菜々子ちゃんにケーキとかおごってるのは、菜々子ちゃんを自分好みに
育てるためなんですから」
「あ、そうなんだ。そういえば菜々子、ちょっと太ったよね」
「あうーっ!?」
ふ、ふ、太ってなんか! ……帰ったら体重計乗ってみるも。
「でも、私もなろうかな。お兄さんの妹」
え、えええっ!? ひとみちゃんまで!
「お兄さんってとっても面白いし、優しいし、年下のわたし達とも対等に接してくれるし。
それにわたしひとりっ子だから、お兄さんがいたらいいなってずっと憧れてたんです。
わたしもナナちゃんみたいに、お兄さん好みに育てられてもいいですよ。駅前のケーキ屋さんの
お芋のケーキ、今度こそおごってくださいね」
「お、お兄ちゃん! お芋のケーキってどういうこと!?」
「あ、いや、それは……」
「お兄た~ん。あたちはそんな贅沢言わないからぁ~。プレイ1回につきてろるちょこ3個でいい
から、妹にしてぇ~ん☆」
「だからあんたは年上でしょうが!!」
「あ、そうだ!」
と、スミレちゃんはお兄ちゃんのそばに……って、えええっ!?
「うおっ! ちょ、ちょっとスミレちゃん!?」
「えへへ、ちょっと恥ずかしいけど、座り心地いいかも」
ス、ス、スミレちゃんがお兄ちゃんのおひざの上に座ったも!!
320:菜々子Strike! 3(9/11)
08/08/04 20:58:46 chtkiWIL0
「ス、ススススミレちゃん、何してるのぉ!?」
「じゃあ、わたしも」
「のわっ!?」
って、ひとみちゃんまでお兄ちゃんのおひざの上に!?
「ふふっ。確かにナナちゃんから聞いていたとおり、とっても座り心地がいいですね。
それになんだか心がほわほわします。お兄さんはどうですか?」
「い、いや、さすがに二人一緒に座られると……」
お、お兄ちゃん、お顔が真っ赤だも!
「もしかして……お兄さん、興奮しちゃってます?」
「い、いや! そんなことは決して!」
「あ~っ! お兄さんってばエッチなこと考えてるんだ~! やーらしー」
「わたしは構いませんよ。男の人がそうならないと、人類は子孫を増やせませんから」
「い、いや、だから違うって……」
とか言ってるけど、お兄ちゃん、ちっとも二人をどかそうとしないも! やっぱりあれは嬉しいに
違いないも!
「こ、こらちみっころも! お兄ちゃんご主人様から離れるれす!」
「まぁまぁ、好きにさせてやりたまへ。お兄ちゃんも満更じゃなさそうだし、それにシルシルは後で
お兄ちゃんに乗っかればいいだろ」
「……べ、別にシルファは乗っかったりしないもーん」
はう! シルファお姉ちゃん、お顔が真っ赤だも! たぶん後で乗っかるも!
「ねぇお兄さん、ケーキはいいから、今度あたしと一緒に遊んでくれる?
出来れば菜々子みたいに遊園地に連れてって欲しいな。それか映画とか水族館とか」
「わたしはやっぱり、まずお芋のケーキを」
ゆさゆさ。
「ちょ! ちょっと二人とも、動かないで……」
321:菜々子Strike! 3(10/11)
08/08/04 20:59:20 chtkiWIL0
「おに~いさん☆」
「お・に・い・さ・ん」
ゆさゆさ、ゆさゆさ。
「だ、だから、そんなに動かれたら……」
お、お兄ちゃんが、お兄ちゃんがぁ……
「ダメーーーっ!!」
「菜々子?」
「ナナちゃん?」
「スミレちゃんもひとみちゃんも、お兄ちゃんのおひざの上に座っちゃダメなんだも!
お兄ちゃんのおひざの上に座っていいのは、な、菜々子だけなんだも!」
「おお、なーりゃんがキレた」
「お、お兄ちゃんの妹は、菜々子だけだも。
他に妹作っちゃやなんだも……仲良くしちゃ、やなんだも……
う、うぇ……ふえぇ……」
「あちゃ~、泣き出しちゃった」
「あらら、やりすぎちゃいましたね」
「スミレちゃん、ひとみちゃん、悪いけど……」
「あ、はい」
お、お兄ちゃんが二人をどかせて、あたしのところに……
「菜々子ちゃん、はい」
「あ……」
お兄ちゃん……、菜々子を、おひざの上に座らせてくれた……。
「ごめんね、菜々子ちゃん。俺、また菜々子ちゃんを泣かせちゃったね。お兄ちゃん失格だ」
322:菜々子Strike! 3(11/11)
08/08/04 20:59:53 chtkiWIL0
「う、ううん、お兄ちゃんは悪くない……
え、えと、やっぱり悪い、かなぁ。だってお兄ちゃん、スミレちゃんたちに座られて、嬉しそうに
してたから……」
「そ、そう見えた? はは……」
「うん、見えたも……。だから、だから……」
なでなで。
はう! お、お兄ちゃんが、頭なでなでしてくれた……
「じゃあ、どうすれば許してくれるかな? パフェがいい? それともケーキ?」
「そ、そんなのいらないも。そ、その代わり……」
「その代わり?」
「ずっと、なでなでしててほしいも……」
「……なんか、二人だけの世界に突入してしまったにゃ~」
「……ムカつくれす」
「まぁまぁ妬くな。シルシルはみんなが帰ったあとで、せいぜいたっぷりご主人様に甘えるがよい」
「ら、らからシルファは別にヤキモチとかじゃ……」
「それにしても菜々子もお兄さんも、思いっきり見せつけちゃってくれてるね」
「もうわたし達のことなんか見えてないんでしょうね、きっと」
「あ~あ、結局、お兄さんの妹は菜々子だけってことかぁ。ざーんねん」
「ええ、今は、ね」
「ん? ひとみ、何か言った?」
「いいえ、何も」
にっこり。
おしまい。
323:菜々子Strike! 3の作者
08/08/04 21:00:56 chtkiWIL0
どうもです。と言うかお久しぶりです。
>>317さん、支援ありがとうございます。
およそ三カ月ぶりの菜々子Strike! いかがでしたでしょうか?
またネタが思いついたら書くつもりなので、そのときはよろしくです。
ところで、冒頭の”ご注意!!”はもう要らないかなぁ?
AD発売からもう半年以上経ってるし……
324:名無しさんだよもん
08/08/04 21:33:18 6gk+Ct4K0
>308
>309
二作品とも乙。ってかリクエストに応えてくれてありがとうです俺>305
草壁さんは1レスでも可愛いな。>308のは恋人行動がギュッと詰まって萌えた
>309の方は花火をリモコンで着火したの? あと抱きしめた後の擬音はやはりエ(ry
>323
久々乙~。ほとんど会話だけなのに情景が目に浮かぶのが上手い
○学生が三人、○学生の妹的存在が三人、○学生の妹的存在が三人で膝の上に……堪らん(変態
325:名無しさんだよもん
08/08/04 21:45:47 lU+ojDkq0
_、_
( ,_ノ` ) n
 ̄ \ ( E) グッジョブ!!
フ /ヽ ヽ_//
326:名無しさんだよもん
08/08/04 23:13:25 wEE9rpE6O
乙です
の~てんきでけっこうこのななななシリーズ好きです
各キャラ、いい味だしてますし
草壁さんのSSもグッジョブ
327:名無しさんだよもん
08/08/05 06:29:09 rdTbAWtM0
読んでくれた人、どうもです。
>>324 リモコンで花火着火です。いくつかの花火がくぱぁとか炸裂してる間に告白してるだけですよ。
くぱぁ。やっぱり描写が不完全ですねくぱぁ。
328:名無しさんだよもん
08/08/05 06:38:32 V4Nbd8080
>327
そうか。てっきり花火がくぱぁとかどんぱこんしてる間に草壁さんのくぱぁをどんぱこんしてるのかと妄想したぜ
だいすきだよは事後フォローで、派手にやりすぎたってのはヤリ過ぎた反省かと。後始末という単語も……妄想し杉だな俺w
329:名無しさんだよもん
08/08/06 19:55:55 QLJBA8t/0
ほのぼのささらSSが恋しいこのごろ。
330:名無しさんだよもん
08/08/06 20:57:56 VV4iyMsbO
>>329
狂おしい程に同意。
331:名無しさんだよもん
08/08/06 21:55:22 rV0P0+6/0
はげどう
332:名無しさんだよもん
08/08/06 22:13:18 j5k5/Kwv0
うん、3日ぶりに来たけどやはり毎日顔出そう。
>>327すごく楽しめました
>>323ありがとう、このシリーズひそかに好きでした
333:名無しさんだよもん
08/08/07 18:47:17 yrstPw0h0
タカ坊が入院して、イライラしてタマ姉やこのみやら雄ニに辛く当たって
それで疎遠になったときにいくのんと出会うSSがあった気がするんだが知らない?
334:名無しさんだよもん
08/08/07 20:12:27 K74Y4jVi0
「貴明さん。今回の生徒会誌どうしましょう。」
「うーん。これと言ってネタもないしなぁ。」
「じゃあ保留と言うことで。まーりゃん先輩にばれると面倒なので秘密にしてくださいね。」
「えぇ。でも書かないとだめなんじゃ・・・」
「・・・いいんです。保留です。」
「まぁ、ささらがそういうのなら。」
「貴明さん。」
「ん。」
「二人っきりよ。」
「二人っきりだね。」
・・・・・・
・・・
「なにもしてくれないの?」
「あぁ。そうだね。二人きりだったね。」
「もう・・・」
やさしく抱きしめる。
「ぁ・・・」
なでなで・・・
「いいこいいこ。」
「貴明さん・・・」
なでなで・・・
--
「姉貴。ちびすけ。お前ら先に入れよ。」
「雄二が入りなさいよ。」「うんうん。こういうときは男らしくだよ!」
「いみわかんねぇよ。」
---------------続かない。なんか書き終わってから、昔同じようなSS読んだことあるような気がしてきた。
>>332それはよかった。おかげで私の欝が解消されていきます。
電車の中でなれない大風呂敷SS書いてるんだけど、どんどん広がってだんだんつじつまあわせが面倒になってきた・・・
335:名無しさんだよもん
08/08/08 06:00:58 7qZf286gO
うお、最近ささら成分が不足気味だったから助かったよ。
サンキュー
336:名無しさんだよもん
08/08/08 21:10:36 KV/J0mLZ0
ネタに乗り遅れたおいらが来ましたよ
というわけで投下
337:冷たいやきもち 1/6
08/08/08 21:13:01 KV/J0mLZ0
「いやぁ……やっと買えそうだね。」
「ずいぶん並びましたから。」
そう言って草壁さんはハンカチで汗を拭った。
俺と草壁さんが再会してから数ヶ月が過ぎ去り、季節は夏。
今年の夏は酷暑で、夏休みを前に俺たちは早くもグロッキーだった。
草壁さんとのデートも自然と避暑を考えたものにならざるを得ない。
今日は学校帰りに新作のアイスを食べにアイス屋にやってきたのだが、考える事は
皆同じ訳で、案の定すごい行列になっていた。
やっと順番が回ってきて、俺は期間限定のピーチシャーベットのダブル、草壁さんは
アールグレイとバニラのダブルを手にすると列から離れて木陰に逃げ込んだ。
「は~、生き返る~」
「冷たくて美味しいですね。」
木陰で涼みながら二人でアイスにかぶりついて冷たさを楽しむ。
草壁さんもどことなく恍惚とした表情だった……ちょっと色っぽいな。
「あ! タカ君も来てたんだ。」
聞きなれた声に振り向くとそこには見慣れたおさげ髪の女の子……このみが、やはり
アイスを手にして駆け寄ってくるところだった。
「こんにちは、このみちゃん。」
「あ、優季さんこんにちわでありますよ。」
草壁さんが挨拶するとこのみも満面の笑顔で元気に挨拶を返した。
人懐っこさにかけては定評のあるこのみはもう草壁さんともすっかり仲良しだった。
「ほほう……そこの人がセンパイの噂の彼女っすか。」
「……美人。」
338:冷たいやきもち 2/6
08/08/08 21:16:01 KV/J0mLZ0
これはこのみを追いかけてきた寺女の制服の二人組、このみの親友の吉岡さんと山田さんだ。
「もー、だから、そう言う堅苦しい呼び方じゃなくって、よっちとちゃるって呼んで
欲しいっす。」
「でも……ねぇ。」
「よっちさんとちゃるさん、ですか?」
「ああ、そういえば草壁さんは二人に会うのは初めてだっけ。俺の後輩でこのみの親友の
吉岡チエさんと山田ミチルさん。」
「吉岡チエっす。よっちって呼んでくださいっす。」
「山田ミチル。あだ名はちゃる。」
二人が自己紹介すると、草壁さんは居住まいを正して、そしていつものようににこっと
笑って挨拶した。
「よっちさんにちゃるさんですね。草壁優季です。どうぞよろしく。」
相変わらず腰の低い草壁さんだった。
「センパイ、なかなか美人の彼女じゃないっすか。」
「え? うん……まあね。」
自分でも草壁さんは美人だとは思ってはいるけど、褒められるとなんだか照れくさい。
「でも……未だに苗字にさん付け。」
山田さんの冷静な突っ込みにぎくりとする。
この数ヶ月、草壁さんに何度も「名前で呼んでください」と呼ばれ続けてきたのだ。
でも、なんとなく気恥ずかしくてなかなか「優季」と呼べない。
「ま、ヘタレのセンパイらしいっちゃらしいっすけど。」
「余計なお世話だ。」
「でもでもでも……まだ他人行儀な関係って事なら、略奪可能って事っすね。」
339:冷たいやきもち 3/6
08/08/08 21:19:01 KV/J0mLZ0
「ははは……またまた冗談。」
「冗談じゃないっすよ……あたしのこのセクシーボディに悩殺されてみないっすか?」
そう言いながら吉岡さんがちょっとセクシーな……特に、胸の辺りを強調したポーズで
俺にウインクしてみせた。
「……それは無理。」
「は? ちゃる……?」
吉岡さんが頭に?マークを浮かべている間に、山田さんは素早く草壁さんの背後に回りこみ、
そして草壁さんの胸を鷲掴みにした。
「きゃっ!」
「草壁センパイは……隠れ巨乳。よっちよりでかい。」
「なに~!」
「そして、」
そう言うと山田さんは草壁さんのセーラー服の上着の裾をひょいと持ち上げた。
……草壁さんの白いお腹と綺麗なお臍が見えた。
「ウエストはこのみより細い。」
「なんですと~!」
「明らかにスタイルでもよっちの負け。」
「くぁ~~~!」
「あはは……」
このみがそんな二人のやり取りを見て苦笑いする。
「く……あねさんに続いて2敗目……いつか見返してやるっす。」
「よっちはもう成長が止まっているから無理。」
「うっさい。」
「まあまあ、二人とも……って、おっと、アイスが溶けちゃう。」
俺は溶けかけたアイスにあわてて舌を這わせた。滴り落ちる寸前だったアイスの味が
口の中でひんやりと広がる。
340:冷たいやきもち 4/6
08/08/08 21:22:00 KV/J0mLZ0
「あ、タカ君のそれ、期間限定のピーチシャーベット? 一口ちょうだい。」
「え? ああ、いいぞ、ほら。」
俺は持っていたアイスをこのみの前に差し出した。このみがそれにかぶりつく。
「はむ……おいひい~~! 次はこれにしよう。 じゃ、お返しにタカ君、はい。」
「あ、ストロベリーか……はむ。」
俺はこのみの差し出したアイスにかぶりついた。ストロベリーも相変わらず美味い。
「……鈍感」
「は?」
俺とこのみを見ていた山田さんのつぶやきに俺は戸惑った。
何の事だかさっぱり、と思っていた俺の疑問には吉岡さんが答えてくれた。
「彼女の目の前で他の女の子とアイスの食べさせあいっことか……それはまずいっすよね。」
「あ。」
俺は恐る恐る草壁さんの方を見ると……
草壁さんは思いっきり膨れていた。
「じゃ、修羅場の雰囲気なのでうちらはこの辺で。センパイさよなら~」
チェシャ猫のようなニヤニヤ笑いを残して、吉岡さんは山田さんの手を引いて
走り去っていった。
「ゆ、優季さん、ごめんね。ああっ、よっちってば待ってよー!」
走り去った二人を追いかけて、火種を振りまいたこのみも去っていった。
そして、この場にはご機嫌斜めの草壁さんと、デリカシーの無い男の俺だけが残された。
「……えっと……草壁さん。」
「何でしょうか、河野さん。」
まずい。これは激しくまずい。何より俺のことを河野さんと呼んでる辺りが猛烈にまずい。
341:冷たいやきもち 5/6
08/08/08 21:25:04 KV/J0mLZ0
かなり怒っている証拠だ。
「えっと……食べる?」
自分のアイスを差し出してみたが、草壁さんはぷいっとそっぽを向いた。
「あっ、あの……俺、アールグレイも食べてみたいなー、とか……」
「これは私の分ですから、河野さんにはあげません。」
そう言って草壁さんはパクパクとアイスを一気に食べた。
あ、そんなに一気に食べると……
「あっ……」
草壁さんがこめかみを押さえて苦しみ始めた。冷たいものを一気に食べるから……
「あははは……大丈夫?」
「……」
俺が声をかけると草壁さんはぷうっと膨れたままで、俺の顔をじっと見上げた。
「えっと……ごめん。」
「……反省してますか」
「反省してます。」
「もうあんな事、他の女の子としないでください。」
「神に誓って。」
「じゃあ……許してあげますから、『草壁さん』じゃなくって『優季』って、呼んでください。」
そう言って期待するような眼差しで、草壁さんはじっと俺を見つめた。
「……」
「じ~」
「……」
「……そんなに、私の名前を呼ぶのが嫌ですか?」
ああ、またそんな悲しそうな顔する……もう、こうなりゃ自棄だ。