08/02/20 23:30:58 GceIuygi0
悲喜こもごものバレンタイン。
その前半戦を終え、勝ち組と負け組が明らかになった教室内に激震が走った。
『あの里村が本命チョコを準備している』
証言者は南。なんでもいつ自分にくれるのかと茜を見ているうちに気がついたそうだ。
鞄の隙間から見ただけだが、箱の大きさ、ラッピングの気合の入れようから考えて、本命チョコなのは確実だと周囲の者に語っている。
引き続き妄想を語る南を尻目に、辺りにいた男子は考える。
情報の信憑性は高い。あの南が里村のことで間違えるはずがない。
となると誰に渡すのか?
「このクラスの男子かもしれないよ?」
急に聞こえた少女の声に、慌てふためく男性陣。
「こんにちはっ。茜のチョコのことだよね?」
騒いでいた男子はお互いを肘で突付きあっていたが、目を輝かせる詩子に諦めたように頷いた。
ちなみに南はまだ妄想を語っている。今三人目の子供が七五三を迎えた所だ。
「そんなに気になるなら、聞いてきてあげよっか?」
マジですか?言葉は出ずともそれ以上に雄弁な表情の男たち。
詩子はそれをなだめるように手を振ると、その指をわっかの形にして微笑んだ。