08/03/14 00:17:50 hcvmFcSN0
だから僕は行動に移す。
ギュッ
僕は彼女の肩を掴み揺さぶった。
「え?な、直枝理樹!?」
僕の行動に驚いて佳奈多さんは目を見開いた。
けどお陰で言葉を止めてくれた。
「ごめん。……でも言いたいことがあって」
「な、何が……」
「僕が嘘をついたことと、佳奈多さんが不機嫌になった理由。
それがまだ僕は理解できていない。けどそれは絶対佳奈多さんが自分を責めることじゃないはずなんだ」
それだけは間違っているとは思えない。
もし責任があるとしたら僕なんだろう。
「僕は何をしてしまったの?……ううん、僕が嘘をついたことで何があったの?
その、これと関係あるの?」
チョコレートの空箱を差し出す。
そう。僕にこれを叩きつけた理由はきっとそれに関係しているはずだ。
でも僕にはその関係が思いつかない。
その鈍感さが嫌になる。
本人に聞かないと分からないなんて、なんて情けない。
「あ……その……」
僕の言葉に答えて僅かに躊躇の表情を見せた後は口を開いた。
「……それは、あなたへのチョコよ。あなたがチョコを貰ったことがないって言ったから……。
……柄じゃないと自覚してるわ。けれど放っておけないもの。だから買ってきたのだけどね……」
佳奈多さんは自嘲するように口元に薄く笑みを浮かべ答えた。
僕は持っていた空箱をまじまじと見つめた。
「でもね、昼休みにあなたが葉留佳たちからチョコを受け取っている姿を見て
自分がどれだけ滑稽だったか気づいたわ。だってあの子達が渡さないはずないんだもの。
……いいえ、それだけじゃない。昼休みね、ギリギリに戻ってきた葉留佳がとても不機嫌だったの。
気になって次の休み時間に尋ねたら、あなたがチョコを他の子からも貰ってたって言ってたのよ」
ああ、僕が笹瀬川さんに会っていた時か。
657:ショコラ6 (11/20)
08/03/14 00:19:06 hcvmFcSN0
「あなたに好意を持ってる人間はこんなにいるんだったって、今更ながらに気づいたわ。
いいえ、なんで気づかなかったんだろうって自分の行動が恥ずかしくなったわ。
……無意識に気づかない振りをしてたのかもしれないわね。
だからかしらね。自分のチョコがとても不恰好なものに思えて……さっき食べちゃったわ」
結構美味しかったわよ、なんて笑顔で彼女は言う。
……ああ、やっぱり自分の鈍感さに怒りがこみ上がる。
そんなこと、女の子に言わせるべきものじゃないのに。
少し考えれば思い当たるはずなのに……何故僕はこんなにも人の気持ちに鈍いのだろう。
「…………ふん、あれだけ浮かれてることに対して文句を言ってたくせに、
結局やってることが一緒じゃ世話な「佳奈多さんっ!!」……え?」
なおも自虐的な言葉を口にする彼女に向かって叫ぶ。
そんな姿、見たくなかったし、彼女が自分を皮肉る理由なんてないと思ったから。
「ごめん。佳奈多さんが怒るのは当然だよ……。
あんな嘘吐かれたら馬鹿にしてるって感じるよね……」
そう。全部僕が悪いんだ。
チョコレートを貰ったことがない。
そう聞いて佳奈多さんは何とかしてくれようとしてくれたんだろう。
もしかしたらちょっとしたからかいくらいはあったのかもしれない。
でも結局、その男は当日いくつもチョコを貰っていた。
それどころか貰ったことがないと言う言葉さえ嘘だった。
そんなの怒って当然だ。馬鹿にしている。
「なのにあんな偉そうなこと言って、ごめん。本当にごめん」
僕は何度も何度も頭を下げる。
なにが仲良くなりたいだ。
なにが攻撃的な口調を止めてくれだ。
そうさせたのは紛れもない僕じゃないか。
「だから、あなたのせいじゃないと言ってるでしょ。私が勝手にやっただけで」
「でも……」
彼女を苛立たせた理由は僕以外ないじゃないか。
そうとしか考えられない。……けれど佳奈多さんは僕の言葉を真っ向から否定した。
658:ショコラ6 (12/20)
08/03/14 00:19:42 hcvmFcSN0
「違う、違うわ。私は別にあなたを責め立てたくてあんなことを言ったのではないわ。
……はぁー、自分の性格が嫌になるわ。こんな言い方しか出来ないから勘違いさせるのよね。
あのね、私が不機嫌だったのはあなたに嘘を吐かれたからじゃないわ。
あなたの言葉に嬉々として動いた自分自身の浅ましい考えに怒りを覚えたからなのよ」
そこまで言い終えると、彼女は僕から目線を逸らしポツリと呟いた。
「その…………チャンスだと思った自分が嫌だったのよ」
「え?」
チャンス?
その言葉の意味を図りかねた。
彼女は僕の戸惑った表情を見たのか、小さく溜息をついた。
「本当に分からないの?……下心を持って動いてたと言ってるの。情けないことにね」
そこまで言うと、彼女は力無く僕を見つめた。
「下心?あ、あの、また良く分かんなくなってきたんだけど」
佳奈多さんが何を言いたいのか分からない。
なんだろう。何かを決定的に僕は勘違いしていた気がしてきた。
「本当にあなたは鈍いのね……」
馬鹿にするような言葉で、でも口調には一切嘲りを含まず彼女は呟いた。
「それは……嫌と言うほど分かってるよ……」
だからこんなにも情けないって痛感しているのだから。
僕の顔を見つめていた佳奈多さんは不意に話題を変えた。
「ところで、直枝理樹。あなたは葉留佳たちの気持ちに気づいているのかしら?」
「え?葉留佳さんたち?」
何故ここで葉留佳さんたちのことが出てくるのだろう。
「そう、あの子達の気持ち。まさか気づいていないとは言わせないわよ」
有無を言わせない表情。でもそのことで彼女が何を言いたいのか分かった。
「……さすがに、気づいてるよ。鈴たちが僕に好意を持ってくれていることくらい」
あそこまでされて気づかない方がどうかしてる。
でもだからと言って。
「それから先に進みたいって気持ちはまだ持てないけど」
「……なに、風紀委員長を目の前にして堂々と不純異性行為の宣言?」
659:ショコラ6 (13/20)
08/03/14 00:21:40 hcvmFcSN0
「ち、違うよ。そうじゃなくて恋愛関係になりたいかって言われると微妙ってこと」
僕の言葉に分かってるわよと、小さく佳奈多さんは頷いた。
「でも分からないわね。あの子達は十分可愛いでしょ。葉留佳なんて特に。
なのになんでそういう気持ちになれないのかしら」
「それは……分かるよ。綺麗だし可愛いとも思う。
でもさ、踏み出していいのかも分からないし、向こうもそこまで望んでるのか分からないもの。
ぶっちゃけて言えば好意は好意でも友達としての好きって延長なのかなって気がしちゃって」
「はぁ?何を言って……」
佳奈多さんは呆れたように呟く。
でもしょうがない。
「だって、僕は特別好かれるようなことなんてしてないもの。
だから自信が持てないし、鈴たちの真意も分からない。
そんな状態で今のこの関係を壊してもいいなんて気持ちは沸いて来ないんだ」
もし本当に誰かを好きだって思えたらきっと僕は迷わず動けると思う。
みんなだってその時には祝福してくれる。それくらい僕たちの絆は決して浅くないと信じてる。
でも今はリトルバスターズの関係の変えてもいいって気持ちを持つことは出来ないでいる。
「それは、他の子にも言えるのかしら」
「え?他の子?」
「そう。葉留佳たち以外からもチョコ、貰ったでしょう」
「あ、うん、そうだね」
言われて考える。
杉並さんとかから貰った時、どう思ったのか。
あー、たぶん一番相応しいのはあれかな。
「困った、かな」
「困った?」
「うん。なんで僕にくれるのかなって。
去年は分かるよ。恭介たちのついでって感じだったし。
でも今年は違う。本気の気持ちをぶつけられた気がするんだ。
けれどそんなものを貰えるようなことした記憶がないからどうすればいいんだろうって」
だから困ってしまう。
素直に気持ちを受け取れないでいる。
660:ショコラ6 (14/20)
08/03/14 00:22:07 hcvmFcSN0
「真面目ね。そして本当に鈍いわね。………いえ、それともそれが自然だからかしら」
「え?」
僕の戸惑う声に彼女は薄く微笑んだ。
そしてそっと口を開く。
「あの事故以来、あなたは本当に変わったのよ。あなた自身は気づいていないでしょうけど。
そんなあなたにきっと助けられた人はたくさんいるわ」
「そう、なの?よく分からないけど」
本当に特別なことをした記憶はないんだけどな。
けれど佳奈多さんはそれでもあなたに助けられた人はいると繰り返した。
「だから、かしらね。きっと私も……」
「?」
小さな呟き、その声が聞き取れなくて首を傾げる。
「……ねぇ、直枝理樹」
「な、なに?」
幾分鋭い響きを持って声を掛けられ、僕は少しばかり驚きながら答えた。
「それ貰うわよ」
「へ?わっ、ちょ……」
僕が何か答えるより先に佳奈多さんの手が動き、持っていたココアの缶を奪われてしまった。
「な、なにするのさ」
いや、たかがココアくらいで怒る気はないけど、いきなりは止めて欲しい。
でも佳奈多さんはそんな僕の抗議を聞き流すように缶を玩び、プルトップを開けた。
「直枝理樹。私が何故不機嫌だったか教えてあげるわ」
「え?あ、うん」
どういう流れでそうなったんだろう。ホント、さすが葉留佳さんの姉だって思うくらいの唐突さだ。
まぁ、教えてもらえるなら文句は言わないけどさ。
「本当に、簡単なことなのよ」
「う、うん」
「あなたが鈍感すぎるから悪いのよ。女の子にこんなことを言わせるなんて」
顔を赤らめ何かを決心したような表情を佳奈多さんは見せる。
その珍しい表情に戸惑いを覚え、思わず固まってしまう。
661:ショコラ6 (15/20)
08/03/14 00:22:43 hcvmFcSN0
そして木偶の坊のように突っ立っている僕にぎこちなく微笑みかけると、
佳奈多さんは僕の背中に手を回し思いっきり引き寄せた。
それに対して抗議の声が上げようとした瞬間、
彼女は意を決した表情を見せ、小さくでもはっきりと口調で囁いた。
「好きだからよ、あなたを。理樹くん」
「え?あ……んんっ!!?」
その言葉に反応するよりも早く、僕の唇は何かに塞がれた。
いや、違う。佳奈多さんの唇によって僕の唇は奪われたのだった。
そしてそのまま舌が口腔を侵入し、何かが流し込まれた。
「ん……はふぅ……むぅ……くちゅ……」
この口の中に広がる甘さは……ココア?
きっと僕が驚いた隙にココアを自ら呷って口移しで飲ませているんだろう。
佳奈多さんにキスをされている。
その出来事にショックを覚えつつも、僕の頭は完全に動転せず、そんな推理をしていた。
女の子にファーストキスを奪われたという事実は、本来もっと驚きパニックを起こしたって
おかしくないはずなのに、何故かキスを言う行為を客観的に見れるくらい落ち着いていた。
(……初めてのはずなのに……)
でも何故だろう。記憶にない思い出が蘇りかけるのは。
そしてその中に、目の前の彼女の姿が含まれているような錯覚を覚えるのは。
……けれど考えはそこで止まる。なぜなら僕は彼女の姿をはっきりと意識してしまったから。
「ん……う、ん……んん……はふ……」
顔を赤くしで必死な表情で手を回し、キスを続ける佳奈多さんの姿がそこにはあった。
その姿にさっきまで考えていたことはあっさりと霧散した。
そう、目の前の彼女に比べればさっきの考えはどうでもいいことだった。
彼女がああまで大変そうなのはおそらく自分の方が背が高いからだろう。
(きっと飲ませ難いのだろうな)
頑張って舌で押し出そうとしているんだろうが、
上手くいかず幾筋かココアが彼女の口元から垂れていた。
その頑張っている姿が妙に可愛く健気に見え、手伝ってあげたくなった。
662:ショコラ6 (16/20)
08/03/14 00:23:08 hcvmFcSN0
……後から考えればなにを馬鹿なことをしたんだろうと凹むほど愚かしい行動だったけど、
その時は本気でそう思ったのだ。
キュッ
僕は自らの腕を彼女の体に回した。
その瞬間、彼女の体はびくりと震え、僅かに強張った。
僕は安心させるようにその体を静かに抱きしめ、柔らかい髪ごと背中を撫でた。
何度か撫でているうちに彼女の体から力が抜け、僕に体重を預けてくれるようになった。
それを見て、僕は自らの舌を彼女の舌に絡ませ、互いの唾液を交換するように彼女の口の中に侵入した。
「むうっ!?」
さすがに驚き佳奈多さんは目を見開くが、無視して僕は彼女の口腔に残ったココアを一気に吸った。
ビクンビクンと体を小刻みに震わせ、徐々に体を擦り付けるように佳奈多さんは僕に垂れかかる。
背中に回した彼女の手にも力が篭り、まるで振り落とされないようにしがみ付く子供のようだった。
そんな反応が可愛く新鮮で、彼女の口の中からココアが無くなるまでずっと見つめ続けるた。
「んく……ん……はぁ……」
そして佳奈多さんの唾液とココアの混合物を飲み干すと、僕らはどちらからともなく唇を離した。
その瞬間お互いの唇から銀糸が掛かり、ぷつんと切れる。
それと共に彼女の体は僕にもたれかかるように崩れ落ち、僕は慌ててその体を支えた。
彼女の顔を見ると目の焦点は合っておらず、
惚けた表情のまま口元には幾つかのココアの垂れた後と唾液の跡も見て取れた。
「え、えっと……」
よかれと思って手伝ったんだけど、被害拡大させたようにしか思えない。
というかこれって結構まずい?
と、とにかくそのまま放って置くのもなんだし、
ズボンのポケットからハンカチを取り出して、彼女の口元を拭った。
「……あ……」
そして粗方口元を拭い終えたところでようやく彼女は目の焦点が合い、虚脱状態から回復したようだ。
さて彼女はなんと反応を示すんだろう。
できればいきなり怒鳴るのだけは勘弁して欲しい。
「……大丈夫、佳奈多さん」
ともかくまずは落ち着いてもらおうと、僕は出来るだけ優しい声で彼女に語りかけた。
663:ショコラ6 (17/20)
08/03/14 00:24:04 hcvmFcSN0
すると佳奈多さんは僕の言葉に熱に浮かされたような視線を向け、気だるげに尋ねた。
「…………キス、初めてじゃなかったの?」
「え?」
「驚かせようと思ったのに……逆に驚かされたわ……」
あ、あれ?なんかテンション下がってる?
「えーっと、僕初めてだよ。生まれて初めてのキスを、今この場で佳奈多さんに奪われたんだけど」
「う、嘘よ。だってあんな……上手いのに……。それに凄く冷静だったし……」
そこで言葉が途切れ、佳奈多さんは自分の頬に手をやった。
その顔は真っ赤に染まっており、今にも倒れそうだ。
「い、いや、その……」
そう言われると言葉に詰まる。
確かに佳奈多さんにキスをされたこと自体は驚いたけど、必要以上にテンパらず事実を受け止められた。
普通ならあまりのことにあたふたと動揺を見せるものなんだろうな。
「私が初めてだと思ったのに……。いったい何人の女とキスしたのよ……」
恨みがましそうな視線で僕の目を見つめてくる。
い、いや、だから。
「本当に僕初めてなんだってばっ。というかなんでいきなりキスなんてしたのっ。
いや、それよりもさっきの言葉ってなに?……その、冗談ってわけじゃ……」
「ないわよっ。私だってキスは初めてなんだもの。
なんとも思ってない相手にそんな貴重なもの捧げるほど安っぽい女じゃないわ」
なんと言うか意外に古風な考えの持ち主らしい。
まぁ、誰かとキスの経験があるって言われたら気持ちとか関係なくショックなんだけどさ。
と、それは置いといて。
「ほ、本当なの?全然そんな素振り見せなかったし……」
にわかに信じがたい。
けど佳奈多さんは僕の言葉に不満げな表情を浮かべた。
「素振りぐらい見せたわ。あなたが鈍いだけ。
私は、その……あなたのこと、好きよ」
頬を染めながら彼女はもう一度はっきりと告げた。
その言葉に一瞬で頭の中が沸騰する。
664:ショコラ6 (18/20)
08/03/14 00:24:33 hcvmFcSN0
「そ、それは……えと……」
どう答えればいいんだろう。
彼女がそんな気持ちを向けてくれてたなんて全く気づいていなかったのに。
なので、どんな反応をすればいいか分からなかった。
「別に今すぐどうこうってわけじゃないわ。ただ伝えたかっただけ。
………それで、私がさっきまで不機嫌な理由は分かったかしら」
腕の中で彼女は小首を傾げる。
理由とそう言われても。僕のことを好きってこととどういう関係があるんだ?
「ふぅー、まだ分からない?なんてことのないただの浅ましい考えよ。
あなたがチョコを貰ったことがないって聞いて、
それなら私があげたらあなたが気にしてくれるかもって甘い考えを抱いてチョコを買ったのよ」
それがチョコを佳奈多さんが買った理由?
「けど葉留佳たちが渡す可能性は十分にあるって今なら気づけたのに、
その時は自分の考えに舞い上がっていたのか気づけもしなかった。
でも実際にあなたが葉留佳たちにチョコを貰ったのを見たことで、
自分がどれだけ短絡的で欲に捕らわれた考えで動いていたか分かったのよ。
そんな自分に嫌悪感すら抱いたわ。だから買ったチョコはすぐにでも消し去りたくて自分で食べたのよ」
でも結局八つ当たりをしてしまったわ、ごめんなさいと彼女は頭を下げた。
けどそんなのとんでもない。
「謝らないでよ。僕がもっと早く気持ちに気づいて上手く立ち回ってれば良かっただけだよ」
僕が自分の不甲斐なさに落ち込むと、彼女が小さく笑う。
「……ふっ、立ち回れない方があなたらしくていいと思うけどね」
「そう、かな。そんなことないと思うけど。……でもだったらなんであんなことしたの?」
「……嫌だったかしら?」
「い、いや、それは……嫌って言ったら嘘になるけど。でもなんで急に……」
話を聞く限り直接気持ちを伝える気はなかったみたいだけど。
僕が問いかけると彼女は僕の肩に手をやると体を離した。
665:ショコラ6 (19/20)
08/03/14 00:25:07 hcvmFcSN0
「佳奈多さん?」
その行動に思わず声をかけると、彼女はゆっくりと口を開いた。
「あなたが悪いのよ。あなたが私にもまだ大丈夫だって思わせたから」
「え?」
「正直、葉留佳たちには負けると思ってたわ。いいえ、あなたとの関係性ならバスターズの連中の方が
圧倒的に上だもの。あの子にも悪いって気持ちも少なからず有ったし」
「う、うん」
「けどあなたはあの子達のことをまだ恋愛対象と見てないと、
気持ちを向けられる理由が分からないって言ったわ。仲間としての関係性を崩したくないと」
確かに言った。
今の僕には彼女達に好かれる理由が分からなければ、
自分が彼女達に相応しいような人物だという自信もない。
「そんなこと言われたら期待してしまうじゃない。私でもまだあなたを好きになっていいんだって」
「それは……」
否定の言葉は出てこない。
だって元より僕は佳奈多さんのことを鈴たちと同じくらい大切だって思ってたから。
好かれたくないなんて言葉、嘘でも思いたくない。
「浅ましいと思ったわ。自分がさっきまでやっていた行動を思い出したら特にね。
けれど仕方ないわ。あんなにも優しくされたら気持ちを抑え付けておくなんて出来ないもの。
だから伝えたのよ。理樹くん、あなたが大好きだって」
彼女はにこりと笑顔を作る。
それはたぶん今まで佳奈多さんを見てきた中で一番綺麗な笑顔だった。
「僕、別に何もしてないよ」
けど彼女の言う優しいことと言うのが皆目検討付かず、戸惑ってしまう。
666:名無しさんだよもん
08/03/14 01:10:07 SrZDWmdQO
支援
667:ショコラ6 (20/20)
08/03/14 01:10:20 hcvmFcSN0
すると彼女は予想していたように笑い、告げた。
「キスの上手さもそうだけど、あなたって天然の女殺しよ。ジゴロって言ったほうがいいのかしら」
「ちょっ、相当失礼なこと言ってるよね」
「あら、事実よ。……だから自覚しなさい。
あなたの行動がどれだけ女の子の助けとなり幸せを与え、同時に不幸にするかを」
きっぱり言われてしまうと反論できなくなる。
僕ってそういう人間なんだろうか。ただ普通のことを当たり前にしているだけなのに。
「それと、さっきのキスだけれど、あげられなかったチョコレートの代わりよ。
ココアだし、私が買ったものじゃないからかなりのマイナスだけど、
私のキスのおまけ付きってことでプラマイゼロかしら?」
「い、いやー……」
頭を掻きながら言葉を濁す。
こっちがキスを堪能してしまったことを分かってて言ってるんだろうな。
……やっぱ性格悪いよ。やっ、文句を言える立場じゃないけどさ。
「まぁ、満足はしてくれたようだから良しとしましょう。
…………私も予想外に気持ち良かったし……」
「え?」
最後の台詞だけ声が小さくて聞き取れない。
でも彼女は僕の声に何の反応も示さず、それどころか真後ろを向いてしまった。
ただ振り返った際、彼女の耳が真っ赤に染まっていたように見えたのは気のせいだろうか……。
668:名無しさんだよもん
08/03/14 01:11:23 XTXL205V0
スレ立て失敗。支援求む。
次はpart9なので注意
669:ショコラ6
08/03/14 01:11:49 hcvmFcSN0
一旦これで終了します。
最後の話は明日夜。
結構長くなってしまってすみません。
670:名無しさんだよもん
08/03/14 09:52:48 Z5OpvQQc0
>>756
じーじぇい、先が気になるが投稿はしばしまたれよ(・ω・´)
妄想スレ2代目立てた人が通りますよ。支援に来たけどスレタイどーする?
てか誰かいるのかな?
671:名無しさんだよもん
08/03/14 11:02:17 A3XP9JYe0
虚構世界でだいぶ鍛えられたみたいですネw
次スレ別にシンプルにリトバス妄想スレpart9でいいんじゃないの?
672:名無しさんだよもん
08/03/14 11:26:05 npwn1C8G0
理樹・・・お前は遠いところにいっちまったんだな
673:757
08/03/14 11:34:26 Z5OpvQQc0
ホストが規制食らったorz
これがうわさに聞くOCN遮断?
674:名無しさんだよもん
08/03/14 18:57:59 ibPmg9dd0
たてた。
スレリンク(leaf板)
675:名無しさんだよもん
08/03/15 00:03:01 eNfJgtMS0
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676:名無しさんだよもん
08/03/15 00:10:14 eNfJgtMS0
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r‐ ´ト、 ヽ ' ,
ヽ! /コュ l
| ) l!`!/ ̄ ̄` ‐-ァ
| く,. / 、>
.!l iト、.! /} ノトノ
i! l!./ ./ } ‐' _ノ',
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V从乂人ノ /ヽ lヽ
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ソ i ! フー、! l
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