08/02/05 19:17:57 I7xnhIuD0
海外旅行に行っても愛佳がいれば委員ちょパワーで乗り切れそうだな。
お菓子の甘いにおいで思考停止しなければ。
401:名無しさんだよもん
08/02/05 21:56:45 FVfLeI220
このみが階段の手摺棒でヤジロベーみたいにバランスをとりながら歩いてたら
足を滑らして落ちる!タカ坊ナイスキャッチ…も両腕骨折。
あえなく自宅静養となる貴明、そんな河野家に春夏さんが訪れた。
「あ、あの…私に出来る限りのことはするから」
「そんな、春夏さん。そこまで気を使ってもらわなくても」
「いいの!遠慮しないで。タカ君くらいの年頃の男の子って、その…大変でしょ?」
「は?」
「ォ…が出来ないとつらいんでしょ…」
「え~と、オ…何ですか?」
「い、言わなくていいの!わ、 私は大人なんだから!」
「それは知ってますが、話が見えてこないんだけど…」
「もう…とぼけなくてもいいのに。…恥ずかしいことじゃないのよ?」
「え~と、失礼ながら、大丈夫…ですか?」
「大丈夫、あの人以外のは・・・初めて…だけど」
「あの…春夏さん?」
「今だけは・・・春夏って呼んで」
こんな感じの献身的な春夏さんを描く、健全なストーリーを希望。
402:名無しさんだよもん
08/02/05 22:35:47 ITN38fLK0
>401
それなんてとらハ3の両腕骨折エンド?
あ、あれはヒロインみんなに看病を申し出られて困るオチだったか
403:センズリ ◆7W9NT64xD6
08/02/05 23:12:46 9HxxFyP+O
シルファ~淫獄のアナザーデイズ~前編
シルファたんの両手を天井のロープに縛って棒立ち状態にする。
「イルファたんとミルファたんはどこだ!どこにいる!!言うんだ!!ハァハァ」
姉妹の所在を吐くようムチで叩いて拷問する。
当然姉妹を売るようなマネはできないシルファたんは
「い…嫌れす」
と拒絶する。
すかさずシルファたんの周りを男10人で取り囲み、姉妹の所在を言うまで叩いて叩いて叩きまくる。(顔以外)
「もうやめ…て…許して…くらはい…」
泣いて許しを請うシルファたん。
でも…
「やめ…やめてくだ…ぁあっ!」
よりいっそう強く叩いく!
服はボロボロ、体は傷跡だらけの半裸状態だ。
三時間ほど叩いた後、床に下ろし、両手は後ろ、両足を縛った状態にする。
傷口に熱湯をかけると、ビクッと悶絶するシルファたん。ロボでも痛みは感じるんだ^^
徐々にかけていって、傷口に染み込ませる。
「痛っ…熱…もう…やめてよっ…」
と言った瞬間、一気にぶっかける。
「ッッーーーーー!!!」
言葉にならない悲鳴を上げる。
しばらくジタバタもがいた後、痙攣し床に伏した。
「早く言った方がいいよ、シルファたん。やっと準備段階が終わった所なんだから」
男は優しくささやいたが、もはやシルファは虫の息だった。
前編~完~
404:イルファさんの受難 1/3
08/02/06 00:01:41 1cVaK0xS0
「たかあき~長瀬のおっちゃんにええ物貰った~」
イルファさんと研究所から戻ってきた珊瑚ちゃんは嬉しそうに俺の元に走り寄ってくると
ぽふっ、と抱きついた。
「何貰ったん?」
夕飯の支度をしていた瑠璃ちゃんの質問にはイルファさんが答えた。
「来栖川が経営する海外リゾートへの招待券です。4人までご招待だそうです。」
「たかあき~、一緒に行こうな~」
珊瑚ちゃんの中ではもう俺と一緒に行くことになっているようだ。
まあ、別にこれといって忙しいということもないし、連休かなんか利用すればいけないことも無いだろう。
「それにしても4人で旅行か。丁度珊瑚ちゃん瑠璃ちゃん、イルファさんと俺で丁度いいじゃない。」
「ええ、それなんですが…」
イルファさんが困ったようにふう、とため息をついた。
「私は全身が来栖川の企業秘密の塊ようなものですから、海外旅行はちょっと許可してもらえないかと。」
「つまり、向こうの悪い産業スパイとかにつかまって分析させられちゃうかも、ってこと?」
「ええ、私の体の隅々までつまびらかに調べられるでしょう。」
そう言うとイルファさんは自分の体を抱いて、なんとなく悩ましげに体をくねらせた。
「いやぁ…珊瑚様!瑠璃様!貴明さん!助けてくださいまし!」
「だ、だめです…そ、そこは…だめぇぇぇ…」
「…貴明さん、お顔がエッチですよ。」
「はっ…き、気のせいですよ。」
俺は気づかれないようにそっとよだれを拭った。
「まあ、許可が出たとしても出国ゲートで止められちゃいますけど。金属探知機に引っかかって
しまいますから。」
うーん。イルファさんのあの柔らかいからだのどの辺りに金属が入ってるんだか…いつも疑いたくなる。
「それなら大丈夫や~」
珊瑚ちゃんはそう言うと自分の部屋に引っ込んで、しばらくして何か手にして戻ってきた。
405:名無しさんだよもん
08/02/06 00:01:48 fMKt6oQ/0
>>402
やべえ懐かしい。同士発見w
SS書き始めたのとらハからだよ俺w
406:イルファさんの受難 2/3
08/02/06 00:02:29 WivVdzJP0
「なにそれ…電卓?」
「ポケットコンピュ~タ~や~。カ○オPB-120~」
「なんや。それさんちゃんが小学生の頃おもちゃにしとったやつやん。」
…珊瑚ちゃん、そんな昔から電脳少女やってたのか。
「あのう…それで、どうして私が旅行に行っても大丈夫なんでしょう?」
「これにいっちゃん入れて連れて行く~」
珊瑚ちゃんは自信満々で言ったが、イルファさんはちょっとあきれた様子で言い返した。
「あの…珊瑚様。そのポケコンは記憶容量8KBですよ?DIAのような高度な機能を載せるには
容量が足りませんが。」
「えー?載るよ~」
「「ええええええ?!」」
俺とイルファさんの悲鳴がハモった。瑠璃ちゃんは良くわかってないらしくてきょとんとしていた。
「いっちゃんのパーソナル(人格)部分は4KBしかあらへんよ?」
「で、では私の…DIAの大部分はいったい…」
「てきと~☆」
珊瑚ちゃんは笑顔で見も蓋もないことを言ってのけた。
「おっちゃんがな、システムは色々機能つけへんとバージョンアップで買ってもらえへんいうから…色々つけた~」
イルファさんはもう人格崩壊寸前だった。
「じゃあ、いっちゃん…痛くせぇへんから、大人しくしとってな~」
「いやぁぁぁぁぁぁ」
◇
「ふご…」
ずるっ。
ごちん!
俺はしたたかテーブルに顔を打ち付けて目を覚ました。
「…なにあほな事しとるん。暇やったら食器並べといて。」
エプロン姿の瑠璃ちゃんがその一部始終を見ていたらしく、あきれた顔で俺に言った。
俺は生返事を返して立ち上がり、棚から食器を取り出しにかかった。
407:イルファさんの受難 3/3
08/02/06 00:03:02 1cVaK0xS0
…さっきのは夢だったのか。まあ、そうだよな。
そう思いながら皿を取り出してテーブルに並べていると、
「る~☆」
「あ、珊瑚ちゃんおかえり。」
俺が出迎えると珊瑚ちゃんは嬉しそうに俺の元に走り寄ってきてぽふっ、と抱きついた。
…あれ?
「珊瑚ちゃん。イルファさんは?研究所に泊まり?」
「ううん。おるよ~」
そう言うと、珊瑚ちゃんはコートのポケットから今巷で人気の携帯ゲーム機を取り出した。
「…まさか。」
珊瑚ちゃんはそのゲーム機を俺の前に差し出すと…ゆっくりと開いた…
408:名無しさんだよもん
08/02/06 00:04:10 WivVdzJP0
>>399の書き込み見たらになんとなく神が降りました
本当はポケコンに入れられて旅行に出かけ、旅行先で液晶画面に顔文字表示してやさぐれるイルファさん、
というのもやりたかったんですが収拾つけられるめどが立たないんでやめましたw
俺の中で珊瑚ちゃんがどんどん黒くなっていくYo…
409:名無しさんだよもん
08/02/06 00:06:39 pIeIvpt90
IDが変わったりしてるのは何故?
まぁとにかく乙
中々面白かった
410:408
08/02/06 00:09:54 WivVdzJP0
あれ、本当だ
IDがころころ変わってる
おなじPCから同じ回線から書き込んだんですけど
零時近辺だからですかね?
411:名無しさんだよもん
08/02/06 00:46:57 I+c/sB2AO
>>408
乙、面白かった
>本当はポケコンに入れ(略
>というのもやりたかったん(略
そんなことつれない事言わずにやろう、さぁやろう、すぐやろうイルファさんへの思いを力に変えるんだ
412:名無しさんだよもん
08/02/06 00:47:33 I+c/sB2AO
スマンsage忘れた
413:名無しさんだよもん
08/02/06 01:33:24 EDJo9T4lO
>>412
興奮しすぎwww
414:名無しさんだよもん
08/02/06 01:50:06 HiUXeFi10
>>403
暴行ネタは場所を選ぶと思うんだ、ToHarat2はちょと馴染まないかと
理不尽な設定と不満を叩きつけるような展開は、オマイは良くても不愉快な人が多いかな
>シルファたん たん とか言うんだから好きなんだろ、優しくするのが恥かしいのかい
コテを外して甘い話でも書いてみたら、作風が広がるよ
俺なら後編でカッコイイ ?が助けにくる、ヤマなし、オチなし、意味なしならもうレスはしないけどなw
415:名無しさんだよもん
08/02/06 01:54:27 SG1wAZmg0
あぁソイツ同じ物を他のスレにも貼ってた
他のスレにも出没してる荒らしだから相手しないほうがいいぞ
416:名無しさんだよもん
08/02/06 02:04:50 HiUXeFi10
>>415
了解した
しかし俺は最初の1回は無視したくなかった、まだ大暴れしたわけでもないし
417:センズリ ◆7W9NT64xD6
08/02/06 07:04:53 diwPv39kO
ありがとう
やっとまともな意見が聞けたと思います。
シルファをものすごくいじめたくなってこんなSSになりました
自分はアブノーマルでないと筆が進まないのです
ごめんなさい
418:名無しさんだよもん
08/02/06 08:50:51 6SfhKsQS0
>>408
4kbが最高にツボに入りました
ポケコンに入ったイルファさんかそれはそれで萌えの様なw
419:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』1/36
08/02/09 02:32:20 /90TNzlZ0
ここ数日というもの、河野貴明は自分の身辺が妙に騒がしい事が気になっていた。
先週の半ば頃から、貴明は自分が学園内で妙に視線を集めている事を感じ取っていた。
そればかりでなく幼馴染たちの間にも、クラス内にも、生徒会室にいても、なんだか妙に浮ついた空
気が流れているような気がするのだ。
特に、学食にいる時や弁当を広げている時の周囲の目は、まるで鷹の目のようである。
もっとも、この状況に心当たりはないでもない。
10日ほど前、ミルファとこのみとの間に勃発したカレー勝負の決着をつける対戦が金曜日に行われ
る事になっている。
(どうせ話を聞きつけた雄二が面白おかしく話を広げているんだろうが……)
これはタマ姉こと向坂環あたりが参戦してくるのは避けられないのかもしれない。
そしてうっかり彼女が勝利でもした日には……
(色んな意味で俺ピンチだよなぁ……)
週末の騒動を考えると今から頭痛がしてくる貴明である。
……だが、事態は勿論貴明が考えているよりもあらゆる意味で大きく成長しているのであった。
カレー勝負決着編『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』
「……なぁ、雄二。何で話がここまで大きくなってるんだ??」
「さぁな。でもま、いずれにせよまーりゃん先輩の耳に入ったのが運のツキってヤツだな」
にやにやと笑いながら自分を見つめる雄二を今こそはたきたいと、貴明は心底思っていた。
手足が自由になったなら、の話であるが。
問題の金曜日の放課後の事であった。
420:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』2/36
08/02/09 02:34:36 /90TNzlZ0
教室を出たところで謎の覆面ちびっこの襲撃を受けた貴明は、ぐるぐる巻きにされたまま家庭科室に
連行され、どでかい『特別審査員席』のプレートが置かれた席に座らされた。
マントを着たその女学生?は『あたしはまーりゃんなどではなーい!』なんて言っていたが、無論誰
もその正体は疑わないだろう。
第一襲撃の際に『ドリルまーりゃんパーンチ!!』と叫んでおきながら『貴様に名乗る名などない』
などと見得をきっているのだから世話はない。
ともあれ。
家庭科室にある8つの調理ブースのうち、一つは審査員席に指定されていた。
そして残りの7つの調理ブースには様々な食材や調理道具が持ち込まれて騒然としている。
更に審査員席の直近に置かれた教卓にはアナウンス席と、貴明が座らされている特別審査員席が設け
られていたりする。
教卓の背後にあるホワイトボードにはでかでかと『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』の文字が、そ
して出場者たちの名前と顔写真が並んでいる。どうでもいい事だが、タイプこそ違えど皆魅力あふれる
少女ばかりである。
なお、廊下側の窓は全て開け放たれ、観客席までが出来上がっていた。
観客席にはすでに陸続とギャラリーが押しかけている。
不思議な事に、明らかにこの学園の制服を着用していない者も少なくない。
「あらタカくん、雄二くんもこんにちは。ずいぶん愉快な格好ね~」
そこに、妙に場違いな格好の女性が……ふわふわのスカートにパステルグリーンのセーターと、それ
に来客用スリッパという絶妙にミスマッチな姿をした柚原春夏が現れた。
彼女は新任教師か教生かと言っても通用しそうな若々しい容姿の持ち主だが、言うまでもなくその実
体は柚原このみ(推定18歳以上)の母親である。
「こんにちは、春夏さん。別に好きでこんな状態でいるわけじゃないんすけどね……」
笑顔で愉快と言われてしまった貴明だったが、憮然としながらもきちんと挨拶を返した。
421:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』3/36
08/02/09 02:36:23 /90TNzlZ0
特に躾に関して春夏は厳しい事を、貴明は身に染みて知っているからである。
しかし近頃春夏と会う事の少なかった雄二は、
「あ、おばさん。おひさしぶりっす~~って……あだだだだだだだだ!!ちぎれるちぎれるちぎれる、
そこ取れるうぅぅ~~!!」
軽く地雷を踏んで……というか逆鱗に触れてしまっていた。
「なぁに、雄二くん。もう一回言ってくれるかな??」
にこにこと陽だまりのような微笑みを浮かべながら、春夏の両手は強からず弱からず、絶妙の力加減
で雄二の両耳を前後に捻っている。
「は、は、春夏さんっ! こんにちはっ! いつもお綺麗っすねぇ~~っ!!」
瞬時にNGワードの存在を思い出し、恐怖の関節技?と悪魔の微笑みに怯えつつ、雄二は搾り出すよ
うに挨拶のやり直しを敢行してみた。
途端に両耳が解放され、春夏の微笑みからプレッシャーが消える。
「まぁ、雄二くんったら。しばらく会わない間に口が上手になったのね♪」
(そ、そういえばおばさんは禁句だった……さすがジョーカー、恐ろしいぜ、春夏さん)
引き攣った笑みを浮かべながら、雄二は「二度と口を滑らせまい」と固く心に誓っていた。
端で見ていた貴明も、「やはり春夏さんには逆らわないようにしよう」との決意を新たにしていた。
「このみからタマちゃんや郁乃ちゃんのお姉さんも参加するみたい、って話は聞いていたけれど、結局
それだけじゃ収まらなかったのね」
貴明の拘束を解きながらホワイトボードの出場者名を眺めると、春夏はいかにも可笑しいといった風
に口元に手を当ててころころと笑った。
「大人気ね、タカくん。ミルファちゃんもこのみも大変ね」
それを聞いた雄二はうんうんと頷き、貴明は憮然として固まった腕の筋肉を揉みほぐしつつ、想像さ
れる現状を説明した。
「去年の生徒会長なんですけど、まーりゃん先輩っていうお祭り好きの先輩がいて……多分面白がって
話を大きくしちゃったんですよ」
422:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』4/36
08/02/09 02:38:49 /90TNzlZ0
またまた雄二はそれを聞いてうんうんと頷く。
しかし春夏はにっこり笑って「それだけではないんじゃないかしら?」と付け足した。
「でも、参加したい娘が実際にいるから話が大きくなるんでしょう?」
三度び雄二は春夏の言葉にうんうんと頷く。
雄二のその態度にムカついた貴明は、ようやく自由を取り戻した右拳でとりあえず悪友の後頭部を思
い切りド突いておいた
◇ ◇ ◇ ◇
「それでは! たかりゃんのハートを射止める大チャンス! たかりゃんと二人だけの週末をゲットし、
河野家上陸作戦、運命のゼーレヴェ作戦を発動出来るのは誰なのか!? それとも河野家の玄関に立
ち塞がるはるみんがたかりゃんを守り抜くのか!? ただ今よりぃ~、第一回ぃ~、決戦!! バト
ル・オブ・ザ・カリーを開催するのだぁ~~っ!!」
どんどん、ぱふーぱふー♪
がん、ごん、バキッ!
「うあたっ! いだっ! ゴルァ! いたいけな美少女になにさらsムゴごごごぉっ!!」
鳴り物を鳴らしながらまーりゃんが開会宣言をした直後。
審査員席といわず調理ブースといわず観客席といわずから炊飯器やら信楽焼きの狸やらが投げ付けら
れ、いかに反則的に逃げ足の速い彼女といえど、全包囲攻撃にさらされては抵抗もままならず、怯んだ
所をたちまち簀巻きにされて窓の外に吊るされてしまった。
「むがが、むごむご、ふんぐおぉぉぉ~~!!」
じたばたともがく姿は、さながら風に揺れる蓑虫のようである。
蓑の中から必死に自分に対する扱いが不当であることを訴えるまーりゃんであったが……
「まーりゃん先輩? 私たちの勝負にかこつけてトトカルチョをやろうとしてたんですってね??」
「(し~~ん)」
窓から蓑虫を見下ろしながら語る環の冷たい声に、まーりゃんは沈黙をもって答えた。
423:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』5/36
08/02/09 02:40:26 /90TNzlZ0
観客席の中にも視線を逸らすギャラリーが少なからずいる。
どうやらトトカルチョは広く学園内に浸透していたらしかった。
「っていうかこのみちゃんと私、ふたりの対決だったはずなのに~~!!」
「(つ~~ん)」
悔しがるミルファに対しても知らんぷりを決め込む、話を壮絶に膨らませた張本人。
「まぁまぁ、話が大きくなっちゃったものは仕方がないでしょう?」
環はじたばたするミルファの肩を叩くと集まっている皆の方に振り向いた。
そのかんばせには勿論、「素敵な微笑み」が張り付いている。
「と、いう訳で。まーりゃん先輩は放っておくと賭けに勝つために何をし始めるかわからないから排除
しました。……これで安心して勝負に専念できるわね、みんな」
「(うわ、ありゃ絶対今まで気が付いてて泳がせてた顔だぜ……)」
「(まぁ、まーりゃん先輩が絡み続けるよりはマシ……だといいなぁ……)」
審査員席界隈でコソコソと語り合う貴明と雄二であったが、
「どうしたの?タカ坊、雄二ぃ~~??」
「「いえっ! なんっでもありませんっ!!」」
環のひと睨みで瞬時に黙らせられるのであった。
「え~~、お待たせしました~~。それでは前会長から引き継ぎまして~~、現生徒会がこの決戦を取
り仕切りたいと思います。とは申しましても会長から副会長、書記にいたるまで生徒会役員は参加者
サイドに立っておりますので、司会は不肖このワタクシ、生徒会雑務係向坂雄二が担当させていただ
きま~~す」
寸刻の混乱はあったが、如才ない向坂姉弟の手によってたちまち事態は収拾され、予定通り決戦は続
行の運びとなった。
アナウンス席には蝶ネクタイをつけた雄二が陣取り、リングアナのノリで進行を始めている。
その隣で、憮然とした表情で腕を組んでいる商品の貴明とのコントラストが妙にギャラリーの笑いを
誘っていた。
424:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』6/36
08/02/09 02:42:11 /90TNzlZ0
「まず審査員ですが、当初の予定通りこの決戦の言いだしっぺである柚原春香さんと、商品の河野貴明
くんには当然お願いしますね~」
雄二の言葉を聞いて春夏は優雅に立ち上がり、出場者たちとギャラリーに対してそれぞれ一礼した。
貴明は「ふんっ」とでも言いたげであったが、一応立ち上がって律儀に頭を下げる。
「それから本来ならこの二人に加えて窓の外の蓑虫さんが審査員席に座る予定だったのですが……」
そして大仰に肩をすくめた雄二はギャラリーに向かって片手を差し伸べた。
「結果を捻じ曲げられる可能性が否定出来ないという事で、急遽メンバーチェンジとなります。まずは
主催者代表として私が司会者と審査員を兼任させていただきます。そしてもう一人はギャラリーの皆
さんの中から……」
「「「「はいはいはぁ~~い!!」」」」
雄二の言葉が終わらないうちに多くの観客が一斉に手を上げて立候補を始めた。
「あたしがやる~~っ!」
「ウチ、ウチ~「珊瑚様は一応参加者なのですから駄目なのでは……?」えぇ~、つまらんなぁ~」
「るー、食べ物の事ならるーはうるさいぞ」
てんで勝手に自己主張を始めて喧しい事この上ない。
ところが雄二はそんなギャラリーたちに向かってチッチッと指を振って見せた。
「皆さんの気持ちはわからないでもありませんが……ここは公平を期して他校の生徒さんにやっていた
だきたいと思っております」
その言葉で色めき立つのは桜色の制服を着けていない女生徒の一群であった。
「くうっ! こんな事なら転校するのではありませんでしたわっ!!」
「……(涙目でコクコクコク)」
まぁ、桜色の制服を悔しそうにつまむ一群もあるのだが。
「え~~と、春夏さん以外の学園外の人っていうと……チエちゃんにミチルちゃんに菜々子ちゃん、イ
ルファさんにシルファちゃんがいらっしゃってますね」
ギャラリーを一瞥して雄二は顎を手で撫でる。
そして悪戯っぽい微笑みを浮かべると、ぴっと西園寺女学院の制服を着た女生徒を指差した。
425:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』7/36
08/02/09 02:44:05 /90TNzlZ0
「ここはまぁ、独断と偏見でミチルちゃんにお願いするとしましょう」
突然の雄二の言葉に、ミチルは眼鏡の奥でびっくりした表情を浮かべた、
「……びっくり」
のみならず言葉でも驚いている。多分。
「え~~つ、どうしてぇ~~!?」
「なんであたしじゃないんスかぁ~~?? 納得いかないッス~~!!」
やっぱり、という風に肩を落とすメイドロボ二人とは対照的に、当然のように外された菜々子とチエ
は一斉に抗議の声を上げる。
それに対して雄二はやれやれという風に手を上げながらこう答えた。
「いや、一番客観的に審査してくれそうなのがミチルちゃんだったから。二人は色々私情で目が曇りま
くりそうな気がするんだけどなぁ~?」
「う゛っ……!!」
「な、なんかなんにも言い返せない自分が悔しいッス……」
ニヤリと笑う雄二に、思い当たる節がありまくるのか菜々子もチエも黙り込んでしまった。
「……落ち込むな。人には向き不向きがある」
「メガネタヌキにだけは慰められたくねぇ……っ」
ミチルに肩を叩かれ、チエは肩に加えて悔し涙まで落としていた。
◇ ◇ ◇ ◇
「それでは~、そろそろ競技の方に移りたいと思いますので~、早速選手入場でーす!!」
「入場って、最初から並んでるじゃないか」
「あんな、物事には順序ってモンがあるんだよ。商品はまぁ黙ってろ」
雄二は相も変らぬリングアナ風のまま、まずは無粋なツッコミを入れた貴明の額に裏拳をビシッとめ
り込ませると、参加選手の紹介へと移った。
選手たちにもギャラリーにも一瞬緊張が走る。
426:名無しさんだよもん
08/02/09 02:45:11 xVchMPdn0
支援
427:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』8/36
08/02/09 02:45:51 /90TNzlZ0
「それでは皆さんに、このバトルフィールドに集った7人の戦士たちをご紹介しましょうっ!」
無駄に気合が入りまくる雄二のコールは更に熱を帯びてきた。
「まずは輝く元気、一番星! 最速のちびっこ幼馴染、柚原ぁ~、こ~の~み~!!」
雄二の紹介を受け、このみがぴょこんと頭を下げる。
元気な頭の上下に合わせて桜色のリボンが揺れた。
「えっとぉ……このみは子供の頃からず~~っとタカくんと一緒でした。だから、お母さんの『必殺カ
レー』の名にかけて、タカくんの事なら誰にも負けません!」
そう言うと、このみはふんっ!とガッツポーズを作った。
「このみ、がんばってね! 負けたらおしおきよ~♪」
「はうぅぅ~~、もうおたまは嫌でありますよ~~」
審査員席の春夏から応援が上がったのだが……このみのテンションが逆に下がったように見えるのは
気のせいだろうか??
「次も一年生からの参加で~~す。ほわっとした外見に騙されるなかれ、何を隠そう全国区の天才電脳
少女、姫百合珊瑚ちゃん!……の代理で珊瑚ちゃんとは一心同体! 大好きな姉を支える家事のスペ
シャリスト! 姫百合ぃ~、るぅ~り~!!」
コールされたものの、気合の入った可愛らしいエプロン姿でありながら瑠璃は腕を組んだままそっぽ
を向いている。
「ウチはバカ明なんかどうでもええんやけど、さんちゃんがどうしても言うから仕方なく代理で出ただ
けや。忘れんときぃ」
いつものつんつんした態度を崩さない瑠璃ではあったが……
「瑠璃ちゃん、こういう時くらい素直にならないかんで~~??」
「珊瑚様、瑠璃様はいわゆるツンデレさんですから、皆様の前ではきっと恥ずかしくて素直になれない
んです。お泊り会で私たちだけの時はきっとデレデレさんになって下さいますよ」
「そやなぁ。みんなでらぶらぶらぶぅ、や~~♪」
「そんなんちゃう~~っ!!」
428:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』9/36
08/02/09 02:47:42 /90TNzlZ0
結局、観客席からの暢気な声援にじたばたしていた。
「さあ、続きましては同級生からのエントリーです。柚原このみ嬢や向坂環嬢には思わぬ伏兵出現っ!
帰ってきた幼馴染! 夢見る美少女、草壁ぇ~、ゆ~う~きぃ~~!!」
紹介を受けた優季はふわりと立ち上がると皆に向けてゆっくりと一礼した。
そして小首を傾げて微笑むと、こう意気込みを披露した。
「ずっとこの町を離れていたので不利な面もあると思いますが、貴明さんとのずっと昔の約束を実現し
ていただけるように頑張っていきたいです。皆さま応援、よろしくお願いしますねっ♪」
を~! ぱちぱちぱちぱち~!!
なんとなく雰囲気に呑まれた観客席からは拍手が上がる。
「(……ねぇ、昔の約束って、なに? 愛佳から聞いてる?)」
「(さあ、なんだか転校当初からやたら親密だ、って姉は気にしてるみたいですけど……)」
一部釈然としない観衆もいるようではあったが。
「そしてっ! 次なる戦士も同級生。みんなの笑顔が彼女のパゥワァ! 我らが委員ちょ、小牧ぃ~っ
ま~な~か~!!」
次にコールを受けたのは貴明のクラスの委員長、小牧愛佳であった。
勿論、こういう状況がトコトン苦手な愛佳は、アタフタととにかく両手をぱたぱた振りながら自分の
出場動機の説明を試みてみた。
「ああああああのっ、そのっ、あ、あ、あたしは河野君とのその、お泊りがぁ~~どうとかとはあれで
してぇぇぇ~~、そうっ、料理大会があるからどうかってですねぇぇぇぇ~~」
……もう何を言っているのかさっぱりである。
「何を言ってるんだか。貴明とのお泊りを賭けたカレー対決だってあたしちゃんと教えたわよ」
「い、い、いくのぉ~~~!!」
だが、そんな言い訳もギャラリーの中から聞こえる溜め息混じりの声が粉砕してしまう。
するどい妹のツッコミに、愛佳の混乱は更に増幅していくのだった。
429:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』10/36
08/02/09 02:49:33 /90TNzlZ0
「静粛に、静粛に~。ここからは上級生のお姉さま方で~す。ったく、この恋愛原子核め……」
ごちん!とひとつ貴明に拳骨を入れた雄二は出場者紹介を続けた。
「痛いなぁ、なにすんだ!」
「だまれ、男の敵っ! ……さて。こちらにおわしますは麗しの本学園生徒会会長、全学園生のあこが
れっ! 久寿川ぁ~~さ~~さ~~ら~~さ~~ま~~!!」
演説慣れしているささらはこの程度では動じないはずなのだが、今日の彼女はどこか落ち着かないよ
うに目を泳がせながら皆の前に立った。
「そ、その……よ、よろしくお願いします……」
不安そうな瞳で貴明に視線を送るささら。
その様子に、つい貴明は微笑んで軽く頷いた。
それを見たささらは、一度顔を伏せ、再び前を向いた時にはいつもの生徒会長の顔になっていた。
「(最初から負けを認めちゃダメだよ、さーりゃん……)」
ささらの決意を感じ取ったのか、窓の外の蓑虫が感慨深そうに風に揺れていた。
「あー、次はエントリーナンバー6ばーん、太古より闇に潜むエルクゥの生き残りー、向坂たま~kあ
だだだだだだっっ!「誰が鬼の一族よっ!」ギブッ!ギブッ!割れる割れるぅぅぅぅ~~!!」
次に、投げやりに姉を紹介しようとした雄二だったが、勿論お約束とも言える必殺のアイアンクロー
に締め上げられ、速攻でギブアップさせられた。
「ユウくんも懲りないなぁ~」
「むしろタマ姉にいじられたくてワザとやってるんじゃないか??」
「お姉さま、たくましいお姿も素敵です……」
「……(頬を赤らめながらこくこく)」
当然ギャラリーも呆れ顔?である。
「とほほ……。久寿川会長を支える麗しの副会長、学園に咲く大輪のバラ~~! 向坂ぁ~、た~ま~
き~~おねえ~~さま~~!!」
430:決戦!の中の人
08/02/09 02:56:26 X6EPtqQlO
やっぱさるさんに捕まりましたね。
まぁ、バカみたいに長くした漏れも悪いんですが……
というワケで続きはほとぼりが醒めた頃に投下しに来ます。
431:名無しさんだよもん
08/02/09 02:58:14 8nqDZ1yT0
支援
432:名無しさんだよもん
08/02/09 04:50:45 wx7gZ4+b0
猿退治
433:名無しさんだよもん
08/02/09 05:14:23 /qzicoC90
援護射撃
434:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』11/36
08/02/09 06:58:46 /90TNzlZ0
「最初からそう言えばいいのよ、まったく」
腕組みをしてうんうんと頷く環。
ギャラリーも「まったくその通りだ」と納得せずにはいられなかった。
「いよいよ最後の出場者の紹介を残すのみとなりました……」
先だっての喧騒から瞬時に立ち直った雄二は、さも残念そうに顔を伏せて言葉を切った。
そしてたっぷりと溜めを取り、観衆に向き直る。
「河野貴明を守るジェリコの壁、来栖川エレクトロニクスの技術力と、姫百合珊瑚ちゃんの天才の究極
コラボが生み出した科学の子! 河野ぉ~~、み~~る~~ふぁ~~!!」
皆の前に立ち上がったミルファは、今日は以前使っていた桜色のセーラー服に、貴明に貰ったクマの
ワンポイントが入ったエプロンを身に付けた姿だった。
さらにイヤーレシーバーも着けていないので、それと知らなければ人間そのものに見える。
ミルファは一歩皆の前に進み出ると静かに話し始めた。
「ご存知の通り、私はメイドロボです……こんな私が、料理自慢の皆さんと競うのはおこがましい事な
のはわかっているつもりです。でも、私は学園で貴明さんと出会って恋をして、ようやく手に入れた
この心を信じたい。だから、貴明さんの料理では一番でいたいんです」
彼女の瞳に強い意志の光が宿る。
セミロングレイヤーの髪がはらりと揺れた。
「だから、誰にも負けません!」
……ぱち、ぱち、ぱちぱちぱちぱちぱち!
聴衆の暖かい拍手がミルファを包んでいた。
少し唖然としたようにその拍手を受け取るミルファの表情は、なんだかとてもくすぐったそうだ。
そして貴明は、そんな彼女がなんだか眩しい様な気がしてまともに見つめられないでいた。
「私もタカ坊の事で負ける気はないわ。お互いがんばりましょうね、ミルファ」
「ふんっ、カレーでウチに勝とうなんて2千年早いわ。思い知らせたるで~~」
「ふふっ、貴明さんの一番はかならずいただきますよ♪」
435:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』12/36
08/02/09 07:00:42 /90TNzlZ0
「このみも頑張るよっ! タマおねえちゃんにも優季おねえちゃんにも負けないであります!」
ライバルたちも、そんなミルファに口々に声をかけてきた。
……そしていつしか拍手は、少女たち全てを包み込むように広がっていた。
◇ ◇ ◇ ◇
さすが料理自慢が集結しただけに、1時間の調理タイムの光景はまさに圧巻だった。
元がまーりゃんルール、『調理器具自由、材料自由、下ごしらえでもなんでも勝手にして持ち込め。
1時間で一人でカレー料理を用意出来れば何でもアリアリ』に則っているため、各参加者はスープ満載
の寸胴だの圧力鍋だの、果ては冷蔵ケースやオーブンまで持ち込み、まさに大騒ぎである。
メンバーは技術と工夫の限りを尽くしてそれぞれの『とっておき』を完成させたのだった。
「さて、全員の料理の用意が整ったようですね。では、皆様お待ちかねの試食ターイム!!」
わーわー!ぱちぱちぱちぱちぱち!!
更に人数を増したギャラリーというか野次馬というかからいっせいに歓声と拍手が上がった。
皆の注目を受けてリングアナ・雄二のボルテージもいっそう上がる。
「では試食のルールを説明しま~~す。まず、試食の順番は年齢の若い順とします。同年齢の場合は誕
生日の遅い方からになりますね」
それを聞いた調理ブースに控えるこのみは、早速隣の瑠璃に確認してみた。
もちろん自分の順番を確認して準備を整えるためである。
「(瑠璃ちゃんって、誕生日いつでありますか?)」
「(ウチは6月16日や。このみとどっちが先や?)」
「(わたし9月だから、わたしがトップバッターだね! 早速温めなおさなきゃ)」
「(……ミルファのが先ちゃうんか? さんちゃんがプログラム組んだ時に遡ったかて、まだ生まれて
何年と経っておらんはずやで??)」
436:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』13/36
08/02/09 07:02:57 /90TNzlZ0
ふたりが首を捻っていると、タイミングよく雄二のアナウンスがその解答を教えてくれた。
「なお~、正妻候補の皆さんの挑戦を受ける立場であるところの河野ミルファちゃんは一番最後の試食
とさせていただきま~す。最初にメンバー紹介した順番と言った方がわかりやすいでしょうか?」
しれっと付け加える雄二に、出場者は一様に「それを早く言え」と言いたげな視線を送る。
そしてこのみは、とりあえず腕まくりをして軽く気合を入れ直すと、早速ルーの温めなおし作業に取
り掛かるのだった。
さらに、審査員席のほうに大仰なポーズをつけながら振り向いた雄二は説明を続ける。
「先ほど申し上げましたとおり、審査員は本校生徒会代表として不肖私向坂雄二、ギャラリー代表とし
て西園寺女学園の山田ミチルさん、そしてカレー決戦提唱者の柚原春夏さん、最後にこの決戦の賞品
で全男子生徒の敵・キングオブヘタレ!河野たk「ちょ~~いと待ったあぁぁ~~!!」『バキイィ
ィッ!!』あぼあぁぁっ!!」
その時、突然響き渡った甲高い声と激突音と悲鳴が説明を強制終了させた。
「こら~~! ゆうりゃぁ~~ん! あちきを無視するなぁ~~!!」
この声の主、いわずと知れたまーりゃんである。
いつの間にか拘束を解き、強烈なイナヅマ反転まーりゃんキックを雄二に叩き込んでいたのだ。
「あのねぇっ!! 当たり所悪かったら死んじゃいますって!!」
即座にむっくり起き上がって文句を言う雄二であったが……
「(いつも思うんだけど、向坂くんってすごいタフですよねぇ)」
「(今のキック、完っっ璧にテンプル捉えてたような……)」
「(さすがタマ姉のアイアンクローで鍛えられているだけの事はある)」
「(な、なんのことかしら? おほほほほ……)」
みんなには気味悪がられていた。
何はともあれ紆余曲折の後。
「……という訳で、特別審査員としてOG代表のまーりゃん先輩でーす。みなさんはくしゅー」
437:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』14/36
08/02/09 07:05:32 /90TNzlZ0
わーぱちぱちぱち
「なんだか棒読みくさい紹介と投げやりな拍手ではないかね?をい、皆の衆」
「「「「きのせいでーす」」」」
なんとなく不満げなまーりゃんではあったが、審査員席の上座に席を与えられるとたちまち機嫌を直
してふんぞり返るように着席した。
「苦しゅうない、話を進めたまへ」
一番厄介な人が黙ったところで雄二は咳払いを一つして審査方法の説明を再開した。
ギャラリーでも競技者席でも、審査員席にもため息があふれているようだ。
満足そうなたった一人を除いては。
「おほん……で、では、審査員はこの5名という事になります。審査員には挑戦者たちのカレーを順に
試食してもらい、最後に7皿の中からベスト3を選んでいただきます」
そして雄二は審査員の前に置かれている紙を取り上げ、ギャラリー席に見せた。
そこには「調理者名」「選出理由」「点数」の欄が3つ作られている。
「基本的にこの3人にそれぞれ1点が与えられます。もし、ダントツに美味しいカレーがあったら一人
に複数点を入れてもらっても構いません。その場合点数の欄に何点入れたかを書き込んでください」
雄二は振り返り、今度は競技者たちに紙を見せる。
「審査員5人に持ち点が各3点なので満点は15点、もしも同点になった場合は……」
間を取り、周囲を見渡す雄二。
皆が息を呑む気配が伝わってくる。
ギャラリーや審査員席からもゴクリと喉を鳴らす音が聞こえてくるようだ。
「……同点首位の中から一人を、河野貴明くんに選んでいただきます」
聴衆の反応に満足した雄二はたっぷりと勿体を付けて結論を述べた。
しかし、
「えぇ~~っ!? お、俺!?」
どう考えても、誰を選んでも、ただでは済まなそうなポジションにいつの間にか立たされた事を知っ
た貴明は思い切り抗議の声を上げたのだった、のだが。
438:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』15/36
08/02/09 07:07:16 /90TNzlZ0
少女たちの反応は少し違っていた。
「妥当なんじゃない?」
腕を組んでコクコクと頷きながら環が、
「タカくんが主役なんだから、タカくんが選ぶのが当たり前であります」
真剣な顔でこのみが、
「最後の最後で決め手があるとしたら、それは貴明さんの愛情ですからね」
どことなく楽しそうに優季が答える。
他の参加者たちも一様に依存はないようであった。
「……だそうだぞ、貴明。せめてそういう状況にならないように祈るんだな」
……貴明は神信心に関しては典型的な日本人であるが、こんな時、無性に頼りになる神様が欲しいと
思う事がある。
そして常にそんなささやかな希望が裏切られてきた事を思い出し、ついつい深いため息を吐いてしま
うのであった。
「な~~んか要らん手間がかかった気がするんだけど……さて、一番手の柚原このみちゃ~~ん、準備
は出来ましたか~~?」
「はーい、おっけーでーす!」
雄二が声をかけると、このみは元気に返事をしていそいそとカレー皿の載ったお盆を手に取った。
お盆の上には勿論このみ渾身の『必殺カレー』が乗せられている。
「では早速試食と行きましょう。最初は目指せ妹脱却! 柚原このみちゃんの登場で~~す!!」
満場の拍手の中、このみはいそいそと審査員席の前に進み出た。
そしてどーんとカレー皿を置くとまずはカレーの紹介を始めた。
「こんにちはっ! わたしの切り札、『このみの必殺カレー』です! お母さん直伝のスパイスの魔術
が自慢ですっ! よろしくお願いしますっ!」
ぺこりっとお辞儀をすると、このみは小さい深皿に必殺カレーを取り分け、5人の前に並べた。
439:名無しさんだよもん
08/02/09 07:07:46 vr5EUCcY0
このみ萌え
440:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』16/36
08/02/09 07:14:12 /90TNzlZ0
「どうぞっ、お召し上がりくださいっ!!」
「どれどれ……」
早速5人は皿とスプーンを手にとると、『このみの必殺カレー』を口に運んだ。
口に入れるとベースになっているスープストックの味わいと、様々な薬味やスパイスの香りが渾然一
体となった刺激が口中に一杯に広がる。
具材にも火が過不足なく通っており、基本的な技術もしっかりしてきた事がはっきりと窺われた。
「おぉ、これはすごい。肉も柔らかいし、ちびすけの分際でたいしたもんだ!」
「……確かに上手になった。調理実習で惨めな肉じゃがを作った人間と同一人物とは思えない」
みな喜んでスプーンを進めている。
そして貴明はというと……心配そうにたたずむこのみに目を向け、
「前食べた時よりはるかに美味しくなってるぞ、このみ。……がんばったんだな」
彼女の頭に手を伸ばすとぽんぽん、と優しく撫でてやった。
妹のような幼馴染に対するそれではあったが。
それでもこのみは満足していた。……貴明が褒めてくれたのだから。
「……えへへぇ~~」
だから、このみは満面の笑みでその賞賛に応えるのだった。
「良かったわね、このみ。頑張った甲斐があったじゃない」
勿論このみの腕が自分にも、おそらくどの参加者にも届いていない事が春夏にはよくわかっていた。
(まだまだ未熟だけど、諦めずに頑張ってね、このみ)
それでも、幸せそうな娘の姿に春夏はほっとして胸を撫で下ろす。
そして子供の頃からよく人となりを知る優しい少年が、このみの「一生懸命」にいつか気が付いてく
れるよう、心から祈るのだった。
「では次に~~、姫百合珊瑚ちゃんと姫百合瑠璃ちゃ~~ん、どうぞ~~!」
調理ブースから、赤くて巨大な何かが乗った長細いカレー皿を持った瑠璃が登場する。
441:名無しさんだよもん
08/02/09 07:15:08 8Q+WQ7rq0
支援
442:決戦!の中の人の携帯
08/02/09 07:25:55 X6EPtqQlO
またさるさんに捕まりました……。
まぁ、明日までに全部出せればヨシとしましょう。
というワケで、続きはほとぼりが醒めた頃に投下しに来ます。
443:名無しさんだよもん
08/02/09 07:40:10 8Q+WQ7rq0
支援
444:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』17/36
08/02/09 11:31:26 /90TNzlZ0
そして観客席の方からは「るー!」と不思議な返事をしながら珊瑚が進み出てきた。
「ん、こんなでどないやろ」
どんっ! と置かれたカレーの上には、すばらしく大きな伊勢海老が鎮座ましましている。
カレールーの方にもどうやら海老の身がふんだんに使われているようだ。
目を丸くして伊勢海老カレーを見つめる一同の様子に満足したのか、珊瑚は小さい胸を張った。
「どや~~? ウチが来栖川のコネで取り寄せてもらった最高級の伊勢海老や~。ウチのお金パワーと
瑠璃ちゃんの料理の腕の合体技や。一人一人はただの火でも、二人合わされば炎なんやで~!!」
「(確かにシーフードカレーは難しいですものね)」
「(ほんとう、すぐ硬くなるし、生臭くなりますもんね~)」
出番の近い優季と愛佳は自分のカレーの用意を進めながら語り合っていた。
そう、確かにシーフードカレーは難しい。
それでなくともデリケートな素材の良さを生かすのが極端に困難なのだ。
「さ、まずは食べてみて」
相変わらずそっけない態度で瑠璃は小さな皿にカレーと伊勢海老のローストを取り分けた。
取り分ける技術も淀みなく、実に手馴れていることが見て取れる。
「いただきま~~す」
「えび、えび、えび~~♪」
一同はおそるおそる瑠璃のカレーを食べてみる。
最高の材料なのだからまずい事はないにしろ……と考えながら食べた一同は、その予想を思い切り外
され目を丸くした。
もちろん、良い方にである。
「あらあらあら……海老が全然硬くなってないのねぇ~。それなのにルーにはしっかり海老のだしが出
ている……これは本当に上手だわ」
「エビエビ~~お、おいひぃ~~!」
ビンボ臭く海老にはしゃいでいるまーりゃんがやかましいが、料理の技術面がきちんと評価出来る春
夏は、瑠璃のカレーの力を正確に見抜いていた。
445:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』18/36
08/02/09 11:33:26 /90TNzlZ0
「ルーの方に、下処理をした海老のミソを入れてるのね、多分。そしてローストした海老は全く煮込ま
ずに、素材の美味しさをそのまま味わえるようにしているんだわ」
感心したように種明かしをする春夏に、瑠璃は少し照れたように頷いた。
その言葉に、皆も改めて感心しながら食べ進める。
確かに海老も、カレーも、それぞれの良さが最高に引き出されていた。
「そうや~~、瑠璃ちゃんの料理の腕は三国一や~~♪」
そんな瑠璃に抱きついて、珊瑚はまるで自分が褒められたかの様に喜んでいた。
「さて、下級生の二人に引き続きまして草壁優季さんっ、準備が出来ましたらどうぞっ!!」
「はいっ」
どことなく優雅さを感じさせる仕草で立ち上がった優季は、最初から5つの皿とボウルに分けてカレ
ーを審査員席まで運んできた。
皿の上にはおそらくガーリックライスが、ボウルの中にはさらさらのカレーソースが、それぞれ盛り
付けられている。
「これは……スープカレー??」
一目見たミチルがその名を口にすると、優季がそれにこくりと頷いた。
「ええ、その通り。北海道のスープカレーです。以前、札幌で美味しいと思っていた何軒かの味を参考
にしたものですよ」
「へぇ~~、名前は聞いた事があったけど、これがスープカレー……」
貴明も感心したようにつぶやいた。
「少しは、他所の土地に行った経験も生かしませんと」
貴明の呟きを聞いた優季はそう言ってにっこりと微笑んだ。
「さ、冷めないうちに召し上がれ」
優季の言葉に従って一同はスープカレーにスプーンを運んだ。
スープカレーの名の通り、これはベースになるスープストックの出来が全てを左右する。
446:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』19/36
08/02/09 11:35:19 /90TNzlZ0
「鶏がらと野菜のスープ……控えめなスパイスもスープの良さをよく引き出してる……」
どうやらミチルはスープカレーに並々ならぬ関心があるらしい。
じっくりと味わい、しきりと褒めていた。
「そうね、このチキンもしっかり下ごしらえが出来ているんでしょうね。骨付きなのに全く食べるのに
邪魔にならない。これでも我流なんてすごいわ」
春夏もすばらしいテクニックに感嘆しているようである。
それ以上に、春夏は彼女が『どこかの店の完成したレシピを再現している』のではなく『自分なりに
再構築してレシピを完成している』センスに感動すら覚えていたのだ。
「あら、具の野菜は皮付きなのね。それに味が濃くて美味しい」
「ええ、ちょっと最近マクロビオティック料理にも興味がありまして、健康に気を使ったふりをしてみ
ました!」
優季は悪戯っぽく微笑むと、貴明に向かってちらりと舌を出して見せた。
次の挑戦者……小牧愛佳は、雄二のコールがかかる前からお盆を持って硬直していた。
「それでは我らが委員ちょ、小牧愛佳さ~~ん、審査員席の方へどうぞぉ~~! ……お??」
そして、コールがかかっても硬直し続けている。
大人数の前に出るのが苦手という訳ではないのだろうが、ピンポイントに「貴明争奪戦」と銘打たれ
て見世物にされているこの状況はさすがにオーバーキャパシティーだったのだ。
(ど、どうしてこんな大仰なイベントにぃぃぃぃ~~)
書庫での日々や、郁乃の事で何度も支えてくれた貴明を意識せずにいられない愛佳ではあったが、と
はいえ他の女の子のように闘志むき出しで争奪戦に加わりたいわけではない。むしろ「メイドロボとは
いってもミルファさんがいるし……」と諦めているくらいなのだ。今回だって妹・郁乃に「別に遊び半
分の料理勝負くらいどうって事ないじゃない?」とそそのかされてつい参加してしまったものの、家庭
科室に一歩足を踏み入れた時から後悔しっぱなしだったのだ。
(も、もう帰りたいぃぃぃ~~)
447:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』20/36
08/02/09 11:38:14 /90TNzlZ0
……その様子を見ていた郁乃は、大きく溜め息をつくと車椅子の背に仕舞ってある杖を取り出し左腕
をガイドに通し、気合を入れた。
よろよろと危なっかしく車椅子から立ち上がった郁乃の姿に、壁際でこっそりカレー勝負の行方を見
守っていた由真は、目立たないようにしていた事も忘れて駆け寄っていた。
「ちょ、ちょっと郁乃。アンタまだろくに歩けないのに無理すんじゃないわよ!」
「由真さん……お姉ちゃんたらね、この10日くらい何度も何度も色んなカレーの試作を繰り返してあ
たしに試食させたの。それこそしばらくカレーなんか見たくもないくらいに。……それだけあたしに
迷惑をかけておきながら、ここでビビってるなんてあり得ない。ちょっと活入れてこなきゃ」
「郁乃……」
そんな、無理に立ち上がろうとしている郁乃の姿は愛佳の目にも入っていた。
そして自分を見つめる郁乃の厳しい視線の陰に隠れているものも。
郁乃を支えてくれている由真の暖かい気持ちも。
(うん、お姉ちゃんがんばるよ)
大きく息を吸い込んで目を閉じると、愛佳は貴明と二人で守った書庫の一角を脳裏に浮かべる。
その大切な場所には、貴明と自分だけではなく照れくさそうに目を逸らす郁乃と、貴明がからむとな
にかと突っかかって来る由真の姿もあった。
勇気を振り絞ると自然に一歩目が前に出た。
そうすると、そこから先は普通に歩く事が出来た。
ほっとした表情の郁乃と由真に軽く微笑むと、さっきまでの緊張が嘘のように愛佳は審査員席の前に
進み出ていた。
「お、お待たせしましたっ。これが今回用意したカレー料理ですっ」
愛佳の持参したお盆の上には、一つずつ丁寧にワックスペーパーに包まれたハンバーガーのような物
とパイのような物が5個ずつ乗っていた。その他にグラスに入ったアイスミルクティーと思しき物も添
えられている。
「みんながカレーライスを出すとさすがに飽きるんじゃないかな~~と思って、あたしはちょっとおや
つ風にしてみました」
448:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』21/36
08/02/09 11:40:27 /90TNzlZ0
審査員たちが目の前に置かれた包みを開いてみると、横長の包みからは二つ折りにしてカレーを挟ん
だナンが、そして丸い包みからはキツネ色に焼けたパイが出てきた。
「ふおお、これはちょほ~~っとおしゃれでわないかね、マナマナ?」
「そ……その呼び方はちょっと……」
年相応の女の子(笑)らしくおやつ登場に目を輝かせるまーりゃんだったが、その変な愛称だけはや
めて欲しいと切に願う愛佳であった。
「細かいナリね~~、マナりゃんは。……もぐむぐ……うむっ、手を汚さずに食べられるというのもポ
イントが高いのう~~。どうかね、今度の学園祭で大々的に出店を開いてみるというのわ? あちし
が全面的にプロヂュ~スして大儲けさせてやるぞよ??」
「来年度も学園来るつもりなのかよ、あんたは……」
「なんだよっ! 仲間はずれにすんなよっ! イジメかっこわるいぞっ!!」
二人の掛け合い漫才を無視し、他の審査員たちも手に手にナンとパイを手に取った。
「本当、これは気が利いてるわ。手軽に食べられるし、両方ともお肉を使ってないカレーだから重くな
いし、アイスミルクティーとの組み合わせも秀逸ね」
「まーりゃん先輩じゃないけど、これなら確かに商売出来そうだよな~」
ここまでご飯ご飯と来たこともあってか、愛佳のおやつカレー作戦は大成功を収めたようだった。
ほっとしながら観客席に目をやると、由真がこちらに向かって親指を立てている。由真の隣で見てい
る郁乃は薄く頬を染めながらもそっぽを向いていた。
相も変わらぬ妹の冷たい様子に、愛佳はなんとなくほっとして笑みが浮かんで来るのだった。
「それでは次に、我らが生徒会長久寿川ささらさまっ! お越しくださいませ~~!」
頬を赤らめながらゆっくり進み出るささらに、特に貴明と雄二は不安の視線を投げかけていた。
無理もあるまい。二人のよく知るささらの主食といえばアレである。第一彼女が何かを美味しそうに
食べている姿など見た事もない、というか想像すら出来ない。良くも悪くもクールビューティー、それ
が彼らにとっての久寿川ささらなのだから。
449:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』22/36
08/02/09 11:51:33 /90TNzlZ0
不安要素はそればかりではない。
クッキングタイムの時、てきぱきと調理を(このみの手元はちょっと怪しかったが)行う参加者たち
の中で、ささらはなにやらマニュアルを見ながらごそごそとやっていたのだ。第一カレーが入っている
らしい大きな寸胴に一度も手を加えていないというのはどう判断したら良いのであろうか?
「(まーりゃん先輩が妙に余裕こいてるのが怪しさ大爆発だよな……)」
「(まぁ、家庭科の成績も人並み以上らしいから下手ではないと信じたいんだけど……)」
しかし家庭科の成績は料理の腕だけで決まるものではない。手作り料理が食べられないささらの手作
りカレーという想像はあまりにもシュールすぎたのだ。
「……どうぞ」
そして……審査員たちの前に置かれたカレーは、見た感じは普通、というか激しく高級な雰囲気を漂
わせていた。
色も香りも食欲を誘うサフランライスには、大振りにカットされた程よい焼き加減と思われるステー
キ!が乗っている。そしてその上に色艶から何か違うカレーソースと、なにやらこれまた高そうな香り
のする何かのスライスが散らされている。
「ス、ステーキ??」
「こ、これってトリュフ??」
「なんだか高級レストランのカレーみたい……」
唖然とする審査員たち。……それはそうだろう。普通の生活をしていればなかなかこういったものに
はお目にかかれない。
ささらはなんとなく恥ずかしそうに俯きながら、ちらりとまーりゃんを見ると種明かしをした。
「あ、あの……私はマニュアル通りにしか出来ないから……ホテルニューコタニでシェフをされている
母のお友達からカレールーをいただいてきたんです。ご飯やステーキはマニュアル通りにやれば作れ
るから、それで……」
そう、なんの事はない本当に『高級レストランのカレー』だったのだ。
「今回は『調理器具自由、材料自由、下ごしらえして持ち込みも自由、何でもアリアリルール』だから
ねえ。さっすがさーりゃん、出来る最善を常に行う女だよ♪」
450:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』23/36
08/02/09 11:55:43 /90TNzlZ0
(((まーりゃん先輩の事だからきっとなにか企みがあるに違いない)))
得意げに語るまーりゃんに、周囲の人間はあからさまに不審の目を向けるのだった。
しかし由来はどうあれ……
「う、美味い……」
「トリュフってはじめて食ったよ……」
「なんだか悔しいけど、かけたお金の額だけ美味しくなるっていう見本みたいなものね……」
「『プロ』と『玄人はだし』の差は大きい……」
なにせベースが違う。本物のプロフェッショナルが作るフォンドヴォーから作られた欧風カレーが不
味い筈がない。さらに手順通り丁寧に作られた黄金色のサフランライスと厚切りステーキ、そしてトッ
ピングされたトリュフも、高級品の実力を惜しみなく発揮しているのだ。
「カレーが美味しいのも美味しいけど……」
ふと、ある事に思い至った貴明は顔を上げるとささらを見つめた。
貴明と目が合ったささらは、次の言葉を待ちながらも不安そうに身を竦める。そんな彼女の気持ちを
察したのか、貴明は安心させるように微笑むと言葉を継いだ。
「このご飯とステーキは先輩が作ったんですよね? 先輩の手作り、はじめて食べさせてもらったけど
美味しかったし、嬉しかったです」
「そう……。河野さんにそう言って貰えてよかった」
貴明の言葉を聞いて、ささらははじめて安心したようににっこりと微笑んだ。
マイクを持って雄二が立ち上がると……特別審査員席(アナウンス席含む)に向かって調理ブースの
環の方から強烈なプレッシャーがかけられている事に貴明は気が付いた。
「(おい、雄二。ここは真面目にやっといた方が身のためだぞ)」
雄二はしばらく葛藤していたようだったが、がっくりと肩を落としたかと思うと次の瞬間、さわやか
な笑顔をギャラリーに向けるとこう言った。
「さあ、皆さまお待ちかね、才色兼備のお姉さま、向坂環選手でーす♪」
451:名無しさんだよもん
08/02/09 11:58:57 8HHKMdD40
支援。しかしこれは最初から分割した方がいいかもわからんね
452:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』24/36
08/02/09 11:59:42 /90TNzlZ0
「(弱っ! あいつ弱っ!)」
「(貴明にヘタレって言えないわよね~~、あれじゃ)」
「(雄二様……イルファはちょっと情けないです……)」
そして命は拾ったのかもしれないが、何か男として大切なものを失っていたのだった……。
そんな愚弟を尻目に優雅に進み出た環は、審査員たちの前に小振りな丼物椀を並べた。
お椀の中には湯気を上げるカレー色のスープが、そして中華麺と思しきものが入っている。
「これは……カレーラーメン??」
そう貴明が尋ねると、環は艶然と微笑みつつ頷いた。
「ええ、そうよ。ご飯に合わせるカレーだけじゃちょっとつまらないでしょう? さ、のびないうちに
まずは召し上がれ」
レンゲですくってスープを口に運ぶと、鶏がらスープと魚介系のスープを合わせたWスープとスパイ
シーな鶏モツカレーのコラボが味と香り、両面で美しいハーモニーを奏でる。そして麺は中太直麺、ち
ぢれはないが、スープに若干とろみがあるのでよく絡んでいる。コシが強いとは言えないが、歯に吸い
付くような独特の食感があり、妙に後を引く美味しさがある。
「なんだか懐かしい感じのするラーメンね、これ」
「ラーメン、ラーメン~~♪」
「くっ、なんだか悔しいけど文句なく美味ぇ……」
一同の賞賛の声に満足した環はすっと人差し指を立てるとこのラーメンの履歴を披露しはじめた。
「これはね、十茶庵っていうちょっと有名なもつ老舗ラーメン屋さんがあるんだけど、そこのカレーラ
ーメンをアレンジしたものよ。基になってるラーメンにはモツは入っていないんだけど、折角だから
モツカレーを工夫して具にしてみたってわけ」
そして環は調理台の上にある麺ケースを指し示す。
麺ケースの側面には見間違えようもなく大きく『十茶庵』のロゴが入っている。
「麺はとてもじゃないけど手打ちでこの味は出せないから直接お店から取り寄せたの。鶏も、そこの美
味しい地鶏を分けていただきました。ささらほどじゃないけど、私も使えるものはみんな使ってみた
つもり」
453:名無しさんだよもん
08/02/09 12:02:07 zYkFEQcr0
|ω・`)つ①①①①
454:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』25/36
08/02/09 12:04:41 /90TNzlZ0
「う~ん、麺もスープも老舗の味が基になってるだけあって地力があるって言うか、きっとまた食べた
くなる味だなー」
「違いない。姉貴のラーメンを褒めるのは何かに負けた気がして腹が立つんだが、こいつは文句のつけ
ようがねえ。第一まず「ラーメン!」って言うのがにくいんだよなぁ」
「くぅっ、タマちゃんのラーメンで屋台やりてぇ……っ! 儲かりそうだけどな~~」
さすがに男の子と子供はラーメンには弱い。いかにも男好きする味と食感に貴明も雄二も諸手を挙げ
て大絶賛するしかなかった。
「やっぱり、タカ坊にラーメンは外せなかったわね。良かったわ」
タカ坊宅に泊まる時にはきっとこれを作ってあげよう……そう思いを巡らせながら悦に入る環だった。
「最後に登場するのは、なみいる正妻の座希望者に敢然と立ち向かう河野家側室ナンバーワン! 河野
ミルファちゃんで~~す!!」
有終の美を飾るべく、ボルテージの上がる一方の雄二のすっとこリングアナウンスに乗り、審査員席
の前にはお盆に大きなランチプレートとソースボードを載せたミルファが進み出た。
「(ううっ、側室決定戦なら私も出場して貴明さんのハートをがっちりキャッチ♪しますのに……)」
「(……いつかみんなの認識違いを正さねばならないのれす。……ご主人様のナンバーワンでオンリー
ワンはシルファらもん)」
なにやら観客席の方では、青いショートボブや金色三つ編みのメイドロボさんのものと思われる声が
ボソボソ言っている。
……ボソボソ、という割には聞こえよがしの声量ではあるのだが。
少なくとも貴明にはよく聞こえる。
貴明が肩越しに恐る恐る覗いてみると、二人はジト目でこちらを見ながら手メガホンでぶつぶつ文句
を言っているのが目に入った。
その様子に、近日中にまた騒ぎが起こるに違いないことを確信し、彼は今日何十度目かになる大きな
ため息をつかずにはいられなかった。
455:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』26/36
08/02/09 12:09:08 /90TNzlZ0
「ちょっと毛色が違うから、こんなのでもいいのかな~~?とは思うんだけど……」
周囲の喧騒を余所に、そろそろとミルファが出したプレートにはドライカレーとナポリタンが盛り付
けられ、その上には大きなカツが乗っている。更にソースボートによそったカレーが添えられていた。
「え~~っと、これって、トルコライス??」
何かを思い出すようにちょっと首を捻りながら春夏が確かめる。
しかし雄二はそれを言下に否定した。
「トルコライスはピラフとナポリタンとトンカツだから、マイナーチェンジバージョンだろ」
そして取り分けられた「それ」にたっぷりとカレーソースを乗せると思わず破顔した。
「おほっ、ミルファちゃん、わかってるね~! ドライカレー、ナポリタン、そしてトンカツ! お子
様っつーか男の大好きなものテンコ盛りで、俺のハートも鷲掴みだぜ」
早速春夏と雄二はミルファのトルコライス風料理にとりかかってみた。
「へ~、ビーフカレーシチューね。あら、カツもビーフカツレツなのね。どれもこれもすごく丁寧に作
られてて、本当に美味しいわ」
甘めに仕上げられたビーフカレーシチューがドライカレーと組み合わさると、いい感じにスパイシー
なドライカレーが食べやすくなり、子供でも喜んで食べられるような味になる。
ナポリタンも柔らかく揚げられたビーフカツも下ごしらえから丁寧に作られていて、それぞれが単品
でもかなり良い出来に違いない。
「ん~~……んぐ、んぐ……やっぱ美味い美味い。子供も好きだろうけど、こんくらいわかりやすい方
がヤローの舌には合うんだって。……あれ~~、それにしてもなんだか記憶の隅に引っかかる味のよ
うな気がするな??」
もぐもぐと頬張っていた雄二であったが、急にスプーンとフォークを止めると首をひねり出した。
どうやらなにかを一生懸命思い出そうと記憶の棚を漁っている様である。
「先輩の胃袋を預かる愛人の料理がこれって……実は先輩ってマザコン?」
「ほうほう、たかりゃんはこういうお子ちゃまな料理が好きなのかにゃ?? まったく、男ってヤツは
いつまでたってもママのおっぱいから離れられんのだのう……」
そして、ミチルとまーりゃんは心のメモ帳に「貴明=マザコン」を記載するのだった。
456:名無しさんだよもん
08/02/09 12:12:27 8HHKMdD40
私の計算が確かならば……この辺でさるさんかな?
457:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』27/36
08/02/09 12:15:08 /90TNzlZ0
……その時、それまで黙々と食べ進めていた貴明がボソリと呟いた。
「……インドライスだよな、これ」
そしてミルファの方を見ると確認するように尋ねる。
「ビーフカレーシチューにビーフカツ……豚を使わず、味付けのメインがカレーだからインドライス。
子供の頃、テレビで見たトルコライスを食べたくなって母さんに何度か作ってもらった事があるんだ
けど、そのバリエーションのひとつ。俺の一番のお気に入り……そうだよな?」
一口食べたときから貴明は確信していた。微妙には違うかもしれないが、記憶の奥に眠っていた懐か
しい母の味がミルファの手によって鮮やかに再現されていたのだ。
その言葉を聞いたミルファは、両手を胸の前で合わせるようにすると、それまでの不安そうな表情か
ら一転してはにかんだ様に微笑んで頷いた。
「気が付いてくれたんだね。……この前、お母様から電話があった時に作り方を聞いたんだ。レシピや
色々なデータをあわせて出来るだけ再現したつもりなんだけど、どうかなぁ??」
そしてやっぱり、探るような表情で貴明の顔色を伺う。
貴明はプレートの上の一つ一つの料理をじっくりと綺麗に平らげると、ゆっくり顔を上げてミルファ
を見つめ、そしてちょっと困った風に薄く微笑んだ。
「なんて言ったら良いかな……」
少し考え込んだ貴明だったが、
「う~~ん、とりあえずこれだけじゃ足りない。だから、今日の夕飯もこれ作って欲しい、ってのは答
えにならないかな??」
しばらくすると軽く視線を泳がせながらそう答えた。
合わせていた手のひらに額を押し当てるようにしながらその答えを聞いたミルファは、ほぅっと大き
なため息をつくとようやく屈託のない笑顔を浮かべた。
「うん、がんばって作る。いっぱい食べてね」
……笑顔をかわす二人であったが、
「(な、なんか結界が張られてるみたいッスね……)」
「(なんか、ムカつくんだけど。これって出来レースって言わない?)」
458:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』28/36
08/02/09 12:16:54 /90TNzlZ0
「(貴明とみっちゃん、あいかわらずらぶらぶらぶ~~や♪)」
「(こんな恵まれた環境にありながら更にモテ続けるとは、やっぱ男の敵だぜ)」
その熱気というか、ATフィールドというかにあてられる周囲の反応は、概ね「バカップルとはやっ
とれんわ」という風の生暖かいモノであった。
◇ ◇ ◇ ◇
「さあ、全員の試食が終わりました。早速各審査員の方々はお手元の用紙に記入をお願いします。15
分後に結果発表をしますので、おトイレタイムが必要な方は今のうちにドゾー」
雄二が試食の終了と審査開始を宣言すると、それまで張り詰めていた家庭科室の空気にどこかほっと
した雰囲気が漂うようになった。
……のであるが。
貴明の周りにだけは、更なる緊張感が高まりつつあった。
(な、なんなんだよこのプレッシャーは……)
ちらり、と観客席に目を走らせると……
「(瑠璃ちゃんの美味しかったやろ?)」
まぁ、珊瑚のプレッシャーはさしたるものではないとして。
「(お姉ちゃんのよ、お姉ちゃんの。わかっってるんでしょうね、あんた……)」
「(センパイ、もちろんこのみのカレーっすよね!?)」
「(お姉さまのラーメンを食べておいて選ばないなど、ありえませんわよ!?)」
「(激しくこくこくこく)」
突き刺さりそうな視線の雨で、少なくとも胃袋には穴が開くんじゃないかと思う貴明であった。
しかし……
(ううっ、あっち向けないっ……)
調理ブースから降り注ぐプレッシャーはそんなものではなかった。
じわり、と背中に汗がにじむ。
459:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』29/36
08/02/09 12:19:43 /90TNzlZ0
(あっちを向いちゃいかん! 焼け死ぬぞ、俺!!)
ぎ、ぎぎぎぎぎ……
そうは思いつつも、錆付いた様な首の間接を動かし、つい恐いもの見たさで眺めてみると。
「(タカくんタカくんタカくんタカくん……)」
「(た、貴明ぃ。ウチのカレー、美味なかったか?)」
「(タカ坊~~、当然私に点を入れるわよね~~??)」
(コワっ! あっちコワっ!! 誰選んでも俺生きて帰れないんじゃなかろうか……)
猛烈な視線の槍衾に、つい呆然としてしまう貴明であった。
そして15分後……
「お待ちかねの~~、結果発表~~!!」
どんどんぱふーぱふー! わー!ぱちぱちぱちぱち!!
「皆さん静粛に、静粛に~~。……それでは、審査員の皆さまの投票用紙を拝見させていただきましょ
う。まずは……」
裏返されている集計用紙を手に取り、雄二は結果を読み上げはじめた。
「えーと、これはまーりゃん先輩のものですね。『一人目タマちゃん。理由、ラーメン! 二人目ルリ
ルリ。理由、エビ! 三人目、マナちゃん。理由、お菓子!』なんだかすばらしくお子さまな理由の
ような気もしますが、いかにもまーりゃん先輩ですね」
ふむふむ、と頷きながら発表を聞いていたまーりゃんであったが、突然はたと何かに気が付いたのか、
いかにも『しまったぁ~~!!』な表情をしている。
とはいえ発表されてしまったものはもう変わらない。
「それでは向坂環選手、姫百合瑠璃選手、小牧愛佳選手、それぞれ1点ずつが入りました~~。つづき
ましては……あ~、これは私の書いた投票用紙ですねー」
そう言うと、苦笑しながら雄二は自分の書いた紙を読み上げ始めた。
「え~、『一人目は久寿川ささら会長。理由は文句なしに味は一番いいと思ったから。二人目ミルファ
ちゃん。理由、美味しかったのもあるけど男心をがっちりゲットするメニューにやられたから」
460:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』30/36
08/02/09 12:22:21 /90TNzlZ0
そしてちょっと照れくさそうにしながら、
「え~~、『三人目は向坂環。理由、男としてラーメンは外せないから』以上」
そう発表した。
「うおっほん。……続きましては、これはミチルちゃんの書いてくれたものですね。え~~と、『一人
目、小牧愛佳さん。理由、おしゃれだから。二人目、草壁優季さん。理由、おしゃれだから。三人目
は柚原このみ。理由、成長著しかったから』う~~ん、明快にして端的な理由ですね」
「どれも美味しかったから、単純に好みで選んだ……だから他に言いようがない」
無表情にぼそりとつぶやくミチル。どうやら雄二の人選は間違っていないようだった。
「ありがとうございましたー。……では次の投票用紙……柚原春香さんのものですね」
ここまで環と愛佳が2票ずつを得ているが、まさにデットヒート。読み上げる雄二も興奮を隠せない
ようである。
「どれどれ、『一人目、久寿川ささらさん。理由、味は一番優れている。メニューのチョイスといい文
句のつけようがない。二人目、草壁優季さん。理由、レシピ、技術ともに非常にセンスの良い料理だ
ったから。三人目は姫百合瑠璃ちゃん。理由、優れた技術に裏打ちされて、見た目も味も素晴らしか
ったから。個人的にはこのカレーが一番好き』だそうでーす」
雄二の発表を聞きながら春夏はうんうんと頷いている。そしてべた褒めされた瑠璃は、頬を赤らめて
恥ずかしそうに聞いていた。これでこのみとミルファ以外は全員2票、最後に残された貴明の票次第で
勝負が付くのが確実となっていた。
……もったいぶるようにチラリと貴明を一瞥すると、雄二は最後の投票用紙を表返した。
「え~~っと貴明くんの票は……あ~、『選べません。ごめんなさい』って、なんじゃこりゃあ!?」
「「「「な、なんだってぇ~~~!!??」」」」
素っ頓狂な雄二の声に、ギャラリーも参加者たちも一斉にがっくり来ていた。
「んなこと言ったって選べないって~~!!」
騒然とする中でじたばたする貴明。もうほとんど涙目になっている。
「お前ねえ、この状況でそんな言い訳が許されるとでも思ってるのか?? ああんっ!?」
「ヘタレにもほどがあるわよ~~っ!? あんたはぁ~~っ!!」
461:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』31/36
08/02/09 12:24:50 /90TNzlZ0
「言い訳とかそういうのじゃなくてだなぁ~~、とにかく勘弁してくれよ~~」
雄二や由真に凄まれても貴明はわたわたと首を振って拒否したがった。
先ほどのプレッシャーの中で、貴明にはついに書ききれなかったのである。
「……ちょっと貸して……。あ、なにか書いて消した跡がある」
鼻梁の上の弦をくいっと上げて眼鏡を直しながら、雄二の手元の用紙を見つめていたミチルは口を開
いた。当然の事ながら眼鏡のレンズがキラリと光る。
その言葉を聞いた貴明はわたわたと紙を取り返そうとミチルに迫ろうとして……由真と雄二に取り押
さえられた。
「わ~~! わ~~! それはいいのっ!!」
「往生際が悪いんだよっ、お前わっ!!」
「ほらほらたかあきぃ~~、あきらめようよぉ~~!!」
そしてしばらく紙を調べていたミチルは、無表情のまま観客席のチエを呼んだ。
「そう言われては読まずにいられない……よっち、私の鞄」
「いえっす、まむ!!」
そしてペンケースから赤鉛筆とカッターを取り出し、かりかりと芯を削ると赤い粉を紙の上に振りか
けた。興味津々にその光景を眺めるチエに対して、
「よっち、ふぅーっとやってみて」
「これを?? どれどれ、ふぅ~~~~~っ……あ、字が浮いてきた。なになに。『一番、ミルファ。
理由、おふくろのインドライスを思い出したから。二番、このみ。びっくりするほど美味くなってた
から』だそうッス」
浮き出した文字を見つけたチエは、そのまま結果を読み上げていた。
これで全員2点。だがしかし……
「え~~っと、三番は無記名っす。ちなみにミルファさんやこのみの点数も書き込んでないから……」
「ちょ、今んトコ全員同点かよ……」
そう。同点で7人が並ぶというまるで漫画のような展開が今まさに現実のものとなっていた。
残るは一票。勿論貴明の持ち点である。
462:名無しさんだよもん
08/02/09 12:27:45 8HHKMdD40
まだ逝けるのか? もう少しだ頑張れー
463:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』32/36
08/02/09 12:28:00 /90TNzlZ0
「貴明ぃ、やはり運命はお前に一人を選べといっているぞ??」
にやにやといやらしい笑顔を浮かべて迫ってくる雄二。
「とにかくさくっと決めちゃいなさいよ~~。誰に最後の一点を入れるのか」
「センパ~イ、こんな時くらいズバッと行きましょうよ~~」
由真とチエは貴明のあまりの優柔不断さにあきれ顔で嘆息している。
「今何時だと思ってんの。あんたが決めなきゃ終わらないのよ」
「ふぁいとやで~~、貴明!」
いつものようにジト目を寄越しながらズバっと厳しい事を言う郁乃と、いつものようににぱーっと微
笑みながら応援を寄越す珊瑚。そして……
「誰を選んでもいいのよ、タカくん。一番美味しいと思ったものを、素直に選んであげて。むしろあな
たが遠慮することの方がみんな悲しいんじゃないかしら。だって、大切なのはね? タカくんが真剣
に向き合ってくれる事なんだから」
春夏がそう、貴明を優しく励ました。
それを聞いていた7人も一様に頷いて春夏の言葉を肯定する。
「タカ坊、いつか言ったと思うけど、弱気になって逃げてはダメよ。底力を見せて。……みんな、あな
たが真面目に考えてくれる事を望んでるのよ」
環は春に食堂で貴明に説教した事を思い出しながら、再び活を入れた。
しばらく黙って俯いていた貴明だったが、ようやく何がしかの結論を出した表情で顔を上げた。
調理台のほうに目を向けると、7人の少女たちがじっと視線を返してくる。
このみはいつものつぶらな瞳で、瑠璃はやっぱり不安そうな瞳で。
優季は名前の通り優雅に微笑みながら、愛佳は小動物のように落ち付かなそうな上目遣いで。
ささらは感情を押し殺すようにじっと、環は見守るように暖かく。
ミルファは……感極まったように、きっと涙を一杯にして。
「俺が一番美味しいと思ったのは……」
464:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』33/36
08/02/09 12:30:14 /90TNzlZ0
一度言葉を区切って目を閉じる。今日食べた7皿が脳裏を走りぬけていった。このみの必殺カレー、
伊勢海老カレー、北海道風スープカレー、ナンカレーとカレーパイ、高級欧風カレー、鶏モツカレーラ
ーメン、インドライス……どれも美味しかったが、貴明の心に一番響いたのは……
「ミルファのインドカレー、です」
心を澄ますと、答えはやはり決まっていた気がする。
だから、貴明はきっぱりとそう答えていた。
ミルファの瞳が、信じられないという風に大きく見開かれた。
貴明には、彼女の頬を流れる一筋の涙が見えた気がした。
……そして、自分の答えはやはり間違っていなかった事を知ったのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
「さすがね、ミルファちゃん。見事な勝利だわ」
ひとしきり大騒ぎした後、参加者たちはお互いのカレーを試食しながらわいわいと決戦の余韻に浸っ
ていた。……ちなみに、女の子たちに好評なのはやはりスープカレーとおやつカレーのようである。
「あ、ありがとうございます……でも、私が勝てたのは……」
「ミルファちゃんの実力よ。確かに技量であなたを上回った娘はいたわ。でもあなたのタカくんへの想
いが、タカくんのミルファちゃんへの想いが、技術や味覚のハンデを埋めて余りあったの」
他の参加者のカレーのあまりのレベルの高さに、ミルファは身のすくむ思いを味わっていた。
でも春夏は、そんなミルファを優しく励ましていた。
「自信を持って。第一、そうでないと今回あなたに及ばなかった他の娘に失礼よ」
「そうだよ、ミルファさん。それに、わたしはまだ負けたつもりはないからねっ!」
春夏の言葉を受け、このみは薄い胸を張ってリベンジ宣言をした。
「そうそう。まだ初戦が終わったところです」
465:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』34/36
08/02/09 12:33:12 /90TNzlZ0
「今度はちゃんと自分で作った料理で河野さんに美味しいって言ってもらいますから」
優季とささらもどうやら負けを認めるつもりはないらしい。
特にささらは『まーりゃん先輩の口車に乗って持ち込みカレーで勝負してしまった』事を悔やんでい
るらしく、いつか料理を覚えて再挑戦したいと意気込んでいるようだ。多分、貴明がささらの手作りサ
フランライスとステーキに喜んだ事が影響を与えているのだろう。
「次はバレンタイン決戦ですよ~~。うふふ~~、お菓子ならあたしは大得意ですよ~~」
早速次の勝負のゴングを鳴らそうとしてしまうのは愛佳である。
端で聞いている郁乃は「今日の見たら出来レースだってわかりそうなものだけどね~~」とあきれて
いるようだが。
「ばれんたいんちょこの材料いうと、カカオ取り寄せるといいんか~~? 瑠璃ちゃん」
「……さすがにカカオからはよう作らんわ」
「じゃあベルギーからチョコ取り寄せませんか??」
それを聞きつけた姫百合家は、すでにバレンタイン作戦について話し合いをはじめていた。
「まぁ、今回は譲っておくわ。さすがね、ミルファ」
そっとミルファの肩を叩くと、環はそう言って彼女の労をねぎらった。
「いえ、お母様に教えて貰ったレシピのおかげです」
「それを教えて貰えるのもあなただからでしょう? おばさまの信頼を得て、タカ坊を任されていれば
こそなんだからね」
ミルファはその言葉に、照れくさそうな微笑を返して答えとした。
「そうだ、ミルファちゃん。明日、私お父さんの出張について行かなきゃならないから、このみを泊め
てあげて貰えないかな。そしたらこのみ、ミルファちゃんに必殺カレーの作り方を教えてあげて」
そんな中、春夏は急にぽんと手のひらを叩くとミルファにそう提案してきた。
「スパイスの調合も教えていいんだっけ?」
「いいわよ~~。ミルファちゃんとの約束だから、秘密のコツも全部教えていいからね」
春夏はにっこり微笑んで人差し指を唇に当てた。
466:決戦!の中の人の携帯
08/02/09 12:42:44 X6EPtqQlO
またまたさるさんに捕まりました……。
あと二つだったというに、がっくりです(T_T)
しゃあないので夕方また投下しに来ます~~。
467:名無しさんだよもん
08/02/09 13:10:27 PilIWENN0
夕方の部に期待
468:名無しさんだよもん
08/02/09 13:23:23 8HHKMdD40
文章が長いので「窓の中の物語」使用推奨かな
と思ったらソフト作った人HP閉じちゃったんだね。ぐぐると再配布してる所は出てくるが
469:名無しさんだよもん
08/02/09 13:31:05 9RGf7q7Z0
展開というか、母の味は強しって流れが前のカレーSSと同じ・・・だよな?
キャラの配置は違うけど、料理勝負って部分もかぶってるし
テーマ指定の弊害がこんなところに現れるとは
470:名無しさんだよもん
08/02/09 13:41:14 bgf8A6QS0
>>469
まぁテーマがかぶってる以上多少はしょうがないわな
個人的には作る人によって全然違うから面白いと思う
471:名無しさんだよもん
08/02/09 13:41:36 8HHKMdD40
>469
ってか>361>389だろ? 別に弊害でもなんでもない。少なくとも俺にとってはね
472:名無しさんだよもん
08/02/09 14:56:08 LzIDSmL00
逆に考えるんだ
そのほうが様々な対決とカレーを見られると
しかし対決シリーズは面白いな
そのうち料理以外にも何かやらせてみたいもんだな
473:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』35/36
08/02/09 15:40:24 /90TNzlZ0
このみは大きく頷くと陽だまりのような笑顔になる。
つられるようにミルファも元気を取り戻し、このみの手をとって大きく上下に振った。
「わかりました! このみちゃん、じゃあ明日は一緒にカレーだね!」
「うんっ! 楽しみだよ! えへへぇ~~♪」
このみのちいさなおさげと桜色のリボンが揺れる。
ミルファのきれいな赤い髪もそれに合わせるように大きく揺れていた。
「明日の夜もカレーなのか……」
それを聞きながら、誰知らず溜め息をつく貴明であったが……
「なに言ってるの? タカ坊。あなたには全然十分に食べてもらってないんだからね。そうね、折角取
り寄せた麺がもったいないし、明日の昼食は私が作ってあげようかしら」
「そうですよ~~、河野くん。あ、あたしのはおやつですから~~、10時とか3時とかにちょっとつ
まんでいただければ良いですからね」
「ウチでお取り寄せした伊勢海老もあるで~~。そや! 今日はウチと瑠璃ちゃんで伊勢海老カレー作
りに行ったるな。みっちゃんのカレーと二つくらいなら貴明食べれるやろ」
「瑠璃様、珊瑚様、私とシルファちゃんもご一緒してもよろしいですよね??」
「もちろんや~~! みんなでらぶらぶやぁ~~♪」
……どうやら明日の夜がどうこう言っている場合ではないようだった。
勿論、さわやかなハイテンションとはかけ離れたテンションで騒ぐ連中もいる。
「料理勝負はんたーい! ゲームとか……フットサル対決とかっ!!」
「そういうのならアタシも参加するッス~~!」
「……フットサルさんせい……」
料理が得意とはいえない、というかむしろ出来ない由真やチエなどは別の勝負をやりたがっていた。
サッカーが得意なシルファもさりげなく同調している。声は小さいのだが。
「あれ? 由真先輩も貴明争奪戦に参加したいんですか?」
「ぅえっ!? な、なに言ってるのよ、そーいうのじゃなくて、ほら、皆楽しそうだから……」
474:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』36/36
08/02/09 15:45:11 /90TNzlZ0
しかし、郁乃の鋭いツッコミにいきなり苦しい立場に立たされてしまうあたりいかにも由真である。
「はいはい♪ そういう事にしておきましょう」
「な、なんなのよその生暖かい視線わぁ~~っ!!」
郁乃の尻馬に乗って由真をイジって遊ぶ愛佳、という構図も最早おなじみである。
そんな喧騒の中、貴明はというと……
「はぁ……もう勝手にしてくれ……」
がっくりと疲れていた。
そしてミルファは満面の笑みを浮かべながら貴明の腕にすがり付いていた。
「えへへ……。誰にも、負けないんだから!!」
その頃。
人気のない生徒会室で悔しがるちびっこの姿があった。
手元には『裏トトカルチョ』の文字の入った手帳が握り締められている。
「うぬぅっ! ラーメンとエビとお菓子に騙されてさーりゃんに点入れるの忘れるとわぁっ!「まー
りゃん先輩~、賭けチケットを頂きに来たんすけど~~」くうっ! こ、これで勝ったと思うなよ
おぉぉ~~!!」
「うわあぁぁぁ~~っ、窓から逃げたぞ~~っ!」
「追え追え~~っ!!」
そして誰にも知られることのないもう一つの戦いの幕が、密かに切って落とされた。
……その後まーりゃん先輩がどうなったのかは、想像にお任せする。
~~終わり~~
475:『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』の作者
08/02/09 15:59:33 /90TNzlZ0
以上にて『決戦!バトル・オブ・ザ・カリー』、ようやく終了になります。
支援の数々ありがとうございました。
>>471さんのご指摘のとおり、これは以前>>361と>>389で話していたものです。
二番煎じだな~~というのは自分でも気になっていたのですが、折角練ったネタだったので思い切って完成
させてみました。……ちなみに、初期タイトルは『華麗なる決戦!』でしたw
まぁ、バトルでカレーで決着を何で付けようか……となれば私の脳みそはこれ以外思いつきませんでした。
ちょっとでもこの作品で楽しんでいただけたら幸いです。
476:名無しさんだよもん
08/02/09 16:40:10 PVN2rqKi0
乙乙。楽しめたよ。
キャラの多いバトルロイヤルを良く書けてるし、やりとりも賑やかでいい。文章も巧いと思う。
そういう力量のある人だという前提で、敢えて幾つか苦言というか、希望を。
まず長い! この話なら少なくとも半分、できれば3つくらいに区切ってくれ!
横書きだと文字を追うのも大変で、窓の中の~で縦にして読んだけど、全体は把握しきれんかった
SSで「長さ」は無条件で読み手に対するハードルになるから考慮されたし
その2。オチが上の「華麗なる~」と同じなんだけど、
「華麗なる~」は、
貴明が食べて「あれ?」→草壁さんが「昔遊びに行った時に~」と理由を説明する流れで、
草壁さんと貴明が幼馴染みだという公式設定を利用しているのに対して、
「決戦!~」は、
食べて貴明が「昔食べたんだよね」と独白→ミルファが種明かし、
で、母親に電話で聞いた、という理由。
河野母とミルファが電話する仲というのがやや唐突で、
(「必殺!~」の6/13あたりを読めば想像できなくもないけど……)
比較すると流れの自然さと説得力で『華麗なる~」の方が上だったと思う。
その3。これも「華麗なる~」との比較。
「華麗なる~」は目前で食えなかったり激辛だったりと道中に変化があるのだが、
「決戦!~」の方は淡々と食べるので素直過ぎる気もする。その2と併せて、も少し工夫の余地がありそう。
(せっかくだからカレー全部食べたいという願望は叶えてくれたのだがw)
その4。至って個人的な感覚だが、ささらが他人のカレールーを使うのは不満。手作り感が欲しいぜ。
比較されるのは両作者に不本意かも知れないが、
せっかく同じテーマで同じ展開の作品を続けて読んだので、今後の参考になればと。
じゃあお前が書けって言われても俺にそんな力量はないから勘弁なw
477:名無しさんだよもん
08/02/09 17:22:42 uAcx9a5U0
らっきょう支援
478:名無しさんだよもん
08/02/09 17:49:50 uAcx9a5U0
うわっどじったあ
479:名無しさんだよもん
08/02/09 18:23:00 bgf8A6QS0
>>475
乙。自分は被りとか関係なく楽しめました
>>476
長々と丁寧に書いてもらったとこ悪いんだが、
>比較されるのは両作者に不本意かも知れないが、
そう思うなら比較しないで書けば?その2なんかただ「唐突過ぎた」で終わる話だし
その3も「淡々としてて素直過ぎると思った」でいい。わざわざ比べる意味が分からん
480:名無しさんだよもん
08/02/09 19:30:34 LXZOQ87T0
>>475
おつかれさまでした!
俺はカレー対決が終わってからの数レスが一番楽しかったッス。つか、それ以外がちょっと微妙だったw
多分前のカレーSSと被らないように気をつけたんだと思うけど、そのせいで全体的に捻りすぎの感があった。
これじゃカレー対決の話ってより、料理の説明の話になっちゃってる感じだな~。
文章はいいと思うし、キャラの捉え方も上々だから、あとは注力する場所さえよければ文句なしかも。
次回作はもう少しキャラのやり取り重視っつーか、それ中心の話読んでみたいッス。
>>479
ホントにそう思うなら「被りとか関係なく」なんて書かないで、楽しめたってだけ書けばいいだろ…w
あと感想レスに突っ込むのはこれっきりにしてくれな。意味ねーし荒れる元だから。
481:名無しさんだよもん
08/02/09 20:12:56 xVchMPdn0
比較されるとなると皆書きづらくなるな
482:名無しさんだよもん
08/02/09 20:22:58 PilIWENN0
ここはSSコンペスレじゃないんだから
好きなように書けばいいと思うのれす
483:408
08/02/09 20:36:35 ANkbXc1R0
>>475
乙でした
華麗~の中の人です
全体的にキャラの描写が良くてテンポよく読めるという印象で、楽しく読めました。
でも自分のときもそうだったのですが、長いとさるさんの分断が痛い
長文は苦じゃないんですが、調子が乗ってきた所でちょん切れちゃうので…
書庫に保存されたらまた改めて読みたいと思います。
>ちなみに、初期タイトルは『華麗なる決戦!』でしたw
俺もタイトルについてはすでに世に出ている「華麗なる~」のタイトルの漫画があるのでそれの影響がw
ちなみに、同じネタが被ると比較されたりして書きづらいという意見もありますが
個人的には同じテーマで書くというのは、自分はこう料理するけど、他の書き手さんはどう料理するのか?
とかの楽しみがあって、結構好きなんですけどね。
484:名無しさんだよもん
08/02/09 20:38:18 ANkbXc1R0
うわ
他のとこのコテ残ったままだったわ
スマソ
485:475
08/02/09 23:30:13 /90TNzlZ0
や、比較されるの覚悟でうpしたんで、ある意味望むところですよ。
料理SSになっちゃってるのは作者自身が作るの好きってのが大きいっすねw
何せ必殺カレー以外には全部モデルありますし。
まぁ、きのこカレー以外は面倒なんで最近はよう作らんですがww
だから出場選手も「出来そうな子」に限定したんですよ。
>>476さん
ささらって対決出来るほどの料理の腕ありますかね~~??
これは俺も悩んだんですけどね、ささらって手作り料理苦手がで食に淡白なキャラでしょ??
だからマニュアル通りしか作れない→ルーはプロに(と、まーりゃん先輩にそそのかされた)
ってしてみたんだけど。
それにしても。
AD出るまではよう書かんと思ってましたが、最近は少し書きたい気分かもw
486:指先 1/2
08/02/10 00:27:37 N9LA7kKx0
「あっ…」
俺の指がそっと触れた瞬間、愛佳の声が漏れた。
「そ、そこはだめぇ…」
「…他の場所がいいの?じゃあ…」
俺はそこから指を離すと、少し離れた別の場所に触れた。
「や、そ、そこも…だめぇ…」
「…それじゃ俺が困るんだけど。」
今度は愛佳の言葉を無視して触れた人差し指にわずかに力を込めると、ゆっくりと手前に向かってなぞるように動かした。
「あ…や…」
愛佳は何か言いかけて、次の瞬間はっとして口を押さえた。
その間も、俺の指先はわずかな抵抗を感じながらもするするとゆっくり滑っていく。
「…」
愛佳は口を押さえたまま、俺の指先を凝視していた。
俺の指先はやがて末端にたどりついたが、深く落ち込んだその場所まで構わずなぞりきった。
「…!」
凝視し続けていた愛佳の大きな瞳がそれを見届け、「それ」が視界から消えるのと同時に声に出さずに小さな悲鳴を上げたようだった。
「まだ続けていいよな?」
俺はそう言いながら、先ほど拒否された場所へと人差し指を伸ばした。
「はゎ…だからぁ…そこはだめぇ…」
俺は無視して人差し指で触れた。
「あ…!」
またしても小さく悲鳴を上げそうになった自分の口を、愛佳は咄嗟に押さえた。
俺は先ほどと同じようにわずかに指先に力を込めると、再びゆっくり手前に向かってなぞるように動かした。
「…」
愛佳もまた、先ほどと同じようにその大きな瞳で俺の指先を凝視している。
過剰な力を加えないように、あくまでやさしく、慎重に指先を動かす
そして…先ほどとは違う末端にたどり着いた指先は、再び深く落ち込んだ部分までなぞりきった。
「や…」
愛佳はそれを見届けながら、再び小さな悲鳴を上げた。
「じゃ、もう一度だな。」
俺の人差し指が、新たな部分に触れた。
だが今度は先ほどよりもやさしく慎重にふれなければならない…デリケートな場所だ。
487:指先 2/2
08/02/10 00:28:10 N9LA7kKx0
俺はそこへと指を伸ばし…
カタッ
「あ、音鳴ったわよ。お姉ちゃんの番ね。」
「はうう…こんな難しい場所ばかりだとあたしには無理だよぉ。」
そう言いながら愛佳は人差し指をゆっくりと…将棋の駒の山に伸ばした。
◇
「将棋崩しは俺の勝ち…っと。愛佳には何してもらおうかな。」
「お、お手柔らかにね…」
書庫の給湯室からティーポットを手にして戻ってきた愛佳は苦笑いしながら答えた。
「それにしても…」
「んー?なぁに、郁乃ぉ。」
「さっきの貴明とのやり取り…言葉だけ聴いてるとなんか恋人同志がベッドで乳繰り合ってるみたいだったなと思って。」
別段たいした事でもないような口調で言った郁乃のその言葉に、愛佳の顔は瞬時に真っ赤に染まった。
「い、いっ、郁乃ぉ!」
俺も言葉を失っていると、意地の悪い笑みを浮かべた郁乃が追い討ちをかけてきた。
「なによ…恋人同士の癖にやってないの?…そうだ、貴明、やってみれば。じらしプレイ。」
「お、おいおい。」
俺がそれを受け流そうとして愛佳を見ると…なぜか熱っぽい視線で俺を見ていた。
「たかあきくん…やってみたいの?」
愛佳のそう問われると…俺だって男だ…かわいい恋人の痴態を見たくないといえば嘘になる。
しばらく迷って…俺は答えを口にした。
「俺は…」
488:名無しさんだよもん
08/02/10 00:28:37 N9LA7kKx0
思いっきり思い付きですw
それ以上でもそれ以下でもありません
貴明がなんと答えたかはお好みでどうぞ
489:名無しさんだよもん
08/02/10 00:30:00 /qGk6KVj0
何かアンソロコミックで似たようなのあったなw
あれはあやとりだったけど
なにはともあれ乙&GJ
490:名無しさんだよもん
08/02/10 00:30:18 WCUAh4se0
そして松葉崩しへ
491:名無しさんだよもん
08/02/10 07:17:39 xN4EqTmP0
わっふるわっふる
492:名無しさんだよもん
08/02/10 10:46:12 hgPbc6kyO
途中で落ちは読めたが、それなりに楽しめた。GJ
493:名無しさんだよもん
08/02/10 10:48:04 hgPbc6kyO
下げ忘れてた…
494:名無しさんだよもん
08/02/10 14:15:59 EfKtN9TqO
GJ。ワロタというより萌えた
>490
そして積み木くずしへ・・・古いかw
495:名無しさんだよもん
08/02/10 18:01:09 /qGk6KVj0
本編であまり絡みの無い2キャラで何か書いてみようと思う
というわけで組み合わせお題プリーズ
あまり出番の無いキャラは勘弁な
496:名無しさんだよもん
08/02/10 18:12:09 inw4Jtx30
じゃあ由真と瑠璃で
497:名無しさんだよもん
08/02/10 18:46:18 xN4EqTmP0
由真と瑠璃のツンデレ対決
498:名無しさんだよもん
08/02/10 18:56:14 /qGk6KVj0
由真と瑠璃か、共通点は来栖川とツンデレってとこかぁ…
499:名無しさんだよもん
08/02/10 20:31:39 5CAVkcV30
逆に、普段怒らないけど怒ると怖い(と思われる)キャラでSS作るとしたら、
珊瑚とかこのみとか愛佳とかあたりかな?
500:名無しさんだよもん
08/02/10 21:06:30 PvKcpOup0
草壁さんとイルファさんにダブルでお仕置きされたい
501:名無しさんだよもん
08/02/10 21:07:35 X7Ajznvc0
このみや愛佳だとなんとなく病みそうな悪寒w
珊瑚パターンは難しいなぁ。思いつけばいいネタになりそうね。
502:名無しさんだよもん
08/02/10 21:17:31 Zn2KD7ZP0
やさしくジワジワなぶられるのがいいなぁ
503:名無しさんだよもん
08/02/11 00:23:58 rck6u3FOO
流れに逆らうえ、どうでもいいんだが、このスレ見て久々に東鳩がやりたくなって近所のブックオフで買ってきた。
初日のこのみがスキヤキ持ってくる時の春夏さんの伝言に耐えれず、カフェオレ吹いたら、PS2が逝った…
504:名無しさんだよもん
08/02/11 00:28:15 KHWL++sD0
それはXRATEDを買ってプレイせよという神のお告げだよ
505:名無しさんだよもん
08/02/11 02:14:14 rck6u3FOO
リンドウズとか云う意味の分からんOSが入ってるジャンク品同然のパソコンでどうしろと
506:名無しさんだよもん
08/02/11 11:22:39 1YpYhH2s0
>>505
Linspireか。Winとの互換性が売りだったらしいが、どうなのかな
とりあえず東鳩とかくらいならWINEっていうソフト使えば動くと思う
興味が有ったら調べてみて、体験版が動くかどうかやってみるといい
507:名無しさんだよもん
08/02/11 21:34:26 BznnBlh90
由真&瑠璃物できたから投下する
長さは5レスほど
相変わらずオチや起承転結無しでございます
508:好敵手という存在(1/5)
08/02/11 21:35:46 BznnBlh90
某月某日。
普段は絶対着ないドレスパーティに身を包んだ由真が、やたら煌びやかな装飾が施された会場の片隅で退屈そうに壁に寄りかかっていた。
「…はぁ、早く終わらないかな」
この日、由真は来栖川主催のパーティにお呼ばれしていた。
いや、正確には来栖川グループの執事を務める祖父の付き添いであるのだが。
いずれその立場を継ぐ身(反抗してはいるのだが)である由真も今のうちにこうゆう場に慣れておけと祖父に申し付けられ
半ば強制的に同行させられたのである。
と言っても退屈な物は退屈、元々執事など継ぐ気のない彼女にしてみれば退屈すぎて死にそうな祝い事でしかない。
ロクに会った事すら無い親戚のお葬式に行く様な物だ。不謹慎だがそう思ってしまうものはしょうがない。
こっそり抜け出してしまおうか。由真はそう考える。
しかしソレは祖父に迷惑をかけることになる。
家業を継げと煩い祖父ではあるが、自分の身勝手で迷惑をかけるのは流石に忍びない。
せめて話ができるような知り合いでもいれば退屈くらいは紛らわせられそうなのだが。
「いるわけないわよねぇ…」
一縷の望みを託し会場を見渡してみるがそんな人などいるわけがない。
そんな事を考えてしまったが最後、退屈はますます由真の精神を蝕んでいく。
509:好敵手という存在(2/5)
08/02/11 21:36:21 BznnBlh90
このままでは退屈に押しつぶされてしまう。
ならばせめて楽しい事を考えよう、そう由真は結論をつける。
愛佳と書庫で紅茶を飲みながらおしゃべり。
街でショッピング。
貴明との勝負…って何でそこであのバカが出てくるのよ!
無意識に出てきた喧嘩友達(少なくとも由真はそう思っている)の名に、由真は激しく狼狽する。
おのれ、この場にいなくても私の邪魔をするか…!由真は例によって例の如く貴明に責任を押し付け思考を元に戻す。
いかんいかん、もう一度もう一度…。
好きな映画をみた事。
愛佳と街に遊びに出たこと。
貴明とゲーセンで対戦したこと…だからぁ!
由真の思考が終わりの無いループに突入しかけたその時、会場の出入り口の扉が重い音を立てて開いた。
誰か新しい来訪者が来たようだ。由真は誰だと思いその方向をみる。
果たしてそこに居たのは…。
「…貴明!?」
突然現れた知り合いに由真はつい大声を出してしまう。
何だ何だという周りの視線が突き刺り由真は軽く赤面する。
くっ、またアイツのせいで恥かいたじゃないの!
実際は貴明のせいではないのだが由真にとっては最早そんな事どうでもよい。
由真はパーティドレスを着ているのも忘れて貴明の方向めがけて走っていく。
先ほどの大声もあって貴明は既に由真に気づいていたようで、顔を軽く引きつらせている。
510:好敵手という存在(3/5)
08/02/11 21:36:59 BznnBlh90
「ゆ、由真。何でこんな所にいるんだ?」
「親戚に来栖川関係者がいるのよ!アンタこそ何でこんな所にいんのよ!」
世界有数の大企業来栖川グループのパーティ会場をこんな所呼ばわりする二人。
まぁ庶民的な心を持つ二人には充分こんな所なのだろうが。
「俺は、えっと来栖川グループがメイドロボの開発に力をいれてるのは知ってるよな?その試作機がウチに下宿してて…開発者から招待されたんだよ」
こんな所で出会うとはなんと言う腐れ縁なのだろうか。
まぁいい、今までの恨みまとめて晴らしてくれる。由真はそう考えるや否や、貴明に人差し指をビシッと突きつけ宣言する。
「とにかく、ここで会ったのも何かの縁よ!今日こそ引導を渡してやるわ!」
「ちょいまち!」
由真が宣言すると同時に誰かがそれを遮ってきた。
誰よ邪魔をするのは。由真が声がしたほうを振り向くと髪の毛を団子にした女の子がこちらを睨んでいる。年は自分より若干年下というくらいか。
「な、何よアンタ」
「バカ明に引導を渡すのはウチや!どこの馬の骨かも知らんアンタにそれをやらせるかい!」
由真と同じように人差し指を突きつけビシッと宣言する女の子。
一方馬の骨呼ばわりされた由真は反論を試みる。
「あんたこそ何よ、このバカを倒すのは私よ!」
「ウチや!」
私よ!ウチや!不毛なやりとりをする二人。
一方、ちっとも嬉しくない取り合いをされている貴明は少し焦っている。
二人が大声で言い争いをしている物だから、すっかり周りの注目を集めてしまっているのである。
とりあえず静めたほうが良さそうな気がする。
511:好敵手という存在(4/5)
08/02/11 21:37:31 BznnBlh90
「あの…二人共」
「「貴(バカ)明は黙って!」」
ハモりながら怒られてしまった。
どうしたものかと悩んでいると後ろから誰かに肩を叩かれた。
後ろを見てみると珊瑚がニコニコしながら貴明を見上げている。
「止めなくても良いと思うで~」
「な、何で?」
「見てればわかるぅ」
大丈夫かなぁ…。貴明が視線を戻すと二人の言い争いはますますヒートアップしている。
「こうなったら勝負や!どっちがバカ明を倒すのに相応しいか勝負や!」
「望む所よ!」
そう言うや否や二人は会場の扉をドカンと開けて外に出て行ってしまった。
放っておいて大丈夫なのだろうか。
チラと珊瑚を見ると相変わらずニコニコしている。
本当に大丈夫なのか…。貴明は不安になる。
「大丈夫なの?本当に」
「このほうがいいんやー。瑠璃ちゃんにも友達できるしなぁー」
友達?あれが?
貴明は疑問に思うが、ふと由真と自分の関係を思い出す。
一言で言えば喧嘩友達、いがみ合ってはいる物の勝負している時は何だかんだで楽しいと思う。
あの二人もそうだと言うのだろうか?
512:好敵手という存在(5/5)
08/02/11 21:38:03 BznnBlh90
「瑠璃ちゃんはウチのせいで友達あまり作れへんかったからなぁ」
「そう言えば由真も普段は大人しいって愛佳が言ってたっけ」
以前愛佳が言っていた。
由真は普段は眼鏡をかけていて大人しい子であると。
最初それを聞いた時貴明は信じられなかった。
しかし由真と交流を重ねるうちにそれが本当であることを知った。
由真には自分のように自分をさらけだせる相手が丁度良いのかもしれない。たとえ表面上はいがみ合っていても。
「なら両方の為になるやないかー。めでたしめでたしやー」
「俺からしたら心配事が増えるだけなんだけどな…」
とは言いつつもそれ程悪い顔はしていない貴明。
扉の外からはドタバタと人が駆け回る音が聞こえる。おそらく二人だろう。
これが切欠に二人がもっと良い方向に進むことに比べれば自分の心配事など小さい問題なのだろう。
貴明はそう結論づけることにした。
扉の外からは、相変わらず騒がしくも楽しそうな喧騒が繰り広げられる音が響いていた。
513:名無しさんだよもん
08/02/11 21:40:15 bIyQsA8M0
乙
だが、ちょい短すぎだな
514:名無しさんだよもん
08/02/11 21:40:22 BznnBlh90
以上、というわけでオチ起承転結なしでお送りいたしております
苦情はうけつけるが反省はしていない
515:名無しさんだよもん
08/02/11 22:22:26 FmTGB/HO0
乙。こういう引き合わせ方があったか。上手いな
しかし確かに物足りない。せっかく由真と瑠璃と珊瑚がドレスを着ているのに。
少なくとも、誰か一人はサービスで脱ぐべきだろう。常識的に考えて
516:名無しさんだよもん
08/02/11 22:24:58 o0VOoLox0
>>514
乙
もうちょい捻ればおもしろいかと…
でも、個人的にはこういうのが好みです。
517:名無しさんだよもん
08/02/11 22:35:25 FmTGB/HO0
あ、あと「きっかけ」の漢字は普通は「切っ掛け」を使う希ガス
「切欠」は(用法として皆無かどうかは分からないが)切片とかそういう意味が主な筈。あと地名
いや、漏れはどっちでもいいんだけどね。>200でも引っかかってたので。細かい事失礼
518:名無しさんだよもん
08/02/11 23:01:25 wjh/2pXV0
乙。
書き慣れてるが故の弊害ぽいんだけど、一人称と三人称はキッチリ分けて使った方がいいと思う。
確かにプロにも混ざった独特の文体の人はいるが、ああいうのは普通ルールを決めて使ってるから。
ちゃんと主体を定めたりとかね。
細かいかもしれんが気になったので。
519:名無しさんだよもん
08/02/11 23:27:33 1YpYhH2s0
>>514
乙。短いが楽しめたよ。瑠璃の加勢に入ったイルファさんが~とか、その気になれば
広げられそうだな
520:名無しさんだよもん
08/02/11 23:45:23 BznnBlh90
感想サンクス、次回に生かさせて頂きます
短いとか捻りが少ないってのは正直感じてました。
あとイルファを絡ませるのは考えていましたが収集つかなくなりそうなのでやめておきました。
521:名無しさんだよもん
08/02/12 00:43:27 Xdg9fV8o0
確かに、イルファさんを絡めると何故か収拾が付かなくなるよなぁw
なにはともあれ>>520にGJ&乙。
短い割には接点のなさげな二人を上手く絡めててなかなか面白いなー。
まぁ、贅沢を言えばちっとオチが物足りなかったかな??
そんな感じれす。
522:名無しさんだよもん
08/02/12 01:54:25 Xdg9fV8o0
そーいえば、今>>499の流れで珊瑚ちゃんを怒らせてみようかと画策中。
……しかし今んトコ何故かシルファが目立っているのは何故??
ともあれ出来上がったら投下させて下さいね。
こーやって自分を追い詰めないと時々筆が止まる自分の弱さが……orz
523:名無しさんだよもん
08/02/12 02:03:08 tEvS4lsf0
産みの苦しみってやつかぁw
雑談をよしとしない傾向はあるけど、創作の気分転換になるならどんどん書き込んでください
いつまでも待ってますよ~
524:『珊瑚ちゃん、怒る!?』
08/02/12 21:47:17 Xdg9fV8o0
なんだか長くなってきたので、その1を投下して行きます。
予定して切った訳ではないので少々トン切りですが、ご寛恕のほどを。
一応ミルファエンド?後想定のお話です。
525:『珊瑚ちゃん、怒る!?』1/8
08/02/12 21:49:25 Xdg9fV8o0
……近頃少しは日が長くなってきたとはいえ、夕刻になれば気温が下がってくる。
勿論、北国の人間にここいらの人間がそれを愚痴れば『まずなにより装備がなっちょらん!』と怒ら
れるのは必定なのだが、寒いものは寒い。人間とは環境に馴染んで生きていくものなのだ。
ともあれ。生徒会の雑用をこなすうちに下校が遅くなった河野貴明は、マフラーに顔の下半分を埋め
るように首を竦めながら足早に商店街のアーケードの下を歩いていた。
「……あ、ご主人様発見……」
「ん??」
衆人環視の場所では滅多に聞く事が出来ない、でももう聞きなれたつぶやきに振り返ると、背後に長
い金髪を三つ編みにした少女がどことな~く不機嫌そうな顔で佇んでいる。その華奢な身体を覆うのは
柔らかそうなベージュのコートと機能的?で近未来的なメイド服、そして左右の耳には丸くて小振りな
2本アンテナのイヤーレシーバー。
……それは貴明を慕っているんだかなんだか今ひとつよくわからない貴明専属メイドロボ?の少女、
HMX-17cシルファの姿であった。
『珊瑚ちゃん、怒る!? その1』
「やあ、シルファ。晩ご飯の買出しかい?」
「……このくそ寒い中、どしたんれすか……」
メイドロボにあるまじき無愛想なシルファの態度ではあるが、これでも随分マシになったのだ。
貴明からすれば、初めて会った頃は殆どというか全く話さなかった事を思うと感動的といっても良い
進歩なのである。……尤も、口を開いたら開いたでとんでもない内弁慶で、『ご主人様はどっちだ?』
と小一時間問い詰めたくなるような規格外メイドロボなのだが。
まぁ、それでも彼は結構可愛がっているのだから、第三者は何も言うまい。
526:『珊瑚ちゃん、怒る!?』2/8
08/02/12 21:51:08 Xdg9fV8o0
「ああ、つまむ物がなくなったんで買ってこうかと思ってさ。ちょっと飲み物と菓子を」
ひょいっと左手のレジ袋を差し上げると、中には某真っ黒な炭酸飲料のペットボトルと数種類のお菓
子が入っているのが見てとれる。どれも日頃貴明が喜んで口にしているものばかりだ。
それを見たシルファはムスッとした顔でこう言い捨てた。
「……ミルファお姉ちゃんは妻失格れすね。今すぐ三下り半を書くべきれす。……本当はめんろくさい
けど、またシルファが面倒見てあげてもいいれすよ」
妻とはちょっと違うんじゃないかな……と思いつつも、シルファの真剣な表情に貴明は不要なツッコ
ミは諦め、無難な答えを返す事にした。いちいち憎まれ口は叩くのだが、彼女は彼女なりに自分を慕っ
てくれている……ような気が貴明にはしているからである。
「あ、ありがとうな、シルファ。で、でもまぁ、ミルファもがんばってくれてるし、別にそこまでする
必要はないかなぁ~~??」
とは言えキング・オブ・ヘタレの名を持つ貴明が『無難そうな返答』などという物をひねり出すと、
どうにも締まらないと言うか、腰砕けの答えになってしまうのだが。
「ふぅん。……じゃあ、その気になったら言ってくらさい。間違ってもイルファお姉ちゃんに言っちゃ
らめれすよ?? 直接シルファに言うんれすよ??」
「あははは、その時はお願いするよ」
それでもシルファは大真面目に受け取っているようで、鹿爪らしく貴明に注意をした。そして貴明は
額に大きな汗マークを浮かべながら再び腰砕けの答えを返すのだった。
「……そうら。今日は姫百合のお家で久しぶりにシルファのご飯を食べて行ってくらさい」
しばらく特に会話もなく肩を並べてアーケード街を歩いていた二人だったが、河野家の方に向かう曲
がり角を目前にしてシルファが口を開いた。そういえば商店街を抜ける間にシルファが手に入れた食材
の量は、珊瑚と瑠璃二人で食べるにしては多過ぎる様にも見える。
姫百合家で作る場合はエサじゃなくてご飯なんだなーなどと仕様もない事を考えつつも、貴明は自宅
で夕食を用意しているであろう赤い髪の少女の事を思うと気軽に頷く事は出来なかった。
「え? でも家でミルファが晩飯作ってると思うし……」
527:『珊瑚ちゃん、怒る!?』3/8
08/02/12 21:53:09 Xdg9fV8o0
と、さしものヘタレも断ろうとしたのだが……すぐさま、シルファの細い眉がエアブレーキのような
急角度に吊り上った。そしてす~っと胸元に顔を近付け、据わった眼でじっと睨み付けてくる。絶妙に
傾けられた首の角度と、への字に曲げられた口元が嫌が応にも貴明の緊張感を高めてくれる。
シルファの迫力に押され、貴明は「今日は遠慮しておくよ」まで台詞を続けることが出来ずに黙らさ
れてしまっていた。
「お姉ちゃんにはシルファが電話します。……それともシルファのご飯なんて不味くて食べられないっ
て言うんれすか??」
そう言うなり、貴明の了承も取らずにシルファは右耳のイヤーレシーバーをぐるりと廻し、アンテナ
状のパーツを口元に向かって引き伸ばした。
どうやら既にミルファのイヤーレシーバーか河野家の電話を呼び出しているらしい。
「や、そういうワケじゃあ……まぁ、ミルファがいいって言うんなら……」
「ちっ、なんで出やがらないかなあ、もう……あ、お姉ちゃんれすか。またイヤーレシーバー外してま
したね??メイドロボ失格れすよ?? ……まあ、いいれす。ところで……」
既にとか、了承も取らずに、の次元ではなく、シルファは全く貴明の言葉を聞いていないようだった。
いつもの事だが、またしても自分の意思に関係なくコトは動き始めているらしい。貴明は、そう悟る
と心の中で嘆息した。あとは話が妙にこじれないよう、大きくならないよう祈るばかりである。
……しかしイヤーレシーバーに向かって話すシルファの挑戦的な言葉の数々を聞く限り、今日も何が
しかの騒動になる事は避けられそうになかった。
「話は付きました。……さ、行きましょう」
そうこうしている内にイヤーレシーバーを元の位置に戻したシルファは、涼しい顔で貴明に左手を差
し出してきた。どうやら、少なくともシルファの中では(貴明はもちろん、ミルファが納得したのかも
怪しいのだが)貴明の姫百合家訪問が決定したらしい。
「……ん!」
そして差し出された左手の意図がわからず貴明がぼんやりしていると、シルファは焦れた様に、更に
左手を前方に突き出してきた。