11/02/22 23:45:08.15 ji+kh0xI0
無心でアレンジしようとするほど、色々と思い出してきてしまう。
小さい時の、近所の歯医者のこと。
友達が歯医者キライだと言うのがわからなかった。
自分も普通に虫歯になったりはしたので、歯を削ってプラスチックを詰めたり、歯型採って金属詰めたりした。
麻酔といっても大して痛くないし、歯型採るといってもふわっとゴム噛まされて十数秒の出来事だったから。
ところが、たまたまその歯医者が休みで、他の歯科に行ったら、削るだけで飛び上るほど痛いし、麻酔もちゃんと効いてない
感じだし、歯型採ったら、冷たくて、時間が長くて、型の金属の器が歯茎に当たって涙が出た。
再びいつもの歯医者に行って、なんでここは歯型が冷たくないのか聞いたら、うちはぬるま湯で粉をこねてるんだよと笑った。
上手じゃない人は歯型の粉を冷水でこねるんだよそうするといつまでも固まらないから、もたもたしても許されるからね、
僕もスタッフも、短い一瞬でスパッと型が採れるよう、採って採って採って採って採りまくって練習したから出来る技だけどね
アハハと笑った。
麻酔も液を少し温めておくと痛くないんだよとも言っていた。
こんどはパティシエ目指してる如月のこと。
あんだけ適当なヤツなのに、お菓子の話になると目つきが変わる。
家庭科の時間に、ただチョコを湯煎で溶かして好きな形にしてかわいくデコるってのがあっんたけど、全員同じ素材で作ってるのに、
如月のでっかいハナクソみたいなチョコが、見た目最悪なのに、口に入れるとホロリと溶けて、最高においしかった。
同一の素材だけに、その技が引き立つ。
温度、形態、サイズ、タイミング、智逗瑠のこの革の技は、さしずめ圧力と柔軟性の成せる技なのだろうか。
出来上がった12台もの花瓶をずらっと並べ、やっぱりある域を出ない凡庸な出来に、束子は深くため息をついた。
(続)