10/11/28 09:45:13 yiGibP3q0
>>962
自分でもわかった→はっきりとわかった
「ちょっと、待っ」
焦って完全にジッパーの閉まった背中を手で開けようとしたが、
相当強く噛みあっているようで全く開かない。
スーツの口を拡げようとうなじを締めるゴムを引っ張っても指を二三本入れられるかどうか位しか隙間ができない。
落ち着いて、何やってるの。外れた金具の在り処が先…。
「金具は!?」
辺りを見渡すが、そこにあるのは整理しきれていないモノの山、山、山…。
昨日のまま散らかっているせいでまったく見当たらない…。
どうしよう…脱げなくなった…。
「ウソ…でしょ…」
ただでさえ、黒くて小さい金具なのにこんなゴチャゴチャした部屋の中から見つけるなんてすぐには無理だ。
なんで外れたのかと思って脚や腕のジッパーを試してみると割と簡単に外れる。
どうやらジッパーがスーツの鍵のような役割になっているらしい。
背中はこれで外せるかもと思ったけど、脚も腕もそれぞれ大きさが違う。
この様子だと背中も多分違うだろう。
万事休すだ。しばらくはこの格好のままでいるしかない。
「っていうか…なんでジッパーが外れるのよ…。もう最悪っ…」
とりあえず何かの事故でまたどこかへ行かないよう、半泣きになりながら外した金具を小物入れにしまう。
これでもうどのジッパーも開かなくなったと思うと、憂鬱になるのと同時にどこか快感を覚えているのが不思議だ。
「なんで……」
身体中スーツに締め付けられてしかも金具が無いとそれから解放されないとういうのがなぜか気分を昂らせる。
ちょっとした、いや私にとっては大きな事故で途切れた、よくわからない高まりが再びこみ上げてくる。
とりあえず何かしないとマズい。何も…何もできなくなる…。
全身寸分違わず変なウェットスーツに閉じ込められたその格好のまま、部屋を片付けていく。
たびたび不慣れな高さのヒールでぎこちなくなりながら、散らかった雑貨を整理していき、
喉から下全ての私を包み込む化学繊維を感じながら、出来上がっていくゴミを処理していった。