10/05/28 02:31:43 wADYpwB10
どうしてって、確かにトランク詰めになっているのはわかってたけど……、
ここまで大袈裟なものだなんて、思ってなかったから。
だってこんなの……動く隙なんて全く無いのが、ガワを見てるだけでわかる。
みちみちで、ぎゅうぎゅうで―人が入ってるのさえ、信じられないくらいで。
これ、『トランク詰め』なんかじゃない。
トランクと一つの、塊だよ。
「はふ…」
思わず、溜め息が漏れていた。
彼はそんなわたしの様子を見て笑うと、保護材のへこんだ部分を掴んで持ち上げた。
トランクの、ちょうど半分ぐらいの厚みの保護材が飛び出す。
むわっと、汗と、愛液と、その他色々―とにかく身体からこぼれおちるものの匂いが広がった。
その匂いの元は、もちろん―。
『ふっ……ふっ……』
【荷物】になりきっている、彼女。
座椅子の上で、腕を前に伸ばしながら体育座りをするような姿勢で彼女は納まっていた。
半身はまだ、保護材に埋もれたまま。
解放されつつあるのがわかったのか、『んむう?』なんて言って、自由になった手をぱたぱたさせる。
体つきと声で『彼女』っていうのはわかるけれど、それ以上はわからない。
なにせ、首から頭の部分はぎっちりと保護材を詰められていて、
そこだけ保護材が半球状に盛り上がっている。
そこの部分だけは別のパーツになっているみたい。
まるで、彼女が彼女である事の個性を消し去るため、みたいに。(今日はここまで)