10/08/24 20:07:18 8gKqg1Ew0
【第2部】
それから3年の歳月が過ぎました―。
刑務所地下の陰湿な石階段。
「まったく…いつも此処へ来ると、本当に溜息ばかりだよ」
先輩刑務官、熊のような体格のこれまた熊田という名前の看守と共
に、暗い闇の立ちこめる階下へ眼をやる私も同様な思いを抱きました。
私も何時もながら此処で必ず辟易の溜息を吐く…。できれば、こんな
悲惨かつ陰惨な所には足元も踏み入れたくはありません。
私は、打ちっぱなしのコンクリ階段を下りていくと、裸電球一つの頼
りない光源に照らされている目の前に広がる暗くてジメジメした廊下が
続いていました。
天井に設置されている配水管から漏水した水がポタポタと落ち、床に
大小の水溜りができています。私は、そんな水浸しの硬い床に靴底を鳴
らしながら、懐中電灯を頼りに進みました…。
電灯がなければ見難いほどその場所は暗い…。
廊壁も黒かびに覆われて、息を吸い込むと肺が汚染されそうな錯覚に落
ちます。
そんな劣悪な廊下の壁には4つほどの錆付いた小さな重層鉄扉が鎮座
していました。
熊田看守は私の隣で一番手前の扉の監視窓の蓋を開け、
「413号、朝検だ。返事をしなさい!」
と声を張り上げました…。