08/02/23 15:01:20
ｽﾚﾘﾝｸ(eromog2板:816番)
※改行。ピョア注意。
「…」
向き合って湯船に浸かったはいいが、何を話せばいいのか分からない。
父と子の会話なら「最近どうだ？」のような古典的決まり文句があるが、四六時中一緒にいる相手に対してそれを聞くのもおかしな気がする。
そもそも、誰かと一緒に風呂に入ることなんか滅多にないのに、いきなりこいつと裸の付き合いをして親睦を深めようなどという発想自体が間違いだったのかもしれない。
…そういえば、シュンがガキの頃はよく風呂に入れてやったような気がする。ポチャンと湯船に落とした両手で昔遊んだ水鉄砲の形を作り、そんなことを思い出す。
（こいつもガキみてェなもんだし、案外同じように遊んでやればいいのかも…）
オレは胸の前に組んだ両手を引きあげてプシュッと勢い良く水弾を飛ばし、完全に無防備だった三橋の顔に命中させた。
「っぷは！」
「ハハハ」
「あ、阿部君 なん…っ」
「水鉄砲、楽しいだろ？」
「やっ やめて…あぶっ」
プシュッと二発目も面白いように命中し、オレは腹を抱えて笑う。
「も、もう！ 阿部君やめてよ」
何が気に障ったのか、三橋はびしょびしょの顔を拭いながらオレの両手を押さえ込もうとしてくる。
「うおっ！ やめろって」
「あ、阿部君こそ、やめて」
バシャバシャと音を立てて組み合わせた手につかみ掛かってきたので、オレは腕を頭上に振り上げてかわす。すると今度は、水流に身を取られた三橋がバランスを崩してオレの方に倒れこんできた。
「危ねェ！」
ザッブーンと大波を起こして三橋の体が落下する。オレは咄嗟にそれを支えようとしたが力が及ばず、共に浴槽に沈んでしまった。
ゴボボボボボ…と頭のてっぺんまで湯に浸かりそのまま溺れそうになるところを、かろうじて近くにあった手摺りに掴まり身を持ち直す。
「ブハッ…だ、大丈夫か三橋？」
「ゲッホ ゲホ…」
三橋は他に掴まるものがなかったのか、必死にオレの体にしがみついていた。
「…あ」