08/01/28 23:49:42
※代理投下
(※平安パラレル注意※阿部ピョアホモ超注意※） 前回まではwikiでよろ
【篠笛―阿部】
少納言家の子が入内するという噂を聞いて、私は先ず耳を疑った。
そのようなことが起こり得るはずがない。否、あってはならない。
当然のことながら、後宮とは帝の寝所に侍り御子を産み奉る女人のための場所である。
あの人は、男、なのに。
稚拙といっても過言でないような、かもじや装束など、見目だけの変装などすぐに暴かれてしまうだろう。
そう案じていた私の杞憂は何故か取り越し苦労に終わった。
幾日たっても、帝が頻繁に桐壷へ出向かれるようになった今でさえ、風評のひとつ聞こえてこない。
人々の口にあがるのは、いかに帝と更衣が仲睦まじいかというようなものばかりだ。
対して自分は、と省みるとあまりの情けなさと女々しさに嫌悪を覚える。
更衣が藤壺の女御を訪問するというので、それとはなしに田島中将を勧誘し共に足を向けさせた。
万が一にも、私のことを覚えていてくれるかもしれない、という卑下た考えからあの日と同じ曲を
愛用の篠笛で奏でる。
しかし、全く私のことなど記憶にもない様子の更衣の様子に自嘲して
「これは、藤壺さまにおいては本日も麗しくおおせになり。…そちらの方はもしや先日入内した更衣さまでしょうか？」
と、まるで初めて対面するかのように振舞ったが、内心では恥ずかしさから苦虫を噛むような思いをしていた。
あの日と同じ曲－、本当の廉さまとの初対面は、七年前、季節はずれのいかづちの激しい夜だった。