11/02/09 21:42:19
『エキヨコ』だと言ったのにそれは『駅の横』ではなかった。駅から離れた場所。人ごみとは反対の方向へ歩いていく
ボクたち。
「ねー、ボクたち、どこ行くのさ?」
「だから、エキヨコだって」
「エキヨコって言ったって、駅と反対方向じゃないか」
ボクがそう言うと、突然隣の徳永さんがプッ、と噴き出した。
「何で笑うのさ」
「それ、意味が違うんですよー」
徳永さんは陽気に笑っている。矢島さんが説明してくれた。
「店の名前が『エキヨコ』って言うの。別に駅の横にあるわけじゃないんだよ」
「はぁ…」
自分の顔を鏡で見たわけではないけれど、多分この時のボクの顔はキツネにつままれたような顔になっていたことだろう。
徳永さんはそんなボクを見て笑っている。眩しい笑顔だが、その笑顔がなぜ生まれたかを考えると、ちょっと複雑な気持ちだ。
矢島さんは説明だけして、後はとにかく歩いている。しかも歩くペースが速い。ちょっと意識しないと、ついていけないくらいの
ペースだ。
「試合が終わった後、しかも負け試合の後だというのに、なんて元気なんだ…」
ボクは内心、ちょっと呆れていた。
(つづく)