11/01/23 00:15:41
「じゃあ、また学校で…今度会う時は、彼氏と彼女、だね」
「うん」
そう言って、二人で笑いあった。とても幸せな時間。
「今日はありがとう、清水さん」
「もう…付き合いだしたんだから、清水さん、って呼ばなくていいよ」
内心「そうなってほしいなぁ」とは思っていたが、さすがに先手を打つのはちょっと躊躇してしまった。
それを察してくれたのか、彼女が扉を開けてくれたようだ。
「そっか…ありがとう、佐紀」
言った。言ってしまった。とうとう言ってしまった。ついに彼女を…呼び捨てで呼んでしまった。
ああ、憧れだったことが次々叶っていく…ボクは自分の身に起こっていることがちょっと信じられなくなっていた。
でも、こっそりほっぺたをつねってみたら痛かった。どうやらこれは夢ではなく、実際に起こっていることのようだ。
「…改めて呼ばれると…恥ずかしいね。なんか…まあ、いいや。ありがと、××くん」
彼女…佐紀も下の名前でボクを呼んでくれた。もっとも、やっぱり『君付け』だったけど。
「じゃあ、またね」
「うん」
佐紀を見送って、ボクは家に帰った。そして、一人部屋に戻って窓を開けると、『ヤッター!』と叫んでしまった。
近所迷惑だったかもしれないが、この日に限っては、そんなことはどうでもよかった。
(つづく)