11/01/19 00:59:15
そんな彼女が、ある授業でボクの隣の席に座ることになった。
ボクは彼女の名前を知っている。同じ中学校だったんだから、もしかしたら彼女もボクの名前を知っているかもしれない。
でもあんまり話せそうにない。成績優秀(らしい)彼女はいつも丁寧にノートを取っては、授業が終わると大事にカバンに
しまっているのだった。ろくすっぽ勉強したがらないボクとはわけが違うようだ。
でも、先に話しかけてきたのは彼女の方だった。隣になって二回目の授業中のこと。
「あ、あの、シャーペンの芯なくなったんで、貸してもらえませんか?」
「あ?ああ、どうぞ」
たったこれだけと思うなかれ。一言だけの返事を返すのに、内心どれだけオドオドしたことか…
「はい」
シャーペンの芯の入った入れ物を丸ごと渡すと、彼女はちょっと驚いたようだった。
「え?一本でいいんですけど」
「いいよ、全部もらっときな」
思わず口走ってしまった。勢いに任せて。言った直後「しまった」と思ったがもう遅い。なあに、シャーペンの芯なんて
大した値段じゃないや、あげちゃえあげちゃえ、と自分に言い聞かせる。
「ありがと…ございマス」
彼女は照れながらボクにお礼を言った。照れてはいたが、こちらに向けた表情は、確かに笑顔だった。
「…!」
なんだ、なんだこの気持ちは。一体ボクの心に何の変化が起きたというのだ?
考えたが答えは出なかった。ただ胸だけが妙にドキドキし続けて…
そう、ボクはこの時、彼女に一目惚れしてしまったのである。
(つづく)