処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第20話at EROG
処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第20話 - 暇つぶし2ch246:名無しさん@初回限定
10/12/28 23:56:49 7BeAGEx10
支援ですわ

247:名無しさん@初回限定
10/12/28 23:59:49 OeYLoj8m0
ふふん、と自信ありげに千早に視線を向ける薫子。
悔しそうな表情のまま、初音に発言を求める千早。

『同じく、さきほどお見苦しいところをお見せしてしまい、大変申し訳ありません。
 薫子さんの代わりに、今度は私 妃宮千早が発言させていただきます。

 このたび、エルダー候補として皆様にご支援いただき、
 また過分にも投票していただいたこと、誠にありがたく思っております。
 でも、私は今年転入してきた身であり、本学院の伝統なるものを理解できてはおりません。
 1年の頃からこの学院に親しみ、また騎士の君との二つ名を持つに至っている薫子さんこそ、
 エルダーにふさわしいのではないでしょうか!』

おぉー。パチパチ。
先ほどより若干控えめな声があがる。

(ちはやの方が拍手すくなかった‥)
(ふーむ。第一ラウンドは薫子お姉さま優勢ってところでしょうか?)
外野はのんきである。

***


248:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:01:54 /vBhU75S0
しおーん

249:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:03:54 PDnLxHgrO
しえん

250:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:04:30 fKCyt4Me0

『確かに、在学期間というのも一つの要素ではあると思います。
 ですが皆さん。ただただ長く在学していればエルダーとしてふさわしいのでしょうか?
 私はそう思いません。短い時間でも伝わること、理解できることはあると思います。
 そして、そもそも千早さんの得票数が最も多かったことから
 皆さんもそのようにご理解戴いているのではないか、と思います。

 さきほどの千早さんの発言。まことに丁寧で、かつ相手への思いやりのある言葉遣いでした。
 私自身、千早さんに無理にお願いしまして、淑女たる立ち振る舞いについて
 この春から教わっている身であったりします。
 師匠を差し置いて、弟子たる私がエルダーになれるわけがありません!』

おぉー。パチパチパチ。

(薫子さんったら、あそこまで話せるなんてすごいわ!)
(こよりさん。それは薫子さんに対して失礼ですよ)
(いや、本当に驚いた。薫子があんなに雄弁とは知らなかったよ)
(茉清さん!! 壇上にいなくていいんですか?)
(いや。さすがにもう私の出番はないだろうし。
 それにこんなイベント、観客席でゆっくり楽しみたいじゃゃないか)
(ですよねー)

***

251:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:07:24 PDnLxHgrO
てか>>254だったのかw



252:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:12:20 fKCyt4Me0

『待ってください。エルダーとは学院生の見本となるべき姿。
 そこには行動よりも重要なものがあると、私は考えます。
 さきほどの薫子さんの発言。皆様はお気づきになられたでしょうか。

 最初からすべてを身につけることなど、誰にもできません。
 ただ、そこで諦めて現状に甘んじてしまうか、または地道に前を向いて歩き出すか。
 そこが我が学院の学院生として、身につけるべき精神なのではないでしょうか。
 いまだ未熟たる身であるこそ、それを真摯に受け止め、努力する。
 まさに薫子さんが実践していこうとするそのものです。
 私は、学院生の皆様にはそのような心構えこそ手本としてもらいたいと思います!』

おぉー。パチパチパチ。

(行動では勝ち目がないから精神で勝負か。千早も考えたものね‥)
(しかし、千早はそれすらも身につけているのだから、少々詭弁にも思えるね)
(ケイリ。終わっちゃうとつまらないから、もう少し黙っときなさいな)

***
>>264 さすがに本編には書けないじゃない!

253:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:13:53 fKCyt4Me0

『行動より精神、との発言が千早さんよりありました。
 たしかに精神性も重要だと思います。

 でも私自身は。エルダーシスターとしてのあるべき姿として。
 どのように考えているか、ではなく、どのように行動したか。
 なんのために動いたか、ではなく、何を成したか、が重要だと考えます。

 皆さんも心当たりがあると思います。
 朝もうちょっと早く起きれれば‥。寝る前に勉強しなきゃ‥。これを食べると太りそう‥。
 思うだけなら簡単です。でも、それを行動に移すことがどれだけ大変か。
 そして行動できる人がどれほどすごいのか。皆さんならわかってくれると思います。』

おぉー。パチパチパチパチパチ。

(なんか、そこはかとなく話がずれてきてますね‥)
(あえてずらす薫子の作戦なのか、本当にずれているだけなのか、これは判断しずらいな‥)
(でもでも、なんか皆さんの共感は得られているようですよ?)
(千早さんがこの流れに乗るか、軌道を修正するかはちょっと見物ですねぇ)
(あぁ、それは確かに。)

***


254:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:19:28 fKCyt4Me0

『そうですね。行動に移すこと。実際に行動できること。
 その資質というものは本当に重要であり、また貴重なものだと私自身も思います。

 皆様。薫子さんの二つ名はなんだったでしょうか。そうです。騎士の君。
 その称号を得るために、薫子さんがどのような行動を成してきたか。
 転入組の私よりも、皆様のほうがよくご存じだと思います。

 昨年のエルダーである白菊の君、周防院お姉様の妹として。
 薫子さんはこの学院内外で、正義感に満ちあふれた行動を取り。
 そして、いつでもまっすぐに、凛々しく行動してきました。
 だからこそ、皆様が二つ名で呼び、そしてそれが定着しているのだと思います。
 皆様方がつけた「騎士の君」という二つ名こそ、
 薫子さんの素晴らしさをまさに象徴しているのではないでしょうか。』

おぉー。パチパチパチパチパチ。

(さすが千早というか、よく調べてるわねぇ‥)
(ふむ。学院生自らが年来支持してきたという自尊心をうまくくすぐり。
 そのうえ、さりげなく先代エルダーの妹であることを印象付けることも狙っているわけか)
(ふふっ。予想通り面白くなってきたね。)

***

255:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:23:39 fKCyt4Me0

『ちょっと、千早! 奏お姉様は関係ないでしょ!
 千早がそうくるなら、あたしにも考えがあるわよ。

 あー。皆さん。多少不適切な表現になるかもしれませんが、許してください。
 あたし自身の本音を少しいわせてもらいます。

 このような言い方はあとで千早に怒られるかもしれないけれど。
 みんな、千早を可愛いとおもわない? 綺麗だとおもわない?

 この輝く銀髪、不思議な色合いを湛えた双眸。整った容姿。
 ぶっちゃけ、寮であったとき、あまりの綺麗さに見惚れちゃったわよ!
 エルダーに憧憬が必要というのなら、それこそが素直なあたしの気持ちよ!』

きゃー!パチパチパチパチパチ。

(うわー。なんか急に歓声が黄色くなったような‥)
(でもまぁ、千早お姉様の素敵さは、その通りだと思います)
(はいはい。うたちゃんにとってはそうでしょうとも)

***

256:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:28:20 fKCyt4Me0

『ちょっ!
 それをいったら、薫子さんだって綺麗で可愛いじゃないですか!
 流れる黒髪。まっすぐな視線。すらっとした肢体。見事なスタイル。
 皆さん、素敵だと思いませんか?』

きゃー!パチパチパチ。

『それに、えーと。すこし話を戻させていただきますと。
 そもそも容姿に優れていればエルダーだ、というのは
 本質から少しずれているのではないでしょうか。
 やはり、その行動に源泉を求めるべきではないかと思います。

 そうですね。
 たとえば。それは今年の春。まだ私が学院に転校する前。
 駅前にて見知らぬ男性に絡まれてしまったことがありました。
 そのとき、学院生でもない見ず知らずの私を助けてくれた。それが薫子さんです。
 その高潔さ。勇気。行動力。まさに騎士の名にふさわしい。
 みなさん。こんな素敵な方をエルダーにしたいと思いませんか?』

きゃー!パチパチパチパチパチ。

(おぉ。さっきと同じ話なのに、ミーハー路線にも素早く対応するとは。
 さすが千早お姉様、流れにうまく掴みますねぇ‥)
(ちはやも、かおるこも、かっこいい‥)

***

257:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:32:46 S7x5JFXK0
しえーん

258:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:32:59 rhxjBHqj0
紫苑

259:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:34:01 fKCyt4Me0

『待って!待って! 私なんて腕っ節に自信がちょっとあっただけ。
 淑女としてちっとも相応しいことじゃないわ。

 そうね。じゃあ優雨ちゃんが入寮してきたとき。
 すこし身体の弱い優雨ちゃんは雨に濡れ体調を崩し、食欲がなかったわけ。
 でも寮母さんはすでに帰られ、そのうえ、そのときの夕食は脂っこい感じだったのよ。

 そんなとき、夕食までのたった20分の間に。優雨ちゃんの好みを聞き。
 カボチャを裏漉しして、ミートソースを作り、オーブンで焼いちゃったのよ!
 初対面の娘への優しさもそうだけど、あの料理の手際はほんと見惚れるしかないって。
 しかもそれがほんのり甘くて美味しいのよ、ほんとに。』

おぉー!パチパチパチパチパチ。

『季節の果物が余っていればデザート作ってくれるし、
 試験前に作ってくれた夜食のサンドイッチなんて、ほんと美味しかったんだから!』

きゃー!パチパチパチパチパチ。

(史さん、そんなに千早お姉様の料理って美味しいんですか?)
(えぇ。正直、私の実力では千早お姉様には勝てないかと‥)
(きゃー!)
(私たちも食べてみたいですわ!)
(えぇ、ほんとに!)

***

260:名無しさん@初回限定
10/12/29 00:35:43 fKCyt4Me0

『確かにそんなこともあったかもしれません。
 ですが、料理がうまいからエルダーというのは、あまりに短絡的ではないでしょうか。

 では私からも薫子さんの素敵なエピソードをひとつ。
 クラスメイトの方はご存じかもしれませんが、
 ある下級生の方で薫子さんを慕っている方がいました。

 その方は残念なことに少し前に転校してしまいましたが、
 薫子さんはその方と、転校前に別れの場を設けていました。』

「ちょっ! ち、千早!」
慌てる薫子に、どんな意味を含めたものなのか、にっこり微笑み。

『様々な想いを胸に秘め、ただ涙するしかない下級生に対し。
 皆様方であれば、どのように対応するでしょうか。
 私であれば戸惑い、うまく言葉を口にすることができないかもしれません。

 薫子さんは優しい言葉をかけつつも、ただその別れに対して、一緒に涙を流していました。
 うわべだけの言葉ではなく共感しあう心。その涙の輝きこそ、薫子さんの純粋さだと私は考えます。

 しかも。その方と別れたあと。私が話しかけた際。薫子さんはまた別の涙を流していました。
 そのような事態になにもできなかった自分の無力さに。悔しさに。
 薫子さん自身は何も悪くないのに、流せるんです。その涙を‥。』

今度は、歓声はあがらない。
でも、その静けさこそが、千早の伝えたかった想いが伝わった証跡であった。

(春美ちゃん、薫子お姉様とお話できたんだ‥‥)
(うぅぅ。本当によかったね、春ちゃん‥)
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第2部ここまでー。予想より早く貼れた。支援thx. 明日起きたら続き貼ります。

261:名無しさん@初回限定
10/12/29 01:12:48 S7x5JFXK0
乙ー
白熱した争いになってまいりました

262:名無しさん@初回限定
10/12/29 01:19:31 qZl5DnGz0
泥沼すぎるw

263:名無しさん@初回限定
10/12/29 01:24:50 87uH5+Db0
この場で

「僕は男です!!」

とぶちまけてしまえれば
どれほど楽かw


264:名無しさん@初回限定
10/12/29 01:41:08 MmSdEAej0
薫子お姉さまは気づいていない・・・!
「転入してから間もない私がエルダーなんて」という論法を見事打ち砕く前例があることを・・・!
瑞穂お姉さまの存在を!!

265:名無しさん@初回限定
10/12/29 02:34:35 PDnLxHgrO
まるで子供の喧嘩みたいになってきたな…いいぞもっとやれw


266:名無しさん@初回限定
10/12/29 02:56:55 /vBhU75S0
原作もここまでとは言わないが2,3言い合ってから初音がダブルエルダーの提案をすればよかったのに

267:名無しさん@初回限定
10/12/29 07:18:52 /xxjcNRe0
原作はもう無理だがアニメでは是非この掛け合いを実現してほしいw

268:名無しさん@初回限定
10/12/29 08:03:04 fKCyt4Me0
続き。
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さきほどの千早の発言後、静かにざわめいていた講堂内が
徐々に落ち着き始めたその時、初音が動いた。

「沙世ちゃん、ちょっとマイク貸してくれる?」
「え、えぇ‥」

『えーと。話の途中ですいません。
 生徒会長である私、皆瀬初音から皆様にご提案があり‥』

『ちょっと待った!』
『え?』

そんな初音の発言をおもむろに遮ったのは薫子。

『なーに、すっかり部外者気分でいるのかしら?
 初音。あなたもエルダー候補の一人でしょ?

 そもそも。
 生徒会長であり皆の尊敬を受けている初音さんは。
 実は寮監もやっていて、本当に寮ではいろいろお世話になってるのよ。
 初音会長の人望については、みんなのほうがよく知っていると思うけど。』

『え?』


269:名無しさん@初回限定
10/12/29 08:04:51 T9bvEfm+0
支援

270:名無しさん@初回限定
10/12/29 08:04:53 fKCyt4Me0

『そうですね。私も転校してすぐ、右も左もわからない頃に
 初音さんにはいろいろお世話になりました。
 様々な問題を真摯に受け止める胆力。そして他人の問題も受け止めてくれる包容力。
 初音さんこそ、エルダーに相応しいのかもしれませんね。』

『え?え?』

さきほどまで敵対していた薫子と千早だというのに、見事に息が合っている。

『皆さん。先ほど辞退をしていた皆瀬初音さんも
 十分、エルダーとしての実力があるかと思いますが、どう思いますか?』

お? おぉ? おぉー! パチパチパチ!

『えー!! 薫子ちゃん、ちょ、ちょっと待って!』

慌てる初音を尻目に、今度は千早が宣言する。

『先代、琥珀の君たる上岡生徒会長の妹でもあり、
 またその生徒会運営を1年の頃から支えてきた皆瀬初音さん。
 その運営手腕について、皆様もご理解いただけると思います』

おぉー。パチパチパチ!
部活・委員会の運営に関わっている学院生から支持の声が上がる。

(あはー。予想外の展開ですぞ。面白くなってきたぞ、こりゃー)
(つっちー。楽しむな。)
(そうはいうがな、ややぴょん。うまく持って行けば会長がエルダーになれるんだぞ)
(おぉっ!?)

***

271:名無しさん@初回限定
10/12/29 08:14:56 fKCyt4Me0

生徒会役員がそんな会話をしている最中。
壇上ではさらに話が進みゆく。

『というわけで、生徒会長。皆瀬初音さんこそが
 エルダーに相応しいと思いますが、皆様、いかがでしょう!?』

おぉー!パチパチパチパチパチ。

『では、全会一致ということで!
 そういった感じで、本日のエルダー選挙はこのあたりでお開きに‥』

『ま、待って!待って!
 無理!無理! 薫子ちゃん、私には無理ですよぉー。
 薫子ちゃん、千早ちゃん、勝手に進めちゃだめー!』
(ちっ!×2)

なし崩し大作戦は惜しくも失敗に終わった。
だがしかし、そんなことで千早はくじけない。

『でも、初音さんの生徒会長としての実績については
 皆さんも異論がないと思っているようですよ? ねぇ、皆さん?』
おぉー!パチパチパチパチパチ。

『そうそう。これだけ支持をもらっているのに、
 引き受けないなんて初音らしくないって。うんうん。』
おぉー!パチパチパチパチパチ。

いまが踏ん張りどころと、嵩に懸かって攻め立てる二人。

***


272:名無しさん@初回限定
10/12/29 08:18:58 fKCyt4Me0

『い、いやでも、無理、無理ですよー!
 だって、千早ちゃんのほうが綺麗じゃないですか!
 薫子ちゃんだって、すらっとしててかっこいいしスレンダーですよ!
 眼差しもきりっとしてて、せくしーじゃないですか!
 私なんてタヌキですよ、タヌキ。無理ですってー!』

♀ Σ♀♀
人   人人

動揺のあまり、不思議なことを口走り始める初音。

(初音‥か、かわいい‥! ///)
(あらら。副会長は戦力外ですかのー)


『あー。えーっと‥。
 ほ、ほら。千早! なんかいって!』

『って、そんな無茶な‥。
 えーと‥。

 そ、そうです! 見てください。皆さん。
 初音会長の動揺するこの可愛らしい様を。
 我らが生徒会長をエルダーとして、今後も引き続き 愛でてみたいと思いませんか?』

おぉー!パチパチパチ。


273:名無しさん@初回限定
10/12/29 08:22:34 fKCyt4Me0

『だ、ダメですよっ!
 わ、私なんて可愛くなんかないですからっ!
 それをいうなら、そう、千早ちゃん!
 千早ちゃんのほうが断然可愛いじゃないですか!

 皆さん、聞いてください!
 千早ちゃんのお部屋、すっごい可愛いんですよ!
 すごいんですよ。天蓋付きベッドなんてまるでお姫様ですよ!

 それにお風呂上がりなんてふらふわひらひらのネグリジェですよ!
 本当にお姫様なんですよ!」

きゃー!きゃー!パチパチパチパチパチ。

(なんか、いきなり発言のレベルが下がってしまいましたねぇ。)
(でも、うん。はつねっぽい‥(にっこり))
(あぁ、たしかに。でも、エルダー選挙というものがこのような暴露大会でいいんでしょうか。ほんと)
(ほんとのことだし、楽しそうだし。きっとだいじょぶ)

***


274:名無しさん@初回限定
10/12/29 08:42:52 PDnLxHgrO
支援

275:名無しさん@初回限定
10/12/29 08:48:16 T9bvEfm+0
支援

276:名無しさん@初回限定
10/12/29 08:53:54 fKCyt4Me0
『そうねー。あれはすごいわねー。
 じゃあ、千早で。』
『って、薫子さん、そこで裏切るんですか!』

戦場とはシビアなのだ。

『えー。だって私のおすすめはやっぱり千早だしー。
 初音もそう思うでしょ?』
『えぇ、えぇ。もちろんです。
 綺麗だし、なんでもできるし。
 千早ちゃんを私もおすすめしますっ!』

『ちょっ! 初音さんは薫子さんに譲渡したじゃないですかっ!
 なのに、私をおすすめしたらダメじゃないですか!』
『あぁ、そうかー。じゃあ、やっぱり薫子ちゃんで!』
『ちょっ!』

『そもそも、千早が一番得票数多かったじゃない!』
『そうよね。じゃあやっぱり千早ちゃんでー』
『そんな数票の違いでは皆さんが納得されないからこそ、
 75%という得票数が求められてるんじゃないですかっ!?』

とまぁ、すっかりぐだぐだな壇上の隅で。

(副会長。お楽しみのところ失礼します。えーと、こんなのはどうでしょうか(ごにょごにょ))
(えっ、そ、それはさすがに‥)
(でもですよ? うまくいきさえすれば‥)
(う、うん‥。そ、そうよね。確かにこのままだとどうにもならないし。うん)
(ですよね、ですよねー。 よし、ややぴょん。選挙管理委員会にあの件をネゴってくるのだ)
(わかった。いってくる)

***

277:名無しさん@初回限定
10/12/29 09:05:42 fKCyt4Me0

そんなこんなで。壇上も講堂全体もざわざわ、どよどよ、ぴーちくぱーちく、
黄色い声がさざめく最中にて。

『あーあー。宴もたけなわではありますが。どうぞご静粛に、ご静粛にー』

さくらの声がハウリングとともに響き渡った。
瞬時に静まり、集まる学院生の視線をものともせず。
さくらは静かに話し始める。

『こほん。まことに僭越ながら、生徒会書記である私、土屋さくらから、
 皆さんに1つ提案させていただきたいと思います。
 この奥ゆかしい3人のお姉様方は互いに自らをエルダーの器ではないと思い、
 さきほどから互いに譲り合いを行っています。

 3人の発言にもありましたが、お三方、それぞれが
 学院生の尊敬および憧憬に十分相応しい方々だと思います。
 そして、それらは皆さんもよくよくご認識いただいているのではないかと思います。
 そこで。
 私は、この3名をエルダーとして迎えることを。
 皆さんに提案したいと思いますが、いかがでしょうか。』

『なっ!』『ちょっ!』『さくらちゃんっ!』
(えっ)(お三方を?)(エルダーに?)

きゃあ~~~~~~~~~っ!
あがる大歓声。

(ふふん。勝利は見えたわ。)
(つっちー、おそるべし‥)

***

278:名無しさん@初回限定
10/12/29 09:06:30 PDnLxHgrO
みーライオンって出て支援出来ない時有るが、これも規制?

279:名無しさん@初回限定
10/12/29 09:13:51 fKCyt4Me0
『待って! さ、さくらちゃん!
 だってだって、そんなの前例ないですし!』

数レス前に、初音自身もなにか提案しようとしていたはずだが、
それは思い切り棚に上げて。反論する初音。

『いやいや。初音会長。
 おっしゃりたいことはわからなくもありませんが、
 このままじゃ、正直どうにも決まりそうにないですし。

 それに‥。 私たちの代のエルダーが空位だなんて、認めたくありません。
 そう思いませんか、皆さん!』

きゃー!パチパチパチパチパチ。
圧倒的支持である。

『待ってください!
 壇上にあがった4人の合計は736票。
 3で割ることができませんし、得票として不自然ではないですかっ!』

さすがちーちゃん。計算が速い。

『ご安心ください。千早お姉様。
 その点についてはさきほど選考委員会に確認しておりまして。』
そういい、沙世子に視線を向けるさくら。

なんだろう? 何を確認したんだろう?
そんな学院生の視線をものともせず。沙世子が静かに初音に歩み寄り。

「私、烏橘沙世子に投票いただいていた5票を。
 初音会長。あなたに譲渡いたします。」
そういって初音の右手にそっと口づけを‥。

280:名無しさん@初回限定
10/12/29 09:17:52 fKCyt4Me0
『以上により、お三方の得票は合計741票。
 お一人当たり、247票ずつということになりました。
 いかがでしょうか、千早お姉様。』
『ぐぬぬ‥』

正論には正論で。
最大の難関を突破したさくらは、終劇に向けて高らかに発言を。

『では‥。
 お三方をエルダーにお迎えするということで。
 皆様。賛成の方は拍手をお願いできますかっ!?』

きゃー!パチパチパチパチパチ。
おぉー!パチパチパチ!

『どうやら、満場一致のようですね。
 以上をもちまして、本年度のエルダーは。
 七々原薫子さん、妃宮千早さん、そして、七瀬初音さんのお三方に決定いたしました!」

おぉー!パチパチパチ!
おめでとうございます!お姉様方!
パチパチパチパチパチ。

響き渡る満場の拍手の中に。

「これにて一件落着ということですかな。はっはっはー」

さくらの高笑いが響いていた。

-----------------------------------------------------------------------
長すぎだー。途中で規制くらってました。多大なる支援、多謝。

281:名無しさん@初回限定
10/12/29 09:29:39 PDnLxHgrO
乙~
本編初音居なかったらどうなったんだろうな、と改めて思った
そして、沙世子は初音(の手)にキスなんかしたら倒れそうw

282:名無しさん@初回限定
10/12/29 10:19:42 fKCyt4Me0
うは。最後の最後で初音の名前間違えてら・・。orz

283:名無しさん@初回限定
10/12/29 13:15:27 gPTufstR0

もし香織理さんが壇上にいたら、途中で2人(3人?)の後頭部に突っ込みを入れてくれたろうに

284:名無しさん@初回限定
10/12/29 16:30:14 DWfo7Ogv0
>>295
罰として新年会SS投下な

285:名無しさん@初回限定
10/12/29 16:35:50 S7x5JFXK0
乙。初音さんガンバレ、もっとガンバレ。

286:名無しさん@初回限定
10/12/30 02:22:45 8p0rNvXq0
ダブルライダーではなく
トリプルファイターか
太陽戦隊サンバルカンになったのか


287:名無しさん@初回限定
10/12/30 14:30:41 MtZ1b/Me0
おまえ、歳いくつやねん

288:299
10/12/31 00:09:06 9Rv/q9MP0
>>300
不惑過ぎても迷ってばかりさ


289:名無しさん@初回限定
10/12/31 00:37:33 rWCRcoV+0
「ちがーう! ばるぱんさーのポーズはこうだっ!」
と後輩に指南する瑞穂センパイ

290:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 11:08:45 th+qZ7xz0
>>293
GJでした。
PSPでは初音ちゃんも攻略できるといいですね。

それはそれとして、SSを投稿させていただきます。
舞台は奏ちゃんたちのエルダー選挙後です。8レス分ありますので、よろしくお願いします。

291:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 11:13:54 th+qZ7xz0
「そうですね。奏さん、エルダーとしてはやはり気になりますか?」
「それはもう……私と同期に票を獲得した方々ですから。もしかしたらこれを機会にお友達が増えるかもしれませんし」
「確かにそうですね」
「じゃああたしも見に行こっと」
 奏は響姫、薫子とともに学院内ですでに終わったエルダー選挙についての話題に花を咲かせていた。
 まだエルダー選挙の熱気が醒めない時期、自分たちのほかに票数を獲得した人というのは、どんな人たちなんだろう?
選挙戦の真っただ中にいたみんながそう思うのはすごく自然な流れだった。そして、生徒会室前の掲示板……。
「あら……?」
「ど、どうしたの、奏お姉さま?」
「奏さん……?」
「なぜ? なぜなのですか……?」
 掲示板の残り投票者の名前を見た奏は、驚きと狼狽の表情を浮かべた。

~抹消された記録~

「なぜって一体……あ!」
「あら、これって……」
 薫子も響姫も名前欄を見て、奏の反応の理由が理解できた。
「由佳里ちゃんの名前が、ない?」
「どういうこと? 絶対に少しはもらってると思ってたのに」
「確かに、由佳里さんは生徒会長で琥珀の君という二つ名もお持ちなのですから、この結果は不自然でなりませんね」
 そう。残り票数獲得者の欄に由佳里の名前がなかったのだ。過去のエルダー選挙結果を見ても、先代の菅原君枝はエルダーだったし、
その前の厳島貴子は現在彼女の夫で当時のエルダーである宮小路瑞穂が獲得した82%以外のほとんど、つまり17%が彼女に入っていた。
それ以前にも、生徒会長は代々それなりの票を獲得している。
 なのに、この結果は納得のいくものではない。一体何があったのだろうか?
3人は少し理由を考えてから、目の前の生徒会室の扉を開けた。

292:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 11:20:45 th+qZ7xz0
すみません。失敗しました。やり直します。

 エルダー選挙も無事に終了し、周防院奏が第74代エルダーシスターに選ばれて数日後……。
「そろそろ残りエルダー票獲得者の名前が掲載される頃ですね」
「そうですね。奏さん、エルダーとしてはやはり気になりますか?」
「それはもう……私と同期に票を獲得した方々ですから。もしかしたらこれを機会にお友達が増えるかもしれませんし」
「確かにそうですね」
「じゃああたしも見に行こっと」
 奏は響姫、薫子とともに学院内ですでに終わったエルダー選挙についての話題に花を咲かせていた。
 まだエルダー選挙の熱気が醒めない時期、自分たちのほかに票数を獲得した人というのは、どんな人たちなんだろう?
選挙戦の真っただ中にいたみんながそう思うのはすごく自然な流れだった。そして、生徒会室前の掲示板……。
「あら……?」
「ど、どうしたの、奏お姉さま?」
「奏さん……?」
「なぜ? なぜなのですか……?」
 掲示板の残り投票者の名前を見た奏は、驚きと狼狽の表情を浮かべた。

~抹消された記録~

「なぜって一体……あ!」
「あら、これって……」
 薫子も響姫も名前欄を見て、奏の反応の理由が理解できた。
「由佳里ちゃんの名前が、ない?」
「どういうこと? 絶対に少しはもらってると思ってたのに」
「確かに、由佳里さんは生徒会長で琥珀の君という二つ名もお持ちなのですから、この結果は不自然でなりませんね」
 そう。残り票数獲得者の欄に由佳里の名前がなかったのだ。過去のエルダー選挙結果を見ても、先代の菅原君枝はエルダーだったし、
その前の厳島貴子は現在彼女の夫で当時のエルダーである宮小路瑞穂が獲得した82%以外のほとんど、つまり17%が彼女に入っていた。
それ以前にも、生徒会長は代々それなりの票を獲得している。
 なのに、この結果は納得のいくものではない。一体何があったのだろうか?
3人は少し理由を考えてから、目の前の生徒会室の扉を開けた。

293:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 11:26:20 th+qZ7xz0
「由佳里ちゃん!」
 奏が生徒会室を開けると中にいたのは由佳里と初音だけだった。
「か、奏お姉さま! 響姫お姉さまに薫子ちゃんまで!」
「ごきげんよう、お姉さま。セイレーンの君に騎士の君まで。生徒会に何かご用ですか?」
 驚いて慌てている初音とは対照的に、由佳里はひどく落ち着いていた。まるで奏たちがここに来ることを知っているみたいに。
「何かじゃないです! 由佳里ちゃん、あれはどういうことですか!?」
「奏ちゃん、いきなり言われてもあれじゃわからないって」
「エルダー票獲得者の名前のことです! どうして由佳里ちゃんの名前が入ってないのですか!?」
「どうしてって、誰も私に票を入れなかったってことでしょ?」
 感情的に聞いてくる奏に対して、由佳里は冷静な姿勢を崩さない。
まあ由佳里は自分がエルダーにはふさわしくないと思っているのだから、そういう意味ではこの冷静さもうなずけるのだけど、
それでも初音のうろたえぶりを見ると、やはり変に思える。
「でも、由佳里ちゃんが候補に入ってないのかを聞いた時、『少し聞いた』と言ってましたよね? 
その人たちの票ぐらいは入っているはずじゃないですか?」
「確かに言ったけど、でも私は“私をエルダーに”って考えてた人じゃないんだから、その人の気持ちなんてわからないわよ」
「そ、それはそうですけど……」

(奏ちゃんに言われるのも無理ないか……ま、確かに私をエルダーにって投票宣言を受けたことはあるんだけどね)
 それを聞いた由佳里は、その時のことに思いをめぐらせていた。

294:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 11:32:34 th+qZ7xz0
「由佳里お姉さま!」
「あら、どうしたの?」
 5月も終わり、6月になろうかという頃、由佳里は1人の生徒に呼び止められた。
「生徒会の方? それとも陸上部の方かな?」
「いえ、どちらも違います」
「じゃあどうしたの?」
「あの、私、由佳里お姉さまに1票入れさせていただきます!」
「え……?」
 とっさに言われて一瞬固まった由佳里だったが、すぐにああ、エルダー選のことか、と理解する。
もうすぐ6月、そろそろそんな話題が登ってきても不思議ではない。
「ああそっか。エルダー選挙のことね」
「はい、そうです」
 でも由佳里は、自分がエルダーの座につこうとは思わなかった。そういうものにはコンプレックスがあったし、
生徒会長と陸上部部長の2つだけでも手一杯だったし、そして何より……。
(エルダーだったら、私より奏ちゃんのほうがずっとふさわしいよ。今までの薫子のことからもわかるし、
家族も何もないところからああまでなれるのだって、私と違って想像以上の努力家だって証拠だし、
そして何よりあの瑞穂お姉さまの妹だしね)
 かつて1年だった頃、由佳里は瑞穂に淡い恋心を抱いていた。もっともその想いは
貴子が彼の恋人になったことで儚く散ったのだが。
 まあそれはそれとして、その大好きだった瑞穂の想いを受け継いだ妹なら、立派にエルダーを果たしてくれる。
由佳里はそう確信した。
「ありがと。でも、それだったら奏ちゃんに入れてくれないかな?」

295:名無しさん@初回限定
10/12/31 11:35:38 bnBSUlVc0
支援

296:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 11:38:41 th+qZ7xz0
「奏お姉さまに……ですか? でも、私は由佳里お姉さまのほうがふさわしいと思いますが……」
「あら、あなたの支持した私の推薦相手なんだから大丈夫だって。私は奏ちゃんを信頼してるから」
 由佳里はそう言うとその下級生に微笑みかけた。
「まあ本音を言うとね、生徒会長と陸上部部長を兼任してるのに、この上エルダーまで押し付けようなんて、
私を過労死させる気なのかね君は、ってことなんだけどね」
「あはは、すみません、それは気づきませんでした」
 ちょっぴり舌を出しながらおどける由佳里に、その娘は笑いながら承諾した。
「でも、あなたの気持ち自体は嬉しかったし、それはありがたく受け取っておくわね」
「いえ、こちらこそ、由佳里お姉さまとお話が出来て嬉しかったです! クラスで由佳里お姉さまを押す方々にも、
由佳里お姉さまが奏お姉さまを推薦してると伝えておきますので!」
「ありがとう。じゃあお願いするわね……って、方々って、そんなにいるの!?」
「ええ。少なくとも私の友人たちにも聞いてみると、それなりにいらっしゃるようです。ですので……」
 由佳里は自分がエルダーになってほしいと思っている人がいただけでも驚きなのに、
まだ他にも多数いるらしいというのはまさに寝耳に水だった。
「あ、でも、くれぐれも奏ちゃんや薫子にバレないようにね」
「あはは、はい! では、私はこれで……」
「うん。じゃあね」
 そう言うとその娘は去っていった。
「エルダー選……か……」
 自分を押す人が他にも結構いるというのが本当なら、初音の方でも対策を打ってもらうよう頼んでおこうかな……
と考える由佳里だった。

297:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 11:50:08 th+qZ7xz0
「ねえ、初音」
「なんですか、由佳里お姉さま?」
 その日の夜、由佳里は紅茶を淹れに来てくれた初音に話を切り出してみた。
「もしかして、初音のクラスでも私をエルダーにしようって考えてる人いるの?」
「ええ。数人くらいは……」
 やっぱりか……なんてこと。というか、なんで私なのかな? みんなして、私のどこがエルダーにふさわしいって言うの?
「やっぱり、由佳里お姉さまがエルダーになられるのですか?」
 一方初音は、何を勘違いしたのか、期待に胸を膨らませて聞いてくる。まあ、普段から由佳里を慕っている彼女なら、
無理もない反応ではあるが。
「その逆。私はエルダーになる気なんかないから」
「ええっ!?」
 由佳里お姉さまなら絶対エルダーにふさわしいのに、というように初音は驚愕した。
「だって、もし私がエルダーなんかになっても、みんなを幻滅させてしまうのがオチだろうし、
ただでさえ生徒会長と陸上部部長で手一杯なのに、さらにエルダーにまでなったら、多分過労死しちゃうわよ」
 まあそれはいくらなんでも大袈裟だ。だけど、由佳里が疲れ果ててしまうのはまず間違いないだろう。
初音としても、そんな思いを由佳里にさせたくはない。
「私は奏ちゃんを推選しようと思うの」
「奏お姉さまを……ですか?」
「そう。私より奏ちゃんの方がふさわしいと思うしね。言うなら、票の事前譲渡ってとこかな?」
 確かにエルダー選挙では票の譲渡という行為が存在する。存在はするけど、それをエルダー選が始まる前に
行うという行為は、聞いた事がない。
「わかりました。では、私が聞いた由佳里お姉さまをエルダーにという方には、奏お姉さまを推薦してるとお伝えしておきますね」
「ありがと。初音はいい娘ね」
 由佳里は初音の頭をなでなでしながら、奏と薫子にバレないようにしてほしい、と念押ししたのだった。
 そして由佳里は、生徒会のみんなにも同じことを伝えた。みんなは少し残念そうだったが、
最終的にはそれが会長の気持ちなら、と喜んで協力してくれた。

298:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 11:56:14 th+qZ7xz0
「あの、由佳里ちゃんも……候補に入っているのではありませんか?」
 エルダー選の真っ最中、奏からそう聞かれ、由佳里はいつか聞かれるだろうと思って用意していた答えを言うことにした。
「私? ああ、確かに少し聞いたような。でも、声的には全然ね」
 まあ、その声は由佳里が事前に封じ込めたのだから全然聞こえてこないのはある意味当然ではあるのだが。
「やっぱり、エルダーたるものガサツなのはダメなんじゃないかしらね」
 まあ、その翌年、自称ガサツな人物がエルダーの片割れになってしまうとは、この時誰もが夢にも思っていなかったのだが。
「でも由佳里ちゃんも、私が言った淑女になれる方法を受けていれば、十分エルダーになれたはずじゃ……」
「だって、紫苑さまと瑞穂お姉さま直伝のレッスンも、奏ちゃんだから効果あったんだよ。
私がやっても笑い取るぐらいにしかならないもん」
 実は奏は由佳里が抱えている淑女へのコンプレックスの話を聞いた時、1年の時に瑞穂と紫苑に教わった
淑女になるためのレッスンを由佳里に教えようとした。
 しかし、由佳里がそれを強く断ってきたので、結局この話は立ち消えになったのだが。

299:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 12:02:36 th+qZ7xz0
「でも、由佳里ちゃんも学院内では人気者じゃないですか! それなのに……」
「そういう自覚はあまりないけどね。仮に人気があったとしてもエルダーに選ばれるかどうかはまったくの別問題でしょ?」
「まさか由佳里さん、生徒会で票数の改ざん……」
「してないわよ。ちゃんと投票されていた名前の通りに貼り出してあるって」
 薫子が由佳里を軽く睨むが、由佳里はまったく動じない。
「でも、初音ちゃんの票が入ってないのはさすがにおかしいでしょう?
普段あれだけ由佳里ちゃんのことを慕っているみたいなのに……」
「だから、それとこれとは話は別でしょ? 私だってまりやお姉さまのことを慕ってたけど、票は瑞穂お姉さまに入れたもん」
「ですが……」
 由佳里はすらすらと言いよどむことなく返事を返してくる。が、逆にそれが怪しい。普通に何もしてないのであれば、
奏たちに指摘された時点で考えてみるはずだ。
 結局、奏たちがどんなに粘っても、由佳里は選挙結果について、本当のことは教えなかった。
そして奏たちは生徒会室を後にしたわけだが……。
「薫子ちゃん、響姫さん、どう思いますか?」
「そうですね……まあおっしゃってることはつじつまは合っていましたが、どうもしっくり来ませんでしたね」
「あたしも由佳里さんが何か隠してるのは間違いないと思う。でも問題は、あたしたちがそれを追及する必要があるのか、
ってことだよね」
「そう……ですよね。真相はどうあれもう過ぎたことですし、こんなことで由佳里ちゃんの仲たがいなんてしたくありません」
「それは私も同じです。由佳里さんが話したくなれば話してくださるでしょうし、触れないでいるのが賢明かと」
 こうして奏たちは最終的に、今後このことには触れないようにしようということで落ち着いたのだった。
まあ、そのおかげかどうか、奏たちと由佳里たちの仲は今までと変わらず良好なもののままでいれたのだけど……。

300:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 12:08:53 th+qZ7xz0
「ふふっ、奏ちゃん、私もちゃんと票はもらってるわよ。ただ、名前は全部奏ちゃんの名前になってるけどね」
「……お姉さま、もう皆さんには本当のことを教えてもよろしいのでは?」
「まあそうかもしれないけど、聞いたらそれがきっかけで奏ちゃんが何を言い出すかわからないじゃない。
それに、言わない方が面白いしね」
「お姉さま……」
 楽しそうに言う由佳里に、初音は感心半分、呆れ半分の表情。
「そういえば、まりやお姉さまのときもそんな感じだったっけ……もしかしたらお姉さまも、
瑞穂お姉さまに票の事前譲渡してたのかな?」
 その光景を頭に思い描いて、まりやと同じ道を歩んでいる自分に、ちょっぴり愉快な気分になる由佳里であった。

Fin

301:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
10/12/31 12:17:47 th+qZ7xz0
以上です。
>>308さん、支援ありがとうございました。

奏ちゃんと響姫ちゃん以外の票が残り8票って、由佳里ちゃんがいることを考えると少ないのでは? 
と考えていたら思い浮かびました。(相変わらず由佳里ちゃんびいきです)

来年も、おとボクシリーズがますますの繁栄を誇る作品でありますように。
それでは、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。

302:名無しさん@初回限定
10/12/31 13:11:47 UUj4I8O30
大晦日にGJ

303:名無しさん@初回限定
10/12/31 13:57:52 MGzOH4ib0
乙なのですよー

304:名無しさん@初回限定
10/12/31 14:16:34 J2rJxF7L0
GJです

305:名無しさん@初回限定
10/12/31 14:30:34 rYWXInWg0
乙でございます。



…それと
>299
(゚∀゚)人(゚∀゚)ナカーマ
迷える同士よ。

306:名無しさん@初回限定
10/12/31 22:15:56 bJdYZoyh0
>>314
東の扉さん乙~♪

新年は百人一首大会とかのSSとかも読んでみたいなぁ

307:名無しさん@初回限定
10/12/31 22:43:56 J2rJxF7L0
ちはや(千早)ぶる
 神代も聞きかず
   竜田川

からくれなゐに
 水みづくくるとは


すまん、何となく書いてみたかっただけだ

308: 【吉】 【1944円】
11/01/01 02:57:50 tqGBQo6H0
つづけて

309:名無しさん@初回限定
11/01/02 08:09:55 YlBxMKt70
ちょい質問。
otbk2世界において、瑞穗ちゃんの正体は奏、由佳里、薫子らにはばれてない
って仕切りでよいっけ?

明確に決まってないなら、適当にやりくりするけど。

310:名無しさん@初回限定
11/01/02 08:25:13 0chwcG3v0
瑞穗ちゃんの正体は奏、由佳里にはばれてるよ

311:名無しさん@初回限定
11/01/02 20:13:14 dIwlb4Pe0
2の世界はエトワールの続きだから貴子さんルートアフターのはず
だとすれば奏やバーグは瑞穂ちゃんと貴子さんがヤッてる現場を覗いてるんで知ってる
薫子には多分バレてないんだろうな

312:名無しさん@初回限定
11/01/02 20:22:30 eNEQmghz0
だが敢えてバレてないと脳内変換して2をやってますが?

313:名無しさん@初回限定
11/01/02 20:40:28 PHoC9zB90
ゲームやる分にはいいけどSS書くときにその辺りに齟齬が出来ると面倒だからね
ばれてないならばれてないって前置き入れて書けばいい気がするけど

314:名無しさん@初回限定
11/01/02 21:39:15 DCTrqSNk0
瑞穂ちゃんに関してはなんだかんだでどのルートでも寮生全員と貴子さんにはバレてそうな気がする

315:名無しさん@初回限定
11/01/03 12:23:07 7oasSIxC0
>>242-293

ぜひ別バージョンも書いてみて

千早、うっかり自分は男だと発言
薫子「絶大な支持を得た千早は理想の淑女の体現者。
    その前には肉体の性別が何の問題となりましょう。
    彼女の性別はあえて言うなら『お姉さま』なのです!」
->千早エルダー決定。および特例として在校を許可


316:名無しさん@初回限定
11/01/03 12:44:31 PIXVL5mB0
それフランス書院とかそういう系統の話で見たような記憶があるw

317:名無しさん@初回限定
11/01/03 15:52:53 IPq5w9B00
当然でしょ?
フランス書院には古今東西のエロスが集積されているんだよ

318:名無しさん@初回限定
11/01/03 22:44:13 ND6rM8Dj0
新年会とかいろいろ宿題溜まってるけど、なんとなく気晴らしに。
あっさり短め、かなり適当。4本くらい?
-----------------------------------------------------------------------

梅雨真っ盛りの刻。
放課後、偶然一緒になった香織理と千早が連れだって寮に戻ると、
陽向がレポート用紙を前に食堂でうんうん唸っていた。

「あら、陽向が勉強なんてめずらしいわね。この分じゃ明日は晴れかしら?」
「ふふっ。今朝の天気予報ですと、今年の梅雨前線は結構手強そうですけどね」
「陽向は勉強する。天気は晴れる。いいことずくめじゃない。
 そうなるなら、誰にも文句は言わせないわよ。」

「あぁ、お帰りなさい、千早お姉様、薫子お姉様。
 帰ってきた早々、温かい言葉をありがとうございます~。
 まぁ本当に晴れてくれるのなら、いくらでも勉強しますけどねー。」

雨続きの日々に、陽向も幾分くさっている模様。

「あら。陽向って雨は嫌いなの?」
「えーと。雨には雨の叙情ってものもありますし、毛嫌いしているわけではないんですが
 さすがに2週間、こうも雨ばかりだと、いささか飽きてきたといいますか。」
「で、雨乞い 改め 晴れ乞いのために教科書を紐解くと‥。」
その発想があまりに新鮮だったのか、千早はクスクス笑い出す。

「あー。残念ながら、勉強なわけではなかったりしまして。
 文芸部の課題なんです、これが。」
「へぇ、月例会ですか‥」

319:名無しさん@初回限定
11/01/03 22:45:27 4N4l94q/0
陽向が何かを書こうとしているというだけでいかがわしい響きがするな
支援

320:名無しさん@初回限定
11/01/03 22:50:03 ND6rM8Dj0
陽向曰く。
 どうしても締切がないと書けない人々もいるということから、
 文芸部では月1ペースでの月例会を設け、作品発表 or 意見交換等を行っている。
 さっきまで部屋でPCに向かい長編を書いていたが、煮詰まってきたので
 気分転換に短編のプロットでも考えようかなーと。

「ふーん。で、我が妹はどんな作品を考えているのかしら?」
「えーと、気軽に読める短編で、先日のエルダー選挙をベースに、
 ちょいと最近の流行でも取り入れて、お莫迦な話にしようかなーと。」

その瞬間、なんともイヤそうな表情の千早。

「え‥。エルダー選挙ですか‥。」
「えぇ。せっかくエルダーのお二人と寝食を共にしているわけですから、
 これを書かずして、何を書くのかって感じですよ!
 といいつつ、今のところネタは何一つないんですけどね。」

「まぁ、陽向のことだから大丈夫だとは思うけど。
 二人に迷惑がかかるようなことはやめておきなさいよ?」
「そうなんですよねー。
 なんか、1年生の様子を見る限り、あまりに憧憬の対象すぎるのか
 下手なことを書くと、それがそのまま真実になっちゃいそうで怖いんですよー」
やれやれと肩をすくめて。

「あの‥、それなら別のテーマにするとか‥」

「で、ありえないくらいのファンタジーにするしか!と思いついたのが
 こんな感じなんですよー」

そう陽向が差し出したレポート用紙には。「>>328」と書いてあった。

***

321:名無しさん@初回限定
11/01/03 22:53:28 F3l23s+TO
支援

322:名無しさん@初回限定
11/01/03 22:55:11 ND6rM8Dj0
読んだ瞬間、腹筋が崩壊する香織理と、凍り付く千早。
そしてあまりの反応に慌てる陽向である。

「うわ、う、嘘です!嘘です! ご、ごめんなさい!
 いやー、さすがにこれは失礼でしたよねー。ほんと申し訳ありません!
 自分でもちょっとやり過ぎかなーとかは考えていたんですけどー」

平謝りに謝りまくって、しばしの時が流れ。
ようやく香織理と千早が再起動した‥。


「あー。おかしかった‥。息できなくて死ぬかとおもったわよ‥。
 ほんと‥なんてもの書くのかしら‥。涙でてきちゃったし‥。」
「そこまでツボにはいるとは、意外性って意味ではアリだったんでしょうか?」
「と、とりあえず‥。そのメモは厳重に封印してくれるとありがたいかしら‥。」
「は、はい! わかりました!」

沈鬱な千早の表情に。
厳重封印を誓う陽向である。


「しっかし。
 どうやれば、こういう発想が出てくるのかしらね。」

「えーと。いや、ほら。なんといいましょうか。
 最近は男の娘やらTS物も流行っているじゃないですか。
 なので、ちょいとエッセンスをいれてみようかな?とか
 意外性を大事にするなら、薫子お姉様よりも千早お姉様のほうがいいかな?とか
 ふと魔が差しただけなんですよー。ほんとすいません‥‥」
「おとこのこ? てぃーえす?」
(あちゃー、難しかったですかー。)

323:名無しさん@初回限定
11/01/03 22:58:03 4N4l94q/0
優雨ちゃんは いらん知識 を 手に入れた!
支援

324:名無しさん@初回限定
11/01/03 22:58:45 ND6rM8Dj0
「えーと。性別転換とかそういうファンタジーネタの1つと思っといてください。」
「はぁ‥。」

「一応、薫子お姉様のTSも考えてはみたんですけど、
 なんかそのまんまのラブコメみたいになっちゃいそうで。」
「なにそれ、面白そうじゃない。」

「えーとですね。
  転入してきたばかりで、戸惑う千早をそっと影で支える薫子。
  男嫌いであった千早は最初はツンツンするものの、
  数ある学校行事のなかでその距離が近づき、徐々にデレて。
  エンディングは、親に決められた婚約で実家に戻された千早を
  薫子が正面から乗り込んで連れ戻す! 千早!君をもう一生離さない!
 みたいな?

 なんか途中で想像ついちゃうじゃないですか。
 なので、千早お姉様を♂にしてみようかなーとかとか‥。

 って、あ、あれ? ま、また私、なにか失礼なこといっちゃいました?
 あぁ、なしです! 今のもなしですからー!」

我に返った陽向の前には。
先ほど同様に、息もできずに腹筋を鍛えまくる香織理と。
怒っていいのか笑えばいいのか、いまの感情は恥辱なのかなんなのか
よくわからないけど、なぜか涙がこぼれてしまう千早の姿があった‥。

-----------------------------------------------------------------------
正月休みも終わっちゃって、落ちを頑張る気力がありませんでした。はっはっはー。
こんな感じですが、今年もどうぞよろしくです。


325:名無しさん@初回限定
11/01/03 23:05:07 4N4l94q/0
後に男女逆転で本当にその展開があるとは夢にも思ってないんだろうな
乙でした

326:名無しさん@初回限定
11/01/03 23:49:56 F3l23s+TO
幾ら陽向でもそんな面白い事が身近で起きてるとは思えないだろうなw


327:名無しさん@初回限定
11/01/04 00:11:32 g+tPBHcV0
乙 面白かったです
たぶん初音なら食いついていきそうな展開だなww

328:名無しさん@初回限定
11/01/06 07:03:48 9PwIxxue0
初音は実は、まりやと由佳里を通して
「男の子が転入するから影から支援してあげて」
と言われてるとか


329:名無しさん@初回限定
11/01/06 23:53:47 yncJdkjI0
>>341
由佳里お姉様はああいってたけど‥。
千早ちゃんはどう見ても違うだろうし、
優雨ちゃんも陽向ちゃんも男の子のわけないよねぇ。
真行寺さんは転入じゃないし‥。
えー。だれだろー。

薫子ちゃんは前に一緒にお風呂はいったし‥。

はっ!
も、もしや、また由佳里お姉様にからかわれた!?


330:名無しさん@初回限定
11/01/07 20:26:08 MFc9kK6A0
>>341
そのネタのが某無限から夏に出てたよ。

331:名無しさん@初回限定
11/01/09 01:27:27 cgM+5AiO0
初音「ふ~、買出しは面倒だわ」
タラヲ「お姉ちゃん、ちょっとくるです~」
初音「なに?・・・・ちょっと・・・きゃああああ!!」

タラヲ「服を脱がすです~」

びりびり

初音「きゃああああ!!!いやああああ」

タラヲ「さあ、いれてやるです~」
ズブブッブブブ
初音「いやあああああ!!!痛いよ!痛いよ!!」
タラヲ「処女です~ラッキーです~締りがいいです~」
ズンズンズンズン
初音「もうやめて・・・・」
タラヲ「でるです!」
初音「いや!それだけは・・・・」
ドププププ
初音「いやああああああああ!!」


332:名無しさん@初回限定
11/01/09 01:28:18 cgM+5AiO0
薫子「初音が欠席?自宅待機?」
千早「そうらしいですね」
薫子「いったい初音に何があったのかしら・・・」

~~~~~~~


香織「私、ちょっと出かけてくるね」
薫子「うん。わかった」
千早「気をつけてくださいね・・・(なんだろう・・・・この悪寒は・・・)」
~~~~~~~


333:名無しさん@初回限定
11/01/09 01:29:06 cgM+5AiO0
香織「はあ、歩くのにもこの胸は邪魔でしょうがないわ」
タラヲ「うえ~ん、道に迷ったです~」
香織「ぼうや、どうしたの?迷子なの?」
タラヲ「家の帰り道がわからないです~」
香織「・・・・・しょうがない坊やね」
タラヲ「(わ~い、かかったです~)」

~~~公園~~~
香織「え~っと××町は・・・・・」

ドンッ

香織「キャッ!何するの」
タラヲ「おとなしく、するです。」

中島「やあ、タラちゃん。何してるんだい?」
タラヲ「チッ、邪魔がはいったです」


334:名無しさん@初回限定
11/01/09 14:22:08 rL0+fo1M0
いかん、ネタ帳が文字化けした
さらばミニスカサンタちーちゃん…

335:名無しさん@初回限定
11/01/09 14:33:39 luCVhZsAO
タwwwwラwwwwwwヲwwwwww

336:名無しさん@初回限定
11/01/09 16:27:33 iUdm5tXY0
テンプレ無視してVIPのノリ持ち込んで何がしたいんだろう

337:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:02:37 F68pytwS0
本日は成人の日ということでそれにちなんだSSを!
本編の薫子√後の話ということで。
なお初音さんには千早の性別は卒業後にカミングアウトしているという設定です。
予定としては6レスぐらいで

338:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:03:52 F68pytwS0
正月期間のある日、御門家に遊びに来ていた薫子さんが、

「千早はもちろん成人式には出席しないんだよね。」
「うん、そのつもりだけど。」

史があらかじめネットを駆使して千早が出席予定の成人式の会場の出席予定者を調査したところ
聖應女学院、千早が2年まで在籍していた男子校、双方の卒業生が出席するとのことだったので
出席をキャンセルするのが賢明ということになっていたのだった。

「そのことで年末に初音と香織理さんと相談したら、それでは私たちだけで千早の成人を祝いましょう
ということになったんだ。」
「でも皆さんは成人の日はそれぞれの会場に出席するだろうし、その後は短大の友達なんかと遊びに
出かけるのでは。」
「もちろん午前中はみんなそれぞれの会場で出席するけど午後は千早さえ良ければ、この家に集合と
いうことになっているんだよ。」
「それに。」
「それに!」
「初音と香織理さんが千早はかけがえのない友達だからと云ってくれたから。」

薫子がそう云うと千早は目頭が熱くなっていくのを感じたのだった。



339:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:04:50 6w2vSOVX0
支援

340:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:06:33 F68pytwS0
成人の日当日、お昼過ぎに薫子たち3人が揃って御門家を訪ねた。

「皆さん振袖姿、大変お綺麗ですね。」
「千早は馬子にも衣装と云いたいんじゃなくって?」
「わぁ、そんなことはないですよ香織理さん」

3人とも成人式から直行して集合したらしく当然のごとく振袖姿である。
そして3人をリビングに通して千早が朝から史と一緒に作った料理で食事会である。

「久しぶりに千早ちゃんの手料理を頂いたけどやっぱりプロ顔負けの美味しさですね。」
「史ちゃんの給仕も久しぶりに見たけど寮時代と変わらない手際の良さね。」

そんな他愛のない会話が続き、食事がある程度進んだ後に香織理さんが突然こう云い出した。

341:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:07:02 9Pzd4sbh0
シェン

342:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:09:56 F68pytwS0
「成人式にはやっぱりアトラクションがつきものよね。そういえば前に寮で一芸大会をやったじゃない。」
「そういえばそうこともありましたよね。」
「香織理さんはその時スイカのぬいぐるみでスイカ劇場第3章なんていうものをやってたわよね。」
「でもその時に千早の芸は史ちゃんに邪魔をされて見れなかったから今からここで見せてくれる。」
「ま、まさかあの時見たいに裸踊りをしろと云うんじゃないでしょうね。」
「ふっ、あの時は勢いでそんなことを云ってしまったけど流石にそこまでは要求はしないわ。」
「でもその代わりに。」
「その代わりに?」

すると今までキッチンで後片付けをしていたはずの史がリビングに戻ってきて

「香織理さま。例のアトラクションのご用意が整いました。」
「史ちゃんありがとう。ということで千早には今から振袖を着てほしいの。」


343:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:11:44 F68pytwS0
「えっ!振袖」
「私たち3人も振袖なんだから千早ちゃんだけ折角の成人の日に普段着というのも・・・それに千早ちゃん
は美人さんなんだから振袖姿もきっとお似合いになると思うの。」

初音さんがそういって微笑みながら僕を説得しようとする。

「あのぅ・・・初音さん、卒業後にカミングアウトしたと思うんですが、僕は一応男なんですけど。」
「あれっ、そうでしたっけ!」

もしかして初音さんは僕が男だってことをすっかり忘れてるんじゃ・・・・・orz

しょうがないので薫子さんに救いの眼差しを送ると

「千早、そういう訳だから今回は観念してよね。」

と云って視線を逸らされてしまった。
どうも今回の陰謀はみんなでぐるになって行われているようである。

「千早さま、そういうことですので皆様がお待ちなので早速着替えをいたしましょう。」

最後に史にただされて、用意がしてあるという自分の部屋に向かった。


344:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:14:40 F68pytwS0
史に着付けをしてもらって振袖姿になり、リビングに戻ると

「わぁ!綺麗。」
「私たちみんな、千早ちゃんに負けましたよね。」
「素材が良いからきっといいものが見れると思ったけど想像をはるかに超えているわ。」

と3人がそれぞれに賞讃の言葉を述べている。
しかし男として振袖姿を褒めてもらうのは何とも複雑な気分だ。

するとさっきまで遠巻きに見ていた母が、

「親として息子の綺麗な振袖姿を見れるなんてこんな幸せなことはないわ」

と云って涙ぐんでいる。
しかし息子の振袖姿って表現がおかしいような・・・・・。

この後、千早だけに一芸をさせるのは忍びないと云って香織理さんがスイカ劇場第4章を
披露してくれた。
そのスイカ劇場が終わった頃、初音さんがいきなり立ち上がって、

「今から、千早ちゃんのために私が芸をします。」



345:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:17:13 6w2vSOVX0
支援

346:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:17:43 rXA7xNVJO
支援

347:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:19:53 F68pytwS0
しかし初音さんの様子はあきらかにおかしい。
よく見ると顔が赤いし、ふらふらとしているような。
でも今日はお酒には極端に弱い初音さんがいるからお酒は用意はしていなかったはずだと考えていると
傍らには香織理さんや薫子さんに成人になったのだからとお酒を勧めている母の姿が・・・。
おそらくはスイカ劇場の間に事情を知らない母が初音さんに飲ませてしまったのだろう。

「そ・れ・で・は、今から裸踊りをしま~す♡」
「ちょ、初音さん、男である僕がいるのに裸になるのはやめてください。」
「千早ひゃん、なにおかしなことを云っているの。こんなに振袖姿が似合うのに男のはじゅがない。」
「薫子さん、香織理さんものんびりと見ていないで初音さんを止めてください。」
「あらっ千早、折角初音の裸踊りが見れるんだから勿体ないしないでだまって見ていたら。」
「聖應時代に女学生の生着替えが見放題だったんだからいまさら初音の裸を見たところで
どうってことないでしょう。」

薫子さんも香織理さんもアルコールが回ってきたのか止める気はさらさらにないようである。
結局、このまま初音さんの裸踊りが始まったのである。



この後、どうなったかは皆様のご想像にお任せで・・・。


348:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:24:42 F68pytwS0
ということで千早の成人の日のお話でした。
初めてSSを作りましたが、皆様如何でしたか?
アップした後に誤字脱字に気付きましたがご容赦のほどを。

それでは皆様、支援ありがとうございました。


349:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:51:34 6w2vSOVX0
お前のせいで元々その傾向があったのに初音がまきいづみでしか脳内再生されなくなった
どうしてくれる


乙です

350:名無しさん@初回限定
11/01/10 23:51:45 PrR/nPw/0
おい
画像は?

351:名無しさん@初回限定
11/01/11 00:14:50 rJixoqyI0
なんという会長の乱れた姿、沙世ちゃんが侍女に動画を要求…あきれていますよ!

乙です

352:名無しさん@初回限定
11/01/11 13:51:29 GJKtH10b0
乙であったな
さらに励むが良いぞ

353:名無しさん@初回限定
11/01/12 13:13:02 1d1cYhTv0
タヌキ踊りじゃないのか・・・


354:名無しさん@初回限定
11/01/13 21:22:09 0Gl3eYCR0
ちーちゃんが風船クラブの漫画なみにひどいめにあうSSが欲しい

355:名無しさん@初回限定
11/01/13 22:44:39 2csXsAnU0
といった無茶なお題をみると、
なんとなくストーリーを練り上げようとして、
最後にはいつものげんこつくらう陽向のシチュしか思いつかない。

356:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 10:58:10 nnx1UL1Q0
以前に書いたかちかち山を2人のエルダーバージョンが完成しましたので、
13レス分使って書かせていただきます。
よろしくお願いします。

357:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 11:04:34 nnx1UL1Q0
~かちかち山 2人のエルダー編~

 昔々、あるところに、千早と薫子という夫婦が住んでいました。
 薫子は町で剣術道場の師範をしており、門弟達にも町の人たちにも慕われていました。
 そして門弟達との稽古の後で、彼らと一緒に妻の千早の手料理を食べる時が何よりの楽しみでした。
「って、ちょっと待てーい! なんであたしが夫で千早が奥さんなのよ!」
 じゃあ薫子さんは千早より自分の方が女役にふさわしいと?
「うぐぐっ……」
「……薫子さん、なんでそこで沈黙するんですか?」
 ところが、いつの日からか、千早が作る料理の食材を作る畑の作物がいくつか消えてなくなっていました。
「ねえ千早、ひょっとして誰かに盗まれたのかな?」
「さあ? 確かになくなってますし、そうかもしれませんね。夜になったら交代で見張りましょう」
 こうして薫子は門弟達にも協力してもらって、日が沈んだ後は畑を見張ることにしました。
 それから数日過ぎたある日、千早は昼間に作物の世話をしに畑へ行くと……。
「あっ!」
 ちょうどたぬきが作物を持っていこうとしていました。
「ちょっと、何やってるんですか! 人の畑で!」
「ええっ!? これ、あなたのものだったんですか!?」
 初音だぬきはそれを聞いてびっくり。
「ええっ!? って、あなた、知らずに持っていってたんですか?」
「ごめんなさい……私、優雨ちゃんにおいしいもの食べさせてあげたいって必死で、それしか考えてなかったから」
 初音だぬきの話によると、彼女には病弱な妹がいるらしく、元気になってほしくてそれ以外頭になかった、とのことでした。

358:名無しさん@初回限定
11/01/15 11:08:06 EHv4ZZj30
投下と聞いて歩いてきましえん

359:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 11:11:04 nnx1UL1Q0
「で、この子が犯人だったってこと?」
「ええ」
 千早は夫の薫子を呼んでくると、今までの事情を説明しました。
「しっかし、なんでよりによって初音かな? 悪役には一番向かないと思うけど」
(本人いわく“たぬき顔”だからじゃないでしょうか?)
(……そんな理由で選んじゃっていい訳?)
 まあ、それは初音がどう悪いタヌキを演じるのかお楽しみにってことで。
「あと、初音さんは前作のタヌキのまりや従姉さんの妹の妹ですから」
「初音のお姉さまの由佳里さんが瑞穂さんと夫婦って設定だったらしいけど、でもこっちはちゃんとした性別だったよね」
 ガーン!!
「あ、千早、言っちゃいけなかった?」

「それでね、考えたんだけど、初音だぬきさん」
「なんですか?」
「千早にその優雨ちゃんのお料理を作ってもらうってのはどうかな?」
「……いいの?」
「ええ、もちろんです」
 もちろん千早はにっこり笑って引き受けます。
「ううっ、千早ちゃん、薫子ちゃん、ありがとう!」
 こうして、千早たちは優雨だぬきの料理を作りに行くことになりました。

360:名無しさん@初回限定
11/01/15 11:23:24 gyzjwP+W0
ぁ強

361:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 11:24:22 nnx1UL1Q0
「ただいま、優雨ちゃん」
「おかえりなさい、はつね」
 初音だぬきの家に行くと、そこには一人の鬼○郎ヘアのタヌキが横になっていました。
「はつね、その人たちは?」
「ああ、優雨ちゃんにお料理を作ってあげたいって、来てくれたの」
「はじめまして。千早です」
「この人の旦那で薫子。よろしく」
「よろしく」
 自己紹介も終わると、千早は早速料理に取りかかります。

「お待たせ、優雨」
 そして十数分後、千早は出来上がった料理を優雨だぬきに差し出します。
「おいしそう……」
「それはサムゲタンのおかゆ。とっても身体にいいのよ」
「千早ちゃん、すごい……」
「千早っていつも料理作るのありえないぐらい早いのに、ありえないぐらい美味しいんだ」
「そうなの?」
 初音だぬきが千早の料理に感心していると、薫子が自慢げに話して聞かせました。
「いただきます」
 優雨だぬきが千早のおかゆを息で冷ますと、期待いっぱいに口に運びました。
「どうかしら?」
「……おいしい。それに身体があったかい」
 千早に向かって嬉しそうに一言。それからみんなで優雨だぬきが食べ終わるまで微笑ましそうに見ていました。
「ごちそうさま」
「千早ちゃん、今日はありがとう」
「いいえ、私の方こそ優雨と知り合えて嬉しかったです。また時々優雨のお料理を作らせていただけますか?」
「いいの? 私からもお願いします!」
 こうして千早たちは、また来ると約束して初音だぬきたちの家を後にしました。

362:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 11:30:51 nnx1UL1Q0
 それから数日後……。
「ねえ、千早」
「なんでしょう、薫子さん?」
「初音だぬきが山にわらとか薪とか採りに行ってくれてるけど、大丈夫かな?」
 初音だぬきは、いままでのお詫びにと、薫子たちのお手伝いをしたいと言ってきました。
そして、今日はお料理を作ったりお風呂を沸かしたりする燃料を採りに出かけたのです。
「だってさ、原作ではタヌキがウサギに火傷させられたりそれを悪化させる薬を塗られたりするじゃない。
初音だぬきがどうなるか心配でそれしか頭に入らないよ」
「大丈夫ですよ、薫子さん。それでしたら原作通りなら私は初音さんに食べられてるはずでしょう?
あ、初音さんに騙された薫子さんに食べられる話だったかしら?」
「……千早が言うと、いやらしいにおいがプンプン漂ってくるよ」
「……ちゃんとそういう連想出来てるじゃないですか」
 怒りの十字架を頭に浮かべた千早が、その前のセリフにツッコミを入れます。

363:名無しさん@初回限定
11/01/15 11:34:34 ZoEZTXvt0
しえn

364:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 11:36:31 nnx1UL1Q0
 一方、その頃初音だぬきは……。
「私にはちょっと重いかも……でも、千早ちゃんと薫子ちゃんのためだもん、頑張らなきゃ。初音、ファイト!」
 疲れをこらえながら、わらやら薪やらを運んでいた。と……。
「え……?」
 何やら背中から、メラメラと燃えるような音が……。
「きゃあああああ!!」
 初音だぬきが振り向くと、運んでいたわらや薪が燃えていました。
どうやらすれ違った男がポイ捨てした煙草で引火してしまったようです。
「熱い、熱いよ!!」
「大変! 助けなきゃ! さくら、耶也子、水!」
「おまかせあれ!」
「承知した」
 そこへ、偶然通りかかったうさぎ三姉妹が助けに行きます。長女の沙世子うさぎの指示で、
次女のさくらうさぎ、三女の耶也子うさぎが水をかけて消火しました。
「あなた、大丈夫?」
「なんともないか?」
「うん、誰か知らないけど、ありがとう!」
「いえいえ、どういたしまして」
「気にするな」
 薪は大半が燃えてしまったものの、初音だぬき自身は、何事もなくすみました。
そして2羽のうさぎと初音だぬきが自己紹介をしている頃……。
「ちょっと、あなた! 煙草の火を消さないまま捨てるなんて、どういう神経してるの!?」
 沙世子うさぎはその男を説教していました。

365:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 11:43:04 nnx1UL1Q0
「そっか。その夫婦の手伝いをね」
 さくらうさぎと耶也子うさぎは初音だぬきから事情を聞き、燃えてしまった薪をどうするか相談しています。
「あうう……2人とも、そんな目で見ないでえ……」
 初音だぬきの脳内では、お遣いを果たせなかった彼女を、薫子と千早がジト目で睨んでいる様子が浮かんでいるようです。
(かわいい……もっとこの可愛さを味わっていたい)
(同感)
「心配無用よ。さっきの男に弁償させたから、これで町に新しい燃料を買いに行きましょ」
 そこへ沙世子うさぎが戻ってきてそう提案します。
「ううっ、みんな、ありがとう!」
 初音だぬきは感動に涙を流してうさぎ三姉妹の提案に乗りました。

「ただいま、千早ちゃん、薫子ちゃん」
「おかえりなさい、初音だぬきさん。あら、その方たちは?」
「どうしたの?」
「あ、えっと、途中で手伝ってくれたウサギさんの姉妹です」
「長女の沙世子うさぎです。よろしく」
「どもども、次女のさくらうさぎです」
「末娘の耶也子うさぎだ」
「初音だぬきがお世話になりました。薫子です」
「妻の千早です」
 千早と薫子はうさぎ三姉妹と自己紹介を済ませると、千早の料理を食べながら事情を聞くことにしました。
ちなみに、ウサギたちも千早の料理のファンになったとか。

366:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 11:49:48 nnx1UL1Q0
「そうですか。そんなことが……」
「でもよかったね、その程度ですんで」
 聞き終わると、2人とも安堵してため息をつきます。
「でも、ごめんね2人とも」
「いいって。初音が無事なら薪の1つや2つなくなっても」
「そうです。薪はまた探してくればいいですが、初音だぬきさんの命は1つしかありませんから」
「あ、ありがとう」
「しかし初音だぬきさん、どんどん悪役からかけ離れていきますね」
「はつね、悪役には向かない」
 遊びに来ていた優雨だぬきも千早の意見に賛成。
「ゆ、優雨ちゃん、そんなことはない、ですよ? 私だって頑張れば悪役ぐらい……」
「ではでは、このセリフを言ってみてくださいな」
 と、さくらうさぎが、友達の玲香うさぎからこの時のために借りてきた数冊の脚本を初音だぬきに見せます。
「この時のためにって、どうして予測ができた?」
「まあまあ、そこは気にしたら負けなのだよややぴょん」
「うぐぐ、姉妹設定だからつっちーと呼べないのにそっちだけややぴょんと呼ぶな」
「だって、うさぎなんだからぴょんはうってつけのあだ名じゃないですさ」
 いつもどおりの掛け合い漫才を繰り広げるさくらうさぎと耶也子うさぎは置いといて、
初音だぬきはさくらうさぎ指定のセリフに挑戦します。

367:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 11:56:02 nnx1UL1Q0
「えっと……『あはははは、私に逆らう人はみんなそうなるのよ! 覚えておくのね』」
 初音だぬきの口から、どこか傲慢さの欠け落ちた嘲笑が飛びました。
「次は……『ふ、ふざけんじゃないわよ! 売られてきた奴隷のクセに、私の彼氏をたぶらかそうなんて!』」
 続いて憎々しさの足りない罵声が響きます。
「さ、最後に……『明日までに約束の品を持ってきなさい。持ってこないと、娘の命はないわよ?』」
 恐怖も威圧感もまったく感じさせない脅迫のセリフが聞こえました。
「ああっ、そんなことばかり書いちゃダメえっ! 気にしてるのお!」
 説明文に注文をつけてもムダでーす♪
「ううう……うわーん!! 優雨ちゃーん! 説明文がいじめるーっ!!」
 初音だぬきは妹の優雨だぬきの胸に顔を埋めて泣きつきました。
「……あの語尾と八分音符が多大な屈辱感を与えるんですよね」
「千早も経験あるの?」
「ええ、まあそれなりに」
「泣かないで。それがはつねのいいところ。私はそんなはつねが好き」
 優雨だぬきは初音だぬきの頭をなでなでしてなぐさめました。
「優雨ちゃん、ありがとう」
「和みますね。すごく」
「さっき初音だぬきが、彼氏に甘える女の子に見えちゃった」
「わかります」
 薫子と千早はそんな会話に花を咲かせ、
「ううう、初音だぬきさん、可愛すぎ、可愛すぎですよーっ!」
 さくらうさぎはそんな初音だぬきを携帯で録画しまくり。
「ちょっとさくら、相手の泣いているところを撮ったりするものじゃありません!」
「まあまあ沙世子お姉さま、あとでこの動画差し上げますから」
「ぐっ……」
 初音だぬきの写真の誘惑には結局勝てず、沙世子うさぎはさくらうさぎに買収されてしまいました。

368:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 12:02:27 nnx1UL1Q0
 それからしばらくして、今日は薫子夫婦とたぬき姉妹とうさぎ三姉妹でお出かけです。
「いったいどうしたんですか?」
「いや、向こうの離れ小島にここらのお殿様が探してる昔の財宝があるんだって。
それを見つけたものには褒美がもらえるって言うので、参加してみようと」
「不公平にならないようにと大会にしてあるので、みんな事前に申し込みを済ませて、
本日誰が一番早く持ち帰るかの競争が行われるわけです」
 と、見ると砂浜にはいくつもの舟が。ほかの参加者達は、どの船に乗ろうか相談しています。
「どの舟も定員6名……ですか。私たちは2人と2匹と3羽ですから、1名余りますね」
「でも全員参加だからね。それにもう申込用紙には全員の名前書いちゃったからね」
 千早と薫子は困惑顔でどうしようか考えています。
「じゃあ、私が別の舟に乗ります」
 それを見た初音だぬきがそう言いました。
「ちょっと初音、あとは泥舟しか残ってないじゃない! だいたい原作ではタヌキは泥舟に乗って溺死しちゃうんだから、
ダメだってそんなの!」
「大丈夫ですよ。ちゃんと焼いてレンガになってるみたいですから」
 泥舟のような色をしているけど、よく見ると確かにちゃんとレンガになっています。
まあ、主催者側も沈めて溺死させるのが目的ではないのだから、当然といえば当然なのですが。
「確かにそうですね……では、二手に分かれましょう」
「いいえ千早ちゃん、溺死するかもしれないのに、皆さんを巻き込むわけには……」
 その後みんなで初音だぬきを説得しようとしますが、頑として聞き入れませんでした。
「まあ、レンガの舟ですから、溶けて沈むようなことはありませんか」
「タヌキにレンガの舟……なんかオチが見えたような気がするよ……」
「薫子さん……?」
 安堵する千早とは逆に、薫子は冷や汗混じりに浮かない顔です。

369:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 12:15:26 nnx1UL1Q0
「初音だぬきさん、大丈夫ですか?」
「うん、こっちは大丈夫」
 千早たちは舟を漕ぎながら、時折少し後ろの初音だぬきに呼びかけています。
「ふふっ、でも、お殿様からご褒美がもらえれば、それで優雨ちゃんを元気にしてあげられるわね。
そしたら2人で一緒に遊びに行ったりとか……」
 初音だぬきは、舟を漕ぎながらその様子を頭に思い浮かべます。その様子を思い浮かべると、
嬉しくなってついつい尻尾を振っちゃいます。
「あれ? なんか冷たいな?」
 初音が不審がって舟を見ると、レンガの舟が一部壊れて浸水しています。
「えっ!? ど、どうして!?」
 初音だぬきは尻尾を振っていたんですから、そりゃレンガの舟は壊れちゃいます。
何せ、キノコも花も木の葉もコインもその他何も入っていない普通のレンガなのですから。
「きゃあああああ!!」

「大変!!」
「どうしたの?」
「初音だぬきさんが溺れてます!!」
「あああ、やっぱり……」
 ほどなくして千早たちもそれに気づきます。
「救命具と浮き輪の準備を!」
「はい!」
「これです!」
「貸してください!!」
 千早はウサギたちから救命具を受け取るなり装備して初音だぬきの救出に向かいます。
「大丈夫ですか!?」
「あ……千早ちゃん」
 一度初音だぬきの手を取り、そのまま自分の背中に彼女を負ぶさりました。
「もう島の近くまで来ていますから、このまま泳いで渡りますね」
「う……うん……」
 千早は、そのまま初音だぬきを背負って島まで泳いでいきました。その様子を、木の舟に乗っていたみんなは
呆然と見ていました。

370:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 12:21:22 nnx1UL1Q0
「あーあ。結局ご褒美、もらい損ねちゃったね」
 結局、初音だぬき救出に時間を取られている間に、財宝は他の参加者に持っていかれてしまいました。
しかしそれを話す薫子さんに不機嫌な様子はなく、むしろどこか嬉しそうです。
「みんなごめんね、私が浮かれて舟を壊しちゃったせいで……」
「気にしないでください。残念じゃないと言ったらウソになりますけど、
初音だぬきさんを見殺しにして財宝を手に入れても後悔するだけですから。初音だぬきさんを責めている人などいませんよ」
「そうそう。千早の言う通りだって」
 自分のうかつな行動が原因で足を引っ張ってしまったことを詫びる初音だぬきでしたが、
千早をはじめみんな温かい言葉をかけ、彼女を励ましました。
「みんな……」
 初音だぬきは感涙。この人たちと知り合えて本当によかった、と心から思ったのでした。

371:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 12:27:38 nnx1UL1Q0
「しかしこの話、本当にかちかち山として成り立つのか?」
「確か、あと“タヌキが極悪非道である”と“タヌキはウサギにひどい目に遭わされる”をクリアしないと
日本かちかち山認定協会からかちかち山とは認めてもらえないはずだよややぴょん」
 無論ウソです。そんな協会はありません。
「ややぴょんはやめろ。しかし、タヌキが極悪非道であるは難しいな」
「そうね。初音はどこからどう見ても極悪非道とはほど遠いからね」
 みんなは、一斉にうーんと頭をしぼって考えます。
「でしたら、初音だぬきさんは極悪非道なまでに可愛らしい、というのはいかがでしょうか?」
 千早の提案に、薫子とうさぎ三姉妹からおおーと感嘆の声が。
「確かにそれしか表現しようがないからね」
「千早さんナイスです! 確かに初音さんの可愛さは極悪モノですよ!」
「納得」
「かわいいって、ごくあくひどうなの?」
 そして、優雨だぬきは意味のつながらない言葉に首をかしげていました。
「いやいや、それは言葉の綾ですよ」
「優雨、それはものすごく可愛らしいということを、冗談交じりにそう表現してるの。わかる?」
「わかった」
 さくらうさぎと千早の説明に、優雨だぬきは彼女なりに理解したのか笑顔になりました。
ようするに、初音だぬきを「とても可愛い」とべた褒めしているのだと。
 そしてこれで“タヌキが極悪非道”を日本かちかち山認定協会に提出したところ、認められたそうです。
「うそ……」

372:名無しさん@初回限定
11/01/15 12:29:18 ZoEZTXvt0
紫苑

373:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 12:34:01 nnx1UL1Q0
 あと、“タヌキはウサギにひどい目に遭わされる”の方はというと……。
『……持ってこないと、娘の命はないわよ?』
「うーん……初音だぬきさん、こんなセリフからも恋人に甘える女の子の匂いがプンプン漂ってきますねえ」
 うさぎ三姉妹はその後初音だぬき目当てで彼女たちの近くに引っ越してきました。
さくらうさぎは今、以前撮影した初音だぬきが悪役のセリフに挑戦しているところを再生しています。
「ちょっとさくらちゃん、そんなの見ちゃダメえっ! 恥ずかしいから消して」
 それを見た初音だぬきは顔を真っ赤にしてお願いします。
「いいじゃないですさあ。みんなに見せびらかすんじゃなくて、個人的に楽しんでるだけだし、
下着写真とかでもないんだし」
「違くても恥ずかしいから……沙世ちゃん、耶也ちゃん、止めて」
「ま、まあちゃんと節度は守ってるんだから、そこまで目くじら立てなくてもいいんじゃない?」
「沙世子お姉さまもこう言ってることだし……」
 沙世子うさぎはさくらうさぎの絶妙な理性と本能の天秤を動かすマジックに気づかず言いなりになっていて、
耶也子うさぎも沙世子うさぎが動かないと自分も動きません。
「あうう……」
 どうやら、初音だぬきのうさぎ三姉妹にいじられる受難の日々は幕を開けてしまったようです。
ということで、通りましたとさ。

Fin

374:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/01/15 12:43:21 nnx1UL1Q0
以上です。
>>371さん、>>376さん、>>385さん、支援ありがとうございました。

薫子ちゃんが夫で千早ちゃんが妻のネタ、もう少し入れたかったのですが、これが精一杯でした。
なるべく原作に近くなるようにしたつもりですが、初音ちゃんではこれがいいとこでしょう。多分。

それでは、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。

375:名無しさん@初回限定
11/01/15 13:15:11 j8Qulp2x0
東の扉さんはそつなくまとめてくるっすなぁ

376:名無しさん@初回限定
11/01/15 13:59:00 EHv4ZZj30
おつ。
で、結局かちかち山認定協会はあるのかないのかどっちなのさ

377:名無しさん@初回限定
11/01/15 14:08:31 ZoEZTXvt0
>>387
ちょっと待った、>>376>>385は同一人物だ
本人が言うんだから間違いない(ぇ

378:名無しさん@初回限定
11/01/15 16:05:22 XPHrGie1O
初音はタヌキのみならずウサギでもある
かと言ってウサギ役も、やっぱり望めそうにない

379:名無しさん@初回限定
11/01/15 16:15:59 VBG0lxnq0
オオカミさんに食べられるうさぎという意味では兎らしいが、昔話の「悪知恵の働く兎」にはもっとふさわしい方がいらっしゃるからな
丁度色も似ているs・・・やぁ千早お姉さま、何か御用ですか?

380:名無しさん@初回限定
11/01/15 16:24:27 z3Cczxw70
ウサギとカメのウサギさんは夜行性だから初音さんには無理か

381:名無しさん@初回限定
11/01/15 22:21:06 fQ/e+vx40
初音&優雨ちゃんの可愛さでついつい入り浸りしちゃった(喰われた)千早ちゃんを
薫子ちゃんがウサギ役の子たちを引き連れて連れ戻すかと思ったが違ったな

382:名無しさん@初回限定
11/01/16 23:20:44 zxTSCbZd0
千早と千歳・・・そして優雨が不思議な糸で結ばれたとある曲のお話です。
クラシック音楽なので人によってはちょっと難解かもしれませんがご容赦を。
6スレぐらいを予定しております。

それではよろしくお願いいたします。


383:名無しさん@初回限定
11/01/16 23:21:30 OiOimFXI0
6スレに突っ込まないんだからね

384:名無しさん@初回限定
11/01/16 23:21:47 zxTSCbZd0
「梅雨もそろそろ終わり、太陽が眩しくなる季節となってきました。皆さん如何お過ごし
でしょうか、お昼の院内放送の時間です」


聖應女学院の月水金のお昼休みには放送委員会による院内放送が行われている。
そして毎週金曜日はクラシック音楽の日。


「それでは本日の一曲目は3-Cの妃宮千早さんからリクエストを頂きました、
クロード・ドビュッシー作曲のピアノ曲『子供の領分』です」

-簡潔でありながら、詩情とファンタジーに溢れた曲が院内を流れていく-

院内放送が終了した後、千早と一緒に昼食をとっていた薫子が、


385:名無しさん@初回限定
11/01/16 23:23:03 zxTSCbZd0
「千早が院内放送にリクエストを出していたなんでビックリしたよ。
しかし、音楽の趣味もクラシック音楽だなんてどこまで高スペックなの・・・
まぁ確かにロックを聴いている千早はちょっと想像出来ないけど・・・」
「ええまぁっ、小さい頃からピアノを稽古でやらされていたものですから。
それにあの曲は千歳さんがお気にいりでよく弾いて聴かせていたのですが、
最近、千歳さんにまつわる事件があったから久しぶりに自分でも聴いて
みたくなって思わずリクエストをしてしまいました」
「へぇー、そうなんだ」
「特にあの曲の4曲目『雪が踊っている』が千歳さん一番のお気に入りだったの
ですが・・・その雪が舞う日に千歳さんは身罷りになられたのですよ・・・・・」
「千早・・・」
「すいません薫子さん、つい余計な事を云ってしまいました」

千早はそう云うと過去を思い出しているのかぼんやりと遠くを眺めているのであった。

386:名無しさん@初回限定
11/01/16 23:26:37 qLNOFmEWO
支援
後ここsage進行だが

387:sage
11/01/16 23:30:10 zxTSCbZd0
その日の寮の夕食後の話題は千早がリクエストした曲についてであった。

「タイトルに『子供』が付く割には高尚な感じな曲なのですが、どうしてなのでしょうか」
「それはトビュッシーが当時3歳の愛娘『シュシュ』に捧げた曲なのですが、実際は
大人が聴いて童心に帰るのを目的にした曲かしら」
「でも終曲の『ゴリウォーグのケークウォーク』でしたか、子供が聴いても楽しめそうな
ノリが良い曲でしたね」
「ところでシュシュと云えばフランス語で『ヘアバンド』の意味でしたよね、珍しい
名前ですね」
「本名は別にあるのですが、フランスでは愛しい人に対して愛情を込めてそう呼ぶ
風習があるのですよ。それに駆け落ちまでして再婚した相手と最初に授かった
子供だから、トビュッシーの溺愛ぶりは相当なものだったらしいわ」
「ええーっ、駆け落ちまでしたのですかっ!」

陽向ちゃんが興味深そうに身を乗り出して聞いてくるのであった。


388:名無しさん@初回限定
11/01/16 23:32:07 zxTSCbZd0
「トビュッシーは教え子の母親と不倫関係に陥ったのですが、それを知ったトビュッシー
の当時の奥さんが自殺未遂騒ぎを起こしたの、それに不倫相手は資産家だったから
友人たちからは『愛よりお金を選んだ』と非難されて、駆け落ちしたの」
「へぇー、ドラマチックなのですね。」
「でも再婚してからは子供を授かったこともあって、女癖の悪さもなくなり真面目な
マイホームパパになったそうよ」
「ハッピーエンドで終わって、目出度しですね」
「でもね」
「でもね?」
「シュシュは父親の後を追うようにわずか14歳で夭折してしまうの」
「幸せは長くは続かなかったのですね」
「それで4番目の曲はあんなに物悲しいの・・・・・」
「優雨・・・・・」


曲のエピソードを語る千早とその感想を述べた優雨を見ていると複雑な気分になる
薫子であった。



389:名無しさん@初回限定
11/01/16 23:34:38 zxTSCbZd0
その後しばらくして薫子は千早の部屋で史の入れてくれるお茶でティータイムをしていた。

「千早・・・あの曲は千早と千歳さんにとっては不思議な糸で結ばれた曲だったんだね」
「史は確か・・・千早さまは千歳さまが亡くなられてからはあの曲を封印していた
と存じ上げているのですが・・・」
「でもこうして千歳さんに助けてもらったから久しぶりに聴いてみようという気に
なったのでしょうね」
「史も院内放送で久しぶりに拝聴してすごく感動いたしました。特に4曲目の
『雪が踊っている』ではすごくこみ上げるものを感じました」
「そういえば・・・さっき優雨が4曲目が物悲しいと云っていたけれど、ある
名ピアニストがこの曲に関してこんなことを云っていましたね」

-いつまでも降り続く雪を窓から眺めながら、人形を抱いたシュシュはつぶやく。
お日さまはどこへ行ってしまったのだろうー

「優雨ちゃんもいつも窓からお月さまとかを眺めているから・・・あの曲には
何か感じるものがあったんだろうね」
「それじゃ・・・今度、優雨ちゃんも誘って第二音楽室で僕があの曲を
弾いて聴かせてみましょう」
「うん、そうだね」

そうやって千早と薫子は約束を交わしたのであった。

Fin

390:名無しさん@初回限定
11/01/17 03:08:56 1d9YCWxX0
>>395
千早はクラシック好きそうなので、いつかSS書こうと思っていたのですが、
先にやられちゃいましたね。
曲の逸話とキャラの身の上が絡んでいてよかったです。

題材曲のお勧めCDがあれば教えて頂けませんか?
クラシック音楽好きなのですが、ピアノ曲は初心者なので……。

391:395
11/01/17 21:13:35 avf91rE/0
>>403

私もピアノ曲はそんなに聴く方ではないので・・・。
ちなみに題材曲の所有CDは1971年録音のミケランジェリ盤です。

なおこの話は続編を予定しています。
次は史にまつわる曲です。
週末にアップ出来ればと思っています。


392:403
11/01/17 22:43:47 1d9YCWxX0
>>404
返信ありがとうございます。今度買ってみます。
無理に変なこと聞いてすみませんでした。

続編は楽しみにさせて頂きます。

393:名無しさん@初回限定
11/01/23 17:41:46 DwsJGMmx0
バレンタインデー近づいてきたで!!

394:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:14:15 DyE2q+UM0
>>406
もうそんな時期か…
バレンタインデーに向けて作ってみようかな

395:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:33:39 +1ScufQM0
予告どおりクラシック音楽編の続編をUPしたいと思います。
6レスぐらいを予定しています。

396:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:34:58 +1ScufQM0
数日後の放課後、千早が院内放送でリクエストした「子供の領分」を第二音楽室で
ピアノで演奏することとなった。
最初は薫子と優雨だけに聴かせるつもりだったのだが、いつのまにか寮生全員が
集合して千早の演奏を聴いていた。

「千早ちゃんは料理だけでなく、ピアノも凄くお上手なんですね」
「千早お姉さまは楽才までお待ちとは陽向は感服いたしました」
「ちはや・・・すごくきれいな曲だった」

演奏終了後、皆口々に褒め称える。
千早がそろそろ片づけようと思った矢先に、

「千早お姉さま、折角の機会ですので久々に史の御相手をしていただけないでしょうか」

史はそう云うといつのまにかヴァイオリンを用意していた。


397:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:36:27 +1ScufQM0
千早は史がチューニングをしている間に史がヴァイオリンを習い始めた時のことを
思い出していた。

-史は千早がピアノの稽古を始めてからしばらくして
「ご主人様の稽古の相手を務めるのも侍女の役目」
と云いだし、ヴァイオリンの稽古を始めた。しかし華道や絵画等の習いごとの時には
何も云わなかったのになぜピアノの時だけそんなことを.云いだしたのか当時は
不思議に思ったのものだ。
それにピアノはそれ単体で演奏が成り立つ楽器だ。
しかしヴァイオリンは基本的にはそれ単体で演奏は成り立たず、ピアノ等の
伴奏が必要な楽器だ。
結局は史が千早の相手をしているというよりは逆の状態となっていた-

そんなことを考えていると

「千早お姉さま、準備が終了しました。それではいつものあの曲でお願いいたします」


398:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:37:43 VCEbULlQ0
支援

399:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:42:45 +1ScufQM0
千早と史のデュオが始まった。

-ヴォイオリンがしみじみと呟くように静かに曲が始まる。
それに対してピアノはポツリポツリとまるでヴァイオリンを見守るような感じで
伴奏を入れていく。
徐々に盛り上がっていき、ついにヴァイオリンが本音を語りだしたかのように激情が迸る。
しかしそれも束の間、すぐに静かになり最初の物憂げな旋律が戻ってくる。
再度盛り上がり激情が迸るが、最後は諦めたかのように静かに曲が終わる-

「千早のピアノも凄かったけど、史ちゃんのヴァイオリンも流石だね」
「ところで今のは何ていう曲なのかしら」

初音が質問するので千早が答える。

「ブラームス作曲のヴァイオリンソナタ第3番より第2楽章です」
「へぇーそうなんだ。私はモーツァルトとかショパンならたまに聴くのですが、ブラームス
といえば知っているのはハンガリー舞曲ぐらいでしょうか。でも多少地味な感じでしたが
なかなか綺麗なメロディーで良い曲だと思いますよ」
「そうですね。女性はあまりブラームスなんてあまり好まない方が多いようなのですが、
史はなぜかブラームスが好きで特に今の曲をよくデュオをしていました」


400:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:44:29 VCEbULlQ0
支援

401:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:45:13 +1ScufQM0
「あのー、初音お姉さまの云うとおり良い曲とは思うんですが、何と云うんですかねー
私はあまりクラシックを聴かないのでうまくは云えないのですが、なんかこう・・・うじうじ
しているというか本音をあまり出さないというか、ある種のもどかしさをこの曲からは
感じるのですが」
「陽向ちゃんは小説家志望なだけになかなかに的確なコメントですね。ブラームスは
自分の本音をあまり語りませんし、おまけに頑固で偏屈なお方だったようです。
先ほど女性はブラームスをあまり好まないと云いましたが、そういう性格が曲に出て
しまうからなのでしょうね」
「ところで史ちゃんはなぜブラームスが好きなの・・・」

香織理が質問するので史は少し恥ずかしそうな顔して

「史もよくわからないのですが、ブラームスの曲にはどこか共感を感じるものがあります」
「共感ね・・・。そういえばさっき千早や陽向が本音を出さないと云ったけど私には内に
秘めたものを感じるわね。そう考えると史ちゃんにはさっきのはぴったりな曲ね」


402:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:47:18 +1ScufQM0
そう云うと香織理は最後に呟くように

「でも鈍感なご主人様だから内に秘めたままではだめなのよ」
「香織理お姉さま・・・何か仰いましたか?」
「いや・・・何もないのよ」

史が複雑な表情をするので香織理は話題を変えるために千早に語りかける。

「ところで千早・・・ブラームスといえば何年か前にテレビドラマでやっていた
『の○めカンタービレ』で男性主人公が指揮していた曲の作曲者だったわよね」
「はい、そうですが」
「それで思ったのだけど、あのドラマは完璧人間の男性主人公があほっ娘の女性主人公
に餌付けされていたわよね・・・何だか薫子みたいだわよね」
「ちょ・・・香織理さん、餌付けは否定出来ないけど私はの○めみたいに変態女じゃ
ありませんよ。変態と云うんだったら変な漫画とかをいっぱい持ってる陽向ちゃんの
方でしょう」
「薫子お姉さま・・・なぜそこで私に振るのですか。確かに漫画やライトノベルはいっぱい
持っていますが、薫子お姉さまに時々貸しておりますから同罪みたいなものでしょう」


403:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:50:23 +1ScufQM0
千早はこの話題が自分に飛び火してはたまらないと思い、わざと話題を変えるために
こう云いだした。

「ところでブラームスは曲から受ける印象とは違って稀に見る美青年だったのですよ」

すると薫子は第二音楽室の壁に掛かっている肖像画を指さし

「でもブラームスといったら小太りで頭が禿げかかっていて、髭もじゃのおっさんだよね」
「あれは晩年の肖像画ですから・・・寮に戻りましたら部屋に伝記本が置いてありますから
皆さんにお見せしましょう」

寮に戻り夕食後、千早は伝記本に載っているブラームスの若い頃の写真を皆に見せた。

「千早ちゃんの云う通り、なかなかの美青年ですね」
「これは外国の映画俳優でもここまでのレベルの美青年はそうはいないわよね」

皆がそれぞれに驚嘆の声があげると薫子が

「ところでこの本、貸してもらっていいかな」
「ええ構いませんが」

その夜、薫子は伝記本のブラームスは若い頃と晩年の写真を見比べながら呟いた。

「千早もおっさんになるとブラームスみたいに劣化してしまうだろうか」

そう思うと複雑な気分になる薫子であった。

Fin

404:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:53:30 GFmgbuqK0
シブくなるといえよ!
おつ

405:名無しさん@初回限定
11/01/23 22:57:53 VCEbULlQ0
途中で予想は付いたが…オチに吹いたw


406:名無しさん@初回限定
11/01/23 23:18:31 +1ScufQM0
皆様、ご支援ありがとうございました。
史のテーマがヴァイオリン主体の曲なので思いついたSSです。

ちなみにブラームスは大酒のみで風呂もたまにしか入らない無精者だったので
劣化してしまったと思うので千早はブラームスみたいにはならないと思います。

407:名無しさん@初回限定
11/01/24 02:11:35 dRiNULLS0
>>419
お疲れさまです。
改めて史のテーマを聴いてみると仰る通りですね。

SSはどんな選曲になるかと楽しみにしていましたが、
室内楽曲になると旋律すら浮かんでこない自分の
不勉強さが泣けてきます。
推薦盤があれば教えて頂けると助かります。

408:419
11/01/24 21:37:18 NsLz/wU60
自分も室内楽曲よりもオケ曲の方が詳しいのですが、
おとぼくの雰囲気を考えると室内楽の方が相応しいかなと思い、選曲いたしました。
それに本編の音楽も室内楽風のものが多いですしね。
その中では「キラキラ星花」が好きです。(タイトルのところで流れている音楽です)

ところで推薦盤ですが、家に題材曲のCDが何枚かありますので先ほどまで
もう一度聴き比べてみましたけど自分としては美音でロマンティックに表現
しているデュメイ/ピリス盤がお勧めです。

409:名無しさん@初回限定
11/01/24 23:08:39 6c9YW0vu0
俺は「ひまわり あお空 白いくも」が好きだな(初音のテーマ)
あのぽわぽわした感じが好き
あとは「螺旋宮殿」(ケイリのテーマ)も幻想的な感じがして好き

410:420
11/01/25 01:51:15 NsORXkgM0
>>421
聴き比べまでして頂き、ありがとうございます。
ご推薦のディスクを近く購入してみます。

選曲については雰囲気然り、千早くんもピアノを弾けることですし、
ピアノ曲と室内楽曲で正解だと思います。

本編の曲では「確かな想い」と「くもり硝子」が好きです。
前者は愁いを帯びながらも希望が感じられるところ、後者は木管と
ピアノの奇怪な掛け合いが印象に残ります。

>>422
両方とも耳に残りますよね。自分も良曲に感じます。

411:名無しさん@初回限定
11/01/27 20:51:45 aJ7rFvZH0
降誕祭ネタでも書こうかなと、雰囲気調べにアニメ最終話みなおしたら
ちきしょう、瑞穗ちゃんあいかわらず可愛いじゃないか!

412:名無しさん@初回限定
11/01/28 14:23:21 ClG59tg40
どうやらPSP版でやっと初音と優雨が真ヒロイン昇格!!!!!

413:名無しさん@初回限定
11/01/28 21:02:53 FTdiwv0y0
クラシック編、GJ!です。

自分はクラシックを割と聴く方なので楽しく読ませていただきました。
早速、しばらくぶりにミケランジェリ盤をひっぱり出して聴いています。
透明感と少しだけの冷たさを感じるタッチでドビュッシーには良いですね。

ブラームスのソナタと言うのも渋いです。
自分はムター盤位しか持ってないんですけど。

歌の上手なキャラがいれば千早様の伴奏とかもありそうです。



…自分のSSは一向に進まないですがorz

414:名無しさん@初回限定
11/01/29 05:34:55 rM9Fy5Kk0
バレンタインデーも近いことだしもっときゃぴきゃぴしたのSSが読みたいお…。

415:名無しさん@初回限定
11/02/03 08:24:07 /IjU6eVP0
むしろ、花右京メイド隊チックなものを

416:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/02/03 13:29:45 GlYlSbC30
電波を受信しましたので書かせていただきます。
内容は、PSP版で残念ながらサブキャラに降格となった香織理さんとうたちゃんメインです。
9レス分ありますので、よろしくお願いします。

417:名無しさん@初回限定
11/02/03 13:31:14 x1o85NRy0
うたちゃんさんに期待

418:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/02/03 13:35:21 GlYlSbC30
「………」
「雪ちゃん、何読んでるの?」
 部活帰り、僕が雅楽乃と雪ちゃんと一緒に喫茶店に立ち寄った時のこと。注文が来るまでの間、
雪ちゃんが読んでいた本が気になって聞いてみることにした。
「ああ、これですか? なんか主人公のフリーターがミッション系の女子高にバイトを申し込んだら、
いきなり神父の代理をさせられてしまうことになったって話です。神父に成りすますために
シスターから付け焼き刃で特訓されて……」
「まあ、それはなかなか面白そうなお話ですね」
「あはははは……」
 雅楽乃は興味津々といった顔だけど、僕はさすがに他人事とは思えなくて乾いた笑いしか浮かばないよ。

~金と銀のパンドラボックス~

 それから数日後の放課後、華道部が休みの日、僕は雅楽乃と雪ちゃんと一緒に
食堂でデザートを食べながら雑談をしていた。食堂には、ほとんど人はいない。
「それで雪ちゃん、例の本はどこまで読めたのかしら?」
「えっと……神父さんが生徒会長に無理やり迫られるシーン……ですね」
「無理やり……ですか……」
「ええ。この生徒会長さん、ストレスをそうやって晴らす設定なんです」
 ……まあ政治家とかそういう人間にそういう一面があるって話はよく聞くけど
女性のそういう人が男と関係して晴らすってのは珍しいな。
 そういえば、初音さんからはそういった様子は見られない。きっと根っからの世話好きな人格者なんだろうな。

419:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/02/03 13:41:36 GlYlSbC30
「けど、その後でこの生徒会長、主人公に口外しない様念押しするんですけど、あまり意味ないと思うんですよね」
「雪ちゃんはどうしてそう思うの?」
 どういうことだろう? 意味がない、とだけ言われても、理由が分からないと返しようがない。
その言葉だけでは、どういう意味にも解釈できるし。
「誰も信じないんじゃないか、ってことです」
 ああ、そういうことか。確かにそれはそうだろうな。
「たとえば、ですけど、もし私がうたちゃんが修身室であられもない格好で
1人で自分の身体をまさぐっていたって言ったら、信じる人がいると思いますか?」
 な……!!
 ゆ、雪ちゃん、なんてことを……!!
 そりゃ雪ちゃんはあのことを知らないんだろうけど、そんなことありえないと思い込んでるんだろうけど……。
 僕は雅楽乃の顔をチラッと見る。と、案の定、耳まで真っ赤になっていた。
「あ、あれ? どうしちゃったんですか、2人とも……?」
 少し唖然としてた雪ちゃんだけど、何かに気づいたみたいな表情になる。やばい!!
「ま、まさかうたちゃもがもがもが……」
 僕はとっさに雪ちゃんの口を塞いだ。
(雪ちゃん、この話題についてはこれ以上触れないほうがいいわ)
(そ、そうみたいですね……)
 雪ちゃんが落ち着いたのを確認してからそう耳打ちすると、雪ちゃんも納得してくれたようだ。
よかった。一時はどうなるかと思ったよ……。
「あ、それでねうたちゃん、他の生徒の悩み相談の話なんだけど……」
 雪ちゃんが話題をそらしてくれたことで、雅楽乃も普段の調子を取り戻してくれたみたい。
それからしばらく雪ちゃんの読んでる本の話で盛り上がった。ま、これにて一件落着、かな?
 と、そう思ってたんだけど……。

420:名無しさん@初回限定
11/02/03 13:43:49 207q6Xcq0
支援

421:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/02/03 13:47:37 GlYlSbC30
「みんな、頑張ってるわね」
 翌日の放課後、僕は1人になりたくて屋上に顔を出していた。
「お姉さま」
「あら、雅楽乃? どうしたのかしら」
「いえ、お姉さまのお姿を見かけたので、どちらに行かれるのかと思って……」
「つけてきた……というわけね」
「はい……あの、ご迷惑でした?」
 雅楽乃は少し申し訳なさそうに聞いてくる。相変わらず僕に妄信的みたいだけど、その辺のことを考えられるあたり、
やっぱりすごいと思う。
「そんなことはないわ。単に心を静めるために来ただけですから」
「では私がいらしてもよろしいですか?」
「ええ」
「あら、やっぱりここだったわね」
「香織理さん……」
 なんか今日に限って意外な来客が多いな……。
「それにしても、御前がどうして千早教信者第2号になったのか、わかった気がするわ」
「……人をインチキ宗教の教祖みたいに言わないでください」
 まあ、ある意味あながち間違いではないんだけど、僕だって好きでそんな風になったわけじゃ……
第1号の薫子さんの時に言われたときも思ったけどね。
「まさか千早が、御前が1人でしているところを目撃してたなんてね」
 なっ! ど、どうしてバレたんだ!?
 いや、落ち着け、まだ大丈夫だ。こっちは決定的証拠があるわけじゃない。
「な、何を言ってるんですか、香織理さん、何を根拠に……」
「昨日あなたたちが金髪の娘と食堂で話してたでしょ? それでその娘が御前がしてたって話したら信じるか?
って話題になって……」
 あの時いたのか……それで雅楽乃の顔が真っ赤になったのを見て……。
「か、香織理さん、雅楽乃だってしていなくてもそんな話題を持ち出されたら、普通に赤くもなるでしょう?」

422:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/02/03 13:54:00 GlYlSbC30
「違うわよ。問題なのは御前じゃなくて、千早、あなたの反応よ」
「えっ……?」
 僕が慌てて言いつくろうと、香織理さんはおかしそうに返してくる。
「あの時千早は驚いてるってだけじゃなくて、何かに怯えてすくんでいるような反応でもあったわ。
つまり、それを知っててバレることをじゃないか、ってこと」
 そ、そっちだったのか……。まずいな、もう確信してるみたいだし……。
「か、香織理さん、このことは……」
「言われなくても口外しないわよ。私もそこまで鬼じゃないんだから。まあ、どんな状況だったのか気にはなるけどね」
「わかりました。お話いたします」
「う、雅楽乃……」
 な、何言い出すんだ、いったい。
「大丈夫です。千早お姉さまのお友達ですもの。申し上げて害になるようなことはなさらないでしょう」
 まあ、香織理さんもそんなことはしないだろうけど、あまり話したことのない人に
ペラペラしゃべるような話じゃないでしょう?

423:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/02/03 14:01:03 GlYlSbC30
「……というわけで、お姉さまはやり方を教えてくださっただけでなく、このことは秘密にしてくださると
約束してくださったのです! あれがお姉さまでなかったら、今頃私はどうなっていたか……」
 雅楽乃が話し終えると、香織理さんは顔を引きつらせながら全身を小刻みに震えさせていた。
ああ、あれは間違いなく必死で笑いをこらえている状態だ。
 まあ、僕の正体を知っている香織理さんとしては、女が男にオナニーの仕方の教えを請うなんて
滑稽ではあるんだろうけど……。
「香織理さん、我慢しておいでのようですね。私たちはここでお待ちしてますから、
どうぞお花を摘みに行ってらっしゃいな」
 そう言って香織理さんにウインク。トイレででもこらえている笑いを吐き出して来い、ってこと。
 香織理さんは察してくれたのか、こくんと頷いて立ち去っていった。

 しばらくして戻ってきた香織理さんの顔には、まだ笑い足りないような痕跡が残ってた。
「ごめんね2人とも。気を遣わせちゃって。面白い話だったからついつい忘れちゃって」
「いえ、大丈夫ですよ」
「それでね雅楽乃さん、そういう相談なら、私も相手になってあげるわよ。千早よりはその手の知識は豊富だと思うし」
 香織理さんはできれば名前で呼んでほしいと言う雅楽乃の要望にこたえてそう言う。
それにしても、僕よりは豊富“だと思う”って……男で女性に免疫のほとんどない僕より少なかったら問題だって。
「ありがとうございます。その時はよろしくお願いしますね」
 最後には香織理さんと雅楽乃は和気あいあいと話していた。それはよかったんだけど、何かいやな予感が……。

424:名無しさん@初回限定
11/02/03 14:01:32 207q6Xcq0
支援

425:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/02/03 14:07:38 GlYlSbC30
「ねえ、千早」
「なんですか?」
 その日の放課後、僕はいつものように部屋の模様替えの手伝いを頼まれて香織理さんの部屋に来ていた。
「千早はどうして雅楽乃さんが自慰してる部屋に入っていったの?」
「ぶっ……!」
 か、香織理さん、作業している時にそんなこと聞かないでください!
危うく持ってるものを落としそうになったじゃないですか!
「どう……って」
 そんなもの記憶から完全に抜け落ちてしまってるから、すぐには思い出せないよ。
「確か歩いてたらうめき声みたいな声が聞こえたから、病気の人でもいるのかと思って……」
「なるほど……でももっとつやっぽい声とかは聞こえなかったの?」
「聞こえましたけど、ドアを少し開けたら鍵がかかってなかったから、もし香織理さんが玲香さんと一緒にいた時のように
なってたらかかってるはずだから病気の方に違いないと思って見たら……」
「ハズレだったと……」
「ええ……でもドアを閉めるにしても動揺のあまり音を立ててしまいそうですし、こちらに人が
何人か来そうになっていたので仕方なく……」
 これで合ってるよね、確か……。
「ねえ、千早。何も知らないフリして『誰かいませんか?』ってドアを叩けばよかったんじゃないの?」
「あああああっ……!!」

426:東の扉 ◆FVKSJZ0PUs
11/02/03 14:13:23 GlYlSbC30
 ガーン!!
 な、なんでそんなこと見落としてるんだ……僕は……。
「あ、あのね香織理さん……僕は本当にそれしか考えつかなくて……」
「わかってるわよ。人っていうのは迷ったりパニックになったりすると、時に訳のわからない判断をするものだし、
それをネタに雅楽乃さんに何かしようなんて、そんな度胸千早にあるわけないしね」
 ぐっ……まあ、それはそうかもしれないけど……。
「そう言われると、それはそれで傷つくんですけど……」
「あら、じゃあ女の子に手当り次第に手を出す変態扱いした方がよかったかしら?」
「……全っ力で辞退いたします!」
 終始おかしそうな表情を崩さない香織理さんに、僕からの感情を込めた精一杯の反撃だった。

「それにしても、香織理さんが雅楽乃のしてたことにそんなに興味を示すなんて……」
「あら、意外だった?」
 そういえば、性関連のことで相談に乗るって言ってたな。
「念のために言っときますけど、雅楽乃の相談に乗ると言っても、変なことはしないでくださいよ?」
「変なことってどんなこと?」
「あ、あのね……変なことは変なことですよ!」
「それじゃわからないわよ」
 く……香織理さん、絶対わかって聞いてますね。相変わらず意地が悪い。
「まあ、心配はいらないわよ。もうプレイガールはやめたし、やめてなくても気持ちが私に向いてない人に
手は出さない主義だしね」
 まあ、ある程度遊んだらやめてくれるからどうしよう、とは今さら思わないけど。
「それと、私の興味はむしろ雅楽乃さんにオナニーのやり方教えてって言われた千早の心境の方にあるんだけど」
「………!!」
 そ、それを聞きますか、香織理さん!


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