09/10/23 21:45:45 B2sCQU3T0
「それに、既に張遼を討つべく、徐盛に部隊を率いさせて向かわせているわ。だから安心しな
さい。万事心配いらないわ」
いまの呉軍の司令官は蓮華である。
だが、姉が徐盛を向かわせたことを、勝手と非難することはできない。
それはむしろ、指揮不能となっていた蓮華の代わりを務めていてくれただけなのだから、感
謝こそすれ非難できよう訳がない。
「それに何より、既に四将軍が城を包囲して攻撃を始めているいま、こちらの勝利は時間の問
題。ここで退く道理がないわ」
聞き分けのない子供に諭すよう言われた、穏やかな姉の言葉。
彼女の言い分はまったく正しい。
雪蓮が口にしたことが正論なのは確かだ。だが蓮華の理性ではない部分が、姉の判断は間違
っていると叫んでいた。
惜しむらくは蓮華の中に、そのことをうまく伝えられるだけの言葉がなかったことである。
戦闘中止を訴える司令官、続行を命じる王。
言葉を交える二人の間には、驚くほどの温度差があった。
そしてそれを埋めようとやっきになるほど、齟齬が生じて二人はますますかみ合わなくなっ
ていく。
雪蓮の瞳に迷いはない。彼女はこの戦いの勝利を確信しきっている。
それはそうだろう。いくら強いと言っても所詮は孤人。十万からなる〝群〟である呉軍が負
けるはずがない。そう考えるのが当然だ。
245:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:46:39 O/qpRETn0
支援
246:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(7/21)
09/10/23 21:48:13 B2sCQU3T0
だが、一方で蓮華の考えはそうではない。
あの張遼の強さは理屈じゃない。
なにがあっても、あれは戦うべき相手ではないと感じているのだ。
無論、蓮華の現状把握能力は、歴戦の猛者である姉のそれに遠く及ばない。
けれど蓮華の中のなにかが、あの張遼は危険だとずっと警告しているのだ。
ただの直感、されど直感。
晴天の雷鳴に龍を感じて以来の、胸騒ぎがそこにはあった。
なにか取り取り返しがつかないことが起きてしまうと、そう感じるのだ。
蓮華はそんな心の声に従って、己の直感を信じて、更に辛抱強く説得を続けた。
何より姉なら分かってくれる、そう思っていた。
しかし、それが甘い見通しであったことを蓮華は知ることになる。
◇◇◇
「あの……」
小蓮の言葉に、雪蓮と蓮華は反応しない。
二人が話し始めてから、幾分か時間が経過していた。
議論は平行線を辿り、やがてはその間に不穏な空気が漂い始めている。
そんな兆候を察した小蓮がおずおずと口を開いたが―。
「………」
「………」
二人は黙したままで、末の妹の言葉など一顧だにしない。
247:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:50:06 u9bojy5AO
更に支援
248:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:50:25 bhsCb8Fa0
支援
249:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:50:58 v9Ro/W/+0
しえん
250:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(8/21)
09/10/23 21:51:12 B2sCQU3T0
「張遼を討ち、城を攻略する。ほんの少しの辛抱、そんなに難しいことじゃないわ、私たちに
はそんな子供の使いもできないと言いたいのかしら」
「そうは言っていません。私はいまは一度引くべきだと言っているのです」
「好機を逃せば、次はないかもしれないのよ」
「大業を成すなら、始めこそ慎重になるべきです」
「慎重と臆病は違うわ……そろそろ冗談では済まないわよ」
「これも呉のことを考えてのことです」
当初穏やかだった雪蓮の目が、徐々に本気の色を帯びてきているのが小蓮にもわかった。
雪蓮と蓮華。この普段仲が良い姉妹は、滅多にないことだがこうして一度こじれ始めると、
互いに退けなくなってしまうことがままあった。
こうと決めたら退かない強情な姉に、同じく強情な妹。
あるいはそうした気質は孫家の血筋なのかもしれなかったが、こうして二人が衝突した場合
に仲裁するのは母孫堅であり、宿将黄蓋であり、つきあいの長い周瑜の役目であった。
だが、残念ながらその三人はこの場にいない。
だがいなくとも、誰かがやらねばならぬ。
何よりいまは戦いの最中なのだ。ならば自分がやるしかないではないか。
意を決して、小蓮は口を開いた。
「ま、まあまあ。蓮華姉さまも無事に戻ってこられたんだから、そんなふうにピリピリしなく
たって……」
途端、
『『子供は黙っていなさい!』』
「ぴぃ!?」
二人の口からぴしゃりと雷が落ちた。
そしてそれを契機に、二人の言い合いは更に加速する。
251:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:51:27 OGLqIc1M0
紫苑
252:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:51:51 O/qpRETn0
支援
253:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:53:24 tpxXXWH9P BE:3487342098-2BP(2000)
しえんぬ
254:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:53:33 v9Ro/W/+0
しえn
255:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(9/21)
09/10/23 21:54:16 B2sCQU3T0
「大体! 姉さまは現状に危惧を抱いてらっしゃらないのですか!」
「兵たちの士気は高いわ! 確かに引き締めは必要でしょうけど、そのことで必要以上に慎重
になる必要もないと思っているだけよ!」
「私は必要なだけの慎重さを持つべきだと言っているだけです!」
「……っ! ねぇ蓮華、なぜそんなに焦っているの? まさか単騎相手に怖じ気づいたわけじ
ゃないでしょうね?」
「雪蓮姉さま方こそ、ことを急ぎすぎではないですか? 姉さまの思い描く孫家の天下とは、
いまを逃せば次がないものような脆弱なものなのですか?」
あっという間に二人の緊張感が高まっていく。
このままでは不味い、そんなことを思ったときだった。
この場面に、実に間の悪い人間が一人、姿を見せた。
「こ、これは一体!?」
と、天幕の入り口に立ち尽くして声を上げたのは、蓮華と別れて時間稼ぎの策を各方面に指
示を出して戻ってきた亞莎であった。
状況を把握できないでおろおろとしている亞莎が、小蓮にはこのときばかりは輝いて見えた。
「亞莎! 丁度良いところに!」
「小蓮さま、これは一体どうしたことですか!?」
「何って見ての通りよ! 姉さまたちが大変なの! 早く止めてあげて!」
「え、ええ!? わ、私がですか!?」
来て早々、思いもしなかった難事を託されて、亞莎が狼狽する。
無理、絶対に無理。
そんなことを思いながらも、も責任感の強い亞莎は断ることができず恐る恐るといった様子で
二人の間に割り入った。
256:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:55:48 v9Ro/W/+0
しえん
257:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(10/21)
09/10/23 21:57:17 B2sCQU3T0
「あの、お取り込み中申し訳ございません……呂子明、ただいま戻りました……」
生きた心地がしないとはこのことか。
そんな心境で、顔を服の袖で隠す仕草をする亞莎を見た二人は……
「丁度良いところに来たわね亞莎。あなたからもこの頑固者に言ってあげてちょうだい。いま
退くことがどれだけ愚かかということを」
「丁度良いところに来てくれた亞莎。一緒に姉さまを説得して欲しい!」
蓮華と雪蓮、二人から両肩を掴まれた。
「え、えええ!?」
無論、そんな展開になって、亞莎はますますおろおろとするばかりであった。
一方、周囲にいた人間たちは、そんなやりとりに呆気に取られるばかりで、こっそりと外へ
抜け出す小蓮を見咎める者など居はしなかった。
◇◇◇
「まったく! 姉さまたちったら失礼しちゃうわ!」
のしのしと歩く虎の背に跨った小蓮は、そのスジの人が見れば一発でメロメロになるような
仕草で頬を膨らませていた。
「なんでシャオのときは『うるさい小蓮』で、亞莎のときは『丁度良かった亞莎』なのよ。失
礼しちゃうわ、まったく、まったく、もうっ!」
彼女が可愛らしく怒っているのは、一大決心をして止めに入った結果が、散々であったこと
が原因である。
「そりゃあ、シャオはまだ子供かもしれないけど……。中身は立派な大人なんだから!」
そうやって小蓮がぷりぷりと頬を膨らませている間も周々はのしのしとその歩を進めていく。
「もういいもんっ! 周々!」
その合図で、待ってましたとばかりにだっと虎が駆け出した。
顔に当たる風が気持ち良い。
そうしていると、ささくれだった気持ちが安らぐのを感じた。
258:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:57:37 O/qpRETn0
支援
259:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:59:44 v9Ro/W/+0
しえん
260:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:59:52 tpxXXWH9P BE:726530235-2BP(2000)
支援
261:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(11/21)
09/10/23 22:00:27 B2sCQU3T0
しばらく走って辿り着いたのは、陣中の一角にある小高い丘だった。
丘の上からは、遠く果てまで続くのではないかという呉軍の陣容が目に入った。
そこから見える光景は、改めて圧倒されるほどの迫力があった。
これこそが、呉の力なのだと再確認させられて、見ているだけで沈んだ気持ちが充実するの
を感じた。
だが、そんな光景を眺めていた小蓮は、ふと違和感に気がついた。
普段より孫の字が書かれた旗が多い気がする。
いや、意識して見ると、明らかに多い。本来立てる必要のない場所にまで孫旗が翻っている。
これはどういうことだろうか、そんなことを思って丘からの景色を眺めていた小蓮の耳に、
不意に風に乗って人の声が届いた。
聞こえてきた方へ意識を向けた小蓮は、突然視界の端が、朱に染まったのを目撃した。
目にゴミが入ったのかと思い、手でごそごしと擦り、それからもう一度よく目を凝らしてみ
た。
すると、目の良い小蓮はそこにいるものの正体がわかった。
それは人だ。
下は足元までの長い袴、上は露出の大きな服を着た女だ。それが手にした槍を操って、呉軍
の中で単身暴れ回っていた。
女が進む先に血の花が咲く。女が進んだあとには何も残っていない。
思わず自分の目を疑ってしまう、そのくらい、女は出鱈目に強かった。
小蓮も、思春や祭の強さを間近で見たことがあるが、目にした女の強さは、更にその上をい
っていた。
262:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:03:24 s+kY3wkR0
F-2
263:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(12/21)
09/10/23 22:03:43 B2sCQU3T0
少なくとも、槍の一振りでまとめて敵を数十人なぎ倒すような人間を、小蓮は知らなかった。
と同時に、叫びの意味に思い当たる。
それはつまり、『張遼が来た』ということだ。
ついで、暴れ回る張遼を見ていて、無数に立っている旗の意味にも気がついた。
「なるほど。あれだけ旗が立っていたら、どこに姉さまたちがいるか分からないっていう訳ね」
よく見てみれば、孫旗以外の旗は降ろされているか、控え目に掲げられている。
これならば、旗を目印にして居場所を探すというのは難しいだろう。
「そして、あれが蓮華姉さまが言っていた張遼ってことね」
呟き、改めてまじまじとその姿を注視して、小蓮はぶるりと身震いをした。
返る血も構わず、獣のように突き進むその姿。
確かにこんな壮絶苛烈な戦いぶりを見せられれば、蓮華の言うことにも頷けないでもない。
「でも、だったらっ!」
そう言って彼女は、日頃から使っている戦輪ではない、腰の後ろに穿いていた弓を取り出し
た。
弓腰姫、彼女がそう呼ばれる所以である弓を構え、小蓮は狙いを定めた。
見える範囲に敵は一人しかいない。
標的は視線の先で暴れ回っている、あの猛将だ。
「小蓮がやっつけちゃうんだからっ!」
口だけは勇ましく、指先は楽器を爪弾くように繊細に。
キリキリと、力を込めて弓を限界まで引き絞り、ただひたすら射る的だけに意識を集中させ
る。
264:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:04:13 O/qpRETn0
支援
265:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:05:00 v9Ro/W/+0
まずいな
266:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:06:28 bhsCb8Fa0
支援
267:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(13/21)
09/10/23 22:07:11 B2sCQU3T0
赤い嵐のような猛威と、小蓮との距離が縮まっていく。
(まだ……)
堪える小蓮。
やがて、そうときを置かずに、張遼は小蓮の射程ぎりぎりに到達した。
(……まだよ)
まだ指を離さない。
視界の先で、おぞましくも美しい武の化身が近づいてくるのが見える。
けれどもまだ矢は放たない。
(狙うなら)
更に距離が縮まり、ついに張遼が必中の境を踏み越えた。
その瞬間、
(いまっ!)
彼我の距離が零になったような錯覚を覚え、小蓮はついに矢の束縛を解き放った。
だが、
「っ!?」
細い指が矢の束縛を解くのと同時、それまで余所を見ていた張遼の顔がぐるりと動き、その
視線が小蓮を捉えた。
(まず……っ!)
振動を抑え込み、反射的に矢をつがえて第二射を放つ。
一撃必中、息も尽かせぬ連射。それが的を射貫かんと風を切る。
(よしっ!)
手応えはあった。
間違いなく最高の射だった。
絶対に命中する。
しかしそんな確信は、次に目にした光景で霧散した。
268:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:08:16 tpxXXWH9P BE:1017141473-2BP(2000)
しえn
269:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:08:43 u9bojy5AO
シャオやべえ
支援
270:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(14/21)
09/10/23 22:09:23 B2sCQU3T0
「うそっ!?」
呆気に取られて声を上げる。
小蓮の動体視力すら及ばぬ速さで張遼の左手が掻き消えたかと思うと、次の瞬間その手が前
方でなにかを掴んだのだ。
なにを掴んだのか、それを他でもない小蓮がわからないはずない。
自分が射た矢を、張遼は空中で素手掴みにしたのだ。
常識的に考えて、狙ってできる芸当ではない。
(でもっ!)
と、小蓮は心中で続けた。
飛来する、もう一つの矢。
一の矢を止めた張遼は、続く二の目の矢を同じようにして槍を握った右手で掴み取った。
左右の手が矢を掴んでいる。
それを見た小蓮は、
「最後っ!」
つがえて狙いを定めていた、三本目の矢を放った。
一本目が掴まれた段階で用意していた三本目の矢が風を切って飛翔。
そしてそれは、刹那ののち、ついに張遼の脳天を射貫いた。
命中の拍子に張遼の首が跳ね上がり顔が上を向く。
(やった!?)
小蓮が期待を込めて見つめる中、張遼の四肢がだらんと伸びたような形になった。
この戦場において、決して止まることのなかった体が、ついにその動きが止めたのである。
271:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:10:23 u9bojy5AO
まだまだ支援
272:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:10:39 bhsCb8Fa0
歯、か…?
273:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:10:49 qBMre1oE0
こええええええええええええ
274:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:11:53 v9Ro/W/+0
え
275:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(15/21)
09/10/23 22:12:17 B2sCQU3T0
「やったああ!」
丘の上では、射手が歓声を上げてその場で飛び跳ねていた。
「これがシャオの実力だもん! 思い知ったか!」
いくら化け物じみていても、頭を射貫いて倒れぬはずがない。
張遼を倒した。
蓮華が恐れた敵を、自分が討ち取ったのだという喜びを、小蓮は飛び跳ねて表現する。
「ふーんだ、これで姉さまたちもシャオのことを無視できなくなるんだから!」
そんな風にして、得意げになって笑う。
そう、笑っていると……
不意に、風が、唸った。
「え?」
近くで、『ガオンッ』としか表現できない、耳にしたことのない音がした。
そして遅れて頬に、強い風が吹き付ける。
その次は、「がっ!?」「ぐっ!?」「ぎっ!?」という、悲鳴のような音。
なにが起こったのか。
それを確認するため、小蓮は慌てて声がした背後を振り返った。
すると、少し離れたところに重なり合うようにして倒れている兵士たちがいた。
いや、それは倒れているのではない。誰が見ても一目瞭然に、彼らは全員まとめて事切れて
いた。
そして、それだけの惨状を生み出した兵器とは……。
「どうして、シャオの矢、が?」
それだけ理解した小蓮は、そんな馬鹿なという気持ちを抑えて、恐る恐る向き直った。
そこにあったのは先ほど動きを止めた張遼の体。
だだ、先ほどまでと違う点を一つ挙げるとするならば……
その左手が、前へと突き出されていた。
276:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:15:04 bhsCb8Fa0
し、しえん
277:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:15:49 v9Ro/W/+0
しえn
278:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(16/21)
09/10/23 22:16:26 B2sCQU3T0
「ひっ……!?」
ぞわりとしたものが小蓮の背中を這い上がり、本能が彼女に小さな悲鳴を漏らさせた。
そして小蓮が見ている先で、脳天を打ち抜かれたはずの張遼の首が、ゆっくりと動く。
動いて、空を仰いでいた顔が、元の位置へと戻っていく。
そうして地に対して水平に目線を戻した張遼の歯には、三本目の矢が挟まれていた。
だが、そんなことより小蓮に恐怖を喚起させたのは、己をまっすぐに凝視するその目が、不
気味な金色に輝いていたことだった。
「見つけたァ!」
喜声が上がる。
小蓮の姿を確認した張遼は、音を立てて鏃をかみ砕き、それを口から吐き捨て、地面を蹴り
抉りながら天高く跳躍した。
「今度こそきっちりバラしたる!」
白刃煌めく大槍を手にした張遼が、人間離れしたバネで空を舞う。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
叫び上がる獣の咆吼。
逃げなくてはと思う。
けれども耳にした小蓮の体が、彼女の意思とは裏腹にすくみ上がって硬直してい
た。
〝―逃げられない〟
そう感じた。
けれども、天意はこのとき少女の味方をした。
「総員、てぇっー!」
飛び上がった張遼に対して、待っていたとばかりの号令が響いた。
弓兵隊長の合図の直後、無数の弓なりの音、そして飛来を示す風切りの音がした。
一斉、空中という遮蔽物の一切ない場所に躍り出た獲物に、射かけられる矢の嵐。
279:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:17:39 tpxXXWH9P BE:1307754239-2BP(2000)
霞が…
280:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:17:47 v9Ro/W/+0
支援
281:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(17/21)
09/10/23 22:20:12 B2sCQU3T0
跳躍した張遼を待ち構えていたのは、視界を真っ黒に埋め尽くすほどの飛翔物。
実際に矢が到達するより先に、音でそのことにいち早く気がついた張遼は、小さく舌打ちを
してから、器用に手の中で飛龍偃月刀を風車のように回転させた。
「しゃらくさいわァっ!」
すると張遼の槍の回転が、大車輪と化して矢を阻む盾となる。
のみならず、槍の高速回転が大気を攪拌して気流を生み出し、強烈な竜巻を作って巻き込ん
だ矢の軌道までをも変えてしまう。
標的を射貫くことなく矢が次々落ちていく。あるいは明後日の方向に飛んでいく。
そうやって飛んでくる矢の濁流を防ぐ張遼の並外れた行動に、当の射かけた弓兵たちの方が
動揺を示した。
当然だ。彼らはこんな人間がいるなどとは、露ほども思っていなかったのだ。
「怯むな! どんどん撃て!」
兵たちの中に走った衝撃に気づいた別の弓隊長が叫ぶが、もう遅い。
いまの霞には、矢勢が弱まったその一瞬は、十分すぎる猶予であった。
「ふ―っ」
張遼は息を吸い込んで飛龍偃月刀の回転を止め、それから体を反らし、背負うようにして大
きく振りかぶった。
そしてそれを、体の捻りを加えて、上から下へ、勢いよく地面に向かって振り降ろす。
「せぇえいっ!」
かけ声と共に振り降ろされた得物から、不可視の衝撃が走った。
瞬時に落着。衝撃が周囲の兵士を巻き込みながら、それは轟音と共に大地に大穴を穿つ。
密集地帯に叩き付けられた攻撃は、無数の人間の血を顔料にして、戦場に大輪の花が咲かせ
る。
だが、それで終わりではない。
「るぅらぁああああああああああ!」
張遼は振り降ろした刃を、気合いの一声と共に、そのまま横へ滑らせた。
すると刃の軌跡に合わせて、筆を走らせるようにクレーターから一直線に朱が伸びた。
進む先に血柱が上がっていた。
282:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:21:32 tUx7pClB0
支援
283:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:22:07 v9Ro/W/+0
しえn
284:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:22:29 Z96HxN540
スゲエ・・・、支援
285:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:22:29 qBMre1oE0
支援
286:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:22:50 u9bojy5AO
一騎当"万"だなこの霞…
支援
287:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:24:00 +x6DimwV0
矢の雨さえ無効化するか・・・・・・
無双の武将どころじゃねえ支援
288:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(18/21)
09/10/23 22:24:29 B2sCQU3T0
瞬間遅れて、数え切れない断末魔の叫びが上がる。
大地に残された傷痕、吹き上がった血柱、呆然とした兵たちの頭上に遅れて降り注が
れる鮮やかすぎる赤い雨、そして耳を塞ぎたくなるような悲鳴。
現実感すら喪失しかける、まさに悪夢としか思えない尋常ならざる壮絶な光景。
それは兵たちの心に、かつてないほどの恐怖を呼び起こさせるに十分であった。
「う、うわああああああああああああああああああああああ!!」「逃げろ! 逃げろ逃げろ
逃げろぉ」「鬼だ、鬼が来る!」「張遼は鬼じゃ!」「助けてくれ! なんで俺が!」「嫌だ
ぁ! こんなところで死にたくない!」「遼来! 遼来!」「助けて、誰か助けて!」「俺は、
俺にはまだやりたいことが!」「あああああああああああ!!」「わあああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
一つの叫びが二つの叫びを呼び、二つが四つ、四つが八つ。恐怖は伝染し拡散する。
唐突、残っていた兵たちが、一斉に恐慌状態に陥った。
誰しもが我先にと、前のにいる人間を押しのけてその場から逃げ出そうとする。
統率も、連携もなく、ただ本能をむき出しにして逃げようとする兵たち。
こうなってしまうと、人の群れとは存外脆い。いかな訓練された軍隊であろうとも、一度瓦
解してしまえば、あとに残されるのはただの烏合の衆に過ぎない。
結果としてこのとき、周囲の呉軍は雪崩をうって総崩れとなった。
「ひ、ぃ……や、」
目の前には滅多矢鱈と逃げ惑う大人たち。
半潰走状態に陥った軍勢、その混迷のただ中に、腰を抜かして尻餅をついた小蓮がいた。
「グルルルル……」
唸りを上げる一頭の獣がその前に出る。
彼女に危害を加えようとするものから守護せんと、白虎は牙を剥いて威嚇するが、歩いて近
づいてくる張遼はそれを気にした様子を見せない。
それどころか、
「その背格好、さしずめ孫家の末妹ってとこか……まあええわ、あんたをバラして晒して血祭
りにして、孫策の奴を退くに退けんようにしたる」
そんなことを言いながら、彼女は近づいてくる。
289:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:26:38 O/qpRETn0
支援
290:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(19/21)
09/10/23 22:27:23 B2sCQU3T0
手首のスナップを効かせてビュンビュンと飛龍偃月刀を試し振りして、黄金の目をした張遼
が近づいてくる。
距離が狭まり緊張が高まる中、ガタガタと奮える小蓮の前で、ついに猛虎が吠えて獲物に襲
いかかった。
それを見て小蓮が泣きながら叫ぶ。
「周々駄目ェェっ!!」
けれどもその制止を聞かず、周々備わった鋭い牙と爪で、敵を引き裂かんと飛びかかる。
そうして襲いかかってきた肉食獣を、張遼は、
「うるさい」
轟音を伴った片手の一撃で、なんでもないように打ち払った。
子猫でも振り払うように軽さで動かされた左手の裏拳。それが周々の大きな体を軽々吹き飛
ばしたのだ。
そうしてはね飛ばされた周々が、一度二度と地面をバウンドして転がり停止した。
吹っ飛ばされ、倒れて横たわった純白の毛皮は、土と血で無残に汚れていた。
それでも主人を守ろうと、周々は懸命に体を起こそうとする。
そうしてゆっくり起き上がり、よろよろと動こうとして……再びその体が崩れるようにして
横向きにどっと倒れ込んだ。
「周々、周々ぅ!!」
小蓮の呼びかけにも反応しない。
ただぐったりと倒れ込んだ周々を見て、小蓮はただただ恐怖で打ち震えた。
「さ、これで守ってくれるもんは、もうおらんようになった」
「ひっ……!」
後ずさる小蓮を、追い打つ張遼の氷の言葉。
「いまの虎は手加減しといたから、もしかしたら息はあるかもしれへん。でもあんたの場合は
確実に殺す。絶対に死なす。酷たらしく殺す」
「ひっく、やだ、周々、誰か……」
「ははっ」
笑った言葉とは裏腹に、目を黄金色に染めた張遼の顔は、仮面でも被っているように表情が
ない。
人とは思えぬ暴力的なまでに濃密な存在感。それが死を引き連れて近づいてくる。
291:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:28:44 bhsCb8Fa0
ばけものと化してるな・・・
292:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:29:08 u9bojy5AO
怖ぇ…
支援
293:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(20/20)
09/10/23 22:30:59 B2sCQU3T0
「誰か、助けて……っ!」
目をきつく閉ざし、服の胸元を強く握り、恐怖に震える少女はそう、『誰か』に呼びかけた。
けれども、ここでそれを聞き届ける者はいない。
二人の姉はいない、仲間たちもいない。兵たちは皆、小蓮のことなど気にかけていない。
この場で助けてくれる者など、いようはずもない。
それでも、いまの小蓮にはそんな願いを口にすることしかできなかった。
無為の願い、絶望の祈り。
だが、この物語にはそれを聞き届ける者がたった一人だけいた。
「わかった」
と、そう力強い声が聞こえた。
期待などしていなかった。
されど、返るはずのない声が返ってきた。
小蓮が涙に濡れた顔を上げる。
そこには、見たことのない青年が、こちらに背を向けて両手を広げ立っていた。
「俺が君を、必ず守ってみせる。そして絶対に、彼女に君を殺させたりなんかしない」
そう宣言した男のことをを、小蓮は知らない。
彼こそが天から袁術の下に舞い降りたと噂される男、『天の御遣い』北郷一刀であることを、
彼女はまだ知らない。
けれど、その背中はこれまで見てきたどんな男のものよりも、強く、たくましく、大きかった。
294:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:31:10 v9Ro/W/+0
間に合ってくれ
295:メーテル ◆999HUU8SEE
09/10/23 22:35:05 B2sCQU3T0
わたしの名はメーテル……またまたまたまたうかつな女。
21分割ではなく20分割だったのよ鉄郎……
今回の投下分で半分を経過よ。
一刀登場というところで、続きは明日の午後9時30分からよ、鉄郎……
296:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:35:17 u9bojy5AO
一刀キタ━(゚∀゚)━!!
20/20って事は今回はここまでかな?
続きが楽しみすぎる
投下乙でした!
297:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:35:40 qBMre1oE0
乙です
一刀さんおいしいなぁ
298:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:37:08 tpxXXWH9P BE:1549929784-2BP(2000)
メーテルおつつ
一刀間に合ったよかったああああ
299:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:38:14 bhsCb8Fa0
アレの前に立てるとは・・・
さすがちんこだ!俺(ry
300:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:40:03 o04nZtgr0
>>295
いいところで、お預けとはあああ
301:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:40:17 ntAJvKdcO
乙ですよ~
今回の霞こえー!
というか霞が一刀に怪我させちゃわないとしても、こんな化物状態を見られたらそれだけで女の子としてかなり致命的なショックを受ける事確定
302:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:43:01 O/qpRETn0
メーテル氏乙です
恐るべしシチュエーションブースト効果
さて、こっからが一刀の見せ場だな
どうやって霞を止めてここから離脱するのか…
303:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:46:17 MqRPNgeN0
どうしよう。男前過ぎるちんこさんの登場にときめいた。
おのれメーテル、どう乙してくれよう。
304:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:51:31 JYMCH8Z+0
メーテルおつかれー。
もう人外と化しているな。
ところで、>>233 (1/21)
>蓮華と亞莎。張遼の追撃を振り切った二人が到着したのは、後方に据えられた『もう一つの
>本陣』であっ。
たぬきになってる。
305:名無しさん@初回限定
09/10/23 23:14:48 gTkPJWd90
むかしPS2で戦神というソフトがあってだな
霞の戦い見てるとそんな感じがする…
亞莎の策が足止めにもなってないしorz
肉の壁と偽の旗で時間稼ぎしてるだけじゃないか…
シャオは無謀だったかも知れないが呉の姫としては正しかったと思う
もし矢を放たなければ霞は眼下の兵を一兵残らず殺していたはずだしね
306:名無しさん@初回限定
09/10/23 23:43:31 UvMuGGpa0
更新お疲れ様です。万夫不当とはこの事か・・・。
307:名無しさん@初回限定
09/10/23 23:45:17 WnJk+t4V0
>>262
おぬし、F-2支援戦闘機のことを言っておったな?
メーテルさん乙
張遼本人もここまで誇大に強さを評価されるとは思ってなかったろうなぁ
いくら特別な力が働こうとも
308:名無しさん@初回限定
09/10/23 23:47:11 JYMCH8Z+0
演義で史実より過小な描写しかしてもらえなかったことの反動だよw
309:名無しさん@初回限定
09/10/24 00:06:40 dwX4DEmQ0
メーテルさん乙
ところで、黒捷と張遼騎馬隊はどうなったんだろうか?
霞だけ残して、他は全滅しちゃったのか?
310:名無しさん@初回限定
09/10/24 00:51:44 l4gQ18460
乙でございます
多分、置いて行かれて付いてこれてないんじゃなかろうか……
311:名無しさん@初回限定
09/10/24 05:09:52 2Mz1T9vcO
シャオが殺される寸前とか、いくら何でもタイミング良すぎる
一刀がタイミング図ってたとしか思えない
それと先行した明命が到着してないって意味はまさか‥‥
312:名無しさん@初回限定
09/10/24 07:21:56 KvXRRDVl0
ご都合主義という言葉をしらんのかw
それにチョウセンがいるんだから細かいことはどうにでもなるさ
313:名無しさん@初回限定
09/10/24 15:43:28 K0x4e4aj0
また鬼引きかいっ
314:名無しさん@初回限定
09/10/24 16:03:42 UdW3+KB70
まだ半分って、一体何日連続でやる気なんだ……長ぇ
315:名無しさん@初回限定
09/10/24 16:27:18 Kexva4/y0
もういっそ北郷帝みたいにまとめてロダに上げた方が良いような気がする。
それぐらい長いよね。
それに何かぶつ切りでお預け食らってる感じだ。
これなら遅くなっても良いから、書き上げ一度に全部投下して欲しいよ。
きっと皆、我侭言うなとか嫌なら見るなとか言うんだろうなw
316:名無しさん@初回限定
09/10/24 16:44:38 pG1NzQw50
>>315
安心しろ。少なくとも俺は同意だ。
二日連続はまだしも何日も連続だと他の作品の投下がどうなるか心配なんだ。
結構みんな夜投下のほうが多い気がするし……。
317:名無しさん@初回限定
09/10/24 17:17:15 X2kGLSBSO
最盛期と違って被る心配する程投下ないし、問題ないと思うけどね。
被ったらどっちかが後にずらせばいいし、それで今まで問題起きなかったんだから大丈夫だ。
318:名無しさん@初回限定
09/10/24 17:34:31 4rNWfSy8O
今日初めてTINAMIの話を見てみたんだけど
あっちの一刀さんは最強無敵なのが多いん?
319:名無しさん@初回限定
09/10/24 17:42:09 pG1NzQw50
>>317
まぁ、ここでSS書いてる人はいい人多いから問題は起こらないだろうとは思う。
だけど、やっぱり多くの人がスレを覗く時間帯を独占はさすがに……って思うんだよね。
しかも、一つ一つが長文だから投下終了まで割と時間掛かるわけだし、それに次の人が投下するまで
空けなきゃならない間隔を足すとそれなりの時間をとっちゃう。
だからその長時間のスレ使用に関しては二日くらいはいいけど、それを何日も続けるのはさすがにやりすぎかなって思ったんだわ。
とはいえ求める人がいるんだからそれも致し方ないんだろうとも思うんだけどね。
320:名無しさん@初回限定
09/10/24 17:49:58 QtY7hviH0
独占は前日以前に予告しておけば無問題
過去スレですでに話し合い済みだし、ちゃんとテンプレ化してるでしょ
321:名無しさん@初回限定
09/10/24 18:38:01 qh8trHQ0O
今回ほどの規模のはなかった気はするけどな
322:名無しさん@初回限定
09/10/24 19:08:17 +O3wFRQmO
一月とか独占しなきゃ問題無いんじゃない?
時間帯だって人が少ない時でも最終的にここの素晴らしいまとめサイトの神様がまとめてくれるから後からでも余裕で見れる。
さて、明日は休みだ、張来来をリアルタイムで見れるぞー!(;_;)
323:名無しさん@初回限定
09/10/24 19:45:11 WGOFpYuW0
ここに来て日の浅い連中は文句ばっかだな
もしかして生まれてからも日が浅いのか?
324:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:05:27 +O3wFRQmO
>323
これ最低6570日は生きないと出来ないはずだが(笑)
325:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:10:03 bHeXtRP80
長すぎて支援砲撃でスレが埋まったこともあったよな。
326:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:10:44 WGOFpYuW0
“奴ら”は騒ぎ出すと手がつけられんから、多少ぼかして言ってる
例.生まれて日が浅い(なんだ赤ちゃんか) 最近の世代(小学生くらい?)
“奴ら”は××だからこうすれば気づかない
327:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:13:23 bHeXtRP80
分りやすく言ってやれよ。
半年ROMれと。
328:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:26:15 71Sn5aHk0
みんな優しいな。
おれだったらこう言うわ。
「永遠ROMってろ」と。
329:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:31:38 WGOFpYuW0
では分かりやすく
君達は我々と違って気が異なるから、しばらくは板の様子を見たり規約や過去ログを見たりしてきちんとルールを理解しよう
330:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:32:02 8+W1mxbMO
>>319
ルールがちゃんとに決まってるからんだからもういいじゃん。
メーテル氏到着まで今まで通り待とうよ
331:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:40:42 +6vtZ8MD0
まずは>>12のメーテルの告知を見なおして、期間くらいは把握しておくと幸せになれるかと。
332:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:43:50 8+W1mxbMO
ごめん、思いっきり文章噛んでた
凪に蹴られてくるわ
333:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:46:30 GAN4tvreO
≫馬鹿野郎!閏年分が足りないぞwww
334:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:48:50 GAN4tvreO
ぐあ!ミスった。すまぬ
≫333は≫324宛だ
335:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:07:28 +O3wFRQmO
>333
≫馬鹿野郎!閏年分が足りないぞwww
そんなの面倒だから省いたんだよ。
めんどくさい、息をするものめんどくさい。
336:メーテル ◆999HUU8SEE
09/10/24 21:23:04 joG4JVAA0
わたしの名はメーテル……投下する女。
なにやら物議を醸してしまったようね、お詫びするわ。
思うところがあってアップローダーを使うのは意図的に避けているのよ。
かといって100レス以上を一度に投下もどうかと思って、こういう形になったのよ。
今日の分は午後9時30分からよ、鉄郎……
>>304の鉄郎
たぬきね……しっかり「た」が抜けているわね……
まとめさん、>>233の3行目
「 本陣』であっ。」
の部分を
「 本陣』であった。」
に修正してくださると嬉しいわ……
337:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:27:35 bWbORHF+0
お待ちしております
338:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(1/21)
09/10/24 21:31:15 joG4JVAA0
「―かず、と?」
立ちはだかった者の姿を認めた霞の瞳、その片方から黄金の輝きが失せる。
それを見た一刀は、まだ手遅れになっていないことを確信した。
ならばとるべき行動は一つ。
「霞! 話を――!」
今すぐ彼女を止めなくてはならない。
だがその言葉の途中で、霞の視線が引き寄せられるように、一刀の頭の少し上へ向けられた。
そしてまた、両の眼が金色に燃え上がる。
一刀がなぜと凍り付いた直後、その答えは舞い降りた。
頭上をよぎった黒い影。そしてギィン、という耳をつんざく金属同士がぶつかり合った音。
振り降ろされた剣を受け止めた飛龍偃月刀から、派手に火花が舞って散る。
「小蓮さまには指一本触れさせん!」
何者かが一刀と小蓮、二人の頭上を飛び越えて躍りかかり、張遼に打ち下ろしの一撃を叩き
付けたのである。
金属をぶつけ合った音に続いて、今度はドンッという音が響く。
以前にも猪々子と関羽との戦いで聞いたことのある音である。激突に伴う強烈な衝撃波が、
周囲をなぎ倒す波紋と化して広がろうとしているのだ。
「危ないっ!」
一刀は咄嗟に振り返り、小蓮の華奢な体が吹き飛ばされないように、彼女をしっかりと抱き
しめた。
だがそうされる直前、小蓮は現れた者の名を叫んだ。
「思春!」
339:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:31:46 ENyldGqS0
支援
340:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(2/21)
09/10/24 21:33:48 joG4JVAA0
そう、張遼と干戈を交えて、火花を散らしているのは他でもない、勇猛でならす呉の将甘興
覇であった。
「はっ、たああああっ! てぇいっ! せやあああ!」
「ちぃっ! こいつ、一々鋭いっ!」
思春と霞、二人は互いに電光石火の剣速で、容易に相手を絶命させうる一撃をぶつけ合う。
斬撃の速さ、重さ、技巧の深み、これらすべてにおいて張遼が勝っている。だというのに、
後先を考えていない思春の激しい攻勢によって、二人の戦いは一時的な膠着状態に陥っていた。
「せやけど……っ!」
そんな猛攻は長く続けられない。
消耗によって少しでも斬撃の手を緩めれば、流れは即座に張遼のものとなるのは明らかだっ
た。
だからこそ、この膠着も時間限定のものに過ぎない。
「そらそらそらそら! 息が上がってきたで!」
「く、そっ……!」
二人ともそのことはわかっている。
そして、あと少しで流れが一方的なものになる、そんなときにこの膠着を崩す新たな声が割
り込んだ。
「はああああああ!」
人海を切り裂いて風が吹く。
いや、それは風ではなく、駆ける人だ。
その風体は一見して理知的な服装や片眼鏡といった文官の装い。
普段着ている長袖の上着はいまは無い、纏っているのは露出の多いインナーだけである。
そして、いまその手を長袖の代わりに覆っているのは、無骨すぎる鉄甲『人解』。
呉軍軍師、呂子明。彼女は知謀の士にあるまじき猪突猛進を発揮して、張遼に単独突貫を敢
行する。
341:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:33:51 ivTeMPAv0
これより待機を終了し、支援を開始する。
342:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(3/21)
09/10/24 21:36:27 joG4JVAA0
「これ以上―っ!」
亞莎は〝気〟を足裏で収束・爆発させて即席のブースターにし、横合いから流星の速さで、
切り結ぶ二人の暴風圏深くに飛び込んだ。
そしてすくい上げる豪烈な一撃を繰り出しながら叫ぶ。
「好きには―っ!」
それに合わせて思春も叫ぶ。
目立ちすぎる亞莎の突撃に、嫌が応にも張遼の意識が裂かれたその隙を逃さず、逆に『鈴音
』の剣速を上げて斬りかかる。
「ちぃっ」
けれども、いまの霞ならこの程度の同時攻撃、捌けぬ程でもない。
足を動かし半身をずらし、左手を飛龍偃月刀から離して握り固める。
拳による迎撃を試みようというのだ。
が、そうやって張遼が二人同時に対応しようとしたところで、更にまた影。
「させませんっ!」
最後の人影は、突如として張遼の背後から音もなく現れた。
長すぎる抜き身の長尺刀を手に、背後から鋭く袈裟に斬りかかったのは周幼平。
手にしているのは魂すらも切り裂くといわれる名刀『魂切』。
「「「はああああああああーっ!!!」」」
343:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:39:12 ENyldGqS0
支援
344:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(4/21)
09/10/24 21:39:22 joG4JVAA0
全身全霊、それぞれ渾身の力を込めた徒手、曲刀、長尺刀が走る、奔る、趨る。
事前に打ち合わせたわけでもないだろうに、それでも三人の攻撃は、完璧にタイミングを合
わせた三種三様三方の連係攻撃となった。
並の将なら、そもそも同時に走る剣筋を知覚できない。
一騎当千の将であっても、まずもってすべては避けられない。
しかし、
「くっ……」
張遼は、それらの攻撃のことごとくを、歯を食いしばるだけで凌いでみせた。
逆に、攻撃を仕掛けた呉将三者が、
「あぐっ」
「きゃっ」
「ぐうっ」
短な苦悶をそれぞれ漏らした。
背後から襲いかかった明命は、勢いよく引かれ突き出された石突きで鳩尾を突かれて撃墜さ
れた。
右方からアッパーカットを見舞おうと踏み込んだ亞莎は、タイミングを見計らった張遼の左
拳によるカウンターをまともに食らって派手に吹っ飛んだ。
左方から斬りかかった思春は、斬撃の隙間を縫って放たれた神速ので突きを受け流すので精
一杯だった。
そうして三人それぞれ、強制的に距離を離される。
結果として、彼女たちの攻撃は失敗した。
のみならず、ダメージを受けた亞莎と明命に至っては、攻撃を受けた場所を押さえて呻いて
いる。
345:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:40:10 ENyldGqS0
支援
346:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:40:48 Y2hC8pPi0
支援
347:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(5/21)
09/10/24 21:42:15 joG4JVAA0
だが、負けてはいない。
彼女たちはこの難敵を前に、誰一人欠けることなく最初の衝突を生き残った。
ここまでの道、立ちはだかるものすべてをなぎ倒して殺戮で切り開いてきた張遼を相手に、
後退するだけで済ませたのである。
それは思春たちからすれば、馬鹿げた強さである張遼の『底』を見たと言うことだった。
「確かに聞いたとおり尋常ならざる強さだ……。だが、足止めに専念すれば止められぬほどで
はない!」
思春が再びその目に闘志を燃やし、敵に向かって走った。
彼女だけではない、あとの二人もそれに続く。
「霞!」
嵐の勢いで猛然と戦い始めた霞と呉の三人。
まばたきの間に、彼女たちの戦いは一刀の知覚できない領域に突入してしまう。
もう一刀の目では、どんな戦いをしているのかさえわからなかった。
歯痒い。
自分の無力さを痛感する。
戦場で何もできないことが、これほどまでに恨めしく思えたことはこれまでなかったかもし
れない。
一方で思いのままに今すぐ彼女たちの間に飛び込んで、止めろと叫びたい衝動に駆られる。
だが、そんな一刀を思い止まらせたのは、小賢しい理性と、一刀の制服を強く掴んで離さな
い少女の存在であった。
348:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(6/21)
09/10/24 21:45:27 joG4JVAA0
彼女もまた、一刀の腕の中、泣きそうな顔をしながら戦いを見つめていた。
北郷一刀という人間の中には、そんな少女を見捨てる選択肢はない。
それでもしばし逡巡して、
「……くそっ、まずはここから離れないと」
そう口にした。
四人が戦っている場所から、一刀たちがいる場所までの距離は、目算で二十メートル程度。
こんな距離、英傑たちの戦いを考えれば決して安全とは言い難い。
一刀はとりあえず、少女の手を引いて、安全な場所へ移動することにした。
『助ける』と言ったこの少女を守るためにも、ひとまず安全場所に連れて行くのが最善と思
われたのだ。
何より霞にこの少女を殺させてはならない、そう思ったのだ。
そうして今後の方針を決めて、一刀の行動を起こそうとしたときだった。
彼は首筋に突然、ひやりとした金属の冷たさを感じた。
「小蓮から離れろ……」
そこでようやく、一刀は自分の首に鈍く光る剣が押し当てられていることに気がついた。
そして、その怒気を孕んだ声に小蓮が反応した。
「蓮華姉さま!」
声をした方をゆっくりと振り返ると、そこには剣を手にした赤髪の少女が立っていた。
鋭い目つきに、厳しい口調。
決して友好的な雰囲気ではない。
しかし一刀には、目の前の娘に、腕に抱えた少女や、以前出会った孫策に共通する雰囲気を
感じ取ったことの方が重要だった。
「まさか、君……」
349:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:46:26 WGOFpYuW0
支援砲撃、弾着、今!
350:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:46:33 skZ7j9oa0
紫煙
351:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(7/21)
09/10/24 21:48:19 joG4JVAA0
口を開こうとした一刀だったが、蓮華はそれを途中で遮った。
「貴様、その妖しい出で立ち……一体何者だ。小蓮になにをするつもりだった!?」
放たれた激しい言葉に、一刀は自分の腕の中にいる小蓮を見る。
小さな彼女は自分の腕の中にすっぽりと収まっている。
なるほど、これは確かに―
「ち、違うの姉さま!」
と、蓮華に慌てて抗弁しようとした小蓮の言葉。その末尾を一刀は聞きとがめた。
「姉さま? っていうことはやっぱり……」
「姉さま聞いて、この人はシャオを救ってくれたの!」
「君は、君はもしかして孫権? 孫権仲謀?」
「シャオのことを助けてくれた命の恩人なの!」
「だったら孫権さん! お願いだから話を聞いてくれ。俺は『天の御使い』北郷一刀。なんだ
ったら孫策さんには会ったことがあるから、あとで確認したって良い!」
「かずと……一刀って名前なのねっ! じゃあじゃあ、これからは一刀って呼ぶから、シャオ
のことはシャオって呼んで!」
「このままじゃ取り返しのつかない、大変なことが起こるかもしれない! だから俺の言うこ
とに従って欲しいんだ!」
「姉さまお願い! 一刀は何も悪くないの! 一刀はシャオを一生守ってくれるって言ってく
れたのっ!」
「一刻も早くこの戦場から兵を引きあげて欲しい!」
「運命の人なのっ!」
352:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:49:07 ENyldGqS0
支援
353:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:50:17 WGOFpYuW0
なんというカオスww
354:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:50:40 ENyldGqS0
妙な誤解が発生しているw
355:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:50:47 +O3wFRQmO
追いついた!支援砲撃開始!
356:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(8/21)
09/10/24 21:51:50 joG4JVAA0
途切れることなく矢継ぎ早に言葉をたたみ掛ける二人。蓮華は逆に両者に詰め寄られる形と
なって後ずさった。
しかし、すぐなぜ自分が押されているのだと思い至り、顔を真っ赤にして怒鳴り返した。
「ええいっ! 二人とも、黙りなさい!」
その思わぬ大声に思わず二人は、
『は、はい』
声を揃えて頷くことしかできなかった。
「そう……なるほど。ではあなたには礼を言わないといけなかったようね」
「いや、別にお礼なんて……」
小蓮と蓮華は、お互い簡潔に状況を説明し合い、その結果として蓮華は剣を引いてくれた。
それを見て、一刀は心底ほっとする。
何度経験しても、真剣を向けられるというのに慣れない一刀である。
「小蓮がいないことに亞莎が気づいて、それで胸騒ぎがして戻ってきた明命たちにも手伝って
もらったんだけど……間に合って良かったわ」
「……ごめんなさい」
「で、あなたがあの噂の、管輅の占いに出てきた、『天の御遣い』というのは?」
「え? あ、ああ。どんな噂だか知らないけど、多分俺がその『天の御遣い』だよ」
蓮華はそれを聞いて一度目を閉じた。
「……だったら、最初に剣を突きつけたのは正解だったようね」
そして彼女は、再度その剣を、一刀の首に突きつけたのである。
「な、なんで!?」
一刀が驚きの声を上げる。
357:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:52:43 rE7DBafa0
私怨開始
358:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:53:37 8+W1mxbMO
支援
359:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(9/21)
09/10/24 21:54:59 joG4JVAA0
「袁術に拾われ、そして袁家の血族に迎えられたという『天の御使い』。姉からは、あなたこ
そが最も危険な男だと聞かされている。だから、妹を助けてもらったことは感謝しているが、
その上で……おまえを拘束させてもらう」
「そ、そんな! 俺は霞を、張遼を止めなくちゃいけないんだ!」
「……わかって欲しいなんて言わない。でも、こちらもなりふり構っていられないのだ。おま
えを……盾にさせてもらう」
勝手な言い分に、一刀は言い返そうとした。
だが、蓮華の綺麗な目に苦悩が滲んでいるのを見て、思わずそれを呑み込んだ。
それほどまでに、彼女は思いつめた目をしていたのだ。
そんな風に押し黙った一刀を見て、蓮華は一瞬だけすまなそうな表情を浮かべて言った。
「こんなことを話す必要はないけれど、煩わしさにかまける一時が惜しいから教えてあげるわ
」
「え?」
「我が軍は既に撤退することを決定している。あとはこの場から素早く退くだけだ」
「て、え、えぇ!? あの雪蓮姉さまを説得できたの!?」
「説得したんじゃないわ。形の上だけで納得してもらったのよ」
「でもそれなら、別に俺を拘束する必要なんて……」
「その撤退を、あの張遼が大人しく見ていてくれると思う?」
「う……」
『思う』とは言い切れなかった。
360:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:56:21 +O3wFRQmO
リアルタイム支援は久しぶりだな~
361:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:56:53 yPcROIUg0
とはいえ目の前で一刀引っ張っていこうとした時点で撤退とか無理になる気もするがなw 支援
362:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(10/21)
09/10/24 21:57:28 joG4JVAA0
一刀はいまも戦っている霞たちの方へと目を向けた。
侵攻してきた呉軍を撤退させることができれば、一刀たち本来の目的は達せられる。
だがいまの霞を見る限り、彼女が逃げる呉軍を追いかけて孫策たちの命を狙わないとは断言
できなかった。
「私だって本当はこんな真似は本意ではない……だが、軍が撤退を完了するまで、おまえを人
質にさせてもらう。幸い、おまえと張遼は知らぬ仲でもないようだしな」
「なんでそのことを……って、そっか真名か。でも霞が、俺の安全よりも、使命の方を優先す
る可能性は?」
「それはそれで仕方がない。おまえはただの保険だ」
「……それは、参ったなぁ」
そう言って、一刀は両手を頭の上に上げて恭順を示した。
霞を救わねばならない、そのためにはこの戦いを終わらせなくてはならない。
だが、目の前の蓮華は本気だ。
一刀は自分の腕前では、到底目の前の孫権に敵わないであろうことを承知していた。
それに、彼女もまた仲間を救うために最善を尽くそうとしているのだとわかってしまう一刀
には、これ以上どうすることもできなかった。
「君たちの目的は、あくまで無事に退くことであって、張遼を討ち取ることじゃない。これは
間違ってない?」
「ええそうよ。いまの張遼を討ち取ることで出る被害は見過ごせない」
「それを聞いて安心したよ……。わかった、君の言うとおりにするよ」
あるいはその言葉には、自分が人質に取られたことで、あわよくば霞が戦いをやめるかもし
れないという、期待が含まれていたのかもしれない。
けれど、あとで思い返せば、一刀はこのとき何が何でも逃げ出せば良かったと思うのだ。
363:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:57:36 ENyldGqS0
支援
364:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:58:12 skZ7j9oa0
紫煙を燻らせながらの支援、とくらぁッ!
365:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:58:54 ENyldGqS0
まあ火に油注ぐようなもんだよなあw
366:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:59:02 gqC1fWqb0
逆に追っかける名分ができてしまうでござる
367:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:00:23 t8xhMNu+0
支援砲撃だ!耕してしまえ!
368:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(11/21)
09/10/24 22:00:44 joG4JVAA0
張遼の動きが、突如として鈍った。
その目が驚愕に大きく見開かれている。
それがこちらの隙を誘い込もうとする罠であることも考え、思春は張遼から目を離さなかっ
た。
しかし、動きが鈍り、剣筋に迷いが生じたのも確か。
巻き返すには、これ以上ない絶好の機会であった。
「亞莎! 明命! 少しの間相手を頼む! 死ぬなよ!」
合図となる思春の声に、二人は黙して応えない。
ただ、手数を増やすという行動でのみ意思を示すだけだ。
それを見て思春は二人の理解に感謝し、大きく後ろに跳躍した。
思春が降り立ったのは、混乱する兵たちが固まる一角であった。
「聞けぇ! そして見よ! 孫呉の兵たちよ!」
そして思春は高らかにそう宣言しながら、その身を翻す。
同時、手にした刃が、水平に流れる。
合わせて、鮮やかな赤が飛び散った。
喉を切り裂かれて仰け反ったのは、逃げ出そうとしていた兵士の一人であった。
「甘寧将軍!?」
血迷ったかのような彼女の行動に、周囲の兵たちから困惑の声が上げる。
だが思春は、それをかき消す大声で叫んだ。
「貴様らそれでも栄えある孫呉の兵か! 恥を知れ! 怯える兵は孫呉の兵に非ず! 敵に背
を向けた臆病者は即刻、この私が冥土に送ってやろう!」
リィンと鈴の音が響く。その鈴の音と怒号に、誰もが息を飲んだ。
するとそれでそれまでの騒ぎが嘘のように、潮が退くようにして周囲が静まりかえる。
そしてそのことを確認して、この機を逃さず思春は言葉を続ける。
369:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(12/21)
09/10/24 22:03:35 joG4JVAA0
「なにをやってる楽隊! さっさと楽をならせ!」
従わなければ斬り捨てる。そう言外に言ってのける甘寧に、近くに控えていた楽隊が震え上
がった。
がなり立てるように奏でられ始める勇ましい楽の調べ。それに乗せて思春は更に叫ぶ。
「隊列を整えろ! 武器を構えろ! 訓練を思い出せ! 奮い立て孫呉の勇士たちよ!」
恐怖を制するには恐怖。
思春の行動によって、崩壊状態だった兵士たちの動きに歯止めがかかった。
本来のまとまりからすると目も当てられない惨状だが、いまはそれでいい。
戦いは流れだ、その流れを引き戻す一助になれば……最悪でも、蓮華たちが逃げのびる邪魔
にならなければ、それでいいのだ。
強引に統率を回復させた思春が再び張遼との死闘の場に戻ると、丁度三者が睨み合う形で動
きを止めているところであった。
亞莎と明命は二人とも肩で息をして、小さな手傷が増えているいるものの、きちんと健在で
ある。
「大丈夫か二人ともっ!」
その声に、
「私はまだやれます!」
「問題ありません!」
亞莎と明命は即座に応えて、戦闘継続の意志を構えで示した。
三人とも、既に数え切れないほどの刃を交えて、いやと言うほどにわかっている。
この敵は、これまで相手にしてきたどんな敵よりも強い。
その強さはどんな尺度で測っても桁外れだ。犠牲抜きに倒すことはまず不可能だろう。
370:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:05:38 +O3wFRQmO
支援砲撃!山の形を変えてやれ!
371:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:06:16 ENyldGqS0
支援
372:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(13/21)
09/10/24 22:06:33 joG4JVAA0
だが、
「ならばよしっ! 蓮華さまは小蓮さまと合流なされた、あとは我々が時間を稼ぐだけだ!
覚悟を決めろ! 例えここで命果てようとも、絶対に蓮華さまたちをお守りするぞ!」
『はいっ!』
三者とも、難敵を前にかつてないほど気力が漲っていた。
自分たちが最後の守りだという事実が、実力以上の力を引き出しているのだ。
負けられない、譲れない。
守りたい人がいる。
そんな想いや願いが彼女たちの原動力になっていた。
だがしかし、
想いの強さが力になるというのなら、
「邪魔や……」
願う心が力になるというなら、
「邪魔や邪魔や邪魔やああああああああああああああああああああああああああああ!!」
いまこの戦場で、彼女に勝るものなど誰一人としていなかった。
視界の先で喉元に刃を突きつけられ、連れ去られようとしている愛しい人を、守りたいと思
う気持ちは誰よりも強かった。
373:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:07:05 ENyldGqS0
ですよね~支援
374:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:07:31 skZ7j9oa0
生唾を呑みながら支援
375:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:07:52 t8xhMNu+0
あっちゃー、こりゃ火に油注いだな
まぁいい、支援砲撃は続行だ!
376:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:08:06 uOtNCXIh0
支援させて頂きます。
377:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:09:04 yPcROIUg0
だよなあ…… 支援
378:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(14/21)
09/10/24 22:09:20 joG4JVAA0
絶叫と同時、電光が走った。
叫びに呼応するようにして、空から稲妻が彼女の体に吸い込まれるように流れ落ちたのであ
る。
閃光、そして轟音。
たがうことなく霞の体に落撃する、晴天の雷。
だが、異常はそれだけで留まらない。
「なんだと!?」
驚く思春の声をかき消して、更に雷鳴。強烈な音と衝撃が、なおも周囲を襲った。
先ほどの雷と同じものが。立て続けて五つ六つと連続して落ちる。
しかもそれらすべてが、仁王立ちする張遼を直撃する。
幾度もまばたく電光の、あまりの強烈すぎる輝き。
瞼を閉じていてなお、網膜に像が焼き付けられるほどの光。
それはまさに、天が地に降り人の身に宿った瞬間であった。
しばらく続いた光と音の狂騒が静まり、視力が回復した人々が目にしたのは、一つの怪異で
あった。
体に稲妻を纏い、ほどけた髪を生き物のようにくねらせて、全身から黄金の光を放つ張遼。
あれだけの落雷を身に受けたというのに、当然とばかりにその身には火傷の跡一つない。
もうそれはいっそ、神と呼んで差し支えない、人間本来の枠組みを超えた存在であった。
379:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:10:31 +O3wFRQmO
火に油?
重油に爆弾でわ?
380:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:11:04 yPcROIUg0
孫呉オワタ 支援
381:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:11:20 t8xhMNu+0
あ、これ三国無双MULTI RAIDだわ
382:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(15/21)
09/10/24 22:12:53 joG4JVAA0
『………』
呆然とする思春たちを前、張遼は足を広げ、だらりと下げいた飛龍偃月刀を、掲げるように
頭上に構えた。
すると飛龍偃月刀がバチバチという音を立てて、一層強烈な光を放った。
異変はそれだけではない、周囲の空気が恐ろしい勢いで張遼の持つ槍へと引き込まれていく。
それはまるで、巨大な龍が大きく息を吸い込んでいるかのようであった。
不意に、蓮華は強烈な悪寒に襲われた。
最悪の光景、血の海の既視感。
彼女は即座に一刀と小蓮の頭を抑えた。
そして彼女は叫んだ、わけもわからず、ただ力の限りに。
「みんな、伏せ―――」
しかし、
直後、ためを解放して、人智を越えた神速で飛龍偃月刀が水平に振るわれた。
薙ぐようにして刃が走り、光が、奔る。
結局、蓮華はこの世に地獄が生まれ落ちるのを止められなかった。
霞を中心として、太刀筋が光の輪となって広がる。
衝撃と共に広がる光の輪。
斬光の同心円。
それがどこまでも広がっていく。
383:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:13:49 +O3wFRQmO
孫呉終了のお知らせをいたしま~す
支援
384:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:14:09 ENyldGqS0
支援
385:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:14:23 skZ7j9oa0
巨神兵を幻視したのは自分だけでいい…支援
386:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:14:36 t8xhMNu+0
今の霞ってこんな感じ?大分違うと思うけど
URLリンク(www.gamecity.ne.jp)
387:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:15:05 yPcROIUg0
空き巣狙いに全兵力突っ込んで人質まで取ってこれとか泣くに泣けんな。支援
388:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:15:24 uOtNCXIh0
一刀君、漢をみせろ。
支援。
389:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:15:25 ENyldGqS0
支援
390:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(16/21)
09/10/24 22:15:37 joG4JVAA0
そして、斬撃が風を切って過ぎ去ったあと、追いかけるように無数のなにかが空を舞った。
それも、一つではない。
無数の
それはもう無数の
首が、
首が、首が、首が、首が、首が、首が、首が、首が、首が、首が、
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
血の尾を引いて、空に舞う。
理不尽すぎる力の前に、無慈悲にも万単位の命がに失われた瞬間であった。
391:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:16:44 yPcROIUg0
って一撃で万単位かい。何という無理ゲー
支援
392:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:17:06 GAN4tvreO
トラウマじゃすまないなこれ……
支援
393:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:17:32 ENyldGqS0
本当に理不尽だw
394:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:17:41 a7ESfplu0
こ、怖過ぎる・・・
395:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:18:40 a7ESfplu0
一気に400近くの首が飛んだのか・・・
396:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:18:42 +O3wFRQmO
あれ?俺いつの間に型月のフェイトを読んでるんだ?
支援
397:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(17/21)
09/10/24 22:18:49 joG4JVAA0
「そ、んな……」
二人を地面に引き倒して自らも難を逃れた蓮華が、顔を上げて呆然と呟きを漏らした。
視界に入る範囲、いたるところで頭部を失って案山子が立っていた。
立ち尽くした無数の亡骸が首から勢いよく血を噴出させている。
それが、一つ、また一つと倒れていく。
その光景はあまりにシュールすぎて、まるで悪い冗談のようで、蓮華にはそれらがつい先ほ
どまで皆生きていた人間たちの、なれの果てだとは信じられなかった。
そうして蓮華が絶句する中、張遼の方でも変化が起こっていた。
彼女が握っていた飛龍偃月刀。それが突然、硝子の割れるような澄んだ音を立てて、木っ端
微塵に砕け散ったのである。
柄も、刃も、すべてが破砕して、輝く粒子となって崩壊して風に流れて消えていく。
人為を尽くした最高の業物であったそれも、いまの彼女が振るうにはあまりに脆弱であった
のだ。
得物を失った張遼であったが、彼女が右腕を天に掲げると、たちまち天から新たな稲妻が走
った。
だが、今回のそれは張遼の身に落ちたわけではない。
雷光の中、張遼は信じ難いことに、その手に落雷を掴んでみせたのだ。
掴まれた稲妻が、まるで苦しみに身をよじるようにして暴れ回る。
「―――っ!!」
暴れる雷に、張遼が声にならない叫びを上げた。
するとどうだろう、それまでのことが嘘のように雷が静まっていく。
そうして雷が収まったとき、張遼の手の中には黄金色に輝く飛龍偃月刀が握られていた。
稲妻を統べ、龍を使役する。
それはまるで神仙の御業のようであった。
398:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:19:47 +O3wFRQmO
>395
>一気に400近くの首が飛んだのか・・・
万だよ万
399:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:20:03 t8xhMNu+0
ゼウスかよwwww
しかし、ここまでくると種族:霞だな
400:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:20:08 skZ7j9oa0
ゲシュタルト崩壊モノだな、コレ…支援
401:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:21:00 gQCBMlgu0
まさに三国無双状態だな
402:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:21:04 yPcROIUg0
事情知らないと、天の使いに手を出したから天が怒ってるんだ、とか思ってもおかしくねぇ展開だなあ
支援
403:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(18/21)
09/10/24 22:21:22 joG4JVAA0
しかし、そんな光景を目にしても、なおも奮い立つ者たちがいた。
「くそっ……化け物めっ! 行くぞ二人とも! 我らの血のたぎりにかけて、なんとしても絶
対にこれ以上好きにさせるな!」
「は、はいっ!」
「仕留めますっ!
蓮華の叫びで咄嗟に伏せることができたため、災禍を逃れた三人である。
呼吸を合わせ、一斉飛びかかる思春、亞莎、明命。
先ほどと同じ、三対一の戦いが始まった。
まとめて幾十、打ち鳴らす剣撃の音が、血の海の地獄に響く。
けれども、そうして対峙する黄金色の張遼は、これまでとはまったくと言って良いほどに、
力も、速さも何もかも違っていた。
明らかに、強さが増している。
それでも三人は、完璧な連携で攻撃をし続ける。
取り囲んだ三方からの、間断ない超速の連続攻撃。
突き、絶ち、斬り、穿ち、弾き、裂き、砕き、刺し、薙ぎ、崩し、殴り、蹴り、返し、衝す。
持てる技のすべてをぶつける、出し惜しみなどしない。
ただ一人の敵を倒すために、全力で挑む。
そうする彼女たちは確かに強かった。
けれども、それは人という枠組みの中の話である。
404:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:22:03 a7ESfplu0
>>398
首が で判断したんだ。オイオイ・・・どこの神話の世界だよ・・・。
405:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:22:40 +O3wFRQmO
>399
種族:霞
「今後ともよろしく」
406:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:23:54 8U/w3ig20
>>405
ちょっとメガテンやってくる!
407:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:24:01 skZ7j9oa0
む、『絶ち』は『断ち』の間違いか…?
俺の勘違いだったら謝るぞ…支援
408:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(19/21)
09/10/24 22:24:16 joG4JVAA0
最初に崩れたのは、亞莎の担う一角であった。
彼女の武器は他の二人と違い、圧倒的にリーチが短い。
鉄甲という武装は、究極的にはインファイト以外の選択肢が存在しない武装なのである。
しかしそれでも、本来なら長柄武器を持つ相手に対して、鉄甲による打撃域に踏み込めたの
なら、そこが最も安全な距離となるはずだった。
だが、こと今回の戦い、この相手に限って言えばその原則が当てはまらない。
張遼が振るうあまりの暴力、あまりの破壊力、それは余波と呼ぶにはあまりに大きな力のう
ねりを発生させていた。
荒れ狂う嵐のようなその動きに、少しでも巻き込まれたのなら、人間の体などあっさりと圧
壊されかねない。それだけの恐怖を張遼の動き一つ一つが秘めていた。
そして、常に敵の眼前に居続けることで、最もそのプレッシャーに晒されるのも亞莎であっ
た。
そんな彼女の消耗の速さは、他の二人の比ではない。
加えて、亞莎は純粋武官である他の二人に比べてスタミナが足りていない。
あるいは昔のまま、武将として蓮華に仕えていたなら違ったかもしれないが、軍師に転向し
た彼女が、最初に耐えられなくなるのは自明の理であった。
「くううぅっ!!」
摺り足、踏み込み、体捌き、足捌き。
亞莎は踊るようにして、最前線で果敢に接近戦を挑み続ける。
だが、衰えを知らずに攻め立てる二人に対して、徐々にだが彼女の動きだけが遅れだしてい
た。
「大丈夫か!」
「まだ、やれま……きゃっ」
「亞莎!?」
409:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:24:57 ENyldGqS0
支援
410:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:26:13 +O3wFRQmO
>406
せめて今日の分、見てからにしる。
その後なら、でもアクシデントでも霞は出てこないぞ(笑)
411:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:27:18 Wx7yBNga0
終わりがけだが支援開始
412:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(20/21)
09/10/24 22:27:25 joG4JVAA0
明命を攻撃した飛龍偃月刀の余波で発生した、のたうつ蛇のような放電現象を受けて、生理
現象として亞莎の足の筋肉が痙攣を起こす。
そしてそのわずかな隙を見逃さず、すかさず張遼の鞭のようにしなる強烈な蹴りが入った。
「うああっ!?」
咄嗟の防御、左腕をたたんで張遼の足との間に人解を滑り込ませた亞莎だったが、それでも
その衝撃は彼女の腕と内蔵の一部に、看過できないダメージを残すに十分な一撃だった。
防御した姿勢のまま、その軽い体が威力を吸収しきれずに吹き飛ばされそうになるのを、彼
女はすんでのところで踏ん張って堪えた。
そして、
「ぅ」
亞莎は踏ん張った姿勢のまま腰を沈ませ、そしてこれまで行った中で、最大最圧の震脚を踏
んだ。
「ああああああああああああああああああああああ!!!」
音を立てて地面が抉れる。
そこから生まれる圧倒的な速さと破壊力を持った、彼女そのもののような愚直なまでの拳撃。
亞莎はそれをまっすぐに、放つ。
避けられても、まっすぐに。
受けられても、まっすぐに。
放つ、放つ、放つ、
放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ放つ!!
413:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:28:07 Wx7yBNga0
もういっちょう
414:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:28:28 ENyldGqS0
支援
415:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:28:54 ZYuvIaXS0
支援
416:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:29:25 yPcROIUg0
最後の支援っ
417:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:30:23 +O3wFRQmO
恐らくこれが今日最後の支援と成るだろう、私から言えるのは皆死ぬな!まだ明日も有る!以上だ。
418:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(21/21)
09/10/24 22:31:32 joG4JVAA0
防御に使った左腕は、折れてこそいないが動かすだけで尋常ではない痛みが走る。
一方肋骨の方は、数本まとめて駄目になっているだろう。
体を動かす度に、これら負傷箇所から気絶するほどの激痛が走る。
痛めた内臓からの出血が逆流し、口の端から血が溢れて地面を点々と汚すけれども、そんな
ことには構っていられない。
亞莎は命を燃やして怒濤の連打を繰り出し続ける。
「亞莎!!」
「亞莎っ!?」
フォローに入ろうとしていた思春と明命から悲鳴のような声が飛ぶが、それでも亞莎の動き
は止まらない。
「あああああああああああああああああああああ!!」
幾十幾百、唸りを上げて間断なく打ち付けられる拳打の嵐。
鬼気迫る表情で、亞莎は渾身の一撃を放ち続けた。
(持って十秒! どうかっ!)
そのとき、衝撃と音で気を失っていた一刀が目を覚ました。
彼が頭を起こし、そして真っ先に目に飛び込んできたのは、激しく拳を振るう亞莎の姿であ
った。
それを見て一刀は、
〝ああ、まるで、燃え尽きる寸前の線香花火のようだ〟
と、思い。
そしてそんな彼女のことを、心の底から綺麗だと思った。
419:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:32:25 ENyldGqS0
支援
420:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:34:37 t8xhMNu+0
一刀さん!ボーっとしてないで亞莎と霞を止めて!
421:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:35:46 +O3wFRQmO
一刀…見とれてないで動けよ
422:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:35:57 yPcROIUg0
亞莎逃げて! さりげなく一刀に君の死亡フラグ立てられてるから!
423:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:36:11 uOtNCXIh0
お疲れ様でした。
霞~、帰って来~い。
424:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:37:15 +O3wFRQmO
>420
`¨ - 、 __ _,. -‐' ¨´
| `Tーて_,_` `ー<^ヽ
| ! `ヽ ヽ ヽ
r / ヽ ヽ _Lj
、 /´ \ \ \_j/ヽ
` ー ヽイ⌒r-、ヽ ヽ__j´ `¨´
 ̄ー┴'^´
425:メーテル ◆999HUU8SEE
09/10/24 22:38:36 joG4JVAA0
わたしの名はメーテル……投下終了を告げる女。
思いの外派手になっているけど、多分これから先、ここまで派手なものは多分もう書かないと思うわ。
それでは、最後は明日の午後9時30分からよ、鉄郎……
426:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:40:08 sqcrIv6X0
メーテル乙
亞莎ガンガレ
427:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:41:12 skZ7j9oa0
お疲れ様でした!
さてコレからどうなるか…楽しみですな
428:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:41:22 GAN4tvreO
乙です
そりゃこんなの見たら袁仲に喧嘩売れないわ
429:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:42:00 MLa84M8X0
一般兵からしてみりゃ、こんなのの居る国に喧嘩売って勝てるとは思わないよなあw
430:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:42:22 ENyldGqS0
メーテル氏乙です
もはやここまでくると天災みたいなもんだなw
せっかく転がり込んできた貢物(一刀)を捧げて静まるのを待つしか
しかしシャオの勘違いはその後混乱を呼びそうだなw
431:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:43:46 Wx7yBNga0
乙カレー 毛の長い女 くれぐれも便所には気をつけるんだぜ
432:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:45:04 XWM9YCam0
霞さんいつのまに宝具エクスカリバーを手に入れたんですかw
433:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:48:04 +O3wFRQmO
三国バサラ?
メーテル氏乙
独り言だとブ○ッ○ラ○ー○9
434:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:56:01 GAN4tvreO
≫432
設定的にも『約束された勝利の偃月刀』状態だしw
435:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:56:17 +6vtZ8MD0
いやあ、ここまでくると、もう霞は自然現象みたいなもので、それにひたすら立ち向かう三人が、
美しくてかなわんね。
436:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:58:24 a7ESfplu0
霞「我は天の災い。この場所に居たお前達は、運が無かっただけだ。」
437:名無しさん@初回限定
09/10/24 23:05:35 skZ7j9oa0
>>369の15行目、『小さな手傷が増えているいるものの』ってなっている事を報告
正しくは『小さな手傷が増えているものの』と思われる
438:名無しさん@初回限定
09/10/24 23:10:28 +6vtZ8MD0
>>344
>神速ので突きを受け流す
神速での か 神速の どっちかの間違いかな?
439:名無しさん@初回限定
09/10/24 23:21:18 bWbORHF+0
思春が来なければ収まってたのに…
蓮華も人質とかするより、皆で土下座でもして謝った方が
多分ここまでの惨劇は起きなかっただろうな…
命がけの3人には悪いが、万単位で人殺せるの相手だと
誇りや信念がいくらあっても勝てそうにない
440:名無しさん@初回限定
09/10/24 23:25:37 +6vtZ8MD0
普通は相手がそんな存在だと思わないw
少なくとも当日までは、それなりに普通の武将だったんだぞw そりゃ、強いのは強かったが人間だったのが
いきなり人外になってるって普通想像しないよw
441:名無しさん@初回限定
09/10/24 23:29:50 cS3k0fm/O
思春も蓮華も極めて常識的な判断だよ
今の霞が非常識ってレベルじゃねーだけだ
442:名無しさん@初回限定
09/10/24 23:30:37 ENyldGqS0
敵対勢力としては排除を試みるか撤退するかしか無いからな
んで今は撤退開始するとこだから時間稼ぐしか蓮華達に選択肢は無いよな
止めるのに一刀を使うとすればまあ人質ってのは妥当な判断ではある
今回の場合全くの逆効果だけどw
443:名無しさん@初回限定
09/10/24 23:32:54 D/YKU7dP0
一刀が死んでないだけましか。
2話前に殺されてたらその場で孫一派が滅んでもおかしくは無いと思う。
444:名無しさん@初回限定
09/10/24 23:46:17 K0x4e4aj0
しかしながら、主要キャラの死人なしで収拾つけるのは無理だな
445:名無しさん@初回限定
09/10/25 00:00:29 sqcrIv6X0
メーテルおそろしい子
魏√アフターで、
華琳がもう限界(キレタ)
↓
そうだ一刀をさらいに行こう
↓
管輅に頼み込んで(シバキ倒して)天の国へ行く方法を知る
↓
誰が行くか揉めに揉めて華琳、桂花、凪、季衣に決定
って所までをシリアス無しで
2200字ぐらい書いたけど
自分の稚拙な表現に愕然とした・・・
スッパリとやめる決心がつきました
メーテルありがとう
全裸待機で続きを楽しみに待ってます
446:名無しさん@初回限定
09/10/25 00:04:31 UdEg5xQ/0
天に行く方法なら管輅に聞くより
真桜えもんがタイムマシンを作る方が何故か納得できるな
447:名無しさん@初回限定
09/10/25 00:20:43 ZyU/svR20
メーテル氏乙です
あわわわ、霞さんメタモルフォーゼしてしまった・・・どうする一刀。
続きが気になる
448:名無しさん@初回限定
09/10/25 00:29:58 q71zEkwp0
首が・・・のところで夢枕獏を思い出した自分・・・
449:名無しさん@初回限定
09/10/25 03:09:10 COUJVlSc0
>445
投下してみてはどうか?
自分も皆には及ばないが、こつこつと魏ルートアフターで霞のはなしを書いているぞ。
プロットは出来上がってるのだが、仕事が忙しくて肉付けがなかなか完了しないorz
450:名無しさん@初回限定
09/10/25 05:43:45 nC4MenvU0
うむ、比較してしまう気持ちはわかるが
投下して反応を貰うことで成長できる部分もあるだろうし
気軽にやってみてもいいんでないかな?
451:名無しさん@初回限定
09/10/25 08:20:44 WIJhcbmn0
ほーけい『反応みてるってことは見せてっていってほしいんだろにーちゃん、はやくだしなよ』
452:名無しさん@初回限定
09/10/25 09:56:20 uO3aIikk0
結局古参は、職人に好意的じゃない奴には噛み付くのなw
優しく言うとか関係ないし。
これじゃ直に投下する職人も減るわ。
自分のせいで荒れたらたまったものじゃないしな?
453:名無しさん@初回限定
09/10/25 10:53:30 mqCjf/Eu0
新参乙
454:名無しさん@初回限定
09/10/25 12:02:42 lFQqOA2i0
今回のはどう見ても職人に好意的じゃないから噛み付かれたんじゃなくて
昔話し合って出来たテンプレをちゃんと守ってるのに自分ルールを押し付けようとしたから噛み付かれたんだろ
状況をちゃんと理解してから書き込め
455:名無しさん@初回限定
09/10/25 12:19:54 SvuAapxoO
>>452の脳内で「俺ルール>>>>>>テンプレ」なのはよく分かった
456:名無しさん@初回限定
09/10/25 12:29:00 8LQC8aWf0
構うなよ……。
それはともかく、
>>445
背中おしてほしいんだろ、ほら、やってみるんだ。
まあ、実際、同じテーマででも短いものを書いてみて、それを投下して様子を見るってのもありだぞ。
457:名無しさん@初回限定
09/10/25 14:02:09 Vh7mq85F0
背中押しておいて一歩踏み出すと袋叩きにして追い返す
それがここのクオリティ
458:名無しさん@初回限定
09/10/25 14:07:35 3Jvq/ucR0
>>457
袋叩きというがこちとらアドバイスのつもりで言ってるんだぞ?
459:名無しさん@初回限定
09/10/25 14:17:40 E5T1F5s00
>>テンプレうんぬんやらルールやら
まぁ>>452はテンプレ嫁とも思うが……
四日連続というのもどうだろうとは思ったな
一般的な生活してたら投下できるのなんて夜くらいだろうし。
いくら事前予告って言ってもそういった投下できる時間を一週間の半分
奪いますよっていうのはいいのか?
俺はそれで自分の好きな作者が投下お預け食らったりしたら最悪だけどな
なんつーか、ルール内のことでも限度があると思う
というか、その辺を考えてるから昔、直投下してた人たちはやめたんだと思う。
そうでなきゃ、タイミングしだいでレスのつき具合が変わるtxt投下なんてしないだろ。
直投下の方がリアルタイムで支援やら途中経過での期待の言葉やら貰えて気分良いし。
投下してる間に人が増えてレスもつきやすくなることだって少なくないし。
手間だって、何レス分かにわけて投下すりゃいいだけだからそんなめんどくさくない。せいぜい時間くらい。
それでもtxt投下をしてくれるようになったから同じ日にいろんな作品の投下が可能になったわけだし。
そうやってちょっと考えれば作者たちがそれぞれ気を遣ってるのがわかる。
とは言っても、txt投下しろとは全く思わん。直投下はやっぱり良いもんだからな。
ただ他の作者の投下タイミングを"四日も潰す"ことはしないで欲しかったな。
それと、取りあえず流れを見て思ったのは、お前らは他の作者への被害はどうでもいいってことなんだな。
SSさえ読めて問題の作者がルールを一応でも守っていれば……。ようくわかったよ。
460:名無しさん@初回限定
09/10/25 14:19:30 8LQC8aWf0
こうして、善意(のつもり)の愚か者のせいで、さらにスレが廃れるのであった。
461:名無しさん@初回限定
09/10/25 15:05:58 dymG3yro0
こまけぇこたぁ(ry AAry
462:名無しさん@初回限定
09/10/25 15:16:37 nC4MenvU0
えーと、一応ここで以前書いてた者の一人として言わせてもらえば
投下のタイミングが数日遅れることで困ることはとくにありませんので
お気になさらず
463:名無しさん@初回限定
09/10/25 15:30:31 YMuOVHVz0
俺もここでたまーに短めの短編上げてるが、『絶対今週に上げたい!』なんて思うこと無いぞ。
予告無しで4日間連続で上げられたらまたかーぐらい思うだろうけど、予告もあるわけだし。
464:名無しさん@初回限定
09/10/25 15:41:14 zY11o0XJ0
>>459
以前は投下が被ることなんかよくあったし、その辺は作者同士で
「この時間に投下予告されてますが、投下しても大丈夫ですか?」
的なことを聞いて「どうぞどうぞ」的な感じで折り合いつけて
うまくやってたっつーの
ここに投下してくれてる作者方もその状況を知ってる人が多いし、
オマエみたいにそれをすぐ「被害」とかいってしまいうような
謎な被害妄想を持ってる程度の低い人間じゃないから
465:名無しさん@初回限定
09/10/25 15:45:46 BKvZooA90
さて、質問があるんだが良いかね?
今、『恋の日記』みたいな感じで短いの書いてんだが…
字数は少なくても、最大32行は守った方が良いよな?
466:名無しさん@初回限定
09/10/25 15:46:51 8LQC8aWf0
守った方がいいもなにも、三十二行より多く入れて投稿できないよ。この板じゃ。
467:名無しさん@初回限定
09/10/25 15:54:03 BKvZooA90
>>466
スマン、どうにも書くのが初めてな分、不慣れでな
答えてくれてアリガト、感謝する!
468:名無しさん@初回限定
09/10/25 16:15:37 d0kamCQD0
ガイドラインの1.はルールじゃなくてこの板の仕様だよ
469:名無しさん@初回限定
09/10/25 16:59:06 o1KZZthG0
貂蝉と卑弥呼を同時に相手して互角の華雄が実は恋姫最強なんじゃ
470:名無しさん@初回限定
09/10/25 17:03:54 2NgrPwdH0
恋する乙女は皆最強です
471:名無しさん@初回限定
09/10/25 17:15:44 a3vSLBwb0
じゃあ紫苑と祭と桔梗が弱いってことになるじゃないか!
472:名無しさん@初回限定
09/10/25 17:18:23 gXDxx0pS0
華雄は負けたあと修行して超パワーアップしてるから二人相手に互角
473:名無しさん@初回限定
09/10/25 17:37:10 jTlra/XW0
でも修行してパワーアップしても愛紗に負けてたり……
まあ、恋姫†夢想の話だが
474:名無しさん@初回限定
09/10/25 17:52:34 sw49BYkB0
>>467
赤壁での孔明の策を船ではなく生身でやってのけるとは、すごいな
475:名無しさん@初回限定
09/10/25 17:53:57 Vh7mq85F0
>>459
消えろカス
476:名無しさん@初回限定
09/10/25 17:54:42 cRXTq/+gO
>>471
年齢の関係もありますね、わかります
477:名無しさん@初回限定
09/10/25 17:54:49 sw49BYkB0
おっと、>>474は >>471へのものだ。失礼した。
478:名無しさん@初回限定
09/10/25 19:01:55 Nn3j0avl0
そういや真恋姫夢想はでないのか?
479:名無しさん@初回限定
09/10/25 19:54:47 BKvZooA90
な、なぁ…恋の日記、桃香しても大丈夫か?
gdgdで、初めてで、オチなしなんだが…妄想力が尽きたorz
しかもたったの3レス分だ…
480:名無しさん@初回限定
09/10/25 20:01:17 8LQC8aWf0
どーんといけ。
最初は短いのでちょうどいいじゃないか。
そうして、だんだんと慣れてくほうがいいぞw
481:名無しさん@初回限定
09/10/25 20:07:17 BKvZooA90
そ、それじゃ次のレスから桃香開始!
さぁ、オラに力を分けてくれ!(感想的な意味で
482:とある恋の日記
09/10/25 20:08:57 BKvZooA90
―とある恋の日記―
あったかい日のお昼
ご主人様が庭に来た
セキトやみんなの話をした
恋にあんなに話して来た人、初めて
寝ると気持良いと思った日のお昼
ご主人様と“けいら”をしに市に行く
美味しそうな香りがしたからお腹が減った
そしたらご主人様、いっぱいご飯買ってくれた
やっぱりお腹いっぱい食べれるのは良い、幸せ
“けいら”が少し、好きになった
雲が美味しそうな日のお昼
寝ていたらご主人様がいつのまにか傍に居た
夢かと思って手を伸ばしてみた、けど掴めたから引っぱった
隣に寝るご主人様はあったかい
それに、いい香りがしてなんだかほわほわする
気がついたら夜になってて、愛紗にご主人様が怒られてた
ご主人様、大変そうだった
483:名無しさん@初回限定
09/10/25 20:11:18 xS+gnDtR0
恋の日記
かゆ
うま
484:とある恋の日記
09/10/25 20:11:33 BKvZooA90
セキトとお散歩の日のお昼
ご主人様も一緒にお散歩
セキトも何だかいつもより嬉しそうだった
恋もご主人様と一緒で胸がきゅっとなった
…こんな感情、初めて
その後の水浴びもなんだか落ち着かない
ご主人様が気になって、気になって、気になって…
…また、胸がきゅっとした
チョウチョが可愛く飛んでた日の夕方
愛紗とご主人様が一緒に居た
笑って、怒られて、苦笑して、また笑ってた
愛紗も怒ってはいたけど口元が笑ってた
………胸の奥が、チクッってした
少し暑い日の朝
ご主人様に会いに行こうとしたらお仕事中だった
邪魔しちゃ悪いと思った、けどまた愛紗が一緒に居た
…愛紗ばっかり、ずるい
愛紗はいつもご主人様を独り占めする
………胸の奥がまた、チクッってした
485:とある恋の日記
09/10/25 20:12:39 BKvZooA90
涼しくて気持良かった日の朝
ご主人様の部屋に行った
でも寝てたから何となく眺めてた
ご主人様の寝顔は何度か見てる
けど、なんだか胸の奥がキュッってして顔が熱かった
結局、恋はご主人様を起こさずに部屋を出た
お引越しの日のお昼
ご主人様が殿をやるって言った
愛紗達みんなが止めてるのに、鈴々だけ連れてって…
恋も、目の前が霞んで見えた気がした
だって、ご主人様は弱い
強いけど、弱い
なのに危ない所に行く
だから恋は、自分からついていく
ご主人様が死なないように
それ以上に傷付かないように
ご主人様の傍が恋の居場所
ご主人様の笑顔が恋のご飯
ご主人様の幸せが恋の幸せ
………その日、戟がいつもより軽く感じた
486:とある恋の日記
09/10/25 20:17:02 BKvZooA90
…以上となりまふ!
ゴメン、オチがあんまりにも唐突なのは俺の所為だから恋を殴らないで!!
至らない所は多々あれど、精進中の身故、何卒平にご容赦をOTZ
>>483
絶対やると思ったよ!
487:名無しさん@初回限定
09/10/25 20:17:53 7vEshT+wO
>483
一瞬同じ事を思いついた事は認めるぞ。
488:名無しさん@初回限定
09/10/25 20:20:03 7vEshT+wO
恋を殴れる訳ないじゃ無いですか、心情的にも技量的にも(笑)
489:名無しさん@初回限定
09/10/25 20:26:49 rEXRaYPB0
乙。
なんというか日付があれなのがが恋らしいと言うか、可愛いw
490:名無しさん@初回限定
09/10/25 20:51:46 u94VVDJtO
日記乙
なかなかいいと思うけどな
キャラもちゃんとらしいと思うし
SS続ける気が有るなら頑張れ。
491:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:01:22 sw49BYkB0
乙です
ちょっと気になったんでひとつ
細かい話だから無視してくれていいよ
>>484 …こんな感情、初めて → …こんなキモチ、初めて
に直したほうがキャラを掴めてる気がする
お目汚し失礼
492:とある恋の日記
09/10/25 21:12:27 BKvZooA90
何か友達の電話から戻って来たら感想が!コレは謝々と言わざるを得ない!
>>488
たしかにどう考えても心情的にも技術的にも無理です、ありがとうございました
>>489
日付は意識してたんで何か嬉しす
>>490
取り敢えずは恋の日記をもう一回は書きたいなぁ…と
後はもう、気分!
>>491
…確かにそっちの方が恋っぽいorz
うぅむ、まだまだ精進が必要なのを痛感!
直したいけど桃香しちゃったから直せないナリィ…
兎にも角にも感想謝々!すげぇ励みになったわ~
493:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:12:57 M1ju7/lvO
GJ!
久々に和み系作品読ませて貰ったよ
494:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:14:17 8LQC8aWf0
恋かあいいのう。
でも、とりあえず三点リーダは一つじゃなくて二つ組で使ってほしい。
495:とある恋の日記
09/10/25 21:20:17 BKvZooA90
>>493
おぉ、和んでくれたなら本望!
>>494
自分でも三点リーダーは二つ組の方が恋らしいと今回で思ったよ
コレで更なる恋の日記がかけるやも!?
感想が一杯が嬉し過ぎて生きるのが辛い
496:メーテル ◆999HUU8SEE
09/10/25 21:20:58 bsXt3xFD0
わたしの名はメーテル……9時半から、最後の分割分を投下する予定の女。
ながながと付き合って貰ったこの短編も、今回の投下分でおしまいよ、鉄郎。
>>492
桃香乙よ……
犬っぽさが出ていて、とても良かったと思うわ。
次も楽しみにさせて貰うわね……
497:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:24:15 I7P7QohJ0
>>495
三点リーダは恋らしいとか以前に二つセットで「……」のように使うのが正しい使い方なんだよ
498:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:28:28 8LQC8aWf0
恋姫のゲームでも三点リーダは二つ組で使われてるしね。
>>496
今日で終わると思うとどうなるのか楽しみでもあり、不安でもあるなあ。
投下待ってるよー。
499:とある
09/10/25 21:28:36 BKvZooA90
>>メーテル氏
ま、まさか感想を頂けるとは思わなんだ
一所懸命頑張る所存であります!
毎回読ませて貰ってるので楽しみに待機する故!
>>497
それは初耳!
また一つ勉強になった、謝々!
500:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(1/33)
09/10/25 21:31:10 bsXt3xFD0
一秒、
「くそっ! 明命、次で決めるぞ!」
叫んで思春が、必殺の形に鈴音を構える。
「はいっ!」
明命も同じように、両手で魂切を強く握りしめた。
亞莎が行っている連続攻撃は、先ほど思春が行ったものと同じ類の性質を持つものだ。
ペース配分を考えないがむしゃらな全力攻撃で、釘付けにして動きを止めるつもりなのだ。
彼女は負傷によって自分の自由に動ける限界が近いことを悟り、あえてその役目を買って出
たのだ。
それはひとえに、残りの二人が未だ健在なうちに、決定打を打てるようにするためにである。
二秒、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「はあああああああああああああああああああ!!」
呼吸を整え、『ため』を作り、最高の一撃を放つために精神を研ぎ澄ます。
仲間が決死の覚悟で作り出してくれた、その一時を無駄にしないために、来るべき一瞬のた
めにすべてを込める。
三秒、
依然として亞莎の動きは止まらない。
それどころか、左右のラッシュは天井知らずにその回転速度を上げていく。
最初こそ完璧に捌き、弾き、防いでいた張遼も、一発、もう一発と被弾する数が増えてきた。
そもそも亞莎の攻撃は、雨あられの連撃とはいえ、一発一発が熊でも昏倒させうる一撃であ
る。
だというのに、それを何発当てても亞莎の手に返ってくるのは岩でも殴ったかのような感触
のみ。
501:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:31:48 BKvZooA90
支援開始!
502:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(2/33)
09/10/25 21:33:26 bsXt3xFD0
しかしそれでも、
(効いているはず!)
そう信じて亞莎は拳を打ち続ける。
そうしているうち、張遼の動きが突然止まった。
まばたきの間に、ダース単位の拳が張遼を捉える。
明らかに何らかの変化が起こる先触れであろうが、それを訝しむ時間すら惜しいと、亞莎は
構わず拳を振るい続けた。
そうして次に張遼は、握った槍を、天に向かって返すようにして放り投げた。
「―ッ!?」
予想だにしなかった行動。それでも手は止めず、驚きを内心だけに留めた亞莎は賞賛される
べきだったろう。
四秒、
すぐに亞莎は張遼の行動の意味を理解することになった。
飛龍偃月刀を放り投げて素手となった張遼が、ここにきてはじめて明確に迎撃の構えを見せ
たのである。
体は猫背に曲げられ、手はだらんと下ろされる。
それは、亞莎にとって見たことのない戦闘姿勢だった。
直後―
(これはっ!?)
怒濤の連続攻撃を繰り出していた亞莎が、その頭を直感だけで後ろへ退いた。
ほぼ同時、真下から打ち出された豪腕が、風を伴って鼻先を掠めた。
「っ!!」
驚きが顔に出るが、それでも動きは止められない。
亞莎は張遼の拳を避けながら、その動きを反動にして頭を振りながら前に出て左右のワンツ
ーに連結しようとする。
だが、その振り子の揺り戻しに合わせて、更に視界の外、見えない角度から新たな拳が飛ん
できた。
反応。
これも首を捻って、亞莎はギリギリで回避することに成功する。
それで亞莎は明確に理解した。
張遼は、自分と素手の打ち合いをするために武器を捨てたのだと。
503:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(3/33)
09/10/25 21:36:35 bsXt3xFD0
五秒、
正面から顔面を狙って突き出した亞莎の拳が、空を切る。
張遼が背骨を直角に曲がるほどに体を反らして、攻撃を避けたのである。
むしろ逆に、亞莎の視界が予想外の衝撃と激痛で揺れた。
「!?」
張遼が避けながら無茶な姿勢で放った拳が、脇腹を抉ったのだ。
「くぅっ!」
亞莎はそれを、奥歯が割れるほどに力を込めてその場に踏ん張った。
だが、突然拳に力を乗せるのに欠かせない、足を踏み込むための力が抜けた。
足がガクガクと震えそうになるが、それも根性で抑え込む。
そうしてとりあえず手数で刻む連打によって弾幕を張る。
けれども、足が動かない。
フットワークなければ、張遼の拳は避けられない。
張遼の拳が唸り、粉々に砕けた片目がねが宙を舞った。
六秒、
張遼の拳が亞莎の顔面に、左腕に、脇腹に次々突き刺さる。
為す術もなくサンドバッグのように殴られ続ける。
当然のこととして亞莎も防御しようと試みているのだが、低い体勢、そしてなお低い位置か
らの拳が、無駄な動きという天然のフェイントを織り交ぜることで、巧みに死角から彼女を狙
い打つのだ。
時折亞莎も反撃の手を出すのだが、
「――ッ」
それはことごとく回避されてしまう。
504:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:37:57 u94VVDJtO
支援戦闘を開始する!
505:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(4/33)
09/10/25 21:39:32 bsXt3xFD0
七秒、
切れた額から血が流れ、目に入って開けていられなくなる。
もっとも、元来目の悪い亞莎は、相手の姿を眼で見ていない。
気配と予測で動きを察知して防御し、攻撃しているのだ。
だがそれでも、体が動かなくなれば、どちらも適わなくなることに変わりはなかった。
八秒
見るも無惨な残虐の時間が続く。
ろくに動けない亞莎の体に、打ち込む拳が容赦なく突き刺さる。
腰もろくに入ってないように見える拳が、異様に重たい。
これまで徒手を武器にする者とも幾度となく戦ったことのある亞莎だったが、こんな戦い方
を目にするのははじめてだった。
当てられない、避けられない。
それでも時間はすぎていく。
九秒、
「う、ああぁぁっ!?」
ついに亞莎の体に致命的な一発が入った。
体の内側から強烈な熱が広がり、内なる臓のどれかが破壊されたのだとわかった。
耐え難い嘔吐感が亞莎を襲う。
堪らず口が血塊を吐き出した。
その身は内外ともに傷だらけ。折れた骨は無数、内蔵もいくつか駄目になっている。
506:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:40:55 BKvZooA90
支援物資、供給致します!
507:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:42:06 JbHeelfm0
亞莎がやばすぎる・・・・・支援!
508:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(5/33)
09/10/25 21:42:53 bsXt3xFD0
それでも彼女自身の闘志は、未だ衰えてはいなかった。
まだ戦える、自分はまだやれる。
彼女は不屈の精神力で耐えていた。
だが、精神力で耐えるにも限度がある。心とは裏腹に、その体は既に生命の限界を迎えてい
た。
目に未だ戦意を宿したまま、ついに亞莎の体は崩れ落ちるように垂直に崩れ落ちた。
十秒、
倒れた亞莎には目もくれず、張遼は手をだらりと下ろした猫背の姿勢のまま、次の標的―
思春の方を向いた。
そして必殺の一撃を放つべく予備動作の最中で隙だらけの彼女に向かって跳躍―
「さ、せませ……んっ」
しようとして、できなかった。
地に伏した亞莎が、足首を掴んでいたのだ。
「いま、ですっ!」
亞莎がかすれた、精一杯の声で叫ぶ。
そうして彼女は、ついに十秒という短くも貴重な時間を、仲間たちのために作ることに成功
したのであった。
509:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(6/33)
09/10/25 21:45:23 bsXt3xFD0
今にも絶えそうなか細い仲間の言葉。
彼女の懸命な努力に応えるべく、思春は周囲から巻き込み吸い込んでいた空気を開放した。
その体をギリギリまで沈ませて、腰溜めにした剣を振るう。
「閃っ!」
剣を振るった思春。張遼との彼我の距離は数メートル。
本来、白兵武器をそんな距離で振り回しても当たるわけがない。
だがそんな常識を覆すように、その斬撃の軌跡が〝伸びた〟。
当たるはずのない斬撃が、衝撃波となって扇状に広がったのである。
基本は先ほど、張遼が放った特大の円斬と同じもの。
見よう見まねで放ったそれが、今度は張遼を屠るべく走る。
高さは膝の位置。形状は左右逃げ場のない扇状。
こうなっては広がる剣閃を避けるための逃げ道は、上にしかない。
けれども自由にさせまいと、その足には亞莎がしがみついている。
そして更に、抜き打ちで斬撃を放った思春は、それを追いかけ自分自身も前に飛び出した。
そのまま体を捻って背中を晒して独楽のように一回転。振り向きざま、横払いにもう一つ、
斬撃を放つ。
最初の閃撃に追いつく二の太刀、音速を超えて振るわれる追撃の斬攻を繰り出したのだ。
「―っ斬る!!」
用意された追いかけ二の太刀が、張遼を襲う。
受ける側からすれば、膝と胸、二つの高さで振るわれる超音速の横斬りが、同じタイミング
で襲ってくるこの攻撃は、避けるにしても受けるにしてもやっかい極まりない攻撃といえる。
この不可避の連撃を前にした張遼は、
『剋阿阿阿阿阿阿阿阿阿阿阿阿ッ!!』
このときはじめて声を発し、人の声帯から発せられたとは思えない大音声で迎え撃った。
510:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:46:32 1MdHFzqF0
支援砲
511:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:47:53 u94VVDJtO
霞スゴ!
支援攻撃続行!
512:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:48:32 3Jvq/ucR0
支援砲撃
513:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(7/33)
09/10/25 21:48:40 bsXt3xFD0
ドンッという音と共に、思春はその身に壁に激突したかのような衝撃を受けた。
『音』には様々な使い道があるということは、他ならぬ思春自身がよく知るところである。
けれども、張遼のこの暴力的な使い方は、彼女の想像の遙か上を行くものであった。
思春の前を先行していた一の太刀筋『閃』が、咆吼によって生じた音の衝撃を受けて相殺さ
れ霧散したのである。
彼女の体を襲った衝撃は、剣閃を散らした余波だったのだ。
(だがそれでもっ!)
既に思春は斬撃のモーションに入っている。今更走る刃は止められない。
また、止めるつもりもない。
足に力を込めて、絶好の攻撃間合いにステップイン。
膝、腰、肩、手首、すべてを連動させて、そこに遠心力を加えて、剣を滑らせる。
狙うは張遼の、胸の高さ。
流れるようにサイドスイングで振るわれる、断ち切る二の太刀。
正真正銘物理的な攻撃である斬撃が、張遼の胴を両断するべく、その身に迫る。
だが、
「――ッ!?」
攻撃した思春の眉が跳ね上がる。
鈴音は張遼を切り裂く直前で、その刃を空中に制止させていた。
正しくは、止められていた。
思春が両手で振るった曲刀の、その腹の部分。そこを張遼の諸手が、上下からがっちりと挟
み込んで止めていたのだ。
真の達人、真の巧者だけが辿り着くことのできる無刀の極地。
張遼が見せたそれは、剣術で言うところの『無刀取り』であった。
514:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:50:24 BKvZooA90
無刀取り…だと!?支援継続
515:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:51:06 dymG3yro0
紫苑
516:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:51:29 dymG3yro0
雪蓮
517:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:51:33 1MdHFzqF0
更に
518:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(8/33)
09/10/25 21:51:38 bsXt3xFD0
必殺の攻撃が止められた。
一の刃、二の刃、共に必殺でありながらついに相手を倒すに至らなかった。
思春が仕掛けた勝負は決着した。
それだけの攻撃を繰り出しながら仕留め損なった思春は、ここでその表情を絶望に染めるは
ずであった。
だというのに、思春は絶望するどころか顔を歪ませていた。
口の端をつり上げ歓喜の形を作っていた。
そう、彼女にとってこの程度は織り込み済み。
「いけっ! 明命!!」
その声に応えたのは
「はいっ!」
空から降ってきた声である。
既ここに至って隠す必要なしと、張遼の真上で気配と殺気が膨れあがる。
一直線に、人が落ちてくる。
刃を鏃に、自身を羽に。明命は自らを一本の矢に見立てて天空を流れ落ちる。
速く、速く、何よりも速く!
思春の放った一の太刀、二の太刀は共にこの明命の一撃を隠すための目くらましであったの
だ。
避けられるタイミングではない。手を離せばすぐさま鈴音がその身を切り裂く。
〝詰んだ〟そう、思春と明命が確信したときであった。
張遼はまたも予想を裏切る行動に出た。
爪先で、足元に転がっていたものを蹴り上げたのである。
519:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:52:24 1MdHFzqF0
ってー
520:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:52:42 dymG3yro0
小蓮
521:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(9/33)
09/10/25 21:53:12 bsXt3xFD0
勢いよく蹴り上げられたその体は、殆どなんの抵抗もなく張遼と明命との間に割り込む形と
なった。
体中を傷だらけにして力尽き、ぐったりと脱力しきった戦友。
その姿が突然目の前で大きくなり、手にずぶりという、肉を貫く感触が伝わった。
気がついたときには、魂すら切り裂く名刀『魂切』の刃が、亞莎の無防備な胸を深々と刺し
貫いていた。
「あ……」
自分がなにをしたかわからない。
自分がなにをしてしまったかわからない。
驚愕に目を見開いて声を漏らした明命の体を、次の瞬間、焼け付くような熱が襲った。
「……あ、」
目だけを動かして、自分の胸元を見る。
すると真っ赤な血を溢れ返えさせるその中心に、黄金の刃が生えているのがはっきりと見え
た。
(な、ぜ?)
そのなぜは、
なぜ、自分が亞莎を傷つけることになったのか。
なぜ、どうしてこんなものが胸を貫いてるのか。
なぜ、どうしてこんなことになったのか。
そんなことを問う〝なぜ〟だった。
522:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:54:29 LegsXD5i0
乱戦で敵の肉体を利用するのは正しいが、まさか武将が入り乱れるこの戦闘でも発生するとは・・・。
523:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:56:32 2UE+PTv80
肉の壁は星ですら苦戦してたからな
雑魚な分数が多かったけど
524:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(10/33)
09/10/25 21:56:35 bsXt3xFD0
そうして結局明命は、自分が地面に激突して意識を絶たれるそのときまで、天に放り投げら
れた飛龍偃月刀が、いまになって落下して自分の背を貫いたのだと理解することはなかった。
二人の体は、受け身を取ることもなく地面へと墜落した。
そして張遼は鈴音から手を離し、明命の体から得物を引き抜く。
引き抜かれる瞬間、その体が小さく動いたのを見て、思春は我に返った。
「貴様あああああああああっ!!」
思春が激昂の叫びを上げて、力の限り手の中の凶器を叩き付けた。
渾身の一撃。
しかし、それは黄金の槍に阻まれて、憎い敵に届かない。
「あああああああああ!!」
更に打ち付けられる一撃。
「あああああ!」
何度も何度も、鬼の形相で気迫と共に滅多矢鱈と斬りつける。
その攻撃は一撃、また次の一撃と、その速さ、鋭さ、重さを際限なく増していく。
「おおおおおおおっ!!」
常人並なら一合と持たないその斬撃の嵐に、張遼は片手の飛龍偃月刀で一つ残らず合わせて
みせた。
のみならず、彼女の槍もより速く、鋭く、重くなっていく。
物質と非物質の狭間にある稲妻の飛龍偃月刀は、一合合わせる度に、鈴音を伝わって思春の
体に電流を流し込んでくる。
苦痛がその身を焼く、それでも思春は斬りかかるのを止めなかった。
友のために、主君のために、誇りと信念を貫き通すために。
525:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:56:54 dymG3yro0
支援
526:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:56:54 sw49BYkB0
ヒャッハー!支援砲撃だ!坂をケチャップまみれにしてやるぜぇ!
527:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:57:55 BKvZooA90
支援物資を搬入しながら……ゴクリ
528:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:58:20 3Jvq/ucR0
無刀取りといったな
あれは「真剣白刃取り」だ
529:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:58:41 dymG3yro0
クルッポークルッピープー
530:名無しさん@初回限定
09/10/25 21:58:48 u94VVDJtO
ちょっ!
し、支援……
531:美羽と七乃スピンオフ「遼来来5」(11/33)
09/10/25 21:59:47 bsXt3xFD0
◇◇◇
今回の局面に際して、一刀は己の知る二つの歴史的戦いを参考にした。
一つは、曹操が行った『下肥城攻略戦』。
曹操の精鋭五万を相手に籠城戦を選択した呂布が、圧倒的な戦闘力を発揮してこれに立ち向
かった戦い。
結果として水攻めによって曹操軍の勝利に終わるこの戦いだが、籠城戦を行った呂布に対し
て、曹操はそこまでしなけれ城を落とせなかったのである。
一見して守りに向かない恋を、籠城戦をする配置につけたのは、まさにこの戦いのことを念
頭に置いてのことである。
そして一刀が参考にしたもう一つが、『合肥の戦い』である。
大軍を率いて曹操領に侵攻した孫権を、張遼率いる寡兵の曹操軍が打ち破った戦い。
この戦いを霞に再現させることで、一刀は呉軍を止めようとしたのであった。
北を曹操、南を孫策。二強から攻められるという覆しようのない苦境を前に、一刀は自分が
知る歴史の流れに賭けた。
これまで何度となく目にした、一刀が知る『三国志』とはまったく違うはずのこの世界で、
『三国志』が再現される不可思議、それに賭けたのである。
だが、その結果が最悪の形で結実しようとしていた。
朦朧としていた意識をはっきりとさせた一刀が見たのは、赤い赤い大地と、その中心で血ま
みれで戦う霞の姿。
低い低い、四つん這いに近い猫背の姿勢で、片手に持った槍を振り回して、野獣の動きで甘
寧を追い詰めている。
一見してわかるほどに甘寧は強い、これまで見てきた中でも指折りの強さかもしれない。
だが、相対する霞はそれ以上に強かった。
必死に抵抗する甘寧を一方的に蹂躙していくその姿は、既に霞の姿をした別のなにかのよう
に思えて仕方がない程である。