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「ええ、ご主人様の読みは悪くなかったのよ。正史から派生した外史には、正史本来の流れを
なぞろうとする矯正力、あるいは復元力と言い換えても良いけど、とにかくそういうものが備
わっているの」
「やっぱり……」
そうでないかとは思ったのだ。
この世界は、一刀が知る三国志の世界とは全く違う。
違うのに、希に一刀が知る歴史によく似たことが起こる。
それを説明するには、貂蝉が言ったような大枠が存在していると考えるのが一番楽だったの
だ。
「だからご主人様がやったように、あえて状況やキャラクターといったファクター揃えてやれ
ば、正史の流れにちなんだ結果が得られる可能性は十分にあるわ」
キャラクター、そしてファクター。その言葉に一刀はうっすら顔をしかめながらも、先を促
した。
「うん、それはわかった。で、霞が霞で無くなるっていうのは?」
「やぁん、今日はみんなせっかちねぇ。お姉さん火照っちゃう! で、霞ちゃんのことだけど
ね。今回はそのご主人様が仕掛けた裏ワザが裏目に出たみたいなのよ」
「裏目?」
「これはわたしたちにとっても想定外だったのだけど、霞ちゃんの想いが強すぎたみたいでね、
そのせいで彼女、矯正力とシンクロしちゃってるのよ。その結果、本来意志なんて持っていな
い世界を正常に運営させるための力が、いま霞ちゃんの中に顕現しかかっているの。まあ、当
然と言えば当然よね。いくら霞ちゃんといえども、たった一人で十万人の大軍勢を相手にする
のは流石に無理。ということは、自分の力で不可能なことをやろうというのだから、不足した
分はどこからか借りてなんとかするしかないでしょう?」
「それが……」
「そう、矯正力よ。でもそうやって世界の矯正力に力を借りれば借りるほど、霞ちゃんの自我
は薄れていくことになる。そして最終的に、霞ちゃんは霞ちゃんじゃなくなってしまうかもし
れない。最悪の場合、〝天の意志〟っていう、この世界を運行しようとする力に意識を乗っ取
られてしまうかもしれない」
そこまで聞いたとき、既に一刀の顔色は蒼白になっていた。