恋姫†無双~ドキッ☆乙女だらけの外史演義~ 18at EROG
恋姫†無双~ドキッ☆乙女だらけの外史演義~ 18 - 暇つぶし2ch150:名無しさん@初回限定
09/10/22 21:53:27 lwf8V6AD0
支援

151:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(4/22)
09/10/22 21:54:08 3R0sVMvC0
 そして力一杯、奥歯を噛む。
(例え天命だとしても―)
 力を込めて、強く強く強く。
 割れてしまうのではないかというほど強く噛みしめる。
(―あんな光景を私は認めない!)
 ごく自然に、死を受け入れたはずの体が動いていた。

 蓮華の強固な意志が、霞を突き動かす〝天意〟とは別の〝天意〟を引き寄せた瞬間であった。

◇◇◇

 バサリという音を立て、斬り捨てられたものが、宙を舞って地に落ちた。
 その結果に霞の目がわずかに見開かれる。
 霞にとって予想外だったのは、それはいま眼前で起こったこと。
 蓮華は身を屈めて、咄嗟のところで断頭の一撃を避けていた。
 先ほど斬られて落ちたのは、蓮華の首ではなく、遅れた彼女の後ろ髪である。

「孫権さまをお守りしろ―!!」

 間髪入れずに誰かが叫んだ。
 その声を契機に、蓮華の危機を救うべく、再び呉の勇士たちが束になって霞に群がり始める。
 しかも、その数は先ほどの比ではない。
 『軍』の様相を呈した兵士たちの群が、その戦力を霞個人に叩き付けようとうねる。
 だが、そこに、
「張遼将軍に続け―!!」
 今度は遅参した奇襲部隊八百が、怒濤の勢いで乱入した。
 二つの波がぶつかるようにして両軍が激突し、混乱が巻き起こる。
 すると先ほどまで安穏としていたはずの場所が、一瞬で戦争の狂気が支配する乱戦場と早変
わりした。


152:名無しさん@初回限定
09/10/22 21:57:02 U4y6lJTh0
紫燕

153:名無しさん@初回限定
09/10/22 21:57:41 Uh07aTGa0
支援

154:名無しさん@初回限定
09/10/22 21:57:44 yEbcTzIO0
支援

155:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(5/22)
09/10/22 21:58:12 3R0sVMvC0
「蓮華さま! 早くこちらへ!」
 亞莎は蓮華の腕を素早く掴むと、彼女の体を引きずるようにして後退しようとした。
 既に周囲は張遼旗下の騎馬隊と、付近に待機していた本隊の兵士が入り乱れた混迷の極みに
陥っている。
 この混乱に紛れてしまえば、再び探し出すのは容易ではない。
 そう考えてのことであり、対する霞も重々そのことを承知していた。
「逃がさへん――っ!!」
 霞は手近にあったもの、斬りかかろうとしていた呉兵の首を左手一本で握りつぶしながら持
ち上げると、その体を勢いよく蓮華たちがいる方に向かって投擲する。
 だがそれは、狙いがそれて彼女たちの近くに着弾。その場にいた何名かの兵士を巻き込んで
赤い花を咲かすに留まった。
「もう一度っ!」
 コツは掴んだ、次は外さない。
「ひっ!? ぎゃっ!」
 霞は別の手近な兵士を投射物に定めると、中指と薬指でその兵士の両の眼窩を抉って、軽々
持ち上げた。
 頭蓋を砕きながら、再び振りかぶって投擲体勢に入る。
 しかし、そうして執拗に追撃しようとする霞の腕を、幾人もの兵士たちが掴んでいた。

「孫権さま!」
「孫権さまをお守りするんだ!」
「孫権さまには指一本触れさせん!」


156:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(6/22)
09/10/22 22:01:46 3R0sVMvC0
 一塊、叫びながら団子のようになってしがみついてくる兵たち。
「ちぃっ!」
 霞はそれに構わず、掴んだ兵士を投げつける。
 けれども、彼らの執念のたまものか、霞の投擲は第二投も逸れて、蓮華たちには当たらなか
った。
「っ、邪魔くさい!」

 手元を狂わされた霞は、感情を爆発させて、素手で、飛龍偃月刀で、周囲の兵をなぎ倒して
引きはがそうとする。
 だが、それすらさせじと、兵たちはますます群がっていく。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
 人波に呑まれ、見えなくなっていく張遼。
 蓮華がそのとき最後に見たのは、天に吠える鬼の姿だった。

「今すぐこの場を離れます! 私に付いてきてください」
「しかし……」
「わかってます! でも、速く!」
 必死の形相で言う亞莎。彼女が言いたいことくらい蓮華にもわかる。
 敵が迫るいまは、なにを置いてもまず逃げなくてはならないときなのだ。
 だが、だからといって自分を助けるために命を投げ出した者たちを簡単に切り捨てられるほ
ど蓮華は非情ではなかった。

 と、そのとき、蓮華は斬られた後ろ髪がパチパチと爆ぜる錯覚を覚えた。
 不意に、首だけで後ろを振り返る。
 そしてその瞬間、蓮華はこれまでみたことがない現象を目撃した。
 雲一つない蒼天がまばゆい光を発したのだ。
 同時、耳をつんざく雷鳴。


157:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(7/22)
09/10/22 22:04:21 3R0sVMvC0
 落雷である。
 空は雲一つない青空が広がっているというのに、雷である。
 不可解なそれが至近に落ちたのだと理解するのに、蓮華は半秒ほどの時間を要した。
 蒼天に雷。蓮華はその因果に、人の力では及ばぬ畏怖すべきものの存在を感じた。
 そう、まるでそれは、龍のような……。
 そこまで考えたとき、蓮華の中で先ほど張遼と対峙したときに見た白昼夢がフラッシュバッ
クした。

 鮮血の世界。
 ただ一人立つ張遼。無数の死体。
 仲間たちの無残な姿。

 結果的にはそれが、霧のようにかかった蓮華の迷いを振り払ってくれた。
 後悔はあとに残し、いまはただ走る一事である。
「行きましょう亞莎!」
 あのような未来は、なにを置いても避けねばならない。
 そのために、彼女は自分にできうる限りを尽くすつもりであった。
 二人は走る。

 ◇◇◇

「落石だ!」
 そう叫ぶ誰かの声が聞こえた。
 そして一瞬遅れて、ガラガラと音を立てて転がり落ちてきた巨石が、前方を塞ぐのが見えた。
 峡谷の矮路。迂回路はない。
 唯一の進むべき道が、閉ざされてしまった。


158:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:07:08 5FoJAmkk0
支援です。

159:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(8/22)
09/10/22 22:07:25 3R0sVMvC0
「くそっ!」
 落石によって起こった砂埃を前にして、なんとか馬の足を止めた一刀が毒づく。
 敵の罠は周到だった。
 まるでこちらの動きを察知しているかのように、的確に仕掛けられた罠の数々。
 仕掛けた物の邪悪さがにじみ出ているようなそれは、見事に一刀率いる軍の動きを制限し、
翻弄した。
 そして彼らはついにいま、袋小路へと追い詰められたのだ。

 後方を振り返れば砂塵。
 迫ってくる敵軍のものである。

 思わず奥歯を鳴らしてしまう。
 一刀が引き連れてきた兵士の数は千五百。
 向かっている敵軍の数はわからないが、こちらより少ないということはないはずだ。
 下手をすれば、何倍もの大軍かもしれない。
 普通に考えて、正面からぶつかり合ったら万が一つの勝ち目もない。
 第一、こうして兵を引き連れてはいるものの、一刀自身は戦闘指揮の経験など皆無なのだ。
 だが、それでも……。
「全軍、戦闘準備だ!」
 生き残らなければならない想いは、一刀の中で煌々と燃えていた。

 汗の滲む手で腰に差した剣を掴むと、その硬さが、自分のいる場所が戦場であることを嫌が
応にも思い知らせてくれた。
 顔を引き締め、前を睨む。
 戦う覚悟を決めて、固唾を呑んで敵を見た。
 すると、こちらに向かって迫っていた呉軍の動きが、急に緩やかになったのがわかった。
 一刀がじっと見守る中、しばらくしてその動きが止まる。


160:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:10:22 gBk3z0pA0
支援

161:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(9/22)
09/10/22 22:10:44 3R0sVMvC0
 動きを止めた呉軍。一刀の目には、その中から馬に乗った人間が二人が前に出てくるのが見
えた。
 女の子が二人だ。
 だが、一刀もこの世界に来て一日二日ではない。
 一見して可愛らしい女の子だったとしても、それが外見通りとは限らないことは、身にしみ
てわかっていた。
 一刀は軍を率いているのは、間違いなく彼女たちだろうと、そう思った。
 やがて、対面する両軍の間で馬を止めた二人は、名乗りを上げた。

「我が名は周幼平!」
「我が名は甘興覇! 袁軍の将に告げる。貴殿らは完全に追い詰められている、言い残すこと
があれば我らが聞こう!」

 朗々とした声が袋小路に響く。
 一刀の予想は的中した。
 周泰と甘寧。一刀が知る三国志の中では、二人とも赤壁の戦いでも活躍した呉軍の将だ。
 間違いなく彼女たちが、自分たちを追い詰めた軍の統率者だろう。

 そして、その彼女たちの登場に、一刀は一筋の光明を見た。
 軍を止めたということは、今すぐ戦いになるということはないに違いない。
 となれば、まだ話し合いの余地はある。
 どうにかして彼女たちを説得できれば、生き残る可能性はぐっと増すかもしれない。


162:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:10:51 lqMpbX4oP BE:1695236257-2BP(1830)
支援

163:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(10/22)
09/10/22 22:13:20 3R0sVMvC0
 一縷の望みに賭け、甘寧たちがそうしたように、一刀も馬を進ませ前へ出た。
「俺の名前は北郷一刀。世間じゃ〝天の御使い〟なんて呼ばれてる」
 大声を出さずとも、互いの声が聞こえる距離で一刀はそう言った。
 その距離まで近づくと、周泰と甘寧、二人の姿もはっきりと目にすることができた。
 二人とも、肌の色は江南の民の特徴として聞かされていた、やや濃い色をしている。
 片方は鋭い目つきの女性で、髪の毛を頭の後ろでお団子にしているのが特徴的である。
 もう一人は背中に長い刀のような武器を背負った忍者?のような格好をした長い黒髪が美し
い少女だった。
 共に、思わず見とれてしまうほどの美少女である。

 一刀の名乗りを聞いて、二人はすぐに目配せをする。
 そして体を強ばらせて息を飲む一刀に、目つきの鋭い方の娘が言った。
「ちっ、やはりか。おい、明命。どうやらおまえの危惧していたとおりのようだ」
「そのようですね。ここに張遼がいないとなれば……本隊を狙った奇襲が本命なのかもしれま
せん」

 ―しまった。
 会話を耳にした一刀の顔が青く染まる。
 二人の言葉を聞いて、己の迂闊さを悟ったのだ。
 彼女たちは敵に情けをかけるために呼びかけたのではなかった。
 自分たちが追いかけていた敵が、本当に張遼だったのかを確かめるための引っかけだったの
だ。
 そして一刀はまんまとそれに引っかかった。
 ならば、そんな間抜け相手に彼女たちがとる行動は一つだろう。


164:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:13:33 5pyBFWu50
支援


165:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:14:55 yVLEYBca0
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166:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:15:56 cXYOaQb+0
支援

167:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:15:58 gBk3z0pA0
支援

168:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:16:50 5pyBFWu50
支援

169:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:17:10 yEbcTzIO0
支援

170:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(11/22)
09/10/22 22:17:40 3R0sVMvC0
「ならば貴様に用はない。ここで死ね」
 目つきの鋭い方の娘、甘寧は幅広の曲刀を頭の後ろ手に構える独特のポーズでそう言って、
問答無用で躍りかかってきた。
 殺す気で襲ってくる相手に対して、説得もへったくれもない。

 一刀は慌てて剣を抜き、上段に構えようとするが、
「遅い!」
 迎撃体制が整う前に、甘寧は攻撃の間合いに入っていた。

 風を切って剣が振るわれる。
 万事休す、そう思ったそのときそのときであった。

 思いがけず、救いの主は現れた。
 黒い影が一刀の前に立ちはだかったのである。

 音もなく唐突に割っては入った何者かは、既に攻撃モーションに入っていた甘寧の腕を狙い、
信じられない速さの蹴りを繰り出した。
 ぱぁんという、足と手がぶつかり合う音が響く。

「ぐうっ!」
 予想外の闖入者の乱入に、甘寧は合わせられた手を庇いながら後退した。

 そうやって登場した者の姿を見て、一刀がうわずった声を上げる。
「お、おまえは……っ!」
「そう―」
 眼前に、甘寧を蹴り飛ばした姿勢のまま、微動だにせず片足でそびえ立つ巨身。


171:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:18:59 lqMpbX4oP BE:484353825-2BP(1830)
しえんぬ

172:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:19:06 dQswG6Tz0
しえん

173:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:19:21 5FoJAmkk0
支援です。

174:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:20:00 cXYOaQb+0
支援

175:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:20:15 Uh07aTGa0
支援

176:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(12/22)
09/10/22 22:21:00 3R0sVMvC0
 ピンクのヒモパンビキニに、はちきれんばかりの特盛り筋肉。
 ワセリンでも塗っているかのようなテカテカのお肌。
 スキンヘッドの横、綺麗に結わえられたお下げが二つ。
 それを括るこれまたピンクのリボンがトレードマーク……そんなマッシヴ、アンド、プリテ
ィー!

「ぬふぅぅん! この世に舞い降りた天使! ご主人様のアイドル、貂蝉ちゃん登場よ~ん!」

 マッスルポージングをきめる漢女道の継承者、貂蝉であった。

 そして更にもう一人。
「儂のことも忘れては困るぞ主殿よ! とわあああああ!」
 頭上から降ってきた声を聞いて上を向く。
 するとそこには、腕を組んだままで落下してくる、溢れんばかりの筋肉フンドシ髭燕尾スタ
イル。
 アクセントは屹立した髭と、力強い肉体がこれでもかと詰め込まれた純白のソックス+ロー
ファーの革靴。
 オリエント無敗のマスター漢女、卑弥呼が周泰の前に爆着した。

 あわや首はねの危機から脱した一刀は、なんとか助け出してくれた貂蝉に礼を言った。
「た、助かったよ……」
 流石にこんな場面での登場を予想していたわけでもなかったのだが、既に順応できる程度に
は、この不条理な存在とのつきあいができるようになってきた一刀である。
「いいのよん。愛するご主人様のためですもの。火の中水の中、戦場のど真ん中よぉん」
 そう言って貂蝉は、胸の前に手をやり交差する。古くさい言い方だと『だっちゅ~の』のポ
ーズである。
 ついで明らかに重力とも柔らかさとも無関係な動きで、胸筋がぴくぴくと震えた。
 流石にその光景を目にし、助けてもらった身で申し訳ないと思いつつも、一刀は顔を引きつ
らせた。


177:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:21:27 yEbcTzIO0
支援

178:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:22:42 5pyBFWu50
支援

179:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:23:09 Oi4t3I7g0
漢女来来!

180:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(13/22)
09/10/22 22:25:11 3R0sVMvC0
「立てるかしら?」
 そう言ってすっと差し出された手を、思わず条件反射的に手にとって一刀は立ち上がった。
「あ、ありがとう」
「どうってことないわよ、このくらい。それにしてもご主人様ったらぁ、単刀直入に聞くけど、
今回のこと、狙ってやったのかしらん?」
「狙ってやったって……え?」
「霞ちゃん、呉の大軍、八百の決死隊、絶体絶命の危機、それにこの場所。これら全て、ぜー
んぶ狙って揃えたのかということよ」
「えっと、話がいきなりすぎてわからないんだけど……?」

 貂蝉が人差し指を立てて話し始めようとしたところで、手を押さえていた甘寧が、怒りに身
を震わせながら眉間にしわを寄せ改めて体勢を低くした。
「おのれ……っ!」
 再び甘寧が構える。
 どこからか鈴の音が鳴る。先ほどのような無造作な構えではない、今度こそ本気だ。

 けれども、それを見た貂蝉ははぁと一つため息をつくだけだった。
「あららぁん。いまはわたしとご主人様が仲睦まじく愛の語らいをする時間なのよん」
「知るかそんなこと!」
「んもぅ、せっかちな女は損をするわよ」
「ぬかせっ!」
「う~ん、困ったわねぇ。わたしはご主人様と大事な話をしなくちゃならないんだけど……卑
弥呼、卑弥呼ー!」


181:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:25:27 AvotgMt+0
シ、シリアスが死…支援!

182:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:26:02 yVLEYBca0
支援

183:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:26:40 lqMpbX4oP BE:2179589459-2BP(1830)
存在感がすごいよなこの二人

184:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(14/22)
09/10/22 22:28:32 3R0sVMvC0
 その大声に、一刀も思わず貂蝉が声を投げつけた方を見た。
「なんじゃ! 儂はこう見えてもけっこう忙しいぞ!」
 少し離れた場所でそう答えた卑弥呼は、徒手対長刀の熾烈な戦いを繰り広げている真っ最中
であった。
「悪いんだけど、わたしがご主人様と話してる間、こっちの子の面倒も見て貰えないかしらー
?」
「なんじゃと!? さては貴様、主殿との甘~い時間を独り占めするつもりじゃな!? 許さ
ん、許さんぞぉっ!?」
「や~ねぇ。恋の戦いは正々堂々正面から、でしょう。抜け駆けなんてしないわよんっ。だか
ら今回だけはお願いよ。緊急事態だって、あなたもわかってるでしょう?」
「む、うむむっ! そうであったな。よし、あいわかった、今回だけじゃからな!」
「恩に着るわぁん」
 周泰と火花散る苛烈な戦いを繰り広げていた卑弥呼が、突然その場で強烈な踏み込みを行っ
た。
 するとまるでロケットが発射されるときのように、その巨体が足元の地面を爆発させて垂直
上昇。
「えぇっ!?」
 衝撃で突然目の前で巻き上がった土砂によって、周泰の視界が閉ざされる。
 その間卑弥呼は、無茶な筋力を活かした跳躍力で、重力を振り切って天高く跳び上がってい

 そして次の瞬間、どういうわけか卑弥呼は空中で進路を転換し、最初そうしたように、今度
は甘寧の前に『着弾』してみせた。


185:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:30:51 xg82J7/30
卑弥呼の戦闘シーンがGガン風味で再生される支援

186:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:30:52 5pyBFWu50
しえん


187:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(15/22)
09/10/22 22:31:39 3R0sVMvC0
「なっ!?」
 着弾の衝撃、甘寧の周囲にも土煙が舞う。
 あまりに突然の出来事に、甘寧の動きが止まる。
 そして驚きに上げた彼女の声に、野太い獣声が被さった。
「とおおおおおおおおおおお!!」
 視界を塞ぐ粉塵を切り裂いて、突き出された丸太のような太い腕。
 それは反応が遅れた甘寧の腹に滑り込み、〝気〟が込められた一撃を彼女に叩き付けた。
「ぐあっ!?」
 衝撃を受け、悲鳴を上げながら玩具のように衝撃に吹っ飛ばされる甘寧。
 そしてその体が、敵を見失ってきょろきょろしていた周泰のすぐ近くに転がった。
「し、思春殿!?」
 突如として跳んできた甘寧を見て、周泰が驚きの声を上げる。
 周泰が吹き飛ばされてきた方を見ると、そちらからはのしのしと巨体が歩いてくるところだ
った。

「ふしゅるるるる……。さあ来るがいい、尻の青い小娘どもめ。いましばらくの間、この卑弥
呼が相手をしてやろう」
 卑弥呼が仁王立ちに言い放つと、周泰と甘寧は、真剣な顔で頷き合って無言で武器を構えた。
 珍妙な格好とは裏腹に、その強さは本物。生半可な意気込みで戦って勝てる相手ではないと
踏んでのことである。
「くくくっ、お主たちには、わしが直々に正しいフンドシのしめ方というものを教えてやろう
!」

 少し離れた場所に、一昔前の特撮ヒーローものみたいな、冗談のような爆発が起きていた。
 呉の二人の意識が卑弥呼の方に向いたことを確認してから、貂蝉は改めて一刀に向き直った。
「ということで、これでしばらくは大丈夫そうね」

188:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:32:37 I86TJHDk0
支援です。

189:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:32:53 5FoJAmkk0
蓮華、色んな意味で貧乏くじ引いてるなぁw。

支援です。

190:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:33:49 yVLEYBca0
支援

191:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:34:07 lqMpbX4oP BE:871835292-2BP(1830)
しえんぬ

192:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(16/22)
09/10/22 22:34:46 3R0sVMvC0
「うーん、色々思うところはあるけど、いまはいいや……。それで、大事な話ってのは? さ
っき緊急事態がどうとか言ってたけど」
「一から話すと長くなるんだけど、ご主人様がやろうとしたことがちょっとばかり上手に行き
過ぎちゃって、まずいことになりかけてるのよ。そのことをわたしたちは伝えにきたの」
「?」
「わかりやすく言うとね、このままじゃ霞ちゃん、霞ちゃんじゃなくなっちゃうかもしれない
わよ」
「……は?」
 突然霞のことを持ち出されて、一刀の顔が呆けたものになった。

「で、ご主人様は、結局今回の状況を狙って作り出したのかしら? それとも偶然?」
正面から目を見据えられて聞かれたその質問に、一刀は内心でドキリとした。
「えっと、それは……ファクターを揃えてやれば、俺が知っている三国志の流れが再現される
かも知れないっていうことのこと?」
 京での玉璽を巡る騒動、官渡での一件、他にも細々としたいくつかの出来事。
 いま貂蝉がした質問。それは一刀がこの世界に来てから、何度か体験した、そういった不可
解な事柄から薄々感づいていたことを、肯定する問いかけであった。
「あはぁん。流石ご主人様、鋭いわね、ますます惚れ直しちゃう! っていうことは」
「……ああ。今回、ちょっと意識した」
「なぁるほど。分かるわん、今回みたいな苦しい局面を前にして、裏ワザに頼りたくなっちゃ
ったそのキ・モ・チ。でもね、それが今回は随分ととんでもないものを呼び覚ますことになっ
ちゃったのよ」
「貂蝉、さっきから回りくどく何のことを……だいたい霞が霞でなくなるって、一体どういう
ことなんだよ?」
 二人の会話がそこで途切れた。
 甘寧と周泰が、出鱈目理不尽の塊と戦っている音や声が聞こえてくるが、それを無視して一
刀はじっと言葉の続きを待った。
 貂蝉はそんな真剣な顔をした一刀の顔をしばらくみつめて、口元をほころばせると、再び説
明を始めた。


193:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:35:35 yEbcTzIO0
なんという不敗無双。で支援

194:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:36:18 lqMpbX4oP BE:387482742-2BP(1830)
しえん

195:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:37:34 6HIcgyv50
ふんどしのしめかたw

196:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:37:57 5pyBFWu50
しえん


197:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:39:32 YjKYnTA3O
≫195
なっちゃいない!本当になっちゃいないぞ!by師匠

198:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(17/22)
09/10/22 22:40:36 3R0sVMvC0
「ええ、ご主人様の読みは悪くなかったのよ。正史から派生した外史には、正史本来の流れを
なぞろうとする矯正力、あるいは復元力と言い換えても良いけど、とにかくそういうものが備
わっているの」
「やっぱり……」
 そうでないかとは思ったのだ。
 この世界は、一刀が知る三国志の世界とは全く違う。
 違うのに、希に一刀が知る歴史によく似たことが起こる。
 それを説明するには、貂蝉が言ったような大枠が存在していると考えるのが一番楽だったの
だ。
「だからご主人様がやったように、あえて状況やキャラクターといったファクター揃えてやれ
ば、正史の流れにちなんだ結果が得られる可能性は十分にあるわ」
 キャラクター、そしてファクター。その言葉に一刀はうっすら顔をしかめながらも、先を促
した。
「うん、それはわかった。で、霞が霞で無くなるっていうのは?」
「やぁん、今日はみんなせっかちねぇ。お姉さん火照っちゃう! で、霞ちゃんのことだけど
ね。今回はそのご主人様が仕掛けた裏ワザが裏目に出たみたいなのよ」
「裏目?」
「これはわたしたちにとっても想定外だったのだけど、霞ちゃんの想いが強すぎたみたいでね、
そのせいで彼女、矯正力とシンクロしちゃってるのよ。その結果、本来意志なんて持っていな
い世界を正常に運営させるための力が、いま霞ちゃんの中に顕現しかかっているの。まあ、当
然と言えば当然よね。いくら霞ちゃんといえども、たった一人で十万人の大軍勢を相手にする
のは流石に無理。ということは、自分の力で不可能なことをやろうというのだから、不足した
分はどこからか借りてなんとかするしかないでしょう?」
「それが……」
「そう、矯正力よ。でもそうやって世界の矯正力に力を借りれば借りるほど、霞ちゃんの自我
は薄れていくことになる。そして最終的に、霞ちゃんは霞ちゃんじゃなくなってしまうかもし
れない。最悪の場合、〝天の意志〟っていう、この世界を運行しようとする力に意識を乗っ取
られてしまうかもしれない」
 そこまで聞いたとき、既に一刀の顔色は蒼白になっていた。

199:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:41:20 AvotgMt+0
そういえば3人の共通点はフンドシか。性質は大分異なるがw 支援

200:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:43:48 gBk3z0pA0
支援

201:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(18/22)
09/10/22 22:44:18 3R0sVMvC0
「そ、それじゃ……俺のせいで、霞の身に大変なことが起ころうとしているっていうのか!?」
 自分の考えたことのせいで、彼女が危険に晒されることは分かっていた。
 そのことで悩みもした。
 だが、霞が霞でなくなる、そんなことが起こるだなどと、一刀は思ってもみなかったのだ。
「ええ、しかも悪いことに、その兆候はもう出ているの。……丁度いいわ、あちらを覧なさい
な」

 貂蝉が突然振り返って背後を指さす。
 つられて一刀もそちらを見た。

 顔を向けたその瞬間、蒼天の空が突如として輝いた。

 なにが起こったのかがわからず、怪訝な顔をする一刀。しかし、一瞬遅れて耳に届いた轟音
で、いまのが落雷の光だったことを理解した。
 見上げた先には雲一つない、気持ち良いほどの青空が広がっているというのにだ。
「か、雷? こんな晴れた日に?」
「青天の霹靂。いまのはただの雷じゃないわよ。霞ちゃんの願いと想いに導かれた〝天の意志
〟そのものよ」
「それじゃあ、霞はいまので……」
「そう、いまの落雷で彼女はまた一歩〝天の意志〟との同化が進んだわ」
「それを……、自分の身に起こっていることを、霞は!?」
「知らないでしょうねぇ。でも、知っていたとしても、いまの霞ちゃんなら喜んで〝天の意志
〟と同化する道を選ぶでしょうね」
「そんな、どうして……」
 と、口にしてはっと気がついた。

「俺の……ため?」

 決まっているじゃないか。
 彼女は自分のため、自分と生きる未来のためと言っていた。
 ならば彼女がいま戦っているのは、北郷一刀のためなのだ。


202:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:44:22 lqMpbX4oP BE:3051424679-2BP(1830)
しえんぬ

203:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(19/22)
09/10/22 22:48:01 3R0sVMvC0
 一刀の考えを肯定するように貂蝉が頷く。
「霞ちゃんはいま、すべてを投げうってご主人様を助けるために戦っているのよ。だから彼女
は決して止まらない、止められない。そして、そんな彼女の先には、自我を失ってこの世のす
べてをなぎ倒す化け物となる、そんな結末しか待っていないわ」

「主殿!」
 一刀が貂蝉の告げた言葉で愕然とする中、卑弥呼の大声が響いた。
「あら卑弥呼、もう終わったの?」
「うむ。あやつら二人して、先ほどの落雷を見た途端、血相を変えて後退していきよったぞい」
「ぬふぅん。なるほどねぇ、彼女たちの存在もまた、矯正力に組み込まれているのかもしれな
いわね。だとしたら虫の知らせの一つくらいあってもおかしくないわ。もしそうならご主人様、
残り時間はあまりないわよ」
「え?」
「左様。既に張遼は、度を超えてその力を振るいつつある」
「ええ、矯正力から力を借りてね」
「だ、駄目だそんなの! 速く霞を止めなくちゃ!」
 自分のために霞の身に重大なことが起ころうとしている、そう考えると居ても立ってもいら
れなかった。
 一刀は叫んで霞が戦っている戦場へと続く道を見る。
 そこで気がついた。先ほどまで隊伍を成していた呉軍の兵士たちが、一兵残らず消え去って
いることに。
 すぐさまその意味を悟る。周泰と甘寧が連れて戻ったに違いない。
 寿春へ抜ける最短ルートは、先ほどの落石で潰されてしまっている。これを迂回して別の道
を進むとなれば、相当の時間がかかる。
 どのみち援軍の要請は間に合わない。それを見越して自分たちは捨て置かれたのだ。
「……あ」
 と、そこまで思い至り、一刀は背後を振り返った。
 するとそこには一刀の命令を待つ、袁仲配下の兵千五百が控えていた。


204:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(20/22)
09/10/22 22:51:32 3R0sVMvC0
 彼らを置いてはいけない。
 だが、彼らを戦場に連れて行くのはもっと駄目だ。仮に連れて行っても、自分の指揮能力で
は彼らをみすみす殺すだけだと一刀にはわかっていた。
(だけど……)

 霞のことも捨ててはおけない、だがいまの自分には、多くの命を預かる責任があるのだ。
 一刀が一人で逡巡していると、そんな葛藤を見透かしたかのように貂蝉が言った。
「安心してご主人様。ご主人様の兵たちは、わたしがきちんと美羽ちゃんのところまで連れて
帰ってあげる」
「ほ、本当に!?」
「うむ、我らにかかれば、兵の千や千五百、相手するなど子供の手を捻るより容易いことよ」
「ええ。だからご主人様は、思った通りに行動してちょうだい」
「卑弥呼、それに貂蝉……」
 漢女たちの漢っぷりに、思わず鼻がツンとした。

 それを見て貂蝉が言う。
「おおっと、ご主人様ったら、門出に涙は似合わないわよん」
 続けて卑弥呼が言う。
「うむ、生きて返ってきたら、儂の胸で思う存分泣くが良い!」
 それを聞いた一刀の頭が、知らず自然と下がった。
 いまの一刀にはそうやって、正体不明の二人に、誠心誠意感謝を示すことしかできなかった。
「ほんと、二人ともありがとう。何度も俺を助けてくれて……」
「いいのよん、顔を上げてちょうだい。なんと言っても愛しいご主人様のためだもん。尽くす
女、それが……」

『漢女道!』


205:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:53:36 5FoJAmkk0
支援です。

206:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:54:01 gBk3z0pA0
支援

207:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(21/22)
09/10/22 22:54:22 3R0sVMvC0
 声をハモらせ、二人はタイミングを合わせて必要以上に筋肉を誇示するポージングをする。
 それを見た一刀がふらりとよろめく。
 しかしそれでも、二人の脳殺(脳細胞が死滅すること)に耐えて、一刀はあとを任せて駆け
出そうと……

「っとぉ、その前に!」
 見送りの言葉を言ったばかりの貂蝉が目に止まらぬ速さで一刀の前に回り込んでいた。

「うわぁっ! 心臓に悪いっ! っと、で、……なに?」
「ご主人様に言い忘れたことがあったわ。最悪、霞ちゃんが〝天の意志〟そのものになっちゃ
ったら気をつけてね。〝天の意志〟は真っ先にご主人様を殺そうとするかもしれないから」
「な、なんだって!?」
 その言葉に、卑弥呼も然りと頷く。
「うむ。〝天の意志〟からすれば、この世界を歪めている最大の元凶の一つは主殿であるから
な、最優先に狙われてもおかしくない」
「そんな、霞が……俺を?」
 冗談を言っている風ではない二人の様子に、一刀は呆然と呟いた。

「そうよ。だからもしかしたら、ご主人様はこれから見たくないものを見るかもしれない。そ
れでも行くのかしら?」
 その言葉で、一刀はまっすぐに問いかけるに貂蝉の瞳が、引き返すならこれが最後のチャン
スだと告げていることに気がついた。

 ならば答えはただ一つ。


208:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:54:32 6HIcgyv50
>>198
>状況やキャラクターといったファクター揃えてやれ
「を」が脱字かな?

209:名無しさん@初回限定
09/10/22 22:56:47 gBk3z0pA0
>>208
流れの中では埋もれて見逃すかもしれんから終わってからの方がいいんじゃないか?

210:美羽と七乃スピンオフ「遼来来2」(22/22)
09/10/22 22:57:57 3R0sVMvC0
「ああ!」
 一刀は力強く頷いた。
「それは〝天の意志〟であって本当の霞じゃない。俺は俺の知っている、霞を信じる!」
 迷うことはない。いま重要なのは霞を信じる、その一事だ。
 一刀の言葉に、貂蝉は満足したように頷いた。
「そう、だったらもうわたしたちには、頑張ってハッピーエンド目指すご主人様を応援するこ
としかできないわ。でも、これだけは覚えておいて、この世界で奇跡を起こすのは、いつだっ
て絆の力だってことをね」
「わかった!」
 そう言って、ぐっと親指を突き出した貂蝉に、一刀もまた、親指を突き出して返したのだっ
た。



 一度部隊に戻り、副官に事情を説明し終えた一刀が、馬に乗ってこの渓谷を去っていく。
 その姿を見送りながら、卑弥呼が唸る。
「ううむ。相変わらず主殿はイイオノコだのぅ。胸の漢女回路も思わずぎゅんぎゅん回ってし
まうわい!」
「そりゃあわたしたちのご主人様ですもの」
 腕を組んで手のひらを頬にあてて、ほうっと息をつく貂蝉。
「あとは、『揺り戻し』があるかどうかね」
「ああ」

 そうして一刀の姿が完全に見えなくなったことを確認してから、二人は落石によって塞がれ
た方の道を見た。
「さて、それじゃあわたしたちも始めましょうか」
「石ころごときの相手というのは、些か不満じゃがのぅ」
 そう言って、二人はバキボキと手をならしたのであった。

211:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:03:04 yVLEYBca0
支援

212:メーテル ◆999HUU8SEE
09/10/22 23:05:28 3R0sVMvC0
わたしの名はメーテル……投下終了を告げる女。
今回はやや世界観に踏み込んだお話よ。
「美羽と七乃」を含む、一連の流れの外史での世界観は、たまたまこうであるというだけのものよ。

>>208
「を」の脱字ね……わたしの名はメーテル、誤字脱字が多い女……
しっかり校正しても、取り切れていない女……

次は明日の午後9時30分からよ、鉄郎……

213:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:07:05 6HIcgyv50
おつかれー
今日のは怖くもあり、明日が楽しみでもあるな。

誤字脱字は、特に多いとは思わないけどw

214:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:08:29 A71Zw0Ya0
最近の大河バリの過剰演出ワロ

215:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:08:40 lqMpbX4oP BE:1356189247-2BP(1830)
おつかれメーテル

>「くくくっ、お主たちには、わしが直々に正しいフンドシのしめ方というものを教えてやろう!」
今回のポイントはここだな、俺はそう決めた

216:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:10:20 JB64hSdR0

ちょっとフンドシ買ってくる

217:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:13:43 gBk3z0pA0
メーテル氏乙です。
今なら恋すら圧倒しそうなくらいの霞だけど、そうなっている事への代償があるわけか。
しかし漢女2人がかっこいいな。
卑弥呼の着弾とふんどし指南には噴いたけどw

218:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:13:56 VX64GHYb0
乙です

蓮華を守る兵士達がファルコの為に身を挺する元斗の兵とダブって見えた

219:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:16:20 TI2uXH+C0
無双の力の源が分かった
そういう設定だったのね

220:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:22:51 Oi4t3I7g0
霞がついに張遼越えちまった

まぁ、外史的なねじれが発生すればそうなるわな

221:名無しさん@初回限定
09/10/22 23:51:33 YjKYnTA3O
メーテル氏乙~

もし暴走した霞が一刀を傷つけちゃったら正気に戻った時すんごい落ち込みそう

222:名無しさん@初回限定
09/10/23 00:34:04 c5sLI5O20
落ち込んだ霞を励ます?ために、七日七晩の閨無双があって欲しい

223:名無しさん@初回限定
09/10/23 00:53:31 RtJR3odhO
メーテル氏おつでした
一刀、頑張って霞を取り戻してほしい。

>>222
一刀なら余裕とみた

224:名無しさん@初回限定
09/10/23 01:25:12 Kvbw7h9W0
>223
霞のほうが持たないと思われ。

225:名無しさん@初回限定
09/10/23 01:29:55 JYMCH8Z+0
魏ルート寄りなら凪、無印寄りなら愛紗をカンフル剤に投入すれば元気になるのに……。

226:清涼剤 ◆q5O/xhpHR2
09/10/23 03:15:07 9kbk1Qjr0
専用版に無じる真√N関連のファイルをUPしました。

形式:Zipファイル
内容は以下の通りです。
・以前作ったものにワカレミチ篇を追加した出来事表
・州地図
・ワカレミチ篇終了時勢力図
・ワカレミチ篇終了時徐州地図
※自作ですので造りが甘いです。

一応アドレスも貼っておきます。
URL:URLリンク(koihimemusou.x0.com)
微妙ですがよければどうぞ。

227:名無しさん@初回限定
09/10/23 07:33:51 o04nZtgr0
>>226
おお、これは便利。乙です!

228:名無しさん@初回限定
09/10/23 13:33:32 1wK3d3Gt0
メーテル乙。
やっぱり合肥の戦いの再現だったか。
最初の大一番で、いきなり来来される蓮華カワイソス……

229:名無しさん@初回限定
09/10/23 20:39:44 OGLqIc1M0
最近ようやく時間できてまとめ読みしてるけど

 呉メインって少ないのな

230:名無しさん@初回限定
09/10/23 20:44:15 JYMCH8Z+0
呉は子供も出来て幸せに終わってしまっているからなあ。
補完的な短編ならともかく、長編は難しいんじゃないの。


演義的には呉がそもそも恵まれていないのはおいといてw

231:メーテル ◆999HUU8SEE
09/10/23 21:22:49 B2sCQU3T0
わたしの名はメーテル……今日も9時30分から投下する女。
今回でちょうど半分よ、鉄郎。

232:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:23:26 tpxXXWH9P BE:2373330277-2BP(2000)
待ってたよメーテル

233:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(1/21)
09/10/23 21:30:44 B2sCQU3T0
 荒い息をした馬が止まる。
 蓮華と亞莎。張遼の追撃を振り切った二人が到着したのは、後方に据えられた『もう一つの
本陣』であっ。
 まばらであるがきちんとした天幕が用意されているそこは、本来のそれに比べるとこじんま
りとした印象を受けるものの、しっかりと機能を備えた司令部なのである。

「そ、孫権さま!?」
 早速蓮華の到来に気づいた見張りの兵士が、慌てて跪いて礼をする。
 そしてそれに気がついた周囲の兵士たちも、腰を落とそうとするのを見て、蓮華は手を上げ
てそれを制した。
「ご苦労様。勤めを妨げるつもりはないわ。そのまま続けてちょうだい」
「はっ!」
 跪いていた兵が勢いよく立ち上がり、その他の兵たちも揃って礼をした。

「ふぅ……」
 職務に戻る兵士たちを見ながら、蓮華がため息をついたのも束の間、
「蓮華姉さま!」
 背中から突然襲われた。
 誰かが、勢いよく彼女の背中に飛びついたのである。
 こんなことをする心当たりは一人である。
「姉さま~姉さま~」
「こら小蓮っ!? もう、やめなさい!」
 負ぶさるように蓮華の背中にぶら下がっていた娘が、言い当てられて「えへへ~」と言いな
がら手を離して足を降ろした。
 振り向いた蓮華の前に立っていたのは、蓮華や雪蓮と同じ髪の色をした、まだ幼さが色濃く
娘だった。


234:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(2/21)
09/10/23 21:33:18 B2sCQU3T0
 彼女の名は孫尚香、真名を小蓮という。
 孫策、孫権に続く孫家三姉妹、末の妹である。
「ごめんなさーい」
 小動物のように屈託なく笑う彼女こそが、この司令部の本来の主人であった。
 城を攻略したあと、そこに入って駐留する軍の指揮官を任される予定だった彼女は、雪蓮の
指示の下、その予習としてこうして小さいながらも陣を一つ構えて、後方で控えるように言い
つけられていたのである。
 下手をすれば指揮系統の混乱を招きかねない強引な実地訓練であったが、今回はそれが幸い
した。

 本陣を攻撃され、司令官である蓮華が逃走するという手痛い失態を犯しながらも、呉軍の指
揮系統が崩壊しなかったのは、『第二の脳』とも言えるこの中枢があったからに他らない。
 偶然の産物であるものの、まさに不幸中の幸いであった。

 蓮華はじゃれついてくる小蓮を困ったような顔で見ながら聞いた。
「雪蓮姉さまは?」
「姉さま? 姉さまならなら、怖い顔をしてあの天幕にいるよ」
 言って小蓮が指さしたのは、他のものより一回り大きな天幕だった。
 おそらくそこが、本来小蓮がいなければいけない場所なのだろうことは容易に想像がついた。

 亞莎に目を向けると、彼女は心配そうな顔で蓮華を見つめていたが、蓮華が頷くと自らもお
ずおずと頷きを返した。
「では亞莎は、打ち合わせ通り張遼を足止めするための策で、時間を稼いでちょうだい。その
間に私の方も話をまとめるから」
「……はい」

235:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:35:11 u9bojy5AO
メーテルさん来た!
支援するぜ!

236:⑬
09/10/23 21:36:04 /d2hmY+uO
寝る前に支援

237:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(3/21)
09/10/23 21:36:58 B2sCQU3T0
 そう目を伏せて礼をした亞莎はなにか言いたげであったが、蓮華はあえてそれに気づかない
ふりをして無視した。
 そして、雪蓮がいるという天幕の方を見る。
 自分の考えは間違っているのかもしれない。けれど直感によるひらめきを常日頃から大切に
するように言っている姉なら、わかってくれるという気持ちもどこかにあった。
 と、そんなことを思っていたために、こちらを見て心配そうにしている小蓮に気づくのが遅
れた。
「蓮華姉さま、大丈夫?」
「……ええ。ちょっと考え事をしてしただけよ」
「うーん、そうなの? なんか、蓮華姉さまも亞莎もちょっと変な気がするけど……、そんな
に敵の奇襲ってすごかったの?」
 可愛らしく小首を曲げてそう聞いてきた小蓮の言葉に、蓮華が怪訝な顔をした。
「小蓮。ここにはどの程度の情報が入ってきている?」
 そして聞いて、自身の中で不安が増大したのを感じた。
「え? うぅん……姉さまたちの本陣が敵の奇襲攻撃を受けたってことくらいかな。あとはそ
のときに少し被害が出たってことくらいで 他のことはなんか色々混乱してて……って、姉さ
まどうしたの?」
「ん、いや……」
 危機感なく、きょとんとした顔でそう言う小蓮の姿を目にして、
 〝―危うい〟
 蓮華はそう思った。

 いま小蓮が話した情報には、肝心要のことがすっぽりと抜け落ちてしまっている。
 鬼神のごとき、あの張遼の異様が彼女には伝わっていない。
 それだけではない。あれだけ想像を絶する奇襲攻撃を受けたというのに、この陣地にはどこ
か緩んだ空気すら漂っている。
 見回すと、誰しもが先ほどまでの蓮華たちのような、勝利を確信した希望に満たされた顔を
している。
 そこには、あるべき危機感がまったく足りていなかった。


238:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:38:38 O/qpRETn0
支援

239:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(4/21)
09/10/23 21:39:23 B2sCQU3T0
 あるいは、姉が兵たちに動揺を招かぬようにと情報を制限しているのかもしれないとも考え
たが、それでもいまの蓮華には、この状況が危険な兆候のように思えてならなかった。



「姉さま、ただいま到着しました」
 天幕に入りそのように挨拶をすると、現れた司令官の姿に周囲が一斉に静まりかえった。
 その中で蓮華はさっと、天幕の中の人員を確認する。
 やはり、そこには本陣で散り散りになった群臣たちの姿がなかった。
 つまり、あの場からここへ辿り着けたのは、今のところ自分たちだけということである。

「無事で良かったわ。張遼の騎馬隊に奇襲を受けて、本陣を脱出したと報告を受けたときは、
流石にひやっとしたわよ」
「お恥ずかしい限りです」
 そう言って、蓮華は神妙に頷いた。
「んー……。それで? なにか言いたいことがありそうな感じだけど?」
「………」
 その言葉に、蓮華は内心で舌を巻いた。
 こんなふうに心中を言い当てられたとき、この姉にはなにかもすべてがお見通しなのでない
かと思ってしまうことがある。
 同時に、そんな姉を相手にこれから自分が行わなくてはならない説得の難しさを、蓮華は改
めて確認した。
 それでも、最初から気圧されるわけにはいかない。
 蓮華は雪蓮の目を見てきっぱりと切り出した。


240:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:39:24 bhsCb8Fa0
久々に支援

241:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:40:08 O/qpRETn0
支援

242:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:43:27 v9Ro/W/+0
しえn

243:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(5/21)
09/10/23 21:43:28 B2sCQU3T0
「姉さま。私はこの度の戦、一度撤退して体勢を立て直すべきだと考えます」

 開口一番の撤退進言。
 その言葉に、一瞬周囲がしんと静まりかえった。そして一斉に、先ほど以上にざわめきが馬
を支配する。
 周りにいた臣下たちは、蓮華の言葉にそろって驚愕と困惑を示している。
 それはそうだろう、彼らは勝利を確信していたのだ。まさかそれを蓮華の口から水を差され
るとは思っていなかったのである。
 だが一方の雪蓮は、聞いた直後こそかすかに驚いた顔を覗かせていたが、いまはもう平素通
りの不敵な笑みを浮かべているだけであった。

「……意外ね。あなたのことだから、真っ先に報復に飛び出していきかねないと思っていたの
に」
 片目を瞑ってそう返す。
 すると蓮華は、姉の言葉が終わって一呼吸の間を置いてから、口を開いた。
「このままアレと戦うのは、危険が大きすぎます。どれだけの犠牲が出るかわかりません。我
々は一度退いて対策を練ってから出直すべきです」
「……あなたの言いたいこともわかるわ」
「と、いうと……?」
「私も、張遼を相手にするのは割に合わない犠牲を払わなくちゃいけないことを分かっている
わ。でも、撤退するというあなたの意見に頷くことはできない。これは決戦なの。ここで張遼
を討っておかなければ、呉の将来に重大な禍根を残すことになりかねない。まずはなにがあっ
ても勝利すること、それが第一よ」
「姉さま! 姉さまは何も分かっていません! アレを相手にするのはそんな次元では……」
「蓮華、いいから少し頭を冷やしなさい。敵は実質単騎なのよ。確かにそれなりの被害を出す
ことになるでしょうけど、正面から落ち着いて戦えば、なんの問題もない筈よ」
「姉さま!」

244:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(6/21)
09/10/23 21:45:45 B2sCQU3T0
「それに、既に張遼を討つべく、徐盛に部隊を率いさせて向かわせているわ。だから安心しな
さい。万事心配いらないわ」
 いまの呉軍の司令官は蓮華である。
 だが、姉が徐盛を向かわせたことを、勝手と非難することはできない。
 それはむしろ、指揮不能となっていた蓮華の代わりを務めていてくれただけなのだから、感
謝こそすれ非難できよう訳がない。
「それに何より、既に四将軍が城を包囲して攻撃を始めているいま、こちらの勝利は時間の問
題。ここで退く道理がないわ」

 聞き分けのない子供に諭すよう言われた、穏やかな姉の言葉。
 彼女の言い分はまったく正しい。
 雪蓮が口にしたことが正論なのは確かだ。だが蓮華の理性ではない部分が、姉の判断は間違
っていると叫んでいた。
 惜しむらくは蓮華の中に、そのことをうまく伝えられるだけの言葉がなかったことである。

 戦闘中止を訴える司令官、続行を命じる王。
 言葉を交える二人の間には、驚くほどの温度差があった。
 そしてそれを埋めようとやっきになるほど、齟齬が生じて二人はますますかみ合わなくなっ
ていく。
 雪蓮の瞳に迷いはない。彼女はこの戦いの勝利を確信しきっている。
 それはそうだろう。いくら強いと言っても所詮は孤人。十万からなる〝群〟である呉軍が負
けるはずがない。そう考えるのが当然だ。


245:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:46:39 O/qpRETn0
支援

246:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(7/21)
09/10/23 21:48:13 B2sCQU3T0
 だが、一方で蓮華の考えはそうではない。
 あの張遼の強さは理屈じゃない。
 なにがあっても、あれは戦うべき相手ではないと感じているのだ。
 無論、蓮華の現状把握能力は、歴戦の猛者である姉のそれに遠く及ばない。
 けれど蓮華の中のなにかが、あの張遼は危険だとずっと警告しているのだ。
 ただの直感、されど直感。
 晴天の雷鳴に龍を感じて以来の、胸騒ぎがそこにはあった。
 なにか取り取り返しがつかないことが起きてしまうと、そう感じるのだ。
 蓮華はそんな心の声に従って、己の直感を信じて、更に辛抱強く説得を続けた。
 何より姉なら分かってくれる、そう思っていた。

 しかし、それが甘い見通しであったことを蓮華は知ることになる。

 ◇◇◇

「あの……」
 小蓮の言葉に、雪蓮と蓮華は反応しない。
 二人が話し始めてから、幾分か時間が経過していた。
 議論は平行線を辿り、やがてはその間に不穏な空気が漂い始めている。
 そんな兆候を察した小蓮がおずおずと口を開いたが―。
「………」
「………」
 二人は黙したままで、末の妹の言葉など一顧だにしない。


247:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:50:06 u9bojy5AO
更に支援

248:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:50:25 bhsCb8Fa0
支援

249:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:50:58 v9Ro/W/+0
しえん

250:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(8/21)
09/10/23 21:51:12 B2sCQU3T0
「張遼を討ち、城を攻略する。ほんの少しの辛抱、そんなに難しいことじゃないわ、私たちに
はそんな子供の使いもできないと言いたいのかしら」
「そうは言っていません。私はいまは一度引くべきだと言っているのです」
「好機を逃せば、次はないかもしれないのよ」
「大業を成すなら、始めこそ慎重になるべきです」
「慎重と臆病は違うわ……そろそろ冗談では済まないわよ」
「これも呉のことを考えてのことです」
 当初穏やかだった雪蓮の目が、徐々に本気の色を帯びてきているのが小蓮にもわかった。

 雪蓮と蓮華。この普段仲が良い姉妹は、滅多にないことだがこうして一度こじれ始めると、
互いに退けなくなってしまうことがままあった。
 こうと決めたら退かない強情な姉に、同じく強情な妹。
 あるいはそうした気質は孫家の血筋なのかもしれなかったが、こうして二人が衝突した場合
に仲裁するのは母孫堅であり、宿将黄蓋であり、つきあいの長い周瑜の役目であった。
 だが、残念ながらその三人はこの場にいない。

 だがいなくとも、誰かがやらねばならぬ。
 何よりいまは戦いの最中なのだ。ならば自分がやるしかないではないか。
 意を決して、小蓮は口を開いた。

「ま、まあまあ。蓮華姉さまも無事に戻ってこられたんだから、そんなふうにピリピリしなく
たって……」

 途端、
『『子供は黙っていなさい!』』
「ぴぃ!?」
 二人の口からぴしゃりと雷が落ちた。
 そしてそれを契機に、二人の言い合いは更に加速する。


251:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:51:27 OGLqIc1M0
紫苑

252:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:51:51 O/qpRETn0
支援

253:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:53:24 tpxXXWH9P BE:3487342098-2BP(2000)
しえんぬ

254:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:53:33 v9Ro/W/+0
しえn

255:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(9/21)
09/10/23 21:54:16 B2sCQU3T0
「大体! 姉さまは現状に危惧を抱いてらっしゃらないのですか!」
「兵たちの士気は高いわ! 確かに引き締めは必要でしょうけど、そのことで必要以上に慎重
になる必要もないと思っているだけよ!」
「私は必要なだけの慎重さを持つべきだと言っているだけです!」
「……っ! ねぇ蓮華、なぜそんなに焦っているの? まさか単騎相手に怖じ気づいたわけじ
ゃないでしょうね?」
「雪蓮姉さま方こそ、ことを急ぎすぎではないですか? 姉さまの思い描く孫家の天下とは、
いまを逃せば次がないものような脆弱なものなのですか?」

 あっという間に二人の緊張感が高まっていく。
 このままでは不味い、そんなことを思ったときだった。
 この場面に、実に間の悪い人間が一人、姿を見せた。

「こ、これは一体!?」
 と、天幕の入り口に立ち尽くして声を上げたのは、蓮華と別れて時間稼ぎの策を各方面に指
示を出して戻ってきた亞莎であった。
 状況を把握できないでおろおろとしている亞莎が、小蓮にはこのときばかりは輝いて見えた。
「亞莎! 丁度良いところに!」
「小蓮さま、これは一体どうしたことですか!?」
「何って見ての通りよ! 姉さまたちが大変なの! 早く止めてあげて!」
「え、ええ!? わ、私がですか!?」
 来て早々、思いもしなかった難事を託されて、亞莎が狼狽する。
 無理、絶対に無理。
 そんなことを思いながらも、も責任感の強い亞莎は断ることができず恐る恐るといった様子で
二人の間に割り入った。

256:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:55:48 v9Ro/W/+0
しえん

257:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(10/21)
09/10/23 21:57:17 B2sCQU3T0
「あの、お取り込み中申し訳ございません……呂子明、ただいま戻りました……」
 生きた心地がしないとはこのことか。
 そんな心境で、顔を服の袖で隠す仕草をする亞莎を見た二人は……
「丁度良いところに来たわね亞莎。あなたからもこの頑固者に言ってあげてちょうだい。いま
退くことがどれだけ愚かかということを」
「丁度良いところに来てくれた亞莎。一緒に姉さまを説得して欲しい!」
 蓮華と雪蓮、二人から両肩を掴まれた。
「え、えええ!?」
 無論、そんな展開になって、亞莎はますますおろおろとするばかりであった。

 一方、周囲にいた人間たちは、そんなやりとりに呆気に取られるばかりで、こっそりと外へ
抜け出す小蓮を見咎める者など居はしなかった。

 ◇◇◇

「まったく! 姉さまたちったら失礼しちゃうわ!」
 のしのしと歩く虎の背に跨った小蓮は、そのスジの人が見れば一発でメロメロになるような
仕草で頬を膨らませていた。
「なんでシャオのときは『うるさい小蓮』で、亞莎のときは『丁度良かった亞莎』なのよ。失
礼しちゃうわ、まったく、まったく、もうっ!」
 彼女が可愛らしく怒っているのは、一大決心をして止めに入った結果が、散々であったこと
が原因である。

「そりゃあ、シャオはまだ子供かもしれないけど……。中身は立派な大人なんだから!」
 そうやって小蓮がぷりぷりと頬を膨らませている間も周々はのしのしとその歩を進めていく。
「もういいもんっ! 周々!」
 その合図で、待ってましたとばかりにだっと虎が駆け出した。
 顔に当たる風が気持ち良い。
 そうしていると、ささくれだった気持ちが安らぐのを感じた。


258:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:57:37 O/qpRETn0
支援

259:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:59:44 v9Ro/W/+0
しえん

260:名無しさん@初回限定
09/10/23 21:59:52 tpxXXWH9P BE:726530235-2BP(2000)
支援

261:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(11/21)
09/10/23 22:00:27 B2sCQU3T0
 しばらく走って辿り着いたのは、陣中の一角にある小高い丘だった。
 丘の上からは、遠く果てまで続くのではないかという呉軍の陣容が目に入った。
 そこから見える光景は、改めて圧倒されるほどの迫力があった。
 これこそが、呉の力なのだと再確認させられて、見ているだけで沈んだ気持ちが充実するの
を感じた。

 だが、そんな光景を眺めていた小蓮は、ふと違和感に気がついた。
 普段より孫の字が書かれた旗が多い気がする。
 いや、意識して見ると、明らかに多い。本来立てる必要のない場所にまで孫旗が翻っている。
 これはどういうことだろうか、そんなことを思って丘からの景色を眺めていた小蓮の耳に、
不意に風に乗って人の声が届いた。
 聞こえてきた方へ意識を向けた小蓮は、突然視界の端が、朱に染まったのを目撃した。
 目にゴミが入ったのかと思い、手でごそごしと擦り、それからもう一度よく目を凝らしてみ
た。
 すると、目の良い小蓮はそこにいるものの正体がわかった。

 それは人だ。
 下は足元までの長い袴、上は露出の大きな服を着た女だ。それが手にした槍を操って、呉軍
の中で単身暴れ回っていた。
 女が進む先に血の花が咲く。女が進んだあとには何も残っていない。
 思わず自分の目を疑ってしまう、そのくらい、女は出鱈目に強かった。
 小蓮も、思春や祭の強さを間近で見たことがあるが、目にした女の強さは、更にその上をい
っていた。

262:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:03:24 s+kY3wkR0
F-2

263:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(12/21)
09/10/23 22:03:43 B2sCQU3T0
 少なくとも、槍の一振りでまとめて敵を数十人なぎ倒すような人間を、小蓮は知らなかった。
 と同時に、叫びの意味に思い当たる。
 それはつまり、『張遼が来た』ということだ。
 ついで、暴れ回る張遼を見ていて、無数に立っている旗の意味にも気がついた。
「なるほど。あれだけ旗が立っていたら、どこに姉さまたちがいるか分からないっていう訳ね」
 よく見てみれば、孫旗以外の旗は降ろされているか、控え目に掲げられている。
 これならば、旗を目印にして居場所を探すというのは難しいだろう。

「そして、あれが蓮華姉さまが言っていた張遼ってことね」
 呟き、改めてまじまじとその姿を注視して、小蓮はぶるりと身震いをした。
 返る血も構わず、獣のように突き進むその姿。
 確かにこんな壮絶苛烈な戦いぶりを見せられれば、蓮華の言うことにも頷けないでもない。
「でも、だったらっ!」
 そう言って彼女は、日頃から使っている戦輪ではない、腰の後ろに穿いていた弓を取り出し
た。
 弓腰姫、彼女がそう呼ばれる所以である弓を構え、小蓮は狙いを定めた。
 見える範囲に敵は一人しかいない。
 標的は視線の先で暴れ回っている、あの猛将だ。
「小蓮がやっつけちゃうんだからっ!」
 口だけは勇ましく、指先は楽器を爪弾くように繊細に。
 キリキリと、力を込めて弓を限界まで引き絞り、ただひたすら射る的だけに意識を集中させ
る。

264:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:04:13 O/qpRETn0
支援

265:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:05:00 v9Ro/W/+0
まずいな

266:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:06:28 bhsCb8Fa0
支援

267:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(13/21)
09/10/23 22:07:11 B2sCQU3T0
 赤い嵐のような猛威と、小蓮との距離が縮まっていく。
(まだ……)
 堪える小蓮。
 やがて、そうときを置かずに、張遼は小蓮の射程ぎりぎりに到達した。
(……まだよ)
 まだ指を離さない。
 視界の先で、おぞましくも美しい武の化身が近づいてくるのが見える。
 けれどもまだ矢は放たない。
(狙うなら)
 更に距離が縮まり、ついに張遼が必中の境を踏み越えた。
 その瞬間、
(いまっ!)
 彼我の距離が零になったような錯覚を覚え、小蓮はついに矢の束縛を解き放った。
 だが、
「っ!?」
 細い指が矢の束縛を解くのと同時、それまで余所を見ていた張遼の顔がぐるりと動き、その
視線が小蓮を捉えた。
(まず……っ!)
 振動を抑え込み、反射的に矢をつがえて第二射を放つ。
 一撃必中、息も尽かせぬ連射。それが的を射貫かんと風を切る。
(よしっ!)
 手応えはあった。
 間違いなく最高の射だった。
 絶対に命中する。
 しかしそんな確信は、次に目にした光景で霧散した。


268:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:08:16 tpxXXWH9P BE:1017141473-2BP(2000)
しえn

269:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:08:43 u9bojy5AO
シャオやべえ
支援

270:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(14/21)
09/10/23 22:09:23 B2sCQU3T0
「うそっ!?」
 呆気に取られて声を上げる。
 小蓮の動体視力すら及ばぬ速さで張遼の左手が掻き消えたかと思うと、次の瞬間その手が前
方でなにかを掴んだのだ。
 なにを掴んだのか、それを他でもない小蓮がわからないはずない。
 自分が射た矢を、張遼は空中で素手掴みにしたのだ。
 常識的に考えて、狙ってできる芸当ではない。
 
(でもっ!)
 と、小蓮は心中で続けた。

 飛来する、もう一つの矢。
 一の矢を止めた張遼は、続く二の目の矢を同じようにして槍を握った右手で掴み取った。
 左右の手が矢を掴んでいる。
 それを見た小蓮は、

「最後っ!」
 つがえて狙いを定めていた、三本目の矢を放った。

 一本目が掴まれた段階で用意していた三本目の矢が風を切って飛翔。
 そしてそれは、刹那ののち、ついに張遼の脳天を射貫いた。
 命中の拍子に張遼の首が跳ね上がり顔が上を向く。
(やった!?)
 小蓮が期待を込めて見つめる中、張遼の四肢がだらんと伸びたような形になった。
 この戦場において、決して止まることのなかった体が、ついにその動きが止めたのである。


271:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:10:23 u9bojy5AO
まだまだ支援

272:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:10:39 bhsCb8Fa0
歯、か…?

273:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:10:49 qBMre1oE0
こええええええええええええ

274:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:11:53 v9Ro/W/+0


275:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(15/21)
09/10/23 22:12:17 B2sCQU3T0
「やったああ!」
 丘の上では、射手が歓声を上げてその場で飛び跳ねていた。
「これがシャオの実力だもん! 思い知ったか!」
 いくら化け物じみていても、頭を射貫いて倒れぬはずがない。
 張遼を倒した。
 蓮華が恐れた敵を、自分が討ち取ったのだという喜びを、小蓮は飛び跳ねて表現する。
「ふーんだ、これで姉さまたちもシャオのことを無視できなくなるんだから!」
 そんな風にして、得意げになって笑う。
 そう、笑っていると……

 不意に、風が、唸った。

「え?」
 近くで、『ガオンッ』としか表現できない、耳にしたことのない音がした。
 そして遅れて頬に、強い風が吹き付ける。
 その次は、「がっ!?」「ぐっ!?」「ぎっ!?」という、悲鳴のような音。
 なにが起こったのか。
 それを確認するため、小蓮は慌てて声がした背後を振り返った。
 すると、少し離れたところに重なり合うようにして倒れている兵士たちがいた。
 いや、それは倒れているのではない。誰が見ても一目瞭然に、彼らは全員まとめて事切れて
いた。
 そして、それだけの惨状を生み出した兵器とは……。
「どうして、シャオの矢、が?」
 それだけ理解した小蓮は、そんな馬鹿なという気持ちを抑えて、恐る恐る向き直った。
 そこにあったのは先ほど動きを止めた張遼の体。
 だだ、先ほどまでと違う点を一つ挙げるとするならば……

 その左手が、前へと突き出されていた。


276:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:15:04 bhsCb8Fa0
し、しえん

277:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:15:49 v9Ro/W/+0
しえn

278:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(16/21)
09/10/23 22:16:26 B2sCQU3T0
「ひっ……!?」
 ぞわりとしたものが小蓮の背中を這い上がり、本能が彼女に小さな悲鳴を漏らさせた。
 そして小蓮が見ている先で、脳天を打ち抜かれたはずの張遼の首が、ゆっくりと動く。
 動いて、空を仰いでいた顔が、元の位置へと戻っていく。
 そうして地に対して水平に目線を戻した張遼の歯には、三本目の矢が挟まれていた。
 だが、そんなことより小蓮に恐怖を喚起させたのは、己をまっすぐに凝視するその目が、不
気味な金色に輝いていたことだった。

「見つけたァ!」
 喜声が上がる。
 小蓮の姿を確認した張遼は、音を立てて鏃をかみ砕き、それを口から吐き捨て、地面を蹴り
抉りながら天高く跳躍した。
「今度こそきっちりバラしたる!」
 白刃煌めく大槍を手にした張遼が、人間離れしたバネで空を舞う。
「うおおおおおおおおおおおお!!」
 叫び上がる獣の咆吼。
 逃げなくてはと思う。
 けれども耳にした小蓮の体が、彼女の意思とは裏腹にすくみ上がって硬直してい
た。
 〝―逃げられない〟
 そう感じた。

 けれども、天意はこのとき少女の味方をした。

「総員、てぇっー!」
 飛び上がった張遼に対して、待っていたとばかりの号令が響いた。
 弓兵隊長の合図の直後、無数の弓なりの音、そして飛来を示す風切りの音がした。
 一斉、空中という遮蔽物の一切ない場所に躍り出た獲物に、射かけられる矢の嵐。

279:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:17:39 tpxXXWH9P BE:1307754239-2BP(2000)
霞が…

280:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:17:47 v9Ro/W/+0
支援

281:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(17/21)
09/10/23 22:20:12 B2sCQU3T0
 跳躍した張遼を待ち構えていたのは、視界を真っ黒に埋め尽くすほどの飛翔物。
 実際に矢が到達するより先に、音でそのことにいち早く気がついた張遼は、小さく舌打ちを
してから、器用に手の中で飛龍偃月刀を風車のように回転させた。
「しゃらくさいわァっ!」
 すると張遼の槍の回転が、大車輪と化して矢を阻む盾となる。
 のみならず、槍の高速回転が大気を攪拌して気流を生み出し、強烈な竜巻を作って巻き込ん
だ矢の軌道までをも変えてしまう。
 標的を射貫くことなく矢が次々落ちていく。あるいは明後日の方向に飛んでいく。
 そうやって飛んでくる矢の濁流を防ぐ張遼の並外れた行動に、当の射かけた弓兵たちの方が
動揺を示した。
 当然だ。彼らはこんな人間がいるなどとは、露ほども思っていなかったのだ。
「怯むな! どんどん撃て!」
 兵たちの中に走った衝撃に気づいた別の弓隊長が叫ぶが、もう遅い。
 いまの霞には、矢勢が弱まったその一瞬は、十分すぎる猶予であった。
「ふ―っ」
 張遼は息を吸い込んで飛龍偃月刀の回転を止め、それから体を反らし、背負うようにして大
きく振りかぶった。
 そしてそれを、体の捻りを加えて、上から下へ、勢いよく地面に向かって振り降ろす。
「せぇえいっ!」
 かけ声と共に振り降ろされた得物から、不可視の衝撃が走った。
 瞬時に落着。衝撃が周囲の兵士を巻き込みながら、それは轟音と共に大地に大穴を穿つ。
 密集地帯に叩き付けられた攻撃は、無数の人間の血を顔料にして、戦場に大輪の花が咲かせ
る。
 だが、それで終わりではない。
「るぅらぁああああああああああ!」
 張遼は振り降ろした刃を、気合いの一声と共に、そのまま横へ滑らせた。
 すると刃の軌跡に合わせて、筆を走らせるようにクレーターから一直線に朱が伸びた。
 進む先に血柱が上がっていた。


282:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:21:32 tUx7pClB0
支援

283:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:22:07 v9Ro/W/+0
しえn

284:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:22:29 Z96HxN540
スゲエ・・・、支援


285:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:22:29 qBMre1oE0
支援

286:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:22:50 u9bojy5AO
一騎当"万"だなこの霞…
支援

287:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:24:00 +x6DimwV0
矢の雨さえ無効化するか・・・・・・
無双の武将どころじゃねえ支援

288:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(18/21)
09/10/23 22:24:29 B2sCQU3T0
 瞬間遅れて、数え切れない断末魔の叫びが上がる。
 大地に残された傷痕、吹き上がった血柱、呆然とした兵たちの頭上に遅れて降り注が
れる鮮やかすぎる赤い雨、そして耳を塞ぎたくなるような悲鳴。
 現実感すら喪失しかける、まさに悪夢としか思えない尋常ならざる壮絶な光景。
 それは兵たちの心に、かつてないほどの恐怖を呼び起こさせるに十分であった。

「う、うわああああああああああああああああああああああ!!」「逃げろ! 逃げろ逃げろ
逃げろぉ」「鬼だ、鬼が来る!」「張遼は鬼じゃ!」「助けてくれ! なんで俺が!」「嫌だ
ぁ! こんなところで死にたくない!」「遼来! 遼来!」「助けて、誰か助けて!」「俺は、
俺にはまだやりたいことが!」「あああああああああああ!!」「わあああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 一つの叫びが二つの叫びを呼び、二つが四つ、四つが八つ。恐怖は伝染し拡散する。
 唐突、残っていた兵たちが、一斉に恐慌状態に陥った。
 誰しもが我先にと、前のにいる人間を押しのけてその場から逃げ出そうとする。
 統率も、連携もなく、ただ本能をむき出しにして逃げようとする兵たち。
 こうなってしまうと、人の群れとは存外脆い。いかな訓練された軍隊であろうとも、一度瓦
解してしまえば、あとに残されるのはただの烏合の衆に過ぎない。
 結果としてこのとき、周囲の呉軍は雪崩をうって総崩れとなった。

「ひ、ぃ……や、」
 目の前には滅多矢鱈と逃げ惑う大人たち。
 半潰走状態に陥った軍勢、その混迷のただ中に、腰を抜かして尻餅をついた小蓮がいた。
「グルルルル……」
 唸りを上げる一頭の獣がその前に出る。
 彼女に危害を加えようとするものから守護せんと、白虎は牙を剥いて威嚇するが、歩いて近
づいてくる張遼はそれを気にした様子を見せない。
 それどころか、
「その背格好、さしずめ孫家の末妹ってとこか……まあええわ、あんたをバラして晒して血祭
りにして、孫策の奴を退くに退けんようにしたる」
 そんなことを言いながら、彼女は近づいてくる。


289:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:26:38 O/qpRETn0
支援

290:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(19/21)
09/10/23 22:27:23 B2sCQU3T0
 手首のスナップを効かせてビュンビュンと飛龍偃月刀を試し振りして、黄金の目をした張遼
が近づいてくる。

 距離が狭まり緊張が高まる中、ガタガタと奮える小蓮の前で、ついに猛虎が吠えて獲物に襲
いかかった。
 それを見て小蓮が泣きながら叫ぶ。
「周々駄目ェェっ!!」
 けれどもその制止を聞かず、周々備わった鋭い牙と爪で、敵を引き裂かんと飛びかかる。
 そうして襲いかかってきた肉食獣を、張遼は、
「うるさい」
 轟音を伴った片手の一撃で、なんでもないように打ち払った。
 子猫でも振り払うように軽さで動かされた左手の裏拳。それが周々の大きな体を軽々吹き飛
ばしたのだ。
 そうしてはね飛ばされた周々が、一度二度と地面をバウンドして転がり停止した。
 吹っ飛ばされ、倒れて横たわった純白の毛皮は、土と血で無残に汚れていた。
 それでも主人を守ろうと、周々は懸命に体を起こそうとする。
 そうしてゆっくり起き上がり、よろよろと動こうとして……再びその体が崩れるようにして
横向きにどっと倒れ込んだ。
「周々、周々ぅ!!」
 小蓮の呼びかけにも反応しない。
 ただぐったりと倒れ込んだ周々を見て、小蓮はただただ恐怖で打ち震えた。
「さ、これで守ってくれるもんは、もうおらんようになった」
「ひっ……!」
 後ずさる小蓮を、追い打つ張遼の氷の言葉。
「いまの虎は手加減しといたから、もしかしたら息はあるかもしれへん。でもあんたの場合は
確実に殺す。絶対に死なす。酷たらしく殺す」
「ひっく、やだ、周々、誰か……」
「ははっ」
 笑った言葉とは裏腹に、目を黄金色に染めた張遼の顔は、仮面でも被っているように表情が
ない。
 人とは思えぬ暴力的なまでに濃密な存在感。それが死を引き連れて近づいてくる。


291:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:28:44 bhsCb8Fa0
ばけものと化してるな・・・

292:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:29:08 u9bojy5AO
怖ぇ…
支援

293:美羽と七乃スピンオフ「遼来来3」(20/20)
09/10/23 22:30:59 B2sCQU3T0
「誰か、助けて……っ!」

 目をきつく閉ざし、服の胸元を強く握り、恐怖に震える少女はそう、『誰か』に呼びかけた。
 けれども、ここでそれを聞き届ける者はいない。
 二人の姉はいない、仲間たちもいない。兵たちは皆、小蓮のことなど気にかけていない。
 この場で助けてくれる者など、いようはずもない。
 それでも、いまの小蓮にはそんな願いを口にすることしかできなかった。
 無為の願い、絶望の祈り。

 だが、この物語にはそれを聞き届ける者がたった一人だけいた。

「わかった」
 と、そう力強い声が聞こえた。

 期待などしていなかった。
 されど、返るはずのない声が返ってきた。
 小蓮が涙に濡れた顔を上げる。
 そこには、見たことのない青年が、こちらに背を向けて両手を広げ立っていた。

「俺が君を、必ず守ってみせる。そして絶対に、彼女に君を殺させたりなんかしない」

 そう宣言した男のことをを、小蓮は知らない。
 彼こそが天から袁術の下に舞い降りたと噂される男、『天の御遣い』北郷一刀であることを、
彼女はまだ知らない。
 けれど、その背中はこれまで見てきたどんな男のものよりも、強く、たくましく、大きかった。

294:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:31:10 v9Ro/W/+0
間に合ってくれ

295:メーテル ◆999HUU8SEE
09/10/23 22:35:05 B2sCQU3T0
わたしの名はメーテル……またまたまたまたうかつな女。
21分割ではなく20分割だったのよ鉄郎……

今回の投下分で半分を経過よ。
一刀登場というところで、続きは明日の午後9時30分からよ、鉄郎……

296:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:35:17 u9bojy5AO
一刀キタ━(゚∀゚)━!!
20/20って事は今回はここまでかな?
続きが楽しみすぎる
投下乙でした!

297:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:35:40 qBMre1oE0
乙です
一刀さんおいしいなぁ

298:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:37:08 tpxXXWH9P BE:1549929784-2BP(2000)
メーテルおつつ

一刀間に合ったよかったああああ

299:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:38:14 bhsCb8Fa0
アレの前に立てるとは・・・
さすがちんこだ!俺(ry

300:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:40:03 o04nZtgr0
>>295
いいところで、お預けとはあああ

301:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:40:17 ntAJvKdcO
乙ですよ~

今回の霞こえー!

というか霞が一刀に怪我させちゃわないとしても、こんな化物状態を見られたらそれだけで女の子としてかなり致命的なショックを受ける事確定

302:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:43:01 O/qpRETn0
メーテル氏乙です
恐るべしシチュエーションブースト効果
さて、こっからが一刀の見せ場だな
どうやって霞を止めてここから離脱するのか…

303:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:46:17 MqRPNgeN0
どうしよう。男前過ぎるちんこさんの登場にときめいた。
おのれメーテル、どう乙してくれよう。

304:名無しさん@初回限定
09/10/23 22:51:31 JYMCH8Z+0
メーテルおつかれー。
もう人外と化しているな。

ところで、>>233 (1/21)

>蓮華と亞莎。張遼の追撃を振り切った二人が到着したのは、後方に据えられた『もう一つの
>本陣』であっ。

たぬきになってる。

305:名無しさん@初回限定
09/10/23 23:14:48 gTkPJWd90
むかしPS2で戦神というソフトがあってだな
霞の戦い見てるとそんな感じがする…

亞莎の策が足止めにもなってないしorz
肉の壁と偽の旗で時間稼ぎしてるだけじゃないか…
シャオは無謀だったかも知れないが呉の姫としては正しかったと思う
もし矢を放たなければ霞は眼下の兵を一兵残らず殺していたはずだしね


306:名無しさん@初回限定
09/10/23 23:43:31 UvMuGGpa0
更新お疲れ様です。万夫不当とはこの事か・・・。

307:名無しさん@初回限定
09/10/23 23:45:17 WnJk+t4V0
>>262
おぬし、F-2支援戦闘機のことを言っておったな?

メーテルさん乙
張遼本人もここまで誇大に強さを評価されるとは思ってなかったろうなぁ
いくら特別な力が働こうとも

308:名無しさん@初回限定
09/10/23 23:47:11 JYMCH8Z+0
演義で史実より過小な描写しかしてもらえなかったことの反動だよw

309:名無しさん@初回限定
09/10/24 00:06:40 dwX4DEmQ0
メーテルさん乙

ところで、黒捷と張遼騎馬隊はどうなったんだろうか?
霞だけ残して、他は全滅しちゃったのか?

310:名無しさん@初回限定
09/10/24 00:51:44 l4gQ18460
乙でございます

多分、置いて行かれて付いてこれてないんじゃなかろうか……

311:名無しさん@初回限定
09/10/24 05:09:52 2Mz1T9vcO
シャオが殺される寸前とか、いくら何でもタイミング良すぎる
一刀がタイミング図ってたとしか思えない
それと先行した明命が到着してないって意味はまさか‥‥

312:名無しさん@初回限定
09/10/24 07:21:56 KvXRRDVl0
ご都合主義という言葉をしらんのかw
それにチョウセンがいるんだから細かいことはどうにでもなるさ

313:名無しさん@初回限定
09/10/24 15:43:28 K0x4e4aj0
また鬼引きかいっ

314:名無しさん@初回限定
09/10/24 16:03:42 UdW3+KB70
まだ半分って、一体何日連続でやる気なんだ……長ぇ

315:名無しさん@初回限定
09/10/24 16:27:18 Kexva4/y0
もういっそ北郷帝みたいにまとめてロダに上げた方が良いような気がする。
それぐらい長いよね。
それに何かぶつ切りでお預け食らってる感じだ。
これなら遅くなっても良いから、書き上げ一度に全部投下して欲しいよ。

きっと皆、我侭言うなとか嫌なら見るなとか言うんだろうなw


316:名無しさん@初回限定
09/10/24 16:44:38 pG1NzQw50
>>315
安心しろ。少なくとも俺は同意だ。
二日連続はまだしも何日も連続だと他の作品の投下がどうなるか心配なんだ。
結構みんな夜投下のほうが多い気がするし……。

317:名無しさん@初回限定
09/10/24 17:17:15 X2kGLSBSO
最盛期と違って被る心配する程投下ないし、問題ないと思うけどね。

被ったらどっちかが後にずらせばいいし、それで今まで問題起きなかったんだから大丈夫だ。

318:名無しさん@初回限定
09/10/24 17:34:31 4rNWfSy8O
今日初めてTINAMIの話を見てみたんだけど

あっちの一刀さんは最強無敵なのが多いん?

319:名無しさん@初回限定
09/10/24 17:42:09 pG1NzQw50
>>317
まぁ、ここでSS書いてる人はいい人多いから問題は起こらないだろうとは思う。
だけど、やっぱり多くの人がスレを覗く時間帯を独占はさすがに……って思うんだよね。

しかも、一つ一つが長文だから投下終了まで割と時間掛かるわけだし、それに次の人が投下するまで
空けなきゃならない間隔を足すとそれなりの時間をとっちゃう。
だからその長時間のスレ使用に関しては二日くらいはいいけど、それを何日も続けるのはさすがにやりすぎかなって思ったんだわ。

とはいえ求める人がいるんだからそれも致し方ないんだろうとも思うんだけどね。

320:名無しさん@初回限定
09/10/24 17:49:58 QtY7hviH0
独占は前日以前に予告しておけば無問題
過去スレですでに話し合い済みだし、ちゃんとテンプレ化してるでしょ

321:名無しさん@初回限定
09/10/24 18:38:01 qh8trHQ0O
今回ほどの規模のはなかった気はするけどな

322:名無しさん@初回限定
09/10/24 19:08:17 +O3wFRQmO
一月とか独占しなきゃ問題無いんじゃない?
時間帯だって人が少ない時でも最終的にここの素晴らしいまとめサイトの神様がまとめてくれるから後からでも余裕で見れる。
さて、明日は休みだ、張来来をリアルタイムで見れるぞー!(;_;)

323:名無しさん@初回限定
09/10/24 19:45:11 WGOFpYuW0
ここに来て日の浅い連中は文句ばっかだな
もしかして生まれてからも日が浅いのか?

324:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:05:27 +O3wFRQmO
>323
これ最低6570日は生きないと出来ないはずだが(笑)

325:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:10:03 bHeXtRP80
長すぎて支援砲撃でスレが埋まったこともあったよな。

326:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:10:44 WGOFpYuW0
“奴ら”は騒ぎ出すと手がつけられんから、多少ぼかして言ってる

例.生まれて日が浅い(なんだ赤ちゃんか) 最近の世代(小学生くらい?)

“奴ら”は××だからこうすれば気づかない

327:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:13:23 bHeXtRP80
分りやすく言ってやれよ。
半年ROMれと。

328:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:26:15 71Sn5aHk0
みんな優しいな。
おれだったらこう言うわ。
「永遠ROMってろ」と。

329:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:31:38 WGOFpYuW0
では分かりやすく
君達は我々と違って気が異なるから、しばらくは板の様子を見たり規約や過去ログを見たりしてきちんとルールを理解しよう

330:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:32:02 8+W1mxbMO
>>319
ルールがちゃんとに決まってるからんだからもういいじゃん。

メーテル氏到着まで今まで通り待とうよ

331:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:40:42 +6vtZ8MD0
まずは>>12のメーテルの告知を見なおして、期間くらいは把握しておくと幸せになれるかと。

332:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:43:50 8+W1mxbMO
ごめん、思いっきり文章噛んでた
凪に蹴られてくるわ

333:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:46:30 GAN4tvreO
≫馬鹿野郎!閏年分が足りないぞwww

334:名無しさん@初回限定
09/10/24 20:48:50 GAN4tvreO
ぐあ!ミスった。すまぬ
≫333は≫324宛だ

335:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:07:28 +O3wFRQmO
>333
≫馬鹿野郎!閏年分が足りないぞwww
そんなの面倒だから省いたんだよ。
めんどくさい、息をするものめんどくさい。

336:メーテル ◆999HUU8SEE
09/10/24 21:23:04 joG4JVAA0
わたしの名はメーテル……投下する女。
なにやら物議を醸してしまったようね、お詫びするわ。
思うところがあってアップローダーを使うのは意図的に避けているのよ。
かといって100レス以上を一度に投下もどうかと思って、こういう形になったのよ。

今日の分は午後9時30分からよ、鉄郎……

>>304の鉄郎
たぬきね……しっかり「た」が抜けているわね……
まとめさん、>>233の3行目
「 本陣』であっ。」
の部分を
「 本陣』であった。」
に修正してくださると嬉しいわ……


337:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:27:35 bWbORHF+0
お待ちしております

338:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(1/21)
09/10/24 21:31:15 joG4JVAA0
「―かず、と?」
 立ちはだかった者の姿を認めた霞の瞳、その片方から黄金の輝きが失せる。
 それを見た一刀は、まだ手遅れになっていないことを確信した。
 ならばとるべき行動は一つ。
「霞! 話を――!」
 今すぐ彼女を止めなくてはならない。

 だがその言葉の途中で、霞の視線が引き寄せられるように、一刀の頭の少し上へ向けられた。
 そしてまた、両の眼が金色に燃え上がる。
 一刀がなぜと凍り付いた直後、その答えは舞い降りた。
 頭上をよぎった黒い影。そしてギィン、という耳をつんざく金属同士がぶつかり合った音。
 振り降ろされた剣を受け止めた飛龍偃月刀から、派手に火花が舞って散る。
「小蓮さまには指一本触れさせん!」
 何者かが一刀と小蓮、二人の頭上を飛び越えて躍りかかり、張遼に打ち下ろしの一撃を叩き
付けたのである。
 金属をぶつけ合った音に続いて、今度はドンッという音が響く。
 以前にも猪々子と関羽との戦いで聞いたことのある音である。激突に伴う強烈な衝撃波が、
周囲をなぎ倒す波紋と化して広がろうとしているのだ。
「危ないっ!」
 一刀は咄嗟に振り返り、小蓮の華奢な体が吹き飛ばされないように、彼女をしっかりと抱き
しめた。
 だがそうされる直前、小蓮は現れた者の名を叫んだ。
「思春!」


339:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:31:46 ENyldGqS0
支援

340:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(2/21)
09/10/24 21:33:48 joG4JVAA0
 そう、張遼と干戈を交えて、火花を散らしているのは他でもない、勇猛でならす呉の将甘興
覇であった。

「はっ、たああああっ! てぇいっ! せやあああ!」
「ちぃっ! こいつ、一々鋭いっ!」
 思春と霞、二人は互いに電光石火の剣速で、容易に相手を絶命させうる一撃をぶつけ合う。
 斬撃の速さ、重さ、技巧の深み、これらすべてにおいて張遼が勝っている。だというのに、
後先を考えていない思春の激しい攻勢によって、二人の戦いは一時的な膠着状態に陥っていた。
「せやけど……っ!」
 そんな猛攻は長く続けられない。
 消耗によって少しでも斬撃の手を緩めれば、流れは即座に張遼のものとなるのは明らかだっ
た。
 だからこそ、この膠着も時間限定のものに過ぎない。
「そらそらそらそら! 息が上がってきたで!」
「く、そっ……!」
 二人ともそのことはわかっている。
 そして、あと少しで流れが一方的なものになる、そんなときにこの膠着を崩す新たな声が割
り込んだ。

「はああああああ!」

 人海を切り裂いて風が吹く。
 いや、それは風ではなく、駆ける人だ。
 その風体は一見して理知的な服装や片眼鏡といった文官の装い。
 普段着ている長袖の上着はいまは無い、纏っているのは露出の多いインナーだけである。
 そして、いまその手を長袖の代わりに覆っているのは、無骨すぎる鉄甲『人解』。
 呉軍軍師、呂子明。彼女は知謀の士にあるまじき猪突猛進を発揮して、張遼に単独突貫を敢
行する。


341:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:33:51 ivTeMPAv0
これより待機を終了し、支援を開始する。


342:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(3/21)
09/10/24 21:36:27 joG4JVAA0
「これ以上―っ!」
 亞莎は〝気〟を足裏で収束・爆発させて即席のブースターにし、横合いから流星の速さで、
切り結ぶ二人の暴風圏深くに飛び込んだ。
 そしてすくい上げる豪烈な一撃を繰り出しながら叫ぶ。

「好きには―っ!」 
 それに合わせて思春も叫ぶ。
 目立ちすぎる亞莎の突撃に、嫌が応にも張遼の意識が裂かれたその隙を逃さず、逆に『鈴音
』の剣速を上げて斬りかかる。
「ちぃっ」
 けれども、いまの霞ならこの程度の同時攻撃、捌けぬ程でもない。
 足を動かし半身をずらし、左手を飛龍偃月刀から離して握り固める。
 拳による迎撃を試みようというのだ。
 が、そうやって張遼が二人同時に対応しようとしたところで、更にまた影。 

「させませんっ!」
 最後の人影は、突如として張遼の背後から音もなく現れた。
 長すぎる抜き身の長尺刀を手に、背後から鋭く袈裟に斬りかかったのは周幼平。
 手にしているのは魂すらも切り裂くといわれる名刀『魂切』。

「「「はああああああああーっ!!!」」」


343:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:39:12 ENyldGqS0
支援

344:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(4/21)
09/10/24 21:39:22 joG4JVAA0
 全身全霊、それぞれ渾身の力を込めた徒手、曲刀、長尺刀が走る、奔る、趨る。
 事前に打ち合わせたわけでもないだろうに、それでも三人の攻撃は、完璧にタイミングを合
わせた三種三様三方の連係攻撃となった。
 並の将なら、そもそも同時に走る剣筋を知覚できない。
 一騎当千の将であっても、まずもってすべては避けられない。

 しかし、
「くっ……」
 張遼は、それらの攻撃のことごとくを、歯を食いしばるだけで凌いでみせた。

 逆に、攻撃を仕掛けた呉将三者が、
「あぐっ」
「きゃっ」
「ぐうっ」
 短な苦悶をそれぞれ漏らした。

 背後から襲いかかった明命は、勢いよく引かれ突き出された石突きで鳩尾を突かれて撃墜さ
れた。
 右方からアッパーカットを見舞おうと踏み込んだ亞莎は、タイミングを見計らった張遼の左
拳によるカウンターをまともに食らって派手に吹っ飛んだ。
 左方から斬りかかった思春は、斬撃の隙間を縫って放たれた神速ので突きを受け流すので精
一杯だった。

 そうして三人それぞれ、強制的に距離を離される。
 結果として、彼女たちの攻撃は失敗した。
 のみならず、ダメージを受けた亞莎と明命に至っては、攻撃を受けた場所を押さえて呻いて
いる。


345:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:40:10 ENyldGqS0
支援

346:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:40:48 Y2hC8pPi0
支援

347:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(5/21)
09/10/24 21:42:15 joG4JVAA0
 だが、負けてはいない。

 彼女たちはこの難敵を前に、誰一人欠けることなく最初の衝突を生き残った。
 ここまでの道、立ちはだかるものすべてをなぎ倒して殺戮で切り開いてきた張遼を相手に、
後退するだけで済ませたのである。

 それは思春たちからすれば、馬鹿げた強さである張遼の『底』を見たと言うことだった。
「確かに聞いたとおり尋常ならざる強さだ……。だが、足止めに専念すれば止められぬほどで
はない!」
 思春が再びその目に闘志を燃やし、敵に向かって走った。
 彼女だけではない、あとの二人もそれに続く。



「霞!」
 嵐の勢いで猛然と戦い始めた霞と呉の三人。
 まばたきの間に、彼女たちの戦いは一刀の知覚できない領域に突入してしまう。
 もう一刀の目では、どんな戦いをしているのかさえわからなかった。

 歯痒い。
 自分の無力さを痛感する。
 戦場で何もできないことが、これほどまでに恨めしく思えたことはこれまでなかったかもし
れない。
 一方で思いのままに今すぐ彼女たちの間に飛び込んで、止めろと叫びたい衝動に駆られる。
 だが、そんな一刀を思い止まらせたのは、小賢しい理性と、一刀の制服を強く掴んで離さな
い少女の存在であった。

348:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(6/21)
09/10/24 21:45:27 joG4JVAA0
 彼女もまた、一刀の腕の中、泣きそうな顔をしながら戦いを見つめていた。
 北郷一刀という人間の中には、そんな少女を見捨てる選択肢はない。
 それでもしばし逡巡して、
「……くそっ、まずはここから離れないと」
 そう口にした。

 四人が戦っている場所から、一刀たちがいる場所までの距離は、目算で二十メートル程度。
 こんな距離、英傑たちの戦いを考えれば決して安全とは言い難い。
 一刀はとりあえず、少女の手を引いて、安全な場所へ移動することにした。
 『助ける』と言ったこの少女を守るためにも、ひとまず安全場所に連れて行くのが最善と思
われたのだ。
 何より霞にこの少女を殺させてはならない、そう思ったのだ。

 そうして今後の方針を決めて、一刀の行動を起こそうとしたときだった。
 彼は首筋に突然、ひやりとした金属の冷たさを感じた。
「小蓮から離れろ……」
 そこでようやく、一刀は自分の首に鈍く光る剣が押し当てられていることに気がついた。
 そして、その怒気を孕んだ声に小蓮が反応した。
「蓮華姉さま!」
 声をした方をゆっくりと振り返ると、そこには剣を手にした赤髪の少女が立っていた。
 鋭い目つきに、厳しい口調。
 決して友好的な雰囲気ではない。
 しかし一刀には、目の前の娘に、腕に抱えた少女や、以前出会った孫策に共通する雰囲気を
感じ取ったことの方が重要だった。
「まさか、君……」

349:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:46:26 WGOFpYuW0
支援砲撃、弾着、今!

350:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:46:33 skZ7j9oa0
紫煙

351:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(7/21)
09/10/24 21:48:19 joG4JVAA0
 口を開こうとした一刀だったが、蓮華はそれを途中で遮った。
「貴様、その妖しい出で立ち……一体何者だ。小蓮になにをするつもりだった!?」
 放たれた激しい言葉に、一刀は自分の腕の中にいる小蓮を見る。
 小さな彼女は自分の腕の中にすっぽりと収まっている。
 なるほど、これは確かに―
「ち、違うの姉さま!」
 と、蓮華に慌てて抗弁しようとした小蓮の言葉。その末尾を一刀は聞きとがめた。
「姉さま? っていうことはやっぱり……」
「姉さま聞いて、この人はシャオを救ってくれたの!」
「君は、君はもしかして孫権? 孫権仲謀?」
「シャオのことを助けてくれた命の恩人なの!」
「だったら孫権さん! お願いだから話を聞いてくれ。俺は『天の御使い』北郷一刀。なんだ
ったら孫策さんには会ったことがあるから、あとで確認したって良い!」
「かずと……一刀って名前なのねっ! じゃあじゃあ、これからは一刀って呼ぶから、シャオ
のことはシャオって呼んで!」
「このままじゃ取り返しのつかない、大変なことが起こるかもしれない! だから俺の言うこ
とに従って欲しいんだ!」
「姉さまお願い! 一刀は何も悪くないの! 一刀はシャオを一生守ってくれるって言ってく
れたのっ!」
「一刻も早くこの戦場から兵を引きあげて欲しい!」
「運命の人なのっ!」


352:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:49:07 ENyldGqS0
支援

353:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:50:17 WGOFpYuW0
なんというカオスww

354:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:50:40 ENyldGqS0
妙な誤解が発生しているw

355:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:50:47 +O3wFRQmO
追いついた!支援砲撃開始!

356:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(8/21)
09/10/24 21:51:50 joG4JVAA0
 途切れることなく矢継ぎ早に言葉をたたみ掛ける二人。蓮華は逆に両者に詰め寄られる形と
なって後ずさった。
 しかし、すぐなぜ自分が押されているのだと思い至り、顔を真っ赤にして怒鳴り返した。
「ええいっ! 二人とも、黙りなさい!」
 その思わぬ大声に思わず二人は、
『は、はい』
 声を揃えて頷くことしかできなかった。
 
「そう……なるほど。ではあなたには礼を言わないといけなかったようね」
「いや、別にお礼なんて……」
 小蓮と蓮華は、お互い簡潔に状況を説明し合い、その結果として蓮華は剣を引いてくれた。
 それを見て、一刀は心底ほっとする。
 何度経験しても、真剣を向けられるというのに慣れない一刀である。
「小蓮がいないことに亞莎が気づいて、それで胸騒ぎがして戻ってきた明命たちにも手伝って
もらったんだけど……間に合って良かったわ」
「……ごめんなさい」
「で、あなたがあの噂の、管輅の占いに出てきた、『天の御遣い』というのは?」
「え? あ、ああ。どんな噂だか知らないけど、多分俺がその『天の御遣い』だよ」
 蓮華はそれを聞いて一度目を閉じた。
「……だったら、最初に剣を突きつけたのは正解だったようね」
 そして彼女は、再度その剣を、一刀の首に突きつけたのである。
「な、なんで!?」
 一刀が驚きの声を上げる。


357:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:52:43 rE7DBafa0
私怨開始

358:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:53:37 8+W1mxbMO
支援

359:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(9/21)
09/10/24 21:54:59 joG4JVAA0
「袁術に拾われ、そして袁家の血族に迎えられたという『天の御使い』。姉からは、あなたこ
そが最も危険な男だと聞かされている。だから、妹を助けてもらったことは感謝しているが、
その上で……おまえを拘束させてもらう」
「そ、そんな! 俺は霞を、張遼を止めなくちゃいけないんだ!」
「……わかって欲しいなんて言わない。でも、こちらもなりふり構っていられないのだ。おま
えを……盾にさせてもらう」
 勝手な言い分に、一刀は言い返そうとした。
 だが、蓮華の綺麗な目に苦悩が滲んでいるのを見て、思わずそれを呑み込んだ。
 それほどまでに、彼女は思いつめた目をしていたのだ。

 そんな風に押し黙った一刀を見て、蓮華は一瞬だけすまなそうな表情を浮かべて言った。
「こんなことを話す必要はないけれど、煩わしさにかまける一時が惜しいから教えてあげるわ

「え?」
「我が軍は既に撤退することを決定している。あとはこの場から素早く退くだけだ」
「て、え、えぇ!? あの雪蓮姉さまを説得できたの!?」
「説得したんじゃないわ。形の上だけで納得してもらったのよ」
「でもそれなら、別に俺を拘束する必要なんて……」
「その撤退を、あの張遼が大人しく見ていてくれると思う?」
「う……」
 『思う』とは言い切れなかった。

360:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:56:21 +O3wFRQmO
リアルタイム支援は久しぶりだな~

361:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:56:53 yPcROIUg0
とはいえ目の前で一刀引っ張っていこうとした時点で撤退とか無理になる気もするがなw 支援

362:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(10/21)
09/10/24 21:57:28 joG4JVAA0
 一刀はいまも戦っている霞たちの方へと目を向けた。
 侵攻してきた呉軍を撤退させることができれば、一刀たち本来の目的は達せられる。
 だがいまの霞を見る限り、彼女が逃げる呉軍を追いかけて孫策たちの命を狙わないとは断言
できなかった。
「私だって本当はこんな真似は本意ではない……だが、軍が撤退を完了するまで、おまえを人
質にさせてもらう。幸い、おまえと張遼は知らぬ仲でもないようだしな」
「なんでそのことを……って、そっか真名か。でも霞が、俺の安全よりも、使命の方を優先す
る可能性は?」
「それはそれで仕方がない。おまえはただの保険だ」
「……それは、参ったなぁ」
 そう言って、一刀は両手を頭の上に上げて恭順を示した。
 霞を救わねばならない、そのためにはこの戦いを終わらせなくてはならない。
 だが、目の前の蓮華は本気だ。
 一刀は自分の腕前では、到底目の前の孫権に敵わないであろうことを承知していた。
 それに、彼女もまた仲間を救うために最善を尽くそうとしているのだとわかってしまう一刀
には、これ以上どうすることもできなかった。
「君たちの目的は、あくまで無事に退くことであって、張遼を討ち取ることじゃない。これは
間違ってない?」
「ええそうよ。いまの張遼を討ち取ることで出る被害は見過ごせない」
「それを聞いて安心したよ……。わかった、君の言うとおりにするよ」
 あるいはその言葉には、自分が人質に取られたことで、あわよくば霞が戦いをやめるかもし
れないという、期待が含まれていたのかもしれない。 
 けれど、あとで思い返せば、一刀はこのとき何が何でも逃げ出せば良かったと思うのだ。


363:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:57:36 ENyldGqS0
支援

364:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:58:12 skZ7j9oa0
紫煙を燻らせながらの支援、とくらぁッ!

365:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:58:54 ENyldGqS0
まあ火に油注ぐようなもんだよなあw

366:名無しさん@初回限定
09/10/24 21:59:02 gqC1fWqb0
逆に追っかける名分ができてしまうでござる

367:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:00:23 t8xhMNu+0
支援砲撃だ!耕してしまえ!

368:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(11/21)
09/10/24 22:00:44 joG4JVAA0
 張遼の動きが、突如として鈍った。
 その目が驚愕に大きく見開かれている。
 それがこちらの隙を誘い込もうとする罠であることも考え、思春は張遼から目を離さなかっ
た。
 しかし、動きが鈍り、剣筋に迷いが生じたのも確か。
 巻き返すには、これ以上ない絶好の機会であった。
「亞莎! 明命! 少しの間相手を頼む! 死ぬなよ!」
 合図となる思春の声に、二人は黙して応えない。
 ただ、手数を増やすという行動でのみ意思を示すだけだ。
 それを見て思春は二人の理解に感謝し、大きく後ろに跳躍した。

 思春が降り立ったのは、混乱する兵たちが固まる一角であった。
「聞けぇ! そして見よ! 孫呉の兵たちよ!」
 そして思春は高らかにそう宣言しながら、その身を翻す。
 同時、手にした刃が、水平に流れる。
 合わせて、鮮やかな赤が飛び散った。
 喉を切り裂かれて仰け反ったのは、逃げ出そうとしていた兵士の一人であった。
「甘寧将軍!?」
 血迷ったかのような彼女の行動に、周囲の兵たちから困惑の声が上げる。
 だが思春は、それをかき消す大声で叫んだ。

「貴様らそれでも栄えある孫呉の兵か! 恥を知れ! 怯える兵は孫呉の兵に非ず! 敵に背
を向けた臆病者は即刻、この私が冥土に送ってやろう!」
 リィンと鈴の音が響く。その鈴の音と怒号に、誰もが息を飲んだ。
 するとそれでそれまでの騒ぎが嘘のように、潮が退くようにして周囲が静まりかえる。
 そしてそのことを確認して、この機を逃さず思春は言葉を続ける。

369:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(12/21)
09/10/24 22:03:35 joG4JVAA0
「なにをやってる楽隊! さっさと楽をならせ!」
 従わなければ斬り捨てる。そう言外に言ってのける甘寧に、近くに控えていた楽隊が震え上
がった。
 がなり立てるように奏でられ始める勇ましい楽の調べ。それに乗せて思春は更に叫ぶ。
「隊列を整えろ! 武器を構えろ! 訓練を思い出せ! 奮い立て孫呉の勇士たちよ!」

 恐怖を制するには恐怖。
 思春の行動によって、崩壊状態だった兵士たちの動きに歯止めがかかった。
 本来のまとまりからすると目も当てられない惨状だが、いまはそれでいい。
 戦いは流れだ、その流れを引き戻す一助になれば……最悪でも、蓮華たちが逃げのびる邪魔
にならなければ、それでいいのだ。

 強引に統率を回復させた思春が再び張遼との死闘の場に戻ると、丁度三者が睨み合う形で動
きを止めているところであった。
 亞莎と明命は二人とも肩で息をして、小さな手傷が増えているいるものの、きちんと健在で
ある。
「大丈夫か二人ともっ!」
 その声に、

「私はまだやれます!」
「問題ありません!」

 亞莎と明命は即座に応えて、戦闘継続の意志を構えで示した。
 三人とも、既に数え切れないほどの刃を交えて、いやと言うほどにわかっている。
 この敵は、これまで相手にしてきたどんな敵よりも強い。
 その強さはどんな尺度で測っても桁外れだ。犠牲抜きに倒すことはまず不可能だろう。


370:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:05:38 +O3wFRQmO
支援砲撃!山の形を変えてやれ!

371:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:06:16 ENyldGqS0
支援

372:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(13/21)
09/10/24 22:06:33 joG4JVAA0
 だが、
「ならばよしっ! 蓮華さまは小蓮さまと合流なされた、あとは我々が時間を稼ぐだけだ! 
覚悟を決めろ! 例えここで命果てようとも、絶対に蓮華さまたちをお守りするぞ!」
『はいっ!』
 三者とも、難敵を前にかつてないほど気力が漲っていた。
 自分たちが最後の守りだという事実が、実力以上の力を引き出しているのだ。
 負けられない、譲れない。
 守りたい人がいる。
 そんな想いや願いが彼女たちの原動力になっていた。

 だがしかし、
 想いの強さが力になるというのなら、

「邪魔や……」

 願う心が力になるというなら、

「邪魔や邪魔や邪魔やああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 いまこの戦場で、彼女に勝るものなど誰一人としていなかった。
 視界の先で喉元に刃を突きつけられ、連れ去られようとしている愛しい人を、守りたいと思
う気持ちは誰よりも強かった。



373:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:07:05 ENyldGqS0
ですよね~支援

374:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:07:31 skZ7j9oa0
生唾を呑みながら支援

375:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:07:52 t8xhMNu+0
あっちゃー、こりゃ火に油注いだな
まぁいい、支援砲撃は続行だ!

376:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:08:06 uOtNCXIh0
支援させて頂きます。


377:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:09:04 yPcROIUg0
だよなあ…… 支援

378:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(14/21)
09/10/24 22:09:20 joG4JVAA0
 絶叫と同時、電光が走った。

 叫びに呼応するようにして、空から稲妻が彼女の体に吸い込まれるように流れ落ちたのであ
る。
 閃光、そして轟音。
 たがうことなく霞の体に落撃する、晴天の雷。
 だが、異常はそれだけで留まらない。
「なんだと!?」
 驚く思春の声をかき消して、更に雷鳴。強烈な音と衝撃が、なおも周囲を襲った。
 先ほどの雷と同じものが。立て続けて五つ六つと連続して落ちる。
 しかもそれらすべてが、仁王立ちする張遼を直撃する。

 幾度もまばたく電光の、あまりの強烈すぎる輝き。
 瞼を閉じていてなお、網膜に像が焼き付けられるほどの光。
 それはまさに、天が地に降り人の身に宿った瞬間であった。



 しばらく続いた光と音の狂騒が静まり、視力が回復した人々が目にしたのは、一つの怪異で
あった。
 体に稲妻を纏い、ほどけた髪を生き物のようにくねらせて、全身から黄金の光を放つ張遼。
 あれだけの落雷を身に受けたというのに、当然とばかりにその身には火傷の跡一つない。
 もうそれはいっそ、神と呼んで差し支えない、人間本来の枠組みを超えた存在であった。


379:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:10:31 +O3wFRQmO
火に油?
重油に爆弾でわ?

380:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:11:04 yPcROIUg0
孫呉オワタ 支援

381:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:11:20 t8xhMNu+0
あ、これ三国無双MULTI RAIDだわ

382:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(15/21)
09/10/24 22:12:53 joG4JVAA0
『………』
 呆然とする思春たちを前、張遼は足を広げ、だらりと下げいた飛龍偃月刀を、掲げるように
頭上に構えた。
 すると飛龍偃月刀がバチバチという音を立てて、一層強烈な光を放った。
 異変はそれだけではない、周囲の空気が恐ろしい勢いで張遼の持つ槍へと引き込まれていく。
 それはまるで、巨大な龍が大きく息を吸い込んでいるかのようであった。

 不意に、蓮華は強烈な悪寒に襲われた。
 最悪の光景、血の海の既視感。
 彼女は即座に一刀と小蓮の頭を抑えた。
 そして彼女は叫んだ、わけもわからず、ただ力の限りに。

「みんな、伏せ―――」
 しかし、

 直後、ためを解放して、人智を越えた神速で飛龍偃月刀が水平に振るわれた。
 薙ぐようにして刃が走り、光が、奔る。

 結局、蓮華はこの世に地獄が生まれ落ちるのを止められなかった。



 霞を中心として、太刀筋が光の輪となって広がる。
 衝撃と共に広がる光の輪。
 斬光の同心円。
 それがどこまでも広がっていく。


383:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:13:49 +O3wFRQmO
孫呉終了のお知らせをいたしま~す
支援

384:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:14:09 ENyldGqS0
支援

385:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:14:23 skZ7j9oa0
巨神兵を幻視したのは自分だけでいい…支援

386:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:14:36 t8xhMNu+0
今の霞ってこんな感じ?大分違うと思うけど
URLリンク(www.gamecity.ne.jp)

387:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:15:05 yPcROIUg0
空き巣狙いに全兵力突っ込んで人質まで取ってこれとか泣くに泣けんな。支援

388:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:15:24 uOtNCXIh0
一刀君、漢をみせろ。

支援。

389:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:15:25 ENyldGqS0
支援

390:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(16/21)
09/10/24 22:15:37 joG4JVAA0
 そして、斬撃が風を切って過ぎ去ったあと、追いかけるように無数のなにかが空を舞った。

 それも、一つではない。

 無数の
 それはもう無数の
 首が、

 首が、首が、首が、首が、首が、首が、首が、首が、首が、首が、
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が
 首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が首が

 血の尾を引いて、空に舞う。
 理不尽すぎる力の前に、無慈悲にも万単位の命がに失われた瞬間であった。


391:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:16:44 yPcROIUg0
って一撃で万単位かい。何という無理ゲー
支援

392:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:17:06 GAN4tvreO
トラウマじゃすまないなこれ……
支援

393:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:17:32 ENyldGqS0
本当に理不尽だw

394:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:17:41 a7ESfplu0
こ、怖過ぎる・・・

395:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:18:40 a7ESfplu0
一気に400近くの首が飛んだのか・・・

396:名無しさん@初回限定
09/10/24 22:18:42 +O3wFRQmO
あれ?俺いつの間に型月のフェイトを読んでるんだ?
支援

397:美羽と七乃スピンオフ「遼来来4」(17/21)
09/10/24 22:18:49 joG4JVAA0
「そ、んな……」
 二人を地面に引き倒して自らも難を逃れた蓮華が、顔を上げて呆然と呟きを漏らした。
 視界に入る範囲、いたるところで頭部を失って案山子が立っていた。
 立ち尽くした無数の亡骸が首から勢いよく血を噴出させている。
 それが、一つ、また一つと倒れていく。
 その光景はあまりにシュールすぎて、まるで悪い冗談のようで、蓮華にはそれらがつい先ほ
どまで皆生きていた人間たちの、なれの果てだとは信じられなかった。


 そうして蓮華が絶句する中、張遼の方でも変化が起こっていた。
 彼女が握っていた飛龍偃月刀。それが突然、硝子の割れるような澄んだ音を立てて、木っ端
微塵に砕け散ったのである。
 柄も、刃も、すべてが破砕して、輝く粒子となって崩壊して風に流れて消えていく。
 人為を尽くした最高の業物であったそれも、いまの彼女が振るうにはあまりに脆弱であった
のだ。

 得物を失った張遼であったが、彼女が右腕を天に掲げると、たちまち天から新たな稲妻が走
った。

 だが、今回のそれは張遼の身に落ちたわけではない。
 雷光の中、張遼は信じ難いことに、その手に落雷を掴んでみせたのだ。
 掴まれた稲妻が、まるで苦しみに身をよじるようにして暴れ回る。
「―――っ!!」
 暴れる雷に、張遼が声にならない叫びを上げた。
 するとどうだろう、それまでのことが嘘のように雷が静まっていく。
 そうして雷が収まったとき、張遼の手の中には黄金色に輝く飛龍偃月刀が握られていた。
 稲妻を統べ、龍を使役する。
 それはまるで神仙の御業のようであった。



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