11/01/27 11:51:19 AUoHpzP20
「体は一番斬りやすいところが最も弾かれやすくて、ダメージが通らないどころかおまけのカウンターでブレスを吐くだぁ?!!」
只今のランスの機嫌バロメーター〈ムカムカ〉。
「その上やっとダメージを与えたと思ったら、すぐ別の遠く離れたエリアに移動しやがって!
さんざんこちらを歩かせといて、到着したらお出迎えに上空からの広範囲連続ブレス…ッ絶滅しろ!!」
只今のランスの機嫌バロメーター〈イライラ〉。
「でもでも、他のモンスターと戦ってた時のように、アイテムの閃光玉を投げて空から落としちゃえば良いじゃない」
「なぁにをぉう?」
マリアのあまりにも開発側な発言に、ランスの導火線に火が点いた。
「そのっっっっアイテムの有効範囲と効果時間が短すぎるせいでっっっ、まっっったく役に立たねぇんだよっっっっ!!!!
作ってる時おかしいと思わなかったのかお前はよぉおおおおお!!!!」
「ひぇえええん、また暴れ出すなんてお約束過ぎるわああああ」
「はわわわわ、ランス様びーくーる、びーくーるですよぅ」
余程激しい憤りを感じていたのであろう。最愛の奴隷、シィル嬢の懸命な呼びかけも虚しく。
大怪獣キングミドリは、その後 数十分程会議室の絨毯をごろごろ、ごろごろと転がり続けたのである。
「あわわ、ランス様ぁ‥お洋服が汚れちゃいますよぅ…」
「むがぁああああああ!!!!」
746:【ゲーセンR3 5/15】
11/01/27 11:52:06 AUoHpzP20
【男の子モンスターハンターポータブルの進め方】
“男の子モンスターハンターポータブル(以下略称 男ハンP)”の世界にようこそ、ハンターさん!
男(だん)ハンPには、決まった形のゲームクリアはありません。
クエストと呼ばれる小さな目的がいくつも存在しており、ハンターさんはこれらのクエストを次々に攻略していく事になります。
一度クリアしたクエストには再び挑戦できるので、何度でも繰り返して遊ぶ事ができます。
(1)ギルド長、またはこの村を訪れるハンター達が集まる酒場から、クエストの依頼を受ける事ができます。
気に入ったクエストを見つけたら、街を出て狩りの始まりです。
(2)攻略対象となるクエストの種類は実に様々です。
人々を困らせるモンスターの討伐や、特定のアイテムの採取など。
次から次に舞い込む依頼を大剣やハンマー、チューリップなど。
目的に合った武器を選び、冒険の手助けとなるアイテムを用意したら、いざ挑戦してみましょう。
(3)見事クエストをクリアすると、各クエストに応じた報酬が手に入ります。
また、新しいクエストの依頼が来ている事もあるので、再度ギルド長や酒場で確認してみましょう。
〈マリア研究所発行、男ハンP取扱説明書より抜粋〉
747:【ゲーセンR3 6/15】
11/01/27 11:52:51 AUoHpzP20
「…なるほどね、事情はだいたいわかったよ」
あれから暫くして、マリア達は怒り悶えるランスの為に助っ人を呼ぶ事にした。
紅いチャイナドレスをひらりと躍らせ、エンジェルリングが眩しい紫髪のてっぺんに二つのお団子。
いつも明るく元気良く、カスタム一の評判うたう“薬屋 ヨークス”の看板娘、ミル・ヨークスの登場だ。
「大丈夫だよシィルちゃん。
このゲームなら私もマリアに頼まれて、店番の合間にテストプレイしてたから。
だから、ランスの事は(この先五十年間 公私ともに)私に任せて!」
「え、あっ、うん‥何だか今すごく不穏な本音が聞こえた気がするけど、気のせいだよね?
ランス様の事、お願いねミルちゃん」
二人の間で一見、和やかなやり取りが交わされてまもなく。
別室で何かあったのか、お肌が妙に艶やかなランスがマリアを連れて帰って来た。
ナニが行われていたのか一切不明であるものの、以前の彼と うって変わって、その表情は随分と穏やかである。
「お、お帰りなさい‥マリアさん」
「‥うん。た、ただいま。待たせてごめんね」
一部、空気が桃色に染まりつつあるが、そんなものまるで気にしないのが我らが主人公。
「うっし、そんじゃ反撃開始といくかっ。いくぜミル、ぼやぼやしてっと置いてくぞ!」
748:【ゲーセンR3 7/15】
11/01/27 12:57:06 AUoHpzP20
【あしたのハンター
作詞:香澄
作曲:チョチョマン・パブリ
歌:マリア・カスタード研究所職員一同】
何度挑めど 燃やされ果てる
憎い あんちくしょうの 頭めがけ
たたけ! たたけ! たたけ!
ハンマー 大剣使いの血がさわぐ
※だけど ルルル……
レアな素材は きっとでる
あしたも 狩りだ
邪魔するザコは 大地(くに)へ帰れ
助けにくるボスも どこかに行け
やめろ! くるな! 寝かせたボス起こすな!
俺らは ただ楽しく 狩りがしたいのさ
※ くりかえし
749:【ゲーセンR3 8/15】
11/01/27 12:57:56 AUoHpzP20
金とりの攻撃パターンは大きく分けると三つ。
突進攻撃、広範囲におよぶ炎のブレス、そしてハンターを睨み付け動きを止める。
これらを地上、あるいは空を飛んだ状態から息つく暇なく繰り出してくるのだから、たまったものではない。
特に、弓やチューリップなどの遠距離武器を使うハンターならともかく。
大剣やハンマーなどの近接攻撃が得意なハンター達からしてみれば、空へ逃げられては打つ手もないのだ。
また、漸く地上へ降りて来たからと、喜び勇んで攻めようものなら。
妖しい瞳で睨まれ動きが止まり、平時であれば動きが遅く、避けるのも容易な体当たりに弾かれ。
ハンターの起き上がりに合わせ、漏れなく激しい業火で焼き尽くしてくれるはずだ。
この一連のコンボにより、対策が出来ていないハンターの体力は、七~八割削られる事だろう。
「そんなぁ‥それじゃランス様だけじゃなく、誰もクリア出来ないんじゃないですか?」
「そんな事ないよっ」
シィルの至極もっともな声に、異を唱えるはミル・ヨークス。
「さっき説明したのはあくまで“対策してない”場合の話。つまり―」
「あのクソったれの動きを封じる方法があるってんだな?」
750:【ゲーセンR3 9/15】
11/01/27 12:58:45 AUoHpzP20
ランスの言葉に力強く頷くミル。
「私たちができる対策は四つ。
防具を強くする。妖しい眼光を無効化するスキルを付ける。
金とりが空を飛んだら、閃光玉をタイミング良く投げて落っことすのと、あとは…」
ランスの左腕にえいっと抱きつき、満開の笑顔に絶対の信頼をこめて告げる。
「いっぱい練習して、動きを覚えて慣れること!
大丈夫、ランスなら必ず勝てるよ。だって、ランスだもん!
私や、お姉ちゃんやマリアちゃん達カスタムのみんなを、いっぱい、いっぱい、いーーっぱい助けてくれたランスだよ!
これくらいぜんぜん何てことないよ、ないんだよ!!」
ぎゅうっと袖を握りしめ、叫ぶミルの姿を背にし。
ランスはポリステを掴み、胸を張って答える。
「ちっ‥ったく、たかがゲームに嘗めてかかった俺様もアホだが。
そのアホに付き合うお前らは、どんだけアホなんだろうなぁ?」
ゆらゆらと燃えるように射す夕陽を浴びて。男は静かに、だが堂々と席に着いた。
すると間もなく、彼の全身から白煙が一つ、また一つと立ち上る。
「ヴィクトリー‥スモーク…」
驚愕に目を見開き、シィルが呟く。
751:【ゲーセンR3 10/15】
11/01/27 13:23:09 AUoHpzP20
「“ヴィクトリースモーク”って確か、超一流の集中力を持つ人間が本気で闘う事を決意した時。
身体からたちまち湧き出だすという、勝ちどきの狼煙にも似たアレの事?!
て言うかその設定、まだ活きてたの?!!」
「いつも解説お疲れさまれすねー」
いつの間にやら復活していたあてな2号を置いて、幸福のフィナーレへ向かいランスは、今再びポリステを起動させる。
平穏な街の暮らしを脅かすモンスターの討伐依頼をギルドで受け、既に何度目かも知れぬ冒険に出る“ハンター・ランス”。
攻撃力と防御力を、そのクエスト中に限り底上げ可能な薬を服用し。
次いで、大型ボスの居所がたちまち判る薬を飲み込み、目的地へ駆ける、駆ける、駆ける。
途中、己の周囲にまとわりつくフリーダムやサナギマン、にょ~を無視して奴のもとへ。
「会いたかったぜぇ、糞とり公…ッ!!」
互いの視線が交わり、金とりが開戦の雄叫びをあげる。
ハンター・ランスの着込んだ防具に備わる、“眼光封じ”のスキルが発動。
これにより、金とりの妖しい瞳で動きを封じられる事態はなくなった。
そして、それは同時にこちらの反撃出来るチャンスが増える事を意味する。
「来るよランス、炎のブレスかわして!」
752:【ゲーセンR3 11/15】
11/01/27 13:24:04 AUoHpzP20
「むぉおおおおお!!」
この時、避ける方向を間違えてはならない。金とりとの距離を正確に見極め、奴の首の動きを予測する。
そうして導き出される答は一つ。
「とり公の懐へッッ潜り込む!!」
ハンターの左手から遅い来る炎の波を飛び込むようにしてかわし、狭いながらも安全地帯へたどり着いた。
たどり着けたのなら、ハンターが次にやる事は何か。決まっている。
「喰らえ、喰らえ、喰らいやがれぇえええええ!!!!」
ランスが一息に振り上げ一振りの大剣。わずかの間に全霊を注ぎ込み、敵を切り裂く力に換えるは黒き魔剣。
“混沌”を銘に冠したそれを振るいて、告げる最強の必殺技。
「ランスアタタタタタタタターーーーック!!!!」
『ピギャーー!ピカチョーーー!!』
弱点である頭部を砕かれ、猛り狂う金とり。
見る者を圧倒させるトサカはひしゃげ、左目が見事に潰れている。
「やりました!クリティカル決まりましたねミルちゃん、マリアさん!!」
幸先の良い始まりに光明を見たシィルが、跳び上がってはしゃぐ。
だがしかし、呼びかけられた他の二人の表情は、依然として硬いままだ。
「シィルちゃん‥酷な事を言うようだけど。
アレはまだまだ終わらないわ。終わるように創ってないのよ、私は」
753:【ゲーセンR3 12/15】
11/01/27 13:24:52 AUoHpzP20
「そうだね。こんな一撃で終わらせられる敵なら、私も苦労しなかったよ」
「そんな、ランス様‥ランス様ぁ…」
開発者とプロゲーマーの言に、視界が真っ暗闇に染まりゆく。
家事や冒険ならともかく、ゲームで苦しむ彼を助ける事など、難しいにも程がある。
特にアクションゲームなんて、自分のキャラを動かすだけで精一杯で、敵の動きなんて全く見れたものではなかった。
シィルは祈り、そして願う。
(もしも、この世界にゲームの神様がいるのなら、お願いです。
ランス様を、私の…私の大切な人をどうか助けてください。彼の想いを、望みをどうか叶えてください!
もしもこの願いが叶うなら私、私もがんばって苦手なアクションゲームを好きになります!
だから、どうか…どうか……!!)
その時、テストプレイ会場である会議室の床上で、イモムシDXの真似をしていたあてな2号は気づいた。
遠くカスタムの遥か上空を優雅に舞い落ちながら、「せしぼーーーん」と叫ぶ星形の何かに。
ソレは、視力20.0をほこり、CO2やH2すら裸眼で視認可能な彼女だからこそ見えたのか。
或いは たまたま波長が合ってしまったのか。
確実なのはその時、星形の何かがシィルの願いに呼応するかのように、大きく綺麗なとんぼ返りを見せてくれた事だった。
「変なお星さまれすねー、むしむし」
754:【ゲーセンR3 13/15】
11/01/27 13:54:16 AUoHpzP20
もはや手は尽くした。
金とりが睨み付けてくれば近寄って頭を叩き、炎を吐けば飛び込んで胸を突く。
たまらず奴が空へ飛び上がり逃げようとすれば閃光玉を投げ、視界を眩まし大地に引き摺り降ろした。
投げるタイミングを掴む為に、携帯してきた十五個の内三つ無駄にしたが、それも必要経費と割り切る。
金とりが吼え、怒り出したら攻撃が一段と激しくなるので、逃げに徹した。
逃げて、逃げて、ただひたすらにその時を待つ。
奴が怒り疲れて、動きを止めたその時がチャンスだ。
足下に落とし穴を仕掛け、見事 罠に嵌まり悶えている隙をついて、
「斬って、斬って、斬りまくりじゃーーーッ!だはははははは!!」
『ピギャッ、ピギャッ、ピカチョーーーッ!!』
見よ、あれがハンターキラーと吟われた怪物のなれの果て。
翼は折れ、胸は潰れ。四つ足の爪に無事なものなどまるで無い。
界隈の獣達を怯えすくませ、それでいて幾つもの瞳を一心に集めた、あの憎き鶏冠なぞ悲惨たらない。
足を引き摺り、その身を辛うじて残している、血泥にまみれた尻尾で支えているだけのあの姿。
何と哀しく、何とも惨く。そして―、
「―愉快だなぁ、とり公…懺悔の時間だ、泣いて小便でも漏らしな」
755:【ゲーセンR3 14/15】
11/01/27 13:54:59 AUoHpzP20
“とりの巣”と呼ばれる、巨大な天然の鍾乳洞の中。
満身創痍の金とりが決死の覚悟の現れか、長い咆吼を轟かせる。
その咆吼を聞きつけやって来た“こかとりす”ニ体に、思わず舌打ちするランス。
「クソったれ、ここまで追い詰めてくたばってられっかよ!」
叫び納刀し、素早く目的のアイテムを取り出すと こかとりす達に投げつける。
「がはははは うんこだうんこ、うんこ玉だぞー。当たるとくちゃいぞ はよ逃げろー」
アイテムうんこ玉、もとい“肥やし玉”。
モンスターのフンが中に詰まったそのボールは、当てたモンスターを別のエリアへ移動させる効果がある。
「まさに今の状況に打ってつけのアイテムだったって訳だ。
持ってて良かったうんこ玉!がははははっ」
増援の こかとりすがいなくなり、とりの巣にはハンター・ランスと金とりのみ。
しかも、先程の騒動の間に余程消耗しているのか、奴は眠りについていた。
「チャンスだよランス、ボスが寝ている時にダメージを与えれば…」
「最初の一発に限りダメージは三倍になる、だろ?わかってんだよミル」
洞窟内に深く響き渡る奴の寝息をBGMに、弱点の頭部めがけとどめの一撃振り下ろすため。
ハンター・ランスは、その身を大きく後ろへしならせ。そして――。
756:【ゲーセンR3 15/15】
11/01/27 13:55:52 AUoHpzP20
「あ、あれ?ポリステの画面が真っ暗に‥」
「おいマリア、どうなってんだこれ。うんともすんとも言わねぇぞ?」
慌てるシィルとランスを見て、開発者であるマリアが慎重に診断したその結果。
「………電池切れです」
只今のランスの機嫌バロメーター〈怒髪天〉。
「ふっっっっっっざけんなあああぁあああぁああああ!!!!!〈がっしゃーん〉」
「きゃああああテストプレイ用に確保しておいた数少ないポリステが粉みじんにぃーーー!!」
「はわわわっランス様びーくーる、びーくーるですよぅ」
広がる喧騒、甚大する被害から離れ会議室の外。
ミル・ヨークスは、己と同じ轍を踏んでしまった彼を想い、ため息を吐いた。
「ポリステのバッテリーが残り少なくなってきたら、音を出して知らせてくれたら良いのに…」
ここで、通りすがりの研究員であるカスミ嬢がミルに向けてカンペを出す。
「‥えっと、今回ランスは一人で頑張ってプレイしてたけど。
他にもポリステと男ハンPを持ってる人がいれば、最大四人同時プレイができます。
大勢でやれば強いモンスターも、楽しく易しく狩れるので、ぜひお友達と一緒にプレイしてみてね♪
…え、何これ。このまま宣伝して終わり?最後投げっ放しだよ、いいの?!ねぇ、ねぇったら‥ねぇ!!」
終わり。
757:【ゲーセンR3 あとがき】
11/01/27 14:36:47 AUoHpzP20
・初めに。今回のSSの元ネタは、モンスターハ●ターポータブル3になります。
“金とり”は、最近だとGALZOOアイランドで厄介な雑魚として出てきましたが。
この作中では本家モンハンに出てくる、とても厄介なモンスターのパロディも兼ねて、出演してもらいました。
ただし、SSにするに当たって実際の攻撃方法や対処法、弱点部位など随所改変してあります。
・番外編で漸くこのSS内で使用しているゲーム機の話ができてほっと一息。
D.P.Sの解説のくだりは、徳間書店インターメディア様より発行されていた、
“アリスソフト 美少女アルバム”より一部引用させていただきました。
・最後に。今回のSSのオチは、あくまでも“男ハンP”の宣伝であり、元ネタのモンハンの購入を勧めるものではありません。
不快に感じられた方がおりましたら、心からお詫び申し上げます。
・拙いSSですが、お読みいただき誠にありがとうございました。
758:自作特攻隊WILLCOM ◆0CrenIPJUU
11/02/01 20:42:59 DKMghk6h0
じろじろ…実際にゲーム化されても良さそうですね…♪
759:名無しさん@初回限定
11/02/09 09:13:11 Gt7kDn+NO
ほしゅするのれす
760:自作特攻隊WILLCOM ◆0CrenIPJUU
11/02/14 05:41:11 mhAr2c9D0
URLリンク(bbs.jpdo.com)
※マルチですが…
761:【運命の女四人で酒を呑むお話 1/3】
11/02/16 13:20:38 ADgfRxQO0
「大人になるって、どういうことなんでしょう?」
JAPAN、織田城。魔想志津香の居室にて。
LP0005年の三月。二十歳になり、いわゆる成人女性の仲間入りとなったシィル・プラインの言である。
同じ部屋、同じ卓を囲み、それぞれ異なる酒を呑んでいた他の三人が、彼女の問いかけにグラスを置いた。
「シィルちゃんどうしたの急に、何か悩み事?」
先陣をきったのは見当かなみ。
口当たり甘めのノンアルコール・カクテルを左へさておき。
まさかあのデカ口バカが何かやらかしたのかと、慎重に言葉をつむぐ。
「あ、いえ、その‥そんな大きな悩みって訳じゃないんですけど。
ただその‥私先日やっと二十歳になって、ランス様や香姫様達に誕生日のお祝いまでしていただいて。
嬉しくて嬉しくて、ふわあって舞い上がっちゃったんですけど、でも‥」
「でも?」
舌に少々辛味が残る冷酒を一口転がし、魔想志津香が相づちをうつ。
762:【運命の女四人で酒を呑むお話 2/3】
11/02/16 13:21:30 ADgfRxQO0
「でも、以前JAPANの人達は十五歳で大人になる、大人あつかいをされるって話を聞いて。
今なんとなく、ですけど私は“大人”になれたのか、不安になってしまって」
思いを吐き出し、甘酸っぱい果物の香りを漂わせるカクテルグラスを指でつつくシィル。
「んー…こういうのって、成人になったから大人ってもんじゃないのよねー。
二十歳を迎えた事を節目として、そこから“自分で大人になっていく”って言えば良いのかしら?
…うん、これはアレね。
私達三人“とっくにハタチ迎えてる組”で、大人になったと実感できる瞬間を言っていけば良いのよ!」
「え?」
突然の提案に戸惑うかなみを置いて、アルコール控えめのスクリュードライバー片手に捲し立てるマリア・カスタード。
「確かに、変に抽象的な概念や理屈をあれこれ言い合うよりも。
具体的なあるある話をした方が、解りやすかったりする場合ってあるわよね」
「いや、ちょっ、待っ」
青髪眼鏡の親友の提案に同意する志津香。
763:【運命の女四人で酒を呑むお話 3/3】
11/02/16 13:22:36 ADgfRxQO0
すると間もなく、「何をするにも身分証明書を求められる時」やら。
「各種税金の申告手続きに頭を使う時」など、先の戸惑いが尾をひいているのか。
何やら様子がおかしいかなみをよそに、二人がシィルに聴かせるあるあるネタは、半ば愚痴の様相を呈していたが。
それでもシィルは微笑みを絶やす事はせず、時に話し手へ共感し、落ち込んだ表情で二人の話を聴き続けた。
そして三十分後、 マリアから呆然としているかなみへ話が振られる。
「かなみは何かある?二十歳になって大人になったなぁって実感した瞬間」
志津香とシィルが期待の眼差しでかなみを見つめる中、彼女はゆっくりとその重い口を開いた。
「ていうか私、まだ十九歳なんだけど」
「「…え?」」
「ああっ、かなみさんが泣きながら部屋の外へ!
待ってくださいかなみさーーん、かなみさはーーーん!!」
終わり。
764:【運命の女四人で酒を呑むお話 あとがき】
11/02/16 13:51:09 ADgfRxQO0
・初めに。あの四人の中では、一番年下だった事に驚きのかなみSSでした。
>758様
・レスありがとうございます。
アレを実際にゲーム化したら、出てくる男の子モンスターによっては詰みゲーになってしまうかもしれません。
イカ超人とか、始まってすぐ秒殺されてしまうかも。
・最後に。前作【ゲーセンR3】の誤字&脱字訂正箇所を二つ。
〈11/15〉のランスが一息に振り上げ“た”一振りの大剣。
〈14/15〉の当てたモンスターを別のエリアへ“退散”させる効果がある。
以上です。
・拙いSSですが、お読みいただき誠にありがとうございました。
765:名無しさん@初回限定
11/02/19 16:17:45 pMcWuv450
これはいいSSだった