10/09/12 21:20:37 oV1zlaqS0
~恭也~
『ユリーシャさんの【フラッシュ紙コップ】が成功したなら、
魔獣は数秒間、視覚を失うでしょう。
その数秒間が、勝負の分かれ目です。
高町さん、特訓の成果、見せてください。
眩んでいるだけの目を貴方の【飛釘】で、完全に潰すのです』
ランスの背後、数メートルの地点。
密やかに舞い戻った高町恭也が、目晦ましに惑うケイブリスを見上げていた。
(想定よりも、遥かに―― 易い!)
高さ、約3.5m。
ケイブリスはランスの表情を眺める為に中腰になっていた。
故に、直立時の高さ6mに比して、より鋭く強い飛針投擲が可能となる。
しかも、的が大きい。
魔獣の瞳は、恭也の知るどんな大型哺乳動物の瞳よりも、何倍も大きかった。
象と熊の瞳を想定していた恭也にとって、嬉しい誤算である。
恭也は、それに、高揚しない。
恭也は、それに、慢心しない。
己を律し、己を殺し、呼吸を整え、気を正し。
修練に無言で付き合ってくれた糸杉に、心中で一礼すると――
飛釘を強く、握り込んだ。