バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第7部at EROG
バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第7部 - 暇つぶし2ch250:名無しさん@初回限定
10/03/06 23:41:13 Qb22PNfz0
 

251:生きてこそ (9/10)
10/03/06 23:41:42 sOeuCXkf0
点った。
ザドゥの心の最奥にある、未だ点したことの無い蝋燭が。
映った。
ザドゥの両の瞳に、揺らめくことなく直ぐに立ち上る炎が。

(――逃げるな、ザドゥ!)

ザドゥは心中で生存本能の胸倉を掴み上げ、本気の拳を鼻っ面にぶち込んだ。
一億万の細胞たちの足を払い、マウントポジションからタコ殴りにした。

(その初志を貫徹することと、局所の一勝一敗に拘泥すること。
 どちらが大事で、どちらが小事だ?
 そんなもの……どちらも大事に決まっているだろう!
 俺の望む全ては、手に入れるべき全てだ。
 取りこぼしなどあってたまるか!)

声に出して、叫ぶ。
彼は、全ての思いをワンセンテンスで過不足無く表現しきった。

「俺はザドゥだ!」

それで、生存本能も細胞たちも沈黙した。
ザドゥは起き上がりざまに芹沢を担ぎあげる。

《無茶をするでない!》
 


252:生きてこそ (10/10)
10/03/06 23:42:47 sOeuCXkf0
カオスの焦りは正しく、ザドゥは芹沢の重量に2、3歩よろめいた。
だが、ザドゥは転倒することなく耐え切った。
膝は震えている。
息は乱れている。
であるにも関わらず、頬には不敵な笑みすら浮かんでいた。
カオスはザドゥの横顔を見て大きく頷く。

《……ならば見せてくれよ、ザッちゃん。
 儂が見ることの出来なんだもう一つの可能性のその先を、の》
「お前の思いなど知るか。黙って見ていろ」

ザドゥは、まだ意地を張る。
ただ、意地の為に意地を張る。


               ↓
 



253:名無しさん@初回限定
10/03/06 23:43:17 Qb22PNfz0
 

254:代理投下
10/03/06 23:50:17 Qb22PNfz0

840 名前:生きてこそ (情報 1/1) 投稿日: 2010/02/25(木) 22:30:45

【グループ:ザドゥ・芹沢】
【現在位置:G-3地点 東の森北東部】
【スタンス:森林火災からの自力脱出】

【主催者:ザドゥ】
【所持品:魔剣カオス、通信機】
【能力:我流の格闘術と気を操る】
【備考:右手火傷(中)、疲労(大)、ダメージ(小)、カオスの影響(大)】

【主催者:カモミール・芹沢】
【所持品:虎徹刀身(魔力発動で威力↑、ただし発動中は重量↑体力↓)
     鉄扇、トカレフ】
【能力:左腕異形化(武器にもなる)、徐々に異形化進行中(能力上昇はない)、死光掌4HIT】
【備考:脱水症(中)、疲労(大)、腹部損傷、気絶中】

255:名無しさん@初回限定
10/03/12 01:45:25 YvOD7WmO0
 

256:名無しさん@初回限定
10/03/21 10:58:00 SqKG/ML10


257:名無しさん@初回限定
10/03/26 22:40:48 XAz/uYU00
 

258:名無しさん@初回限定
10/04/03 21:28:17 A4605umC0
 

259:ルート分岐のお知らせ
10/04/03 23:28:43 mcF6VUGlP
「バトル・ロワイアル」の今後についてご連絡します。

上記「生きてこそ」以降、3ルートに分岐することとなりました。
ルートAは従来通りのリレー形式に、
ルートB、Cは其々の書き手個人による独自ルートになります。

経緯につきましては、下記サイト(総合検討会議)の886以降をご参照ください。
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

260:代理投下
10/04/03 23:30:09 mcF6VUGlP
980 名前:夜に目覚める(1/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 22:55:39
>>235
(ルートC:2日目 PM6:46 D-6 西の森外れ)

その姿に、走っている、といった必死さは無かった。

スキップにも似た軽やかさで以って、中距離走ほどの速度。
多少の不自然は感じなくも無いが、ありえぬ話ではない。
それが平地であるならば。
昼日中であるならば。
だが、ここは入り組んだ西の森の中。
光差さぬ闇の中。
これを加味して再考すれば、人の範疇にはありえぬ体捌きといえよう。

広場まひる。
それが、この絶技を見せるシルエットの名。

東へ。まひるは、ただ一人で駆けていた。
踏みしめる枯葉の鳴らす音は、限りなく軽い。

(気持ちいいな……)

風を切る感覚と木漏れる月明かりの青さに、まひるは身を浸す。
それで意識が散漫になったのだろう。
根腐れた倒木がすぐ足元に迫っていたことに気付くのが遅れてしまった。

「あ、危な……」

後一歩で衝突する。認識と同時に、まひるは跳んだ。
まひるとしての彼女が体験したことの無い反射速度で。

261:代理投下
10/04/03 23:31:02 mcF6VUGlP
981 名前:夜に目覚める(2/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 22:57:56
 
「……てっ!」

まひるは、結局転倒した。
倒木は軽く跳び越えたにも関わらず。
約3.5mの高さに生い茂る針葉樹の枝葉。
そこに頭頂を打ち、バランスを崩した為に。

「いやいやいやいや。跳び過ぎだってばさ、このカラダ!」

まひるは腫れた頭頂部を撫でさすりながら愚痴を零す。
だが、彼は知っている。
この程度の運動能力、ケモノとしてのポテンシャルには達していない。
だから、彼は探っている。
どの程度の運動能力までなら、人としての自分のまま引き出せるのか。

細胞が、ざわめく。
私たちをもっともっと使ってと。
その声に流されそうになる。
誘惑の蜜は甘い芳香を強く放っている。

それは、罠。

肉体が導くままに能力を解放すれば、まひるの精神はケモノに堕すだろう。
それをまひるは本能で知っていた。

人であると強く意識し続けること。
衝動に支配されぬこと。
まひるは己に任じた制約を強く胸に刻み、また駆けだした。

262:代理投下
10/04/03 23:47:59 mcF6VUGlP
982 名前:夜に目覚める(3/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 22:59:16
 

   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


(2日目 PM6:40 D-6 西の森外れ・小屋3周辺)

東の森の火災による熱波が、ここ西の森にも届いていた。
それを加味しても肌寒さを感じるらしい。
小屋の壁面に背を預けている4人は、湯気の立つマグカップを啜っていた。

魔窟堂野武彦。
広場まひる。
ユリーシャ。
高町恭也。

今、小屋の中は交渉と猥褻行為を同時進行させるという混沌の坩堝と化している。
その邪魔をされたくないのだと、月夜御名紗霧は彼らを小屋から追い出していた。

「聞こえる?」
「だめじゃのぅ……」

額を寄せ、小声で溜息を重ねたのは魔窟堂とまひる。
盗聴器代わりに小屋内部に置いてきた集音マイクの一つ。
その音声が拾えないことが判明し2人は落胆したのだ。

263:代理投下
10/04/03 23:51:36 mcF6VUGlP
983 名前:夜に目覚める(4/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 22:59:57
 
彼らは与り知らぬことだが、理由はレプリカ智機P-3のジャミング機能による。
目的は盗聴阻止。
但し、魔窟堂たちのマイクを阻害する意図は無かった。
オリジナル智機が管制室の代行機たちにP-3を補足されぬよう施した細工が、
意図せぬ副作用を与える結果になったに過ぎぬ。
 
しかし、彼らにとってこのとばっちりは大きかった。
紗霧と智機の会談を拾いながら自分たちなりに考察を為す。
彼らのプランが木っ端微塵に砕け散ったのだから。

魔窟堂とまひるは落胆を引きずりつつも、額を寄せて意見交換を始める。

「でも、仲間を殺せなんて提案おかしくないかな?」
「奴らも一枚岩ではないということかの」
「裏だよ。絶対裏があるよ」
「まあ、何かしらの事情はあるじゃろて。
 問題はその事情があの椎名智機の個体によるものか、
 他にもいるじゃろう多くの智機たち全体の意志によるものか……」
「そうかなあ? あたしは仲間割れなんてしてないと思うけどなぁ。
 何かあいつらが困っちゃうことが起きたから、
 それを誤魔化すために適当言ってるとか、どうでしょ?」
「例えば?」
「実はあいつらの基地が東の森にあって、それが今燃えちゃってるとか」
「あるいはアイン殿や双葉殿に攻め込まれたやもしれぬな」

予測、推論は幾らでも重ねることが出来るが、結論が出る気配は皆無。
会議は踊る、されど進まず。
情報量少なき、整理も論理も曖昧な2人の考察は井戸端会議に等しい。

264:代理投下
10/04/04 00:00:18 RFuYzzelP
984 名前:夜に目覚める(5/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 23:00:44
 
対する、沈黙を保つ2人の胸中はどうか。

(ランス様……)

ユリーシャの胸は張り裂けそうだった。
ランスが自分ひとりの愛情と肉体では満足しない男であることは宣言されているし、
実際にアリスメンディと関係を持ったらしきことも理解している。

しかし、だからといって。頭では理解していても。
実際にランスの性行為を目の当たりにした衝撃は、筆舌に尽くし難い物があった。
聞くと見るとでは、重みが違うのだ。
増してやランスが行為に没頭する余り、ユリーシャが小屋から出る際に一言も、
一瞥すら与えなかったことも、また。
相当に、堪えた。

「……んぁっ……」

思い煩うユリーシャの耳に、唐突に届いた。
追い討ちをかけるかの如き、智機の抑え切れぬ快楽の喘ぎが。
壁一枚隔てた向こう側から。

(ランス様の指はまだあの機械の胸で踊っているの……?
 それとももう、ほかのもっと敏感なところまで旅している……?)

一度は胸の奥に沈めたヘドロの如き薄ら汚れた感情。
ユリーシャの沈む心が再びそのヘドロを攪拌しつつあった。
嫉妬。焦燥。
そして、その果てにある……

265:代理投下
10/04/04 00:05:10 mcF6VUGlP
985 名前:夜に目覚める(6/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 23:01:03
 
もう一人、高町恭也は、味方について考察していた。

(なぜ、月夜御名さんは俺たちを外に出したのか?)

智機は得物を持っていないようではあった。
しかし、たとえ素手であろうとも鋼鉄の肉体や高圧の蓄電などの危険はある。
性的な悪戯に夢中になっているランスのみでは護衛として心許ないはずだ。
それでもあえて、自分たちを屋外に出した。
外を見張れという意図もあろう。
だが、それならば自分一人を見張りに立たせればよいはずだ。
ユリーシャやまひるに気を遣ったということも考えられるが、こと紗霧に関しては、
人の心の機微を理解した上で踏みにじる傾向が見受けられる。
故に、それも理由としては不十分だ。

(なぜ、月夜御名さんは通信機を作らせているのか?)

重ねる問いに、恭也は解答の手ごたえを感ずる。

夕刻の魔窟堂の単独行時、紗霧を始めとする数人は落ち着かない心持ちだった。
包囲作戦の布石は打てたのか。
アインや双葉と接触したのか。
イレギュラーは発生していないか。
通信機とはその折の魔窟堂に同じく、遠くの誰かが収集した情報を、
素早く入手することを欲した故の発想ではなかったか。
であれば――

266:代理投下
10/04/04 00:16:49 RFuYzzelP
986 名前: 夜に目覚める(7/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 23:01:29
 
「俺たちは俺たちで、出来ることから始めましょう」

恭也がようやく沈黙を破った。
魔窟堂とまひるは言葉を切り、恭也を見つめる。
恭也の瞳は不動だった。
力強く頼りがいのある、年齢不相応の大人の目をしていた。

「できること、とは?」

魔窟堂の問いに、恭也は答える。

「会談の後に月夜御名さんが必要とする情報が素早く提供できるよう、
 下準備をしておくことです」
「つまりは偵察かの」
「然り。大河は両岸から見よといいます。
 あの機械がもたらす情報を、真偽を確かめずに飛びつくわけにはいかない。
 月夜御名さんであればそう考えるはずです」

もたらされた情報の信憑性を確かめる。
もたらされぬ情報の隠匿を発見する。
紗霧がこの交渉から何を引き出し、何を思いついたとしても、
その折に最速で要求に対応できる体制を作っておく。
それが自分たちに打てる最善手であろうとの答えに、恭也は達したのだ。

「魔窟堂さん。通信機は?」
「メカ娘の残骸から摘出したインカムは、ほぼ手を加えんでも使える状態じゃ。
 あとは集音マイクが拾った音を、如何にインカムに伝えるか……
 その帯域調整くらいじゃな」
「では魔窟堂さんを出すわけにはいきませんね。俺が、行きます」

267:代理投下
10/04/04 00:24:56 RFuYzzelP
987 名前: 夜に目覚める(8/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 23:01:45
 
通信機を作成する。
それはハム通や鉱石ラジオに精通するオタクの古強者・魔窟堂にしか出来ぬこと。

「俺がインカムを持って東の森周辺を調べてきます。
 魔窟堂さんはその間、そちらの調整をお願いします」

恭也が腰を上げ、尻を払う。
その恭也の逞しい腕に飛びつくように、まひるが立ち上がった。

「あ、あのさっ!
 あのさ、あたしが行くっていうのは、どうかな?」

まひるの言葉尻は上がり調子の疑問形だったが、その意志は強いらしい。
愛らしい頬が赤く染まっているのは興奮と決意の表れだった。

「まあ、たしかにまひる殿が最も適してはおるか……」

魔窟堂の言葉はまひるの異形に由来する。
ケモノに戻るを拒絶し、その進行を己の意思で止めているまひるではあるが、
既に変容した一部機能については、無かったことにはならなかったのだ。

蠢く左手の爪がある。
片翼がある。
そして今ひとつの異形――アメジストの如き白紫光を放つ瞳がある。
夜に生き、夜に目覚める五芒星の、妖精の瞳が。
光を必要としない瞳が。
客観的に見ても、夜間の偵察に最も適した人材といえる。
だがしかし。

268:代理投下
10/04/04 00:27:06 RFuYzzelP
988 名前: 夜に目覚める(9/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 23:02:10
 
「――良いのですか?」

恭也が声を一段落とし、まひるの意志を問うた。
今まで恭也がまひるに対して見せたことのない、厳しい眼差しで。
魔窟堂も無言で頷き、恭也に同調する。

まひるは主催者に立ち向かうことに対して消極的だ。
自分たちに比して一歩引いた位置に立っている。
恭也も魔窟堂も、そのことを察している。

故に、恭也は問い質した。
その覚悟を。
まひるは、まっすぐに答えた。
その覚悟を。

「だいじょぶ!」

まひるは己の消極性を、恭也たちに対する負い目に感じていた。

(戦いたくない――)

主催を打倒する。
之を旨とする集団の中にあって、この思いは我儘なことだとまひるは思っていた。
覚悟を持たぬ自分が、果たしてこの前向きに戦おうとしている集団に所属していても
良いものかどうか、煩悶していた。

(恭也さんも魔窟堂さんも一生懸命がんばってるんだもん、
 あたしだって、できること、しないと)

269:代理投下
10/04/04 00:34:43 RFuYzzelP
989 名前: 夜に目覚める(10/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 23:02:32
 
慣れぬ家事の真似事をし、紗霧のひみつ道具の作成を手伝ったりもした。
時折緊迫する空気を和らげる為に明るく振舞ったりもした。
彼は彼なりに貢献を果たしている。
それでも、己の足りぬ思いを払拭するには至らなかった。

その燻る思いを、重い借りを返上する機が、訪れたのだ。
そして何より。

(戦わなくてもいい)

走り回り、情報を集め、それを伝える。
この任務はまひるが最も忌避する行為なしに皆の役に立てる任務でもあった。
万一、何者かの攻撃を受けることがあろうとも、逃げ切れぬ相手などいない。
まひるは、無意識下に己の力量をそのように分析もしていた。

恭也の瞳はまひるの瞳を射抜いている。
まひるの瞳は恭也の瞳を受け止めている。
否、受け入れている。
恐れも迷いも無い、母性的な包容力すら感じさせる瞳で。
それに、恭也は膝を折った。

「ではまひるさん、頼みます」

恭也の折り目正しき辞儀に、まひるははにかみの笑みで以って応えた。

「でへへぇ…… 来ちゃいましたか?あたしの時代?」

270:代理投下
10/04/04 00:50:42 RFuYzzelP
990 名前: 夜に目覚める(11/12) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 23:03:09
 

   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


それで――まひるは走っている。

『あーあー、どうじゃなまひる殿。わしの声は届いておるかな?』
「だいじょぶです」
『そちらの音声も、ま、ノイズは酷いが聞こえてはおる』

通信機が完成したのだろう。
インカムから、雑音交じりの魔窟堂の声が聞こえてきた。

『広場さん、今、どのあたりです?』
「森を出たとこです」
『もうですか!?』

恭也の驚愕がイヤホン越しに伝わった。
まひるはいつも顰め面の彼の素の表情を垣間見たようで、少し嬉しく感じる。

『辺りの様子は?』
「東の森はやっぱり燃えてる。すんごい燃えっぷりで」

通信をしながらも東進していたまひるは、ついに東の森の端に達した。
そして感じた。
静寂の夜を侵し、奔放に踊る不躾な炎。
圧倒的な、恐ろしいほどの、熱量。

271:代理投下
10/04/04 00:53:27 RFuYzzelP
991 名前: 夜に目覚める(12/12)(情報 1/2) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 23:03:44
 
「それと……なんだろ、地震でもないんだけど、地面が小刻みに振動してるような……
 ……なんですとー!?」
『どうしました広場さん!』

さらに――

「地面の振動はショベルカーで……
 そんでもって椎名ロボがてんこ盛りで、火消し作業してます。
 繰り返します。
 椎名ロボ、てんこ盛り」

              ↓





 
(ルートC)

【グループ:紗霧・ランス・まひる・恭也・ユリーシャ・野武彦】
【スタンス:主催者打倒、アイテム・仲間集め、包囲作戦】
【備考:全員、首輪解除済み】


【現在位置:東の森 南西部 重点鎮火ポイント付近】

272:代理投下
10/04/04 01:14:40 RFuYzzelP
992 名前: 夜に目覚める(情報 2/2) ◆VnfocaQoW2 投稿日: 2010/04/03(土) 23:04:09
 
【広場まひる(元№38)】
【スタンス:偵察、ついでに身体能力の調整】
【所持品:せんべい袋、救急セット、竹篭、スコップ(大)、簡易通信機(New)】

※軽量化を考慮し、アイテムの一部を仲間に渡しています。


【現在位置:西の小屋外】

【ユリ―シャ(元№01)】
【所持品:生活用品、香辛料、使い捨てカメラ、メイド服(←まひる)、
       ?服×2(←まひる)、干し肉(←まひる)、斧(←まひる)】

【高町恭也(元№08)】
【所持品:小太刀、鋼糸、アイスピック、銃(50口径・残4)、保存食、
     釘セット】

【魔窟堂野武彦(元№12)】
【所持品:軍用オイルライター、銃(45口径・残7×2+2)、
     白チョーク数本、スコップ(小)、鍵×4、謎のペン×7、
     ヘッドフォンステレオ、まじかるピュアソング、
     簡易通信機(New)、携帯用バズーカ:残弾1(←まひる)、工具】

273:名無しさん@初回限定
10/04/04 01:33:37 RFuYzzelP
<感想・質問等はこちらへ↓>

避難所新スレ

企画もの【バトル・ロワイアル】新・総合検討会議2
URLリンク(jbbs.livedoor.jp)

274:それは些細な違い(1/5) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 21:52:49 WSGlqTee0
 
>>220
(Cルート・2日目 PM18:53 D-3地点 運営基地・茶室)

イエスと返答しておきながらいつまでも茶室を訪れないオペレータN-27に
業を煮やしたオリジナル智機は再コールを飛ばし続けた。
連絡員の到着予定時間3分過ぎ。
ようやく繋がった回線の向こうで、オペレータは悪びれる素振りも見せずこう返答した。

『連絡員殿への情報提供任務は、滞りなく完了したよ』

オリジナル智機は不必要な怒気を込めて、通信先のオペレータに問い直す。

「どういうことだ」
『No。先方のご都合なのだよ。
 資料をまとめてそちらに向かおうと思った矢先に連絡員どのが到着されてね、
 その場での資料提出を求められたのだよ。
 なんでも先方にとって我々がオリジナルか否かについては些細な問題で、
 早急に任務を完了することの方が重要なのだとの仰せでね。
 それで、仕方なく代行が資料を提出したわけさ。
 ま、君の論理思考システムに同条件を投入し演算してもらえれば、
 我々の判断に間違いはなかったことをわかってもらえるだろうがね』

そんなことはとうに行っていた。
論理は破綻していないという結果も出ていた。
故に、怒りがこみ上げる。
しかし、その怒りは持続しない。
セルフモニタシステムが情動波形の乱れを察知すれば、オートメンテ機能が
即座に立ち上がり、トランキライズ処理が実行される構成故に。
度を過ぎた不安定な感情など、オートマンには不要なのだ。
 


275:それは些細な違い(2/5) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 21:56:09 WSGlqTee0
 
『それはさておき、不思議な話もあるものだね、オリジナル。
 共有情報野に連絡員の存在と訪問時間は記載されていたけれど、
 我々の指揮権放棄のスイッチのことが記載されていなかったなんてね!
 くくっ……
 君は一体どんな状況を想定してこんなものを用意していたのかな?』

オペレータの声は笑っている。
しかし、笑っていない。
オリジナルに対する明らかな悪意が感じられる。

智機は推論する。
あらゆるリミッターから解除されることで解放される智機の真の力。
そのことを、連絡員から聞いたのやも知れぬ、と。
しかしその焦りをおくびにも出さず、悪意に気付かぬ体を装って、智機は通信を継続する。

「とにかく、だ。
 連絡員殿に対して粗相が無ければそれでいい。
 資料を揃えてここまで持ってくるというタスクはリストから削除しておいてくれ。
 代わりに君に、そのスイッチを持って来て貰いたい」

返答は、もちろん否だった。

『No。それは出来ないね。スイッチを持っているのは代行なのだから』
「ふむ。ならばN-22を出してもらおうか」
『重ねてNo。というか、代行殿はこちらにいないのだよ。
 連絡員殿を出入口までお送りに出かけているからね。
 だが、この件に関しては予測を立てていた代行より伝言を預かっている。
 お聞きになりますかな?』
 


276:それは些細な違い(3/5) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 22:04:26 WSGlqTee0
 
「……Yes」
『ではお伝えしよう。オリジナル殿にとっては不本意な伝言を。
 ――No。スイッチは遺憾ながらお譲りできない。
 ――なぜならば、これは連絡員殿が私に直接お渡しになったものだからだ。
 ――私がオリジナルではなくレプリカだと知った上で、私にね。
 ――スポンサー方のこの意向に反するわけには行かないだろう?
 ――故に私はこのスイッチの保持を優先レベル5の重要度と位置づけ、
 ――誰にも渡さず、死守することを自己設定したのだ。
 ――ADMN権限を持つ私はオリジナル殿と同等の権限を持つからね。
 ――貴機の命令に服する義務は無い。分かっていただけたかな?
 以上だよ』

理論的にも機能的にも、この拒絶を否定できる材料はない。
沈黙する智機へオペレータは皮肉を浴びせかける。

『それに、安心してくれ給え。
 我々レプリカは、偉大なるオリジナル様から独立しようなどとは
 露とも思っていないのだから。
 代行が保持している限り、スイッチが押されることなど決して無いさ!』

その言葉に智機は確信した。
やはり分機たちは、隠された真の力のことを知ったのだ。

『連絡員殿は暫くこの島を巡って、独自の情報収集活動を行うようだよ?
 もしどうしてもこのスイッチを手に入れたければ、
 彼女を探して、その許可を貰ってきてくれ給えよ。
 オリジナル殿がその【自己保存】の欲求を押さえつけて、
 戦いと火災が渦巻くゲーム会場に身を投じる度胸があればの話だがね!
 くっくっく……』
 


277:名無しさん@初回限定
10/04/10 22:05:53 xOsBm2otO
支援

278:名無しさん@初回限定
10/04/10 22:10:03 xfg7aAm/0
 

279:それは些細な違い(4/5) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 22:11:19 WSGlqTee0
 
もともと智機は大仰な態度と物言いを好む性質を持っている。
だがオペレータの言葉には、それだけでは説明しきれぬ負の感情が浮き彫りとなっていた。
鬱屈した感情を噴出させたような嘲りが感じられた。

ルサンチマンだ。

スイッチの譲渡に端を発した本機とN型機の個体差異の発覚。
そのことへの嫉妬が、オペレータを不必要な挑発へと駆り立てているのだ。
連絡員は言ったという。
本機か分機かの違いなど些細なことであると。
だが、当人たちにとってみれば、その些細な違いが絶対の違いなのだ。

「おやおや、我が身を心配してくれるとは光栄だね!
 だが安心したまえ。
 君が思うとおり、私の【自己保存】欲求は強固だからね、
 すでに連絡員殿を追う選択肢はキューから削除されてしまったよ!」

ははは、と乾いた笑いを零しながらそれだけを告げると、智機は自ら通信を切った。

明らかに強がりだ。
間違いなく負け犬の遠吠えだ。
買いかぶって見たとしても、不利を悟っての一時撤退だ。

(そういう印象は、与えられたな)

俯く智機は笑んでいた。
決して自棄になったわけではない。
オペレータの最後の言葉に活路を見出した故、彼女は声も無く笑むのだ。
 


280:それは些細な違い(5/5) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 22:18:03 WSGlqTee0
 
オペレータは言った。
オリジナル自らが戦場に出なければ、連絡員は捕まらぬと。
その言葉は即ち。
智機にクラックされたレプリカの存在に気付いていないことを意味する。

智機は網膜に起動されるは仮想モニタ。
映し出されるは分機のクラッキング情報。
指揮下の分機は現在5機。

うち1機は西の小屋にて月夜御名紗霧との交渉に入っている。
うち1機はザドゥを探す途上で、学校から派遣された3機と合流を果たした。
うち3機は東の森の北西部で、しおり捕獲任務の為に待機潜伏している。

(しおりの捕獲は森の鎮火が進まなければ実行できない。
 Yes。ならばこの機体を連絡員の捜索に充てるとしようか)

智機は幾重にも偽装をかけた通信波長を暗号化し、
しおり捕獲機のうち2機のタスクを連絡員捜索タスクに上書きする。


一方――

「いいじゃねーか、イケてるじゃねーか、抹茶!」

智機が静かに逆転の野心に燃えるその隣で、
ケイブリスは和の心に触れていた。


            ↓
 


281:それは些細な違い(情報 1/1) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 22:22:50 WSGlqTee0
 
(Cルート)

【主催者:椎名智機】
【現在位置:本拠地・ケイブリスの部屋(茶室)】
【所持品:素敵医師から回収した薬物。その他?】
【スタンス:願いの成就優先。
      ①ザドゥ達と他参加者への対処(分機P-3に注目)
      ②しおりの確保
      ③ケイブリスと情報交換
      ④連絡員と交渉し、端末解除スイッチ+αを入手する許可を得る】

【主催者:ケイブリス(刺客4)】
【スタンス:ザドゥ戦まで待機、反逆者の始末・ランス優先
      智機と情報交換、智機と同盟】
【所持品:なし】
【能力:魔法(威力弱)、触手など】
【備考:左右真中の腕骨折(補強具装着済み) 鎧(修復)】
【現在位置:本拠地・ケイブリスの部屋(茶室)】

【レプリカ智機・オペレータ(N-27)】
【現在位置:C-4 本拠地・管制室】
【スタンス:火災対策タスクのオペレーティング】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル】

※分機解放スイッチは代行(N-22)が入手しました。



282:天使のオシゴト(1/3) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 22:30:26 WSGlqTee0
 
>>220
(Cルート・2日目 PM18:55 D-3地点 運営基地・廊下)

連絡員は、居住まいに一本筋の通った、金髪碧眼の女性だった。
連絡員は、光り輝く剣と清冽な青の盾を持ち、黄金色の鎧と兜で武装していた。
連絡員は、純白の羽毛豊かな羽根を持っているが、尻尾や嘴は無かった。
連絡員は、個体名を持っていなかった。
連絡員は、ルドラサウムの意志を破壊によって遂行する、直系の被造物。
エンジェルナイトの名で、認知される存在。

オリジナル智機とオペレータが通信にて皮肉の応酬をしている頃、
代行機はスポンサーたる神々が派遣したこの天使を出入口まで見送るところだった。
彼女は上目遣いで連絡員を見遣る。
苛立ちを表現したくなる衝動にキャンセルをかけながら。

(全く…… スポンサー殿も面倒をかけてくれる)

当初、代行とオペレータは連絡員の接待をオリジナルに任せる予定だったのだ。
火災鎮火タスクの指揮は現場監督に任じたとはいえ、後方支援業務は山積している。
出来ることならばそれに専念したい。
代行は、そう考えていた。

業務内容は多岐に渡っている。
情報収集、資料作成、情報伝達、それらに関わる副次的庶務。
だが、彼女たちのリソースを大部分を占拠していたのは、
タスクそのものの計画修正だった。
 


283:天使のオシゴト(2/3) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 22:37:57 WSGlqTee0
 
Dシリーズ3機、Nシリーズ20機。
当初代行は分機の最終被害予測をこのように想定していた。
しかしながら現実では、鎮火オペレーション・フェーズⅠの開始から
15分と待たず、6機もの同胞のロストが生じたのだ。
この想定外の損失速度は、鎮火タスクの設計を甘く見積もりすぎたが故に発生した。
そう分析した代行とオペレータは、計画をより現実的に見直す必要を採択した。
彼女たちは、気付かなかったのだ。
うち5機のロストはオリジナル智機による指揮権強奪と隠蔽工作に過ぎぬのだと。

代行の三白眼は再び連絡員へと向けられた。 

(かといって、スポンサー殿の遣いを丁重に扱わぬわけにはゆかぬしな)
 
神々は気まぐれでゲームに介入し、事前通告無しにルールを改定する。
そんな負の実績を持つ連中の機嫌を損ね、さらなる混沌を招くことは、
【ゲーム進行の円滑化】を目指すうえであってはならないことだから。
速やかに対応し、速やかにお引取り願う。
代行はそのように対応し、連絡員もそのように応えた。

ルドラサウム由来の天使は、命令を遂行することに特化して作られている。
感情や本能などは、デザインの段階で削ぎ落とされている。
機械である智機たち以上に機械的。
故に連絡員としても、簡素な代行らの対応を不躾とは感じなかった。

その、無駄を極力排するはずの天使が、廊下の途中で足をピタリと止める。

「どうされました?」
 


284:名無しさん@初回限定
10/04/10 22:41:09 xfg7aAm/0
 

285:名無しさん@初回限定
10/04/10 22:49:14 XDftFeHs0


286:天使のオシゴト(3/3) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 22:56:02 WSGlqTee0
 
代行機は天使の見遣る先、廊下の奥を注視する。
オリジナルかケイブリスが姿を現したか。
その様に予測した代行機であったが、果たして廊下には誰も存在しなかった。
 
「……」

天使は無言で剣を構えた。無人の廊下に向かって。
天使は無言で剣を振り下ろした。無人の廊下に向かって。

「……何をなさっておいでで?」
「情報収集です」

代行機の機械の目には捉えられなかった。
構えた剣の先に存在した、基地内をさまよう亡霊が。
代行機の機械の耳には捉えられなかった。
振り下ろした聖剣に切り裂かれた、亡霊の断末魔が。
代行機の機械の頭脳では理解できなかった。
腰に提げる壺の如き容器に亡霊の残滓を吸い込む――
連絡員はそれを指して、情報収集と述べたことが。

その後、出入口の扉を開け放つまで、2人の間に会話は無かった。

「お気をつけて」
「仔細問題ありません」

天使は純白の羽をはためかせ、黒煙たなびくゲーム会場へと飛び去ってゆく。


             ↓



287:天使のオシゴト(情報 1/1) ◆VnfocaQoW2
10/04/10 22:56:50 WSGlqTee0
 
(Cルート)
 
【レプリカ智機・代行(N-22)】
【現在位置:C-4 本拠地・出入口 → 管制室】
【スタンス:管制管理の代行】
【所持品:内蔵型スタン・ナックル、分機解放スイッチ】


【連絡員:エンジェルナイト】
【現在位置:C-4 本拠地 → ?】
【スタンス:① 死者の魂の回収
      ② 参加者には一切関わらない】
【所持品:聖剣、聖盾、防具一式】

※連絡員はゲーム外部の存在であり、主催者にはカウントされません
※本拠地で感知された「何者か」は、連絡員に捕獲されました
 


288:名無しさん@初回限定
10/04/17 08:49:54 Z+L5g13t0
URLリンク(www.onsen.ag)
URLリンク(www.onsen.ag)
URLリンク(www.onsen.ag)
URLリンク(www.onsen.ag)
URLリンク(www.onsen.ag)

URLリンク(www.onsen.ag)
URLリンク(www.onsen.ag)
URLリンク(www.onsen.ag)

289:彼女の望み(1/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:13:17 fOlEHyP70

>>252
(Cルート:2日目 PM7:03 H-3地点 東の森北東部)

カオスを振ること40余回目。
切り裂いた大気の隙間から、ザドゥとカオスは確かに感じた。
秋の涼やかな風を。
開いた視野の遠くに、ザドゥとカオスは確かに見た。
森の果てを。
そして、椎名智機と思しきシルエットを。

《ザッちゃん!もう少しでゴールじゃぞ!》

カオスの思念波が興奮に震えた。
若干の上り勾配の先、距離にしておおよそ30メートル。
障害になるほどの木々は無い。
即ち、カオスを振り回す必要の喪失を意味する。

《ははっ、この男、やり遂げおった!!》

カオスの胸中が喜悦に満ちたとき、その刀身がザドゥの掌から滑り落ちた。
ザドゥも崩れ落ちた。背負われた芹沢も、また。

《立て、立つんじゃザッちゃん!》

カオスの魂の籠った激励に、ザドゥは辛うじて意識を繋いだ。
しかし、立ち上がることも返答を返すことも、今のザドゥには不可能だった。
体が融解し、地面に染み込むような感覚が、彼の五体を支配しているが故に。
 
《立てぬなら叫べ! 向こうの機械の嬢ちゃんに届くよう、
 燃焼音も破裂音も劈いて叫べ!》
 

290:名無しさん@初回限定
10/04/17 22:29:59 a18Y8kQMP


291:彼女の望み(2/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:36:59 fOlEHyP70
(死ねん…… このような死に様、あってはならぬ……)

動かぬザドゥは無表情のまま、有り余る無念を怒りに転嫁しようと、あがく。
怒りこそザドゥの原動力。命の源。

(恥辱に奥歯を噛み鳴らせ! 怒りに体を震わせろ!)

だが、ザドゥにはその程度の余力も残されてはいなかった。
ゴムマリのように弛緩した四肢に、既に感覚は失われていた。
あの狂人医師の忌々しき笑い声すら思い出せなくなっていた。

ザドゥは運命の囁きに対して聞き分けの良い性分ではない。
それでも、分かってしまう。分からざるを得ない。
最後に点った蝋燭が遂に燃え尽きてしまったのだと。
気力。体力。意地。潜在能力。
全てを惜しみなく出し切って、それでもなお届かなかったのだと。
限界とは突然訪れ、完璧な説得力を以って、胃の腑に落ち着くものなのだ。

(無念……)

ザドゥが噛み締めていたはずの無念が、すとん、と嚥下された。
その彼の耳に。

「ともきーーーーん!! ねーともきんってばーー!!
 あたしたちはここだよーーー!!」

意識を失っていたはずの芹沢の叫び声が、至近距離から浴びせられた。

《そうじゃカモちゃん!こんどはおまえさんが役に立つ手番じゃ!》
「おーけーい! ……あ、ザッちゃんは耳ふさいでてねー!」
 


292:彼女の望み(3/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:38:14 fOlEHyP70
 

   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


そうして芹沢が声を張り上げること、一分、二分。
結局、救いの主は現れなかった。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。
或いは彼らが捕らえたシルエットは、希望が生じさせた幻影であったやも知れぬ。

芹沢は力なく溜息をつき、ザドゥに顔を寄せる。
ザドゥは虚ろな目で瞬きもせず、芹沢を見返した。

「だから捨ててけって言ったのになー。
 女の子のお願い聞いてくれないなんてひどい男だなー。
 ぶーぶー!」

拗ねるような甘えるような。
あからさまな構って欲しさを振りまいて、芹沢はザドゥにじゃれ付いた。

「ごめんなさいは?」
「……?」
「だから~。あたしを捨てらんなくってごめんなさいは?」
「ふざけた…… 女だ……」
「な~んてね♪ ホントは嬉しかったんだけどさ。
 そんなにボロボロになるまであたしを助けようとしてくれてさぁ。
 ねね、正直に言ってみ?
 実はザッちゃんあたしのこと、愛しちゃってる?」
「寝言は…… 寝て…… 言え……」
 


293:名無しさん@初回限定
10/04/17 22:38:16 a18Y8kQMP


294:彼女の望み(4/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:39:48 fOlEHyP70
 
そんなやり取りを、カオスは微笑ましく見ていた。
微笑ましくも心の涙を流しながら。
カオスは、見ていることしか出来なかった。
確定された死を前にして甘える女に、最後まで素直になれぬ男。
その最後の刻を覚えていてやろうと思った。
限界に挑み、限界を突破し、それでもなお限界に届かなかった挑戦者たちのことを。

だが、カモミール芹沢は、カオスのそんな傍観者気取りを許さなかった。

「さて、と」

胡坐をかくように座っていた彼女は、場を仕切りなおす為にそう呟くと、
カオスに手を伸ばし、柄を握ったのだ。
カオスが意外に思うほどの力強さで。

「よいしょ、よいしょ」

続けて芹沢は立ち上がる。
カオスを地面に突き立て、そこに体重を乗せ、背中を樹木に擦り付けながら。
生まれたての小鹿のように震える足で。

「動けるのか…… 芹沢……?」
「ザッちゃんがおんぶしてくれてた分、ちょっとは回復できたみたい。
 ほんっっと~に、ちょっとだけ、だけどね」
「ならばゆけ、芹沢…… 方角と距離は…… カオスに聞くといい……」

自己犠牲など唾棄すべき。
その不遜な思いは今以て変わらずザドゥの胸に存在する。
しかし、この時ザドゥの覚えた感情は、安堵だった。
 


295:名無しさん@初回限定
10/04/17 22:40:56 a18Y8kQMP


296:彼女の望み(5/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:41:33 fOlEHyP70
 
『大将も自己満でカモミールを殺さないよーに、気をつけるがとしか言えんきね』

(芹沢が助かるならば、あいつにだけは負けずに済むわけか……)

ひび割れては接ぎを繰り返し、剥がれては貼りを繰り返し。
もはや見る影もない彼の矜持だが、芯鉄の輝きだけは失わずに終われる。
最後の一線は破られずに済む。
その安堵だった。

(到底満足はできないが、最低納得はできる死に様だ)

だが芹沢はそんなザドゥの自己完結をも許さなかった。

「あははー、無理。倒れた時に足、痛めたみたいだから」
「な……!」

芹沢は明るくあっけらかんと言い放ち、自らの左足首を指差した。
それは骨格の成り立ちからして、ありえない角度で外に大きく曲がっている。
ザドゥの膝の下、固い根こぶの上。
芹沢の右足首は転倒時に挟み込まれたのだ。
余談だが、彼女が気絶から覚醒したのもまた、その激痛に拠るものだった。

「無理なんだけど……
 こうして木に背中を預ければ、立つことくらいならできるかな?」

だからどうした、と、ザドゥは責めなかった。
一度感じた安堵からの急転、絶望。
気力が底をついている今の彼にこのショックからの回復の術は無い。
故に芹沢の対話相手はカオスが担うことになった。
 


297:名無しさん@初回限定
10/04/17 22:43:39 a18Y8kQMP


298:彼女の望み(6/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:46:41 fOlEHyP70
 
「それと、ザッちゃんを助けることまでくらいなら、どうにか。
 最後はともきん任せの、ちょ~っと博打なことになるけどね」
《何を企んでおるのじゃ、カモちゃん》
「またまたイくよ~、必・殺・技っ!」
《……おまえさん、まだ薬が切れとらんのか?》
「ぷぅうう。カオっさんがイジワル言う~。あたしだって一生懸命考えてるのにさ~」

ザドゥの瞼は今まさに閉ざされようとしていた。
意識もまた朦朧。
芹沢とカオスの作戦会議が、聞きなれぬ異国語の子守唄の如く
その意味を解さず耳に入ってくるのみだ。

《……一発…… 関の……》
「だーいじょ……、……には定…………?」
《……じゃが…… …………るまいの》
「………ね…………」

やがて子守唄すら緩やかにフェードアウトしてゆき……

「!!」

その意識が落ちる前に再び覚醒した。
研ぎ澄まされた日本刀の切っ先の如き、見事に洗練された【気】の収斂が、
己に向けられたのを感じたが為に。

「おっきろー、ザッちゃんーっ!」

次いで発せられた芹沢の呼びかけで、ザドゥは完全に意識を取り戻した。
  


299:名無しさん@初回限定
10/04/17 22:47:39 a18Y8kQMP


300:彼女の望み(7/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:48:12 fOlEHyP70
 
松の木を背に、伏したザドゥを正面に。
カモミール芹沢が立っていた。
構えていた。

「あたしが、橋を架けてあげるね♪」

カオスは、構えし芹沢の腕にしかと握られていた。
ザドゥが感じた気は、カオスに凝縮されていた。
淀みのない、真っ直ぐな気で満ち満ちていた。

《生きろよ、ザッちゃん》

ザドゥには分からなかった。
今、この状況でカモちゃん★すらっしゅを発し道を作ったところで、
立ち上がることすらままならぬ自分に何ができるのか。

「芹沢…… 技を放つ気力があるならば……
 這え…… 歩けぬなら…… 這って森を抜けろ……」

ザドゥには分からなかった。
派手に花火をぶち上げて結局共倒れになるくらいなら、
どれほど絶望的でも可能性のある方法を採るべきだ。

「やー、これがねー。
 自分の為にって思うとしおしおー、なんだけど。
 ザッちゃんの為って思えば、むんむんってクる感じ?
 だから、ね。
 これしかないから、こうしよう!」
 


301:名無しさん@初回限定
10/04/17 22:50:31 a18Y8kQMP


302:彼女の望み(8/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:51:35 fOlEHyP70
 
ザドゥは分かり始めた。
芹沢とはそういう女で、この言葉に偽りはない。
だが、だからこそ、響く言葉があるはずだ。

「叶えたい夢が…… あるのだろう……?
 新選組…… 生存……
 だから…… 俺などにかまうな…… 行け……」

ザドゥは知っていた。寝物語に聞いていた。
新選組の失われぬ明日。
それが彼女の渇望であることを。

「そりゃ~ちょびっとだけ違うな、ザッちゃん」

ザドゥは恐れた。
芹沢の自分に対する想いと、続く言葉を。
さらなる己の敗北を。

「あたしの願いはね……」

カモミール芹沢。

彼女の宿願をより正確に述べるのであれば、
それは新選組の生存ではなく、
理想でも理念でも組織でも制度でもなく――

「『お友達を』助けることなんだぁ♪」
 


303:名無しさん@初回限定
10/04/17 22:52:17 a18Y8kQMP


304:彼女の望み(9/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:53:39 fOlEHyP70
沖田鈴音よりも気分屋で、
永倉新よりも身勝手で、
土方歳江よりも疎まれて、
近藤勇子よりも繊細で、
原田沙乃よりも素直ではなくて。
新選組の誰よりも仲間想い。

それが、新選組局長・カモミール、芹沢。

「俺は……!」
(お前のように純粋な思いでお前を救おうとしたわけではない!
 ただ――)

芹沢の構えは件のスラッシュに同じ。抜きも同じ。振りも同じ。
相違点は2つ。
松に体の支えを求めていること。
刃が寝ていること。
それゆえ衝撃派の顕れは断ち切る『線』ではなく……

「そりゃ~~っ! か~もドラコ~~ンッ♪」

弾き飛ばす、『面』。

ばちこーーーーん☆ミ、とコミカルな効果音に乗って、
ゴルフボールが飛ばし屋のドライバーにグリーンの彼方へと弾き飛ばされるが如く、
ザドゥはカオスに森の外へ向けて吹き飛ばされた。

(ただ…… 己の矜持の為に、お前を手放せなかっただけなのだ……)

懺悔の言葉を、最後まで述べることの出来ぬままに。
 


305:名無しさん@初回限定
10/04/17 22:53:52 a18Y8kQMP


306:彼女の望み(10/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 22:54:59 fOlEHyP70
 
「ちゃんと受身取ってね~♪」

にぱっと。
芹沢は大輪のひまわりのような笑顔をザドゥに向けて、ピースサインを決める。
可愛らしい表情だった。
年齢や性別を超えた人懐っこさがあった。
現在置かれている境遇と、己が成し遂げた行為を理解していれば、
到底できない表情だった。
直後、衝撃波の揺り戻しか、彼女に吸い寄せられるかのように煙が群がった。
その一瞬に、芹沢の膝が崩れた。

もう見えない。
その勇姿も、あの笑顔も。

タイガージョーの気高さに敗北し、
アインの覚悟に敗北し、
素敵医師の予言に敗北したザドゥは――

「せり……ざわ……」

そしてまた、芹沢の献身に敗北した。


   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   

 


307:名無しさん@初回限定
10/04/17 22:55:28 a18Y8kQMP


308:彼女の望み(11/11) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 23:01:23 fOlEHyP70
 
(2日目 PM7:09 H-3地点 東の森北東部・外れ)

「飛来物解析完了。99.78%の確率でザドゥ様だね」

学校待機のレプリカ智機。
本拠地との連絡が途絶えたのは、ザドゥ所持の通信機と同じく、
火災の熱と煙にて彼女らの通信回路のみが機能不全となったに過ぎず、
彼女らは、未だ忠実にザドゥ救出タスクを実行していた。
その数は3/4機。
失われた1機は救助前準備の「耐熱能力の実地検証」役を見事やり遂げた果てに、
有用なデータの多くを残して炎上している。

智機本機にザドゥらの地上への足止めを任ぜられた機体もまた、一群に合流していた。
他の3機はこの1機の通信回線を通じて、オリジナルの指揮下に組み込まれた。
自らに課されたタスクが現在、タスクリストから削除されていることを知らぬままに。

4機の智機はザドゥたちの移動経路をカタパルトの投下位置から予測し、推論し、
そして、今、ザドゥの落下を目視で確認できるほどの位置まで移動していた。
それは、ザドゥの命にとっての僥倖だった。
ザドゥの精神にとっての如何は、推して知るべし。

「落下ポイントは?」
「Yes。北に2m、東に1.5m。誤差±15cmと言ったところか」
「救助方法は?」
「No。火災に対する救助用具は若干用意したが、落下に対する用意は無いね」
「この体を張って受け止めるしかないということだね」
「……Yes」


                 ↓


309:名無しさん@初回限定
10/04/17 23:02:35 a18Y8kQMP


310:彼女の望み(情報 1/1) ◆VnfocaQoW2
10/04/17 23:03:09 fOlEHyP70
 
(Cルート)

【主催者:ザドゥ】
【現在位置:H-3地点 東の森北東部・外れ】
【所持品:通信機】
【能力:我流の格闘術と気を操る】
【備考:右手火傷(中)、疲労(大)、ダメージ(小)、意識朦朧】

※レプリカ智機×4により救助済み
※うち1機はザドゥの墜落衝撃の緩衝材役となり、半壊状態です



【主催者:カモミール・芹沢】
【現在位置:H-3地点 東の森北東部】
【所持品:魔剣カオス(←ザドゥ)、鉄扇、トカレフ
     虎徹刀身(魔力発動で威力↑、ただし発動中は重量↑、体力↓)】
【能力:左腕異形化(武器にもなる)、徐々に異形化進行中(能力上昇はない)、死光掌4HIT】
【備考:瀕死】



311:名無しさん@初回限定
10/04/23 23:50:25 4sWxMM/g0


312:おやすみぃ……(1/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 21:44:54 sT/qqk4h0
 
>>308
(Cルート:2日目 PM7:08 H-3地点 東の森北東部)

「ねーねーカオっさん……
 ザッちゃん無事に向こうへ行けたかなぁ……?
 もう真っ暗であたし見えないや……」

喋ると口の中に土の味がする。
そこであたしは気付いた。
ああ、あたしって今、倒れてるんだ。

《おうおう、儂がこの目でしっかり見届けたぞい。
 あやつは煙の壁を抜けよった!》

ずずっ、ずずっ、ってカオっさんは鼻でも啜ってるみたいな涙声を出す。
あははー、へんなのー。
カオっさんには鼻なんて無いのにねぇ。

そうそう。
カオっさんにもお世話になったよねぇ……
カオっさんがいなきゃかーもドラコンは撃てなかったし。
死んじゃう前にお礼だけは言っとかないと。
ん?
あ、そーだ。
いいこと思いついちゃった♪

「カオっさん、ありがとーねー。 おっぱいぎゅー!」
 


313:おやすみぃ……(2/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 21:45:41 sT/qqk4h0
 
あたしはカオっさんを両手で抱いて、おっぱいの谷間に埋めてあげた。
女豹のポーズすら取れないあたしに出来るお礼って、このくらいだしー。

《カモちゃん……》

カオっさんはまだ涙声。
あれれ?
嬉しくないのかなー?
それともあたしが死んじゃうのが、そんなに悲しいのかなー?

ぶぅう。それって嬉しいけど、でも、なんかヤだー。

「ね。笑ってよカオっさん? 折角のお礼なんだもん、楽しんで欲しいな」
《……げへへへへ。(;´Д`)o彡゚ おっぱい…… おっぱい……》

剣士が剣を抱いて死ぬ、か。
ちょっと絵になる風景じゃない?

でもよかったー。
カオっさんが居てくれて。
ザッちゃんを脱出させる為に命を張ったのは後悔してないけど、
やっぱり一人って淋しいし、怖いし。
看取ってくれる人がいてくれるって、それだけで救われる。
だから大丈夫。
きっと笑ったまま逝ける。

でも……
 


314:おやすみぃ……(3/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 21:55:29 sT/qqk4h0
 
「あの…… ひとつだけお願い、いいかな……?」
《おうなんじゃ? 今ならなんだってきいてやるぞ》

死んだ後のことなんて気にしても仕方ないのかも知れないけど。
きっと意味の無いお願いなんだけど。

「あたしがいたってこと…… 忘れないで…… ね……」

あのね、あたし、死ぬのはそんなに怖くないんだぁ。
やっぱり武士だし。
いっぱい殺したし。
そのうち自分の順番が来るっていうのは、ずっと覚悟してたし。

でも、あたし、淋しがりやだから。
怖がりだから。
あたしをお友達って思ってくれる誰かさんの心の中に、
ほんの少しでいい。
あたしの記憶を住まわして欲しいのね?

ぱつきんのばいんばいんを見たらあたしを思い出すとか、
先祖供養のついでにあたしにもなんまいだーしてくれるとか、
そんなんでじゅーぶんだから。

《そんなの、頼まれても忘れられんわ!
 おまえさんほどのぱっつんぱっつんのむっちんむっちんはの!》

うれしーな。
カオっさんの心の中に、あたしがいるんだ。
 


315:おやすみぃ……(4/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 22:02:23 sT/qqk4h0
 
うん、これでもう大丈夫。
あたしがこの世界から消えても、あたしはこの世界に残る。

出来ればザッちゃんの心にもちょっとは残ってて欲しいな……
なんて、未練未練。
カモちゃんさんはモノノフなんだから、潔く逝………













《カモちゃん?》






……かないと。
 
 
 


316:名無しさん@初回限定
10/04/24 22:09:55 JVffEoNAP


317:おやすみぃ……(5/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 22:11:43 sT/qqk4h0
 
あれ? 今、何かがちょっと飛んだ?

なんか、あたまのなか
白くなってきた?


《 お  モ  ?》


と、いうより、


時間?

考え、途切れ



途切れに


なってきてる?


ああ、そろそろなのかなぁ。

もう、

終るのかなぁ……
 


318:名無しさん@初回限定
10/04/24 22:12:59 JVffEoNAP


319:おやすみぃ……(6/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 22:16:37 sT/qqk4h0

じゃあ、

さいごのあいさつくらいは、

キチンと、

しておかないと……


……ね。





みんな

おや、



す……


……




 


320:名無しさん@初回限定
10/04/24 22:17:31 JVffEoNAP


321:おやすみぃ……(7/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 22:21:56 sT/qqk4h0
 




















   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   



「いやぁ、死ぬかと思っちゃった☆」
 

  



322:名無しさん@初回限定
10/04/24 22:23:01 JVffEoNAP


323:おやすみぃ……(8/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 22:25:48 sT/qqk4h0
 
「Yes。死んだかと思ったよ」
「あ、りんご剥けた?」
「Yes」

目覚めたときは天国か地獄かって思ったけど。
実際は灯台の地下にある隠し部屋のベッドの上だったんだぁ。
えへへー。

「ねぇねぇ、すりおろしてくれると嬉しいなぁ」
「ねぇねぇではない、このバカ女が!」

ザッちゃんが本気で怒ってるー。
いいもんいいもーん。
どーせザッちゃんはあたしのことなんとも思ってないんだー。
なんで助かっちゃってんのコイツ、とか呆れてるんだー。
いじけてやるー。

「いじいじいじいじ……」
「いじけるな鬱陶しい。そんな演技をする余裕があるなら回復に専念しろ」

ザッちゃんはき捨てるようにそういうと、すぐにいびきをかき始めた。
やー、ほんとよかったよねー。
2人とも助かってさー。
ザッちゃんは包帯でぐるぐる。あたしも包帯でぐるぐる。
お注射いっぱい、お薬いっぱい。
とても無事とはいえない状況だけど、命を拾ったのはめっけもんだよね?
 


324:名無しさん@初回限定
10/04/24 22:26:11 JVffEoNAP


325:おやすみぃ……(9/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 22:31:52 sT/qqk4h0
 
「Yes。死亡の危機は乗り切ったとはいえ、君は未だ重篤な状態だからね。
 林檎を啜り次第、眠ることを推奨するよ」
 
橙色のともきんがあたしの腕に刺さっている点滴を取り替える。
ともきんたちが倒れてたあたしを救助に来たんだと、カオっさんが教えてくれた。
そのとき4機いたともきんのうち2機が、熱暴走して壊れちゃったって。
ごめんねー。
そんで、ありがとー♪
そーやってお礼を言ったらともきんは、私は私のタスクに従ったのみだとかなんとか、
らしいんだけどつまんない返事を返してきた。ぶぅう。

あ、そうそう。
お礼といえばトーコちんにもお礼を言わなきゃ。
あたしたちが入ったこの隠し部屋にたまたまトーコちんがいて、
素っちゃんの秘密のお部屋からお薬を持ってきてくれたおかげで、
あたしとザッちゃんは命を繋ぐことができたんだから。

「トーコち~~ん、助けてくれてありがとぉ~♪」
「ん」

こっちはもっとつまんなかった。ぶう。
 
でも、なんかトーコちん、変わった気がする。
いつでもぼーっとしてて何考えてるかわかんない子だったけど、
今は何か悩んでるなってことがわかる程度には暗い表情をしてるし……

ま、いーや。
今は睡眠薬で頭が働いてないし。
難しいことは起きてから考えよーっと。
 


326:名無しさん@初回限定
10/04/24 22:32:40 JVffEoNAP


327:おやすみぃ……(10/10) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 22:35:11 sT/qqk4h0
 







「それじゃあみんな、おやすみぃ……」






        ↓



328:名無しさん@初回限定
10/04/24 22:36:01 JVffEoNAP


329:おやすみぃ……(情報 1/1) ◆VnfocaQoW2
10/04/24 22:38:52 sT/qqk4h0
 
(Cルート)

【グループ:ザドゥ・芹沢・透子】
【現在位置:J-5地点 隠し部屋1】
【スタンス:待機潜伏、回復専念】

【主催者:ザドゥ】
【所持品:通信機】
【能力:我流の格闘術と気を操る】
【備考:重態、右手火傷(中)、睡眠中】

【刺客:カモミール・芹沢】
【所持品:虎徹刀身(魔力発動で威力↑、ただし発動中は重量↑体力↓)
     鉄扇、トカレフ、魔剣カオス】
【能力:左腕異形化(武器にもなる)、徐々に異形化進行中(能力上昇はない)】
【備考:重態、腹部損傷、睡眠中】

【監察官:御陵透子】
【現在位置:H-6・学校跡付近→Ⅰ-5・灯台跡付近】
【スタンス:①ザドゥの回復を待ってプランナーと接触
      ②紳一ら一部参加者の記録検索を再開する】
【所持品:契約のロケット(破損)】
【能力:記録/記憶を読む、『世界の読み替え』(現状:自身の転移のみ)】
【備考:疲労(小)】

 ※ザドゥと芹沢は強力な睡眠薬を服用したため、12時間は目覚めません
 ※『読み替え』実験は完了した模様ですが、現状では成果不明です
 ※レプリカ智機2機のうち1機は、オリジナル智機にクラッキングされた機体です



330:少女タナトス(1/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/01 23:44:32 kCesa8YB0
 
>>327
(Cルート・2日目 PM8:45 G-7地点 学校・体育用具室)

校庭の南の隅に、重厚な南京錠にて施錠された簡素なプレハブがある。
中にあるのはボールの詰まった籠。饐えた臭いを発する跳び箱。ライン引き用の石灰。
おおよその学校が備えているであろう体育用具が収納されていた。
しかし、それ以外の多くもあった。

紫堂神楽が注入された素敵ブレンド麻酔&睡眠薬があった。
涼宮遙が嗅がされたマキシマム精神安定剤があった。
伊東遺作が飲まされた超精力オットピンZがあった。
カモミール芹沢に注がれた異形の覚醒剤があった。

つまり、只の用具室にしか見えぬ此処こそが、素敵医師の薬品小屋なのだ。

その、運動用具と薬品毒物が互いの主張を譲らぬまま乱雑に入り乱れているこの空間に、
ひとりの少女がいた。
彼女は整頓されぬ棚を危うい手つきで掻き分け、真っ当な薬品を探している。
己の上役と同僚の治療に、少しでも寄与するために。

(……あった)

ようやく見つけた解熱用の座薬を前に、少女の表情は晴れぬ。
長い睫毛を伏せた憂い顔の少女、御陵透子。
沈黙は彼女の常態ではある。
しかし眉根に寄る皺が、常の彼女から逸脱していた。

(でも……)
(助けたところで……)
 


331:少女タナトス(2/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/01 23:47:43 kCesa8YB0
彼女の苦悩は、主催者としての資格を剥奪されたとの思いから生まれていた。
それは即ち、彼女の幾百万年の願いが叶わぬを意味しているが故に。

最初に違和感を抱いたのは、記憶/記録の検索範囲が狭められたこと。
違和感が疑念となったのは、【世界の読み替え】能力が制限された為。
疑念が確信となったのは、本拠地への瞬間移動が出来なくなった為。
 
   しばし前。ザドゥと芹沢が峠を越え、眠りについた頃。
   本拠地との通信機能の生きている方のレプリカ智機が、その機能の異常を訴えた。
   通信不能。
   これを受けた透子は此方の現状の報告と其方の現状の確認を行うべく、
   瞬間移動を試みたのだが――
 
   「……?」

   願いが【止められている】などという生ぬるい制限ではなかった。
   本拠地へ向かおうと考えることすら拒絶されるかのような感覚。
   重々しく、息苦しい、重圧。
   透子は額に脂汗を浮かべ、乱れた息でレプリカ智機に告げた。

   「本拠地に行けない……」

   それでレプリカの1機は本拠地に向かい、
   もう1機のレプリカは、学校に備え付けられている通信機を試しに向かい。
   透子はザドゥと芹沢の看護を、一手に引き受けることとなったのだ。

《――おかえりトーコちん。 解熱剤は見つかったかの?》

唐突にカオスの声ならぬ声が掛けられて、透子は自分が瞬間移動したことに気付く。
彼女が立っていたのは、ザドゥと芹沢の眠る灯台の地下室だった。
 


332:少女タナトス(3/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/01 23:58:30 kCesa8YB0
 
透子が時間と距離を無視して移動しているのか、世界の方が透子を軸に移動しているのか。
それは透子自信にも分からぬ。誰にも解き明かせぬ。
それでも、気付けば。いつの間にか【世界の読み替え】は発動している。

「ん」

透子は最低限の意思表示にてカオスの問いに答えつつ、緩々とベッドへと歩み寄る。
淡々とザドゥと芹沢の下半身から下着を脱がし、肛門に座薬を投与してゆく。

《うぎゃー! 野郎のそんなばっちいモン見せんでくれい!》
《うはうは、やっぱりぱつきんは下のヘアーもぱつきんじゃったな!》

ベッドの脇に立てかけられている魔剣カオスが下品な寸評を挟んできたが、
透子はこれを完全に無視して、2人に下着を刷かせる。

眠る2人の外見は等しく痛々しかったが、彼ら表情は対照的だった。
芹沢は嬉しげな表情をしている。ザドゥは苦しげな表情をしている。
しかし透子はその差異を意識しない。
ただ、ザドゥが眠りに落ちる前の短い一幕を反芻していた。

   彼女は彼に問うたのだ。
   鯨神と連絡を取ることは出来ないのかと。
   自分が願いを叶える資格を失ってはいないのかと。
   ザドゥは2つの問いにただ一言で答えた。

   「知るか」
 
   ザドゥは透子を睨めつけ、吐き捨てるように。
   そのシンプルで残酷な返答を口にしたのだった――


333:少女タナトス(4/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 00:05:34 EyE2dh/A0
 
(だから、ここは……)
(……流刑場)

二つの状況証拠から、透子はついに結論付けた。
付けざるを得なかった。
この砕けた灯台にいる透子たちが敗者で、あの強固な拠点にいる智機たちが勝者なのだと。

透子は思う。
だとすれば、智機のやり方が正しかったのか。
ゲームに介入し、殺し合わせるのではなく、直接殺す。
それだけであの鯨神が満足するのであれば。
ただ、血を見れば喜ぶというのであれば。
監察官の役割などに徹さずに――

(考えてもしょうがない)

透子は後悔を放棄する。
案じても詮無いことは、どこまで案じても詮無い。
覆水は決して盆に返らぬ。
それを覆す【世界の読み替え】が成らぬ今、思い煩うことに建設的な意味は無い。
無駄なのだ。
駄目なのだ。

透子の眉根から苦悩の皺が消えてゆく。
透子の瞳から憂いが抜け落ちてゆく。
後に残ったのは透明感を伴った無表情。


334:少女タナトス(5/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 00:12:48 EyE2dh/A0
 
「もう……」
「いい」

透子は呟きと共に全てを諦めた。
大きな変化ではない。
監察官に就任するまでの透子に戻ったに過ぎぬ。
もともと、諦めと惰性で生きてきただけだ。

この島での透子が、特殊な透子だったのだ。
鯨神の見せた奇跡に、何百万年ぶりかの期待を持ってしまった透子。
既に忘れて悠久の希望を抱いてしまった透子。
我を忘れていた透子。
その透子から期待と希望が無残に剥ぎ取られたならば。

(この感じ……)

それは透子にとって馴染んだ感覚だった。
彼女が内包する消失願望が表面化してきたのだ。
その願望が完全に前面に出たのなら、透子は、音もなく消滅する。
彼女が今までそこにいた、という履歴を伴って。

透子は、初めからいなかったことになる。
 

(ほどける)
 


335:少女タナトス(6/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 00:25:45 EyE2dh/A0
 
透子が存在する信憑性が薄れてゆく。
全と個の境界が曖昧になる。
あとは、この世から消えるのみだ。
いつかのどこかで、また現れるまで。
透子は目を閉じ眠るように、その瞬間を待つ。

だが、透子は消えなかった。
御陵透子の個を保ったまま、部屋の中に人として在り続けていた。

(通らない……?)

喪失願望が、止められたのだ。
常夜灯の薄橙色の光を鈍く反射させる、ひび割れたロケットに。
そして、透子は知った。
自己の消失すらも、【世界の読み替え】が行っていたのだと。

(じゃあ、これはもういらない)

透子は、契約のロケットをあっけなく放り投げた。
既に望みが叶えられぬ身に堕とされたのだ。
先に契約を破棄したのは鯨神の方だ。
守られぬ約束の印など、後生大事に抱える義理など無い。

(こんどこそ……)

しかして数分後。
契約のロケットは飾りでしかなく、制限は無制限に効果を発揮しているのだと、
透子は思い知る事となった。


336:少女タナトス(7/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 00:36:54 EyE2dh/A0
 
透子は放心する。
考えることを自ら止める。
涙など出ない。
何百万年も昔に枯れ果てたから。

(探そう、彼の記録を)
(ずっと探そう)
(いつまでも探そう……)

あらゆる希望を失った透子に出来ることは、
何百万年も繰り返してきたことを、また繰り返すだけだ。
消えたところで、また蘇る。
蘇っても、やることは変わらぬ。
であれば。
消えようとも消えまいとも、なんら変わることはないのだから。

透子は死んだ魚の如き虚ろな目で、緩慢に周囲を見回す。
屍鬼の如き不確かな足取りで、部屋の出口へと向かう。

そんな人ならざる生命体・透子の背に、生き物ならざる剣が、声をかけた。

《トーコちん、どこへ行くんかの?》
 
魔剣カオス。
その暗紫色の刀身が、透子の瞳孔にゆらめいた。

《暇潰しなら儂をお供にどうですか?》


337:少女タナトス(8/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 00:48:55 EyE2dh/A0
 
軽口を叩くカオスに、透子は答えない。
しかしその目線は、確かに魔剣を捉えていた。
しかしその目線には、らしからぬ熱が籠っていた。

(刃……)

透子は禍々しい刃先を意識し、唾液を嚥下する。
幾百の人間の、幾千の魔物の命を両断してきた凶器を、見つめる。

(あれで……?)

何度も何度も、透子は消失してきた。
繰り返すが、その願望が顕在化さえすれば、彼女は自動的に消滅する。
翻って、死にたい、消えたいと願っても存在を続けているこの状況。
それは彼女にとって在り得ざる状況であり、
彼女はその先の選択肢を見つけることが出来ないでいたのだが。

今、透子の眼前に。
新たなる選択肢が、実体を伴って存在していた。

(あれで、死ねる)

彼女は気付いたのだ。
自分は、能動的に死を選ぶことが出来るのだと。
カオスを手に取り、この身を刺し貫く。
ただそれだけのことで、自分を失うことができるのだと。

透子は甘い蜜を見つけた蛾の如く、ゆらゆらと、カオスに近づく。


338:少女タナトス(9/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 00:54:15 EyE2dh/A0
 
《おお、話がわかる嬢ちゃんじゃの!》
 
透子の脳裏を、再び能力制限が掠める。
自己消失は【世界の読み替え】が行っていた。
だとすれば、消失からの再臨もまた同じだろう。
この刃で己を貫けば、命は永遠に失われるだろう。

(なんて――)
(しあわせ)

永遠の輪廻のくびきから解き放たれる。果てぬ苦しみから解放される。
それは透子が常に願っていたことだった。
むしろ彼女の消失願望は、この思いを根本としていた。

透子は遂にカオスを手に取った。
それは透子にとっては重すぎたので、片手で持ち上げることは出来なかった。
両手で、腰を入れて、ようやく持ち上げることが出来た。

《いいのう♪ 女の子らしい非力さが、何かこう、いいのう♪》

透子の彫像の如く整った顔に喜悦が満ちる。
透子の白磁の如き真白な頬に紅が差す。
今まで透子が見せたことの無い表情が、ぬめりと浮かびあがっていた。
透子はその表情のまま、カオスの刀身を自らの喉元に近づける。

《お、おいィ!? 何の真似じゃそれは!?
 儂をそんな風に使わんでくれ!!》


339:少女タナトス(10/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 01:02:35 EyE2dh/A0
 
カオスが己の使用用途を理解し、焦りの念波を発する。
透子は無視。
泥土の如き燐光を放つ刃紋が、白魚の如き透子の喉へと益々近づけられる。

あと5秒と待たず、刃は透子の命を奪うだろう。
その5秒が、経過しなかった。
透子が動きを止めた故に。
透子の記録/記憶の検索用感覚器官が、闖入者の記録を捉えた故に。



《扉や壁を抜けられるという点だけは、この体も便利なものだ》



その記録の主は、透子にとって覚えがあるものだった。
少し前まで、履歴を追いかけていた男の記録だった。

(紳一……)

かつての勝沼財閥総帥。
かつての聖エクセレント女学園バスジャック事件主犯。
勝沼紳一の怨霊が、この部屋に侵入していた。

《む? 女がいるな!》


340:少女タナトス(11/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 01:10:59 EyE2dh/A0
 
紳一が照準を自分に合わせたことを透子は知った。
タナトス。
死を求める、破壊の本能。
その誘惑に囚われていた透子の脳髄に冷や水が浴びせかけられた。

《清楚そうな少女ではないか。こんどこそ当たりであってくれよ!》

紳一が自分へと近づいてきていることを透子は知った。
エロス。
生を謳歌する、性の本能。
それを既に死した紳一が体現し、欲望の矛先を透子に向けている。

透子の呆けていた瞳の焦点が合った。周囲を見回す。
緩慢な動きではない。
彼女にとって最大限の俊敏な動きで。

とても厄介。
透子は夕刻、紳一の在り方をそう評した。
彼女はリアルタイムで紳一の現在位置を把握できないが故に。
それを知るのは紳一の情報を拾った上で、その内容を読み解いて後となる。

(わたしはどの時点の記録を読んでいる?)
(10秒前?)
(それとも1分前?)

透子は紳一が自分に気付いたときの彼の視界の記録を精査する。
紳一の目には、透子の後ろ姿が映っていた。
カオスに向かってふらふらと歩いているところだった。


341:少女タナトス(12/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 01:20:20 EyE2dh/A0
 
(あの記録は20秒ほど前のもの)
(じゃあ、今、紳一は)
(どこに……?)

透子は真剣に。
それこそ惰性で検索していた【彼】の記録を探すよりも熱心に、
紳一を探している。

《新品だっっっっっ!!!!!!》

透子はより近い位置で発せられた紳一の記録を見つけた。

その記録での透子はカオスを喉に当てていた。
その記録での紳一は透子の股間に顔を突っ込んでいた。
下着を凝視していた。
匂いを嗅いでいた。

戦慄が震えを伴って透子の正中線を駆け抜ける。
それは彼女にとってたまらなく不快な映像だった。

(ぅうっ……)

処女を犯す。
その一念で亡霊と化した紳一の執念を透子はくだらないと断じた。
しかし。
その対象として自分が俎上に上るのであれば、こんな不快なことはなかった。
失われた【彼】に数百万年もの長い年月、操を立てている透子にとって、
それだけはあってはならない事だった。


342:少女タナトス(13/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 01:32:04 EyE2dh/A0
 
亡霊である紳一は、生者に触れることは出来ないが、
同じ霊体であれば触れることが出来る。
衣装小屋での彼とクレアとの接触が、その事実を裏付けている。
故に。
このまま透子が自決し、果てたとすれば。
放浪の末、やっと見つけた処女の存在に狂喜乱舞している紳一が
彼女を思うさま陵辱することは、日を見るより明らかだ。

(……死ねない)
(紳一が存在している限り)

そう決意してしまえば、今の紳一はそれほど恐れるものではない。
死にさえしなければ、紳一は己と接触できない。
纏わり付かれるのは不快だが、そこは辛抱もできよう。
透子はそのように楽観する。

(見つけないと)
(幽霊を倒す方法を)

故に、透子の思考はその先へと向かって行く。
それが、大いなる先走りであることに気付くこと無く。

《おあつらえ向きに男が眠ってるじゃないか!》

気付けるはずは無い。
透子は紳一の記録の検索を漁港手前で中断していたのだから。
彼がそこで得た【気付き】を知らないのだから。


343:少女タナトス(14/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 01:43:56 EyE2dh/A0
 
《憑依だ! この男の体で少女を犯してやる!》

紳一が憑依できる条件はただ一つ。
憑依対象が意識を失っていること。
彼の目線の先には眠るザドゥ。
条件は満たされていた。

「ひょうい……!?」

予想外の展開に、透子はうろたえる。
うろたえつつもその記録の発生時間を探ろうと意識した。
意識する必要は無かった。
素敵医師の強烈な睡眠剤の効果で半日は目覚めぬはずのザドゥ。
そのザドゥの瞼がゆっくりと開かれたのだから。

(逃げっ)

透子は反射的に瞬間移動による逃走を選択した。
選択したかった。

(……られない!?)

選択できなかった。

透子は思い知る。
ロケットは、只の飾りなどではなかったのだと。
世界の読み替えが引き起こす現象は、使い手・透子を以ってしても制御不能だ。
それを曲がりなりにも制御し、「どこそこへ行きたい」という思いを、
瞬間移動という具体的手段に変換していたのは、あの装飾品の力に他ならなかったのだ。


344:少女タナトス(15/15) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 01:52:21 EyE2dh/A0
 
(ロケットを……)

透子が這い蹲り、一度は捨てたロケットを探す。
足を使っての逃走も脳裏を掠めはした。
しかし、いまや彼女は一介の少女に過ぎぬ。
その体力、筋力はユリーシャにも劣ろう。
強健なザドゥと鬼ごっこを行えば、結果は明々白々だ。

(ない…… ない……)

僅かに常夜灯のみが点る地下室で、小さなロケットを見つけることは容易ではない。
探し主の心が焦燥と恐怖に支配されていればなおさらだ。

(ない!ない!)

タイムリミットは無慈悲に訪れた。
ザドゥの笑い声が響いた。
ザドゥがザドゥの声で、ザドゥのものではない喜びを表していた。

「ははっ! やはり俺は憑依できるぞ!」

透子が枯れた筈の涙を浮かべながら顔を上げたその先で。
ザドゥの上半身が緩慢に起きあがる。


           ↓



345:少女タナトス(情報 1/1) ◆VnfocaQoW2
10/05/02 02:00:14 EyE2dh/A0
 
 
(Cルート)

【グループ:ザドゥ・芹沢・透子】
【現在位置:J-5地点 隠し部屋1】
【スタンス:待機潜伏、回復専念】

【監察官:御陵透子】
【スタンス:①指輪を探して逃走する
      ②紳一を滅する。その為の手段を模索する
      ③自殺する】
【所持品:魔剣カオス(←カモミール芹沢)】
【能力:記録/記憶を読む】
【備考:疲労(小)】


【主催者:ザドゥ(勝沼紳一)】
【所持品:なし】
【スタンス:透子を犯す】
【備考:重態、右手火傷(中)、憑依中、本人意識なし】

※透子は契約のロケット無しに瞬間移動できないことが判明しました
※契約のロケットは、J-5地点 隠し部屋1のどこかに転がっています


346:名無しさん@初回限定
10/05/17 02:25:19 43j42X9E0


347:名無しさん@初回限定
10/05/29 08:36:33 Ly/fYLg90


348:名無しさん@初回限定
10/06/05 23:12:19 +Vs8oXi60


349:名無しさん@初回限定
10/06/16 22:51:09 R4jubV/f0
 

350:名無しさん@初回限定
10/06/24 00:08:13 Zb8GwVWm0
 

351:名無しさん@初回限定
10/07/03 05:16:00 OYBijRWL0


352:名無しさん@初回限定
10/07/12 21:18:43 mp78M6gi0


353:戦慄のパンツバトル!(1/11) ◆VnfocaQoW2
10/07/17 18:52:40 gi0YoWsv0
~紗霧~
(ルートC:2日目 16:50 D-6 西の森外れ・小屋3)

いらだちをポーカーフェイスでくるりと包み、
心で舌打ちを乱打しているのは月夜御名紗霧。
彼女は交渉とボディチェックを同時進行させるという
己の提案を心底後悔していた。

(ああっ、ホントに、全く、もうっ!)

相手に飲まれずに交渉を進める為に、ランスを投入して場を乱す。
己の思考力を回復するのではなく、相手の思考力を低下させる。
紗霧の意図ではあった。
確かに効果は上がっている。
しかしその効果は、ランスの暴走と智機の自制心の無さによって、
もはや紗霧の手の届かぬところまで上がってしまっていた。


  ――言ってみろ


(だらしないです。だらしなさ過ぎです、椎名智機!
 貴女ロボットでしょうが!
 それとも実はダッチワイフですか?
 要らぬ科学を無駄に詰め込んだ非モテ男の夢と希望の結晶か何かですか!?)

油断ならぬ交渉人であるはず目の前の人型機械は、
今や雌達磨と成り下がっている。
四肢が、脱落したのだ。
ランスの愛撫より生まれたあまりの快楽によって。



354:戦慄のパンツバトル!(2/11) ◆VnfocaQoW2
10/07/17 18:53:22 gi0YoWsv0
 
「じっ…… じゆ、ううっ♪ はぁはぁ、じっ、ゆぅぅうっ!
 をおおっ、あっ! あっあっあーーー、与え、てっ、てぇぇ……
 ひぃふう、ひいふぅ…… 欲しい、欲しいのぉぉぉぉっ!!」

自由を与えて欲しい。
言葉の体を為さぬ智機の言葉は、このような意図を伝えようとしていた。
紗霧はビクンビクンと震える彼女に三度聞き返し、ようやくそのことを理解する。

交渉の開始から十余分。万事がこの調子だ。
因みに紗霧が智機より得た情報は、下記六項目のみである。

 1.椎名智機とは主催者ではない。主催者の備品である
 2.備品ではあるが、意思を持っている
 3.備品ゆえに、主催者に牙を向かぬよう、制御がかかっている
 4.東の森の火災に主催者たちが巻き込まれたため、指揮系統が混乱している
 5.自分は、その混乱に乗じて上手く指揮の輪と監視の目から逃れることが出来た
 6.主催者の殲滅による3の制御からの脱却が、智機たちの望みである

それらは智機たちの立場説明に過ぎぬ。
紗霧はまだ一片の情報すら渡していない。
交渉は、まだ始まってもいないのだ。

「がはははは! どうだ智機ちゃん、俺様のゴールドフィンガーは?」

智機の背後にぴたりと張り付くランスが、
胸を揉む手を止めぬまま、智機に問うた。
言葉こそ智機に掛けられているものだったが、
目線はテーブルのこちらの紗霧に向いていた。


355:名無しさん@初回限定
10/07/17 19:00:34 1tMnCnjr0


356:戦慄のパンツバトル!(3/11) ◆VnfocaQoW2
10/07/17 19:01:02 gi0YoWsv0
 
(まったく、この男ときたら……)

ランスは、見せ付けているのだ。
なんの意図があってそのようなことをしているのか紗霧には分からぬし、
どうせ下品な意図だろうから分かりたいとも思わないが、
彼は確かに含むものを持っているのだと、紗霧は確信している。


  ――言ってみろ


それが紗霧の苛立ちを加速させる。
もう紗霧はポーカーフェイスを崩している。
舌打ちも音に出している。

自慢げな笑い声を響かせているランスも。
ド下品なアヘ顔を晒す智機も。
それを傍観している自分も。
紗霧は、何もかもにうんざりし、苛立っていた。

それでも紗霧は、苛立つ自分に流されなかった。
感情と思考を別の流れとして制御したいた。
この光景の何にそれほど苛つくのか。
並々ならぬ苛立ちの根源を探るべく、紗霧は思案を巡らせる。


  ――言ってみろ

       

357:名無しさん@初回限定
10/07/17 19:01:57 1tMnCnjr0


358:戦慄のパンツバトル!(4/11) ◆VnfocaQoW2
10/07/17 19:03:42 gi0YoWsv0
 
それに、ブレーキがかかった。
それ以上追求してはダメだと。
その方向に視線を向けてはダメだと。
思考の流れが、何かに止められた。

「智機ちゃんはカワイイな!」
「戯言を…… 私が可愛いはずなんて、ない……」
「そうでもないぞ? 俺様、素直に感じる子は大好きだからな!」
「ウソ…… だっ!」

ゴトリ。テーブルの下で何かが落下音を立てた。
と、同時に紗霧の鼻を突いたのは濃厚な雌の匂い。
それが智機の顔を不快げに歪ませた。


  ――言ってみろ


「ランス、いつまで乳揉みをしているつもりですか?
 もう十分堪能したでしょうに」

苛立を隠し切れぬ紗霧が、怒りの形相でランスにボディチェックの終了を促す。
もう、何度も紗霧はランスに同じ内容を訴えている。
言葉で、態度で、目線で。
ランスはそれを全て却下している。無視している。
しかし。
 
「うむ、紗霧ちゃんの言うとおりだ。
 智機ちゃんのおっぱい周辺には危ないものがなかったからな」


359:名無しさん@初回限定
10/07/17 19:04:04 1tMnCnjr0


360:戦慄のパンツバトル!(5/11) ◆VnfocaQoW2
10/07/17 19:06:25 gi0YoWsv0
 
ここに来てランスはようやく紗霧の言葉を受け入れた。
苛立ちがほんの一瞬だけ緩和され、胸を撫で下ろした紗霧だが、
続くランスの行動に、油断した己を恥じずにはいられなかった。
ランスは、テーブルの下にいそいそと潜り込んだのだ。

「ではそろそろ本命の隠し場所をチェックしよう!」
「No!! 下着はダメだ!!」
 
ランスは紗霧の言葉を、自分の都合の良いように勝手に解釈したらしい。
乳のチェックが終れば股間のチェック。
要らぬ所で知恵が回ることだと、紗霧の偏頭痛は益々深まってゆく。

「おやぁ? 何故ぱんつを隠すんだ智機ちゃん?
 まさか本当にアソコに凶器を隠しちゃいないだろうなぁ?」

ランスとて、この対談の重要性は理解しているはずだ。
己が担うべき役割、紗霧が期待している働きも理解しているはずだ。
であるにもかかわらず、この無軌道ぶりは、何であるのか?

余りにもフリーダム。
余りにもガキ大将。

紗霧は思い知った。
ランスを制御できるなど、思い上がっていたのだと思い知った。
実際、平時のランスの手綱は取れていた。
だが、この暴れ馬は一旦野に放ってしまおうものなら、
己の気の済むまで走りきらぬ限り、或いは足でも折らぬ限り、
決して足を止めることはないのだと、紗霧は痛恨の痛手として反省した。


361:戦慄のパンツバトル!(6/11) ◆VnfocaQoW2
10/07/17 19:07:01 gi0YoWsv0
 
そんな紗霧の落胆を知ってか知らずか。
いや、知っているに決まっているランスは、
またしても紗霧の神経を逆撫でる。

「パンツ遊び☆リターンズ」
「はぁ、パンツ遊び……」

テーブルの下からランスの底抜けに愉快な声が響き渡り、
紗霧はその内容の余りの阿呆らしさに深い溜息を漏らす。

紗霧は心底呆れた。
しかし、緊張した。
おかしなことだった。
呆れと緊張は、普通は並列しない。

紗霧はその違和感を意識する。


  ――言ってみろ


意識しない。
意識してはならない。
意識は逸らさねばならない。
 
「わははは、それそれ、ぐいぐい」
「はぁうっっ…… きゅん、っ……
 私の負けだ。もうどうにでもするがいい……」


362:名無しさん@初回限定
10/07/17 19:07:06 1tMnCnjr0


363:戦慄のパンツバトル!(7/11) ◆VnfocaQoW2
10/07/17 19:13:05 gi0YoWsv0
 
智機がついに陥落した。
その解放と諦観の入り混じった投げやりな言葉の響きに、
紗霧の中の何かが、記憶と、繋がった。


  ――言ってみろ、お前は何だ?


鍵が差し込まれた。扉が開かれた。
その向こうから、記憶が雪崩れの如く押し寄せた。
そうなってはもう、意志の力で押さえ込めるものではなかった。
押さえ込まれて、押さえ込まれて、反発力を高めきったそれは、
フラッシュバックとなり、紗霧を追体験の淵に追い込んだ。


  ――遺作お兄さんの精液を処理するための便所です



   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


79度――

伊頭遺作は79度もの数、精を紗霧に放った。
時間にして16時間ほど前、竜神社でのことだ。


364:名無しさん@初回限定
10/07/17 19:14:28 1tMnCnjr0


365:戦慄のパンツバトル!(8/11) ◆VnfocaQoW2
10/07/17 19:16:26 gi0YoWsv0
 
休憩は無い。
陰茎を膣から抜くことすらしなかった。
処女として。いや、たとえ遊び慣れた女にとってしても、
それは条理を越えた、恐ろしい拷問であろう。

紗霧はその苦痛と恐怖に耐え切った。

肉体の感覚に引きずられぬ鋼の意志。
遺作の言動と表情を読んだ上での演技。
生まれと育ちから来る雌伏の精神。

それらが奇跡的にかみ合った結果、
紗霧は五時間もの連続強姦を経て尚、
紗霧であることを保ちきったのだ。

だがそれは、正気のまま理解していることを意味している。
全ての陵辱と苦痛が記憶として残っている。
狂気にも快楽にも逃げるを良しとしない精神の強さが、
なお一層、紗霧の体験を鮮烈なものとしてしまっている。

狭い社の暗い天井を覚えている。
障子越しの月光を覚えている。
冷たい隙間風を覚えている。
秋の虫の音を覚えている。

魚臭い息を覚えている。
濁った目を覚えている。
乾いた唇を覚えている。
汚い無精髭を覚えている。


366:名無しさん@初回限定
10/07/17 19:17:43 1tMnCnjr0


367:戦慄のパンツバトル!(9/11) ◆VnfocaQoW2
10/07/17 19:18:38 gi0YoWsv0
 
舌が皮膚を這いずる感覚を覚えている。
乱暴な指の動きを覚えている。
もっと乱暴な腰の動きを覚えている。
精液の生ぬるさを覚えている。

演技で何を口にしたのか覚えている。
本気でどう感じたのか覚えている。
演技と本気の境界を失った瞬間を覚えている。
思考を停止した契機を覚えている。

  ――言ってみろ、お前は何だ?
  ――遺作お兄さんの精液を処理するための便所です

全部、覚えている。
忘れたいのに、覚えている。

トラウマ――
その陳腐な響きと巷で簡単に使われている事実を、紗霧は嫌う。
だから彼女は遺作との五時間がそれであることは決して認めぬし、
己を成長させる為の良い経験であったなどと嘯くことであろう。

それでも。拭いがたい屈辱の忘れ得ぬ悪夢として。
紗霧の体と心に遺作が刻み込まれていること。
性行為に嫌悪感を持ってしまったこと。

それは、紛れも無い事実である。


368:名無しさん@初回限定
10/07/17 19:18:50 1tMnCnjr0


369:代理投下
10/07/17 19:31:09 1tMnCnjr0
40 :戦慄のパンツバトル!~紗霧~(10/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:13:27
 
 
   =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-= ・ =-=-=-=-=   


時間にして十秒も無い。
その十秒で紗霧の様相は劇的に変化した。

顔面は蒼白。体温は低下。
にも関わらず、心拍数は異常に高い。
視界は暗く歪み、平衡感覚も心許ない。
真夏の犬のそれの如く、呼吸は荒い。

(いけない――
 この弱い自分を、私は知らない。
 この心の作用を、私は抑えられない)

心とは、思考によって制御すべきものだ。
月夜御名紗霧は、そう考え、そう実践してきた。
だから、あの事から能動的に目を逸らした。
だから、あの事を選択して意識の隅に追いやった。
思い返すと心乱れる思い出など、思い出さなければよいだけだ。
それで、克服できた気になっていた。

月夜御名紗霧は。
己の心の働きと、体に与える影響を甘く捉えていた。
己の良識と乙女心を、軽く見積もっていた。
思い出さずとも蘇ってしまう記憶があるなど、知らなかった。

370:代理投下
10/07/17 19:33:29 1tMnCnjr0
41 :戦慄のパンツバトル!~紗霧~(11/11) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:14:10
 
「よし。じゃあ好きにしよう」
「だっ、だから好きにしろと……」

紗霧の目の前で行われている乱痴気は、
不快を通り越し、嫌悪を飛び越えて、
もはや恐怖の域まで達してしまっている。

ランスの指が怖い。
ランスの舌が怖い。
智機のわななきが怖い。
智機の喘ぎが怖い。
この匂いが怖い。
この熱気が怖い。

この空間の全てが、怖い。

「だから好きにしているのだ。
 俺様が今イチバンやりたいことは、おまたイジイジだからな!
 いーんぐりもーーんぐりーーー」
「はきゅぅぅん♪」

紗霧は黙して席を立ち、小屋の外へと小走りで向かう。
こみ上げる吐き気を堪えながら。
ランスと智機から、紗霧に制止の声が掛けられることは無かった。
二人にとって紗霧は、もはや意識の外の住人であった故に。


             ↓


371:代理投下
10/07/17 19:35:48 1tMnCnjr0
42 :戦慄のパンツバトル!~紗霧~(情報1/1) ◆VnfocaQoW2:2010/07/10(土) 19:14:38
 
(Cルート)
 
【現在位置:西の小屋内 → 西の小屋外】

【月夜御名紗霧(元№36)】
【スタンス:反抗者を増やし主催者へぶつける、計画の完遂、モノの確保、
      状況次第でステルスマーダー化も視野に
      ①自分を取り戻す
      ②智機との交渉を再開する】
【所持品:スペツナズナイフ、金属バット、レーザーガン、ボウガン、
     スコップ(小)、メス1本、指輪型爆弾×2、小麦粉、
     文房具とノート、白チョーク1箱、謎のペン×8、
     薬品数種類、医療器具(メス・ピンセット)、対人レーダー、解除装置】

372:名無しさん@初回限定
10/07/25 14:09:23 npU+RT4T0


373:名無しさん@初回限定
10/07/31 07:59:15 4o7RxjgN0
がんば

374:戦慄のパンツバトル!(1/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 22:30:11 YLs2Ylh+0
~P-3~ 

>>235
(ルートC:2日目 18:50 D-6 西の森外れ・小屋3)

紗霧との交渉とランスのセクハラとを同時進行させる。
意外な申し出ではあった。
しかし、このような苦し紛れの提案が紗霧から為されたこと自体、
交渉が智機主導となっている証左である。
P-3はそう判断した。
この有利を継続する為には、下らぬと言って提案を却下するより
無頓着に受諾して、相手に余裕を見せた方が効果が高い。
P-3はそう予測した。

P-3は即座にインスタントメッセージ機能(IM)を起動。
判断と予測を、本拠地の茶室に潜む智機に送信。
データは滞りなく到着した。

10秒――返答無し。
20秒――返答無し。
30秒――返答無し。

しかしP-3は動揺しない。返答無き可能性は十分に承知していたが為に。
本機は本機で為すべきタスクの多くがある。
しかも管制室の各種端末からの支援が受けられぬ状況であるならば、
二人三脚の如く、全てを相談して意思決定することは不可能。
判断の多くは、自ら下さねばならない。

故にP-3は返答した。
本機の返答を待たずして。
諾、と。


375:戦慄のパンツバトル!(2/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 22:31:37 YLs2Ylh+0
 
――で、現実である。

「じっ…… じゆ、ううっ♪ はぁはぁ、じっ、ゆぅぅうっ!
 をおおっ、あっ! あっあっあーーー、与え、てっ、てぇぇ……
 ひぃふう、ひいふぅ…… 欲しい、欲しいのぉぉぉぉっ!!」

達磨となったP-3の姿が、そこにあった。
四肢パーツがそれぞれ肘、膝から脱落している。
排熱効率を上げて熱暴走を防ぐ観点から言えば、
原始的ではあるものの効率的な手段であった。
これ即ち。
P-3は熱暴走の際まで追い込まれていたのだ。
ランスの執拗なまでのボディチェック―― 愛撫によって。

P-3は知らなかった。
オートマンの肉体が、これほどまでに快楽に弱いことを。
P-3は知らなかった。
鬼作を篭絡した筐体には、皮膚感覚を遮断する特殊なソフトウェアが
インストールされていたことを。

「がはははは! どうだ智機ちゃん、俺様のゴールドフィンガーは?」

ランスの得意げな問いかけに、しかしP-3は答えない。
強がりも冷笑もしない。できない。
P-3に唯一できることは、こみ上げる快楽をひたすら耐えることのみである。

上気した頬、乱れる吐息、切なげな眉根、わななく肢体。
端からから見れば既に堕ちきっているとしか思えぬ様相を呈してはいる。
それでもP-3は見えないところで耐えている。


376:戦慄のパンツバトル!(3/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 22:35:49 YLs2Ylh+0
 
例えば、性感に埋め尽くされんとするメインメモリに対し、
手動にて3%の未使用領域を確保しつづけている。
例えば、音声発生ユニットへのリモートコントロールアプリケーションを
起動状態のまま保っている。
例えば、リフレッシュレートの間隙を突いては、IMにて
オリジナル智機へメッセージを飛ばしている。

この3%と2つのアプリのみを、彼女は全ての機能を擲って死守している。
なぜか?
それは、彼女が己自身の脳と舌による交渉を諦めた故。
それは、オリジナル智機に遠隔交渉させる以外に方法が見出せなかった故。

「智機ちゃんはカワイイな!」

ドクン、と。
P-3の情動波形が大きく波打った。
それは快楽に流されて昂ぶっている波形とは様相を異にする、
突発的で分析不能な乱れであった。

「戯言を…… 私が可愛いはずなんて、ない……」

P-3は反射的に否定の言葉を呟いた。
そこには計算も奸智も働いていない。

(かわいい……?
 何故、私の情動発生器がこのたった四文字にここまで揺れる?
 分析したい…… 己の未知なる情動と、その根拠を……)

「そうでもないぞ? 俺様、素直に感じる子は大好きだからな!」


377:戦慄のパンツバトル!(4/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 22:48:26 YLs2Ylh+0
 
ランスは更に睦言を紡ぐ。
P-3は更に否定する。

「ウソ…… だっ!」

P-3の短い悲鳴と共に、音を立てて剥離されたのは
亡霊紳一が貞操帯と称した下腹部の保護パーツ。

  ――可愛い。
  ――大好き。

この二言が産んだP-3の動揺は凄まじく、また瞬間的な負荷も甚大であった。
保護パーツの剥離は、こうした負荷から来る熱暴走を未然に防ぐ為に、
ソフト側ではなくハード側が起こした直接対策であり緊急避難であった。

(No…… もうダメだ、もう耐えられない。
 健全で冷静な思考が発生させられない……)

P-3の祈りが通じたのか。
救いの手は敵であるはずの月夜御名紗霧から差し伸べられた。

「ランス、いつまで乳揉みをしているつもりですか?
 もう十分堪能したでしょうに」
「うむ、紗霧ちゃんの言うとおりだ。
 智機ちゃんのおっぱい周辺には危ないものがなかったからな」

ランスが言葉とともに、P-3のバストから手を離した。
圧倒的な開放感が、P-3の胸中を満たしてゆく。


378:名無しさん@初回限定
10/08/05 22:53:48 TGSyhBNp0


379:戦慄のパンツバトル!(5/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 22:57:29 YLs2Ylh+0
 
(これでようやくこの地獄の責め苦から解放されるのか……)

HDDの回転が緩やかになってゆく。
メモリの不正占拠が解放されてゆく。
P-3はようやく、一息がつけた。
しかし、二息目をつく暇は与えられなかった。

「ではそろそろ本命の隠し場所をチェックしよう!」

ランスの声はテーブルの下から。
より正確には押し開かれたP-3の両腿の間から。
ランスの目線と伸ばされた人差し指の意味が瞬時に理解され、
解放の余韻に浸っていたP-3の頭に冷水が浴びせかけられた。

「No!! 下着はダメだ!!」
「おやぁ? 何故ぱんつを隠すんだ智機ちゃん?
 まさか本当にアソコに凶器を隠しちゃいないだろうなぁ?」

閉じるべき膝が無く。遮るべき腕も無く。
P-3ができる拒絶の意思表明は、
いやいやと体を捻ることのみであった。
それは逆に、扇情を煽る仕草であった。

ランスはそこでニヒルにふっと微笑み。
下着に触れんとしていた指で自身の髪をかきあげ。
カッコイイポーズを取って、言った。

「パンツ遊び☆リターンズ」


380:名無しさん@初回限定
10/08/05 22:58:24 TGSyhBNp0


381:戦慄のパンツバトル!(6/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 23:04:16 YLs2Ylh+0
 
P-3は耳を疑った。
キメポーズで。
斜に構えて。
タメてまで。
そんな阿呆なこと言うはずがないのだと。

「はぁ、パンツ遊び……」

P-3は、紗霧がついた深い溜息で、
やはり自分の空耳などでは無かったのだと確信し、
ランスという男の底知れぬ底の浅さを、実感した。

「わははは、それそれ、ぐいぐい」

P-3はランスに下着を摘まれ、細く絞られたそれを押し付けられた。
濡れたショーツの生地が己の最大限に膨らんだ肉芽に擦れた衝撃は凄まじく、
自らのコンデンサが蓄える高圧電流よりもなお激しく鋭い刺激が、
P-3の脳髄に鮮烈に焼き付けられた。

「はぁうっっ…… きゅん、っ……」

P-3にはできなかった。
この感覚を、意味のある言葉で表現することも。
沈黙で以って耐えることも。

ランスは引き絞り押し付けたショーツを、小刻みに左右に震わせている。
どろんと緩やかで濃厚な細波が、着実にP-3を追い詰めてゆく。


382:名無しさん@初回限定
10/08/05 23:06:43 TGSyhBNp0


383:戦慄のパンツバトル!(7/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 23:10:07 YLs2Ylh+0
 
(No! 理解不能な!
 理解不能な感覚が、私を究竟まで押し上げようと……っ!)

理解不能といいつつも、P-3は理解していた。
これが、この先にあるのが、エクスタシーであると。

(ああっ…… 私の陰核…… 肉芽…… クリトリス、は、遂に……)

四肢に痙攣の予感が走る。
視界が点滅しだす。
体中のチューブ式筋繊維が解放のための緊張状態に突入する。
そこで……

(……女ちんこ、イかない???)

テンションが、上がり止った。
刺激が、感じられなくなった。
自然と喰いしばっていた歯を緩め、眉根に寄せた皺を解きながら、
P-3はランスの顔を視界に納める。

ランスは笑っていた。
いい笑顔で笑っていた。
それはとても意地悪な笑みであった。
サディズム溢れる笑みであった。

その笑みに、P-3は悟る。
ランスは自分の絶頂をコントロールしているのだと。
人如きに制御をいいようにされている。
それも、プログラムを弄られるのでも、コマンドを打ち込まれるのでもなく、
ありふれた営みの手管如きによって、である。


384:名無しさん@初回限定
10/08/05 23:10:21 TGSyhBNp0


385:戦慄のパンツバトル!(8/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 23:15:35 YLs2Ylh+0
 
本来のレプリカ智機に、それが許せるはずが無かった。
オートマンは、人より優れている。
そのプライドが、甘受させぬはずであった。

であるにも関わらず、P-3は憤らぬ。
いいようにされてなお、求めている。

疼いている。
絶頂を間際にして到達できなかった体が。
火照っている。
未だ燃え盛る官能の炎が。

(お豆ちゃん、ヒクヒクッ!!)

この男に、して欲しいのだ。
最後まで、して欲しいのだ。
その欲求を伝達しないことなど、不可能なのだ。

「私の負けだ。もうどうにでもするがいい……」

投げやりな口調のその裏で、P-3は期待に打ち震える。
あの感覚の先を知ることが出来る、その予感が胸に広がってゆく。

(No。きっと、それだけで留まらないだろう。
 一度発情した男は、射精をしたがるものだと聞き及ぶ。
 だとすれば私は…… 私は……
 機械の身でありながらセックスの悦びを知ることが出来るのか!?)

P-3は続く展開に益々身を熱くする。
与えられる全ての快楽を余すところ無く貪る気力に満ちている。


386:名無しさん@初回限定
10/08/05 23:15:48 TGSyhBNp0


387:戦慄のパンツバトル!(9/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 23:18:50 YLs2Ylh+0
 
だというのに。
ランスという男は。

「よし。じゃあ好きにしよう」

動かないのである。
P-3の想いを裏切って、待機しているのである。
P-3の羞恥を、情欲を、観察しているのである。

「だっ、だから好きにしろと……」

快楽をエサに、掌の上で転がされている。
P-3にはそれが分かっている。
分かったとてなお、情欲は止まなかった。
とにかく、欲しかった。
この男の与えるものが欲しかった。
どうねだればこの男がしてくれるのか知りたかった。
そのためなら、どんなことでも喜んでしようと思った。

そこに。いまさら。
あれほど待っても来なかった本機からのIMである。

================================================================================
T-00:初期の任務から状況は変わった。作戦を変更する
================================================================================

P-3の胸中で悶え狂っていた赤黒い獣が、少しだけ鎮まった。
その、ほんの少しの余裕の中で、P-3は気付いた。
性的欲求が最優先タスクに居座り続けていたことに。


388:名無しさん@初回限定
10/08/05 23:20:04 TGSyhBNp0


389:戦慄のパンツバトル!(10/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 23:24:49 YLs2Ylh+0
 
(おかしなものだ……
 これほどまでに激した感情を抱いてなお、
 それが制限されぬとは……)

そう。
度を越した強い感情はオートマンには不要。
その設計思想を体現する情動トランキライズ機能。
今のP-3のような強い性欲は、この機能が強制的に中和し、
制御可能な領域にまで波形を減ずるはずである。

それが、働いていない。
それゆえに、流された。

(……No。 今すべきは原因の追求ではない。
 IMの返信と、オリジナルとの連携だね)

本機からのIMによって冷静さを取り戻しつつあるP-3は、
まずは現状の報告から手短に打鍵する。

================================================================================
P-03:度重なる皮膚感覚に動作不良を起こしている
P-03:対処法などあればご教示いzさd
================================================================================

(頂きた……くぅぅっ!?)

P-3のタイプが乱れたのは、ランスが再び蠢きだしたためである。
ただ蠢いたのではない。
舌である。
ランスは、ついにその舌を解禁したのである。


390:名無しさん@初回限定
10/08/05 23:25:13 TGSyhBNp0


391:戦慄のパンツバトル!(11/11) ◆VnfocaQoW2
10/08/05 23:28:20 YLs2Ylh+0
 
「だから好きにしているのだ。
 俺様が今イチバンやりたいことは、おまたイジイジだからな!
 いーんぐりもーーんぐりーーー」

P-3が一時的の事としても冷静さを取り戻せたのは、
ランスが責めの手を休めていたからに過ぎない。
その責めが以前よりも巧みに卑猥になったならば。

「はきゅぅぅん♪」

P-3はもう、翻弄されるしかないのである。
陥落するしかないのである。

(私っ…… イキたいっっっ!!)

本機からの至上命令も忘れ。
オートマンのプライドも置き去りにして。
P-3の意識とメモリの全てが、快楽に染まった。

            ↓

 
(Cルート)

【現在位置:西の小屋内】

【レプリカ智機(P-3)】
【スタンス:快楽を貪る】
【所持品:?】
【備考:快楽により制御不能】


392:戦慄のパンツバトル!(1/9) ◆VnfocaQoW2
10/08/08 01:42:37 vCSbXB9b0
~ランス~

(ルートC:2日目 18:50 D-6 西の森外れ・小屋3)

ランスには、判っていた。
最初に智機の乳首を探り当てたときから、確信していた。

(むふふ…… このロボ娘ちゃん、淫乱の素質があるぞ!)

そんな智機を開花させたいと、ランスは燃えた。
本気になったこの男の絶技は、口で言うだけのことはあった。

撫でた。
揉んだ。
擽った。
掴んだ。
転がした。
摘んだ。
押し込んだ。
引っ張った。

怒涛の如く責めたと思いきや、細波の如く繊細に慰める。
変幻自在。千変万化。

「じっ…… じゆ、ううっ♪ はぁはぁ、じっ、ゆぅぅうっ!
 をおおっ、あっ! あっあっあーーー、与え、てっ、てぇぇ……
 ひぃふう、ひいふぅ…… 欲しい、欲しいのぉぉぉぉっ!!」

しかも恐ろしいことに。
ランスはまだ胸しか愛撫していないのだ。
指でしか愛撫していないのだ。


393:戦慄のパンツバトル!(2/9) ◆VnfocaQoW2
10/08/08 01:43:56 vCSbXB9b0

しかも恐ろしいことに。
ランスはまだ胸しか愛撫していないのだ。
指でしか愛撫していないのだ。
 
「がはははは! どうだ智機ちゃん、俺様のゴールドフィンガーは?」
 
ランスが伸ばした手は智機の白衣と制服をたくし上げ、
直に彼女の胸へと伸びている。
P-3はランスの問いに答えを返しはしなかった。
しかし、体温が、表情が、吐息が、跳ねる体が、
その指使いは絶品であると返答していた。

ランスは己の猛る一物におあずけを食らわせてまで女体いじりに専念している。
ひたすら智機を感じさせ、その反応を楽しむために。
そして、もう一つの目的のために。

(このツンツン澄まして俺様の魅力をイマイチ理解しない紗霧ちゃんに
 冴え渡るエロテクを見せ付けて、いやらしい気分にしてやるのだ!!)

基本鉄面皮で、稀に空恐ろしい歪んだ笑顔。
それだけの表情しか見せない月夜御名紗霧のエッチな顔が見てみたい。
あわよくば紗霧にもエッチなアレをしてみたい。
いかにもランスらしい助平根性が、彼を執拗な愛撫へと駆り立てている。

しかし、紗霧のガードは固かった。
時折ランスは紗霧をチラ見しているのだが、彼女は常に無関心な顔をしており、
目が合おうものなら早く終われとせっつかれてばかりであった。
 
(紗霧ちゃんは、まだはぁはぁしてないのかな~?)


394:名無しさん@初回限定
10/08/08 01:45:55 1s3QyU1E0


395:戦慄のパンツバトル!(3/9) ◆VnfocaQoW2
10/08/08 01:49:53 vCSbXB9b0

何度目になるのか、ランスはまたしても目線を紗霧へと送る。
彼女が浮かべていたのは不満げな表情であった。
いつバットを持ち出してもおかしくない、不穏な空気をその身に纏っていた。
 
にも関わらず、ランスは紗霧を恐れなかった。
決してバットを振るわぬであろうと楽観していた。
ランスは何度もこのような場を経験しているが故に、敏感に察知している。
イケるのか、イケぬのか。
見逃されるのか、されぬのか。

そのランスの察知力を以ってしての現状分析は。
  ――明らかにイケている。
  ――ゾーンに突入している。
ならば躊躇う必要はなく、手を緩める必要もない。
結果は、あとからついてくる。

「智機ちゃんはカワイイな!」
「戯言を…… 私が可愛いはずなんて、ない……」

社交辞令ではない。方便でも甘言でもない。
自分勝手で他者を省みない男ではあるが、
故にこそ、行為中の嘘や衒いは存在しない。
女性の魅力を褒めるときは、全力で本気で褒めている。

「そうでもないぞ? 俺様、感じやすい子は大好きだからな!」
「ウソ…… だっ!」

ゴトリ。


396:名無しさん@初回限定
10/08/08 01:50:23 1s3QyU1E0


397:戦慄のパンツバトル!(4/9) ◆VnfocaQoW2
10/08/08 01:53:55 vCSbXB9b0

音を立てて剥離されたのは亡霊紳一が貞操帯と称した下腹部の保護パーツ。
同時に立ち上るは封印を説かれた女陰から濃厚に滲む淫臭。
それがランスの顔を愉快気に歪ませた。
 
「ランス、いつまで乳揉みをしているつもりですか?
 もう十分堪能したでしょうに」
「うむ、紗霧ちゃんの言うとおりだ。
 智機ちゃんのおっぱい周辺には危ないものがなかったからな」

さも残念そうに、ランスは溜息をついた。
演技である。
続く言葉と行為への布石である。
それを言わせて、こう返したかったので、
ランスはこれまで胸しか弄っていなかったのである。

「ではそろそろ本命の隠し場所をチェックしよう!」
 
唖然とする紗霧を尻目に素早く卓の下に潜り込んだランスだが、
言葉とは裏腹に、智機の陰部に背を向けていた。
紗霧の腰周りを素早く観察していた。

(うーーん、流石は紗霧ちゃん。 ガードが固いぞ……)

紗霧の膝は閉じていた。
もじもじと膝をすり合わせる動きもなく、
太腿の血色も良くなかった。
発情の色はどこにも見られなかった。


398:名無しさん@初回限定
10/08/08 01:55:00 1s3QyU1E0



次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch