08/02/19 00:48:49 yXFPFshP0
何度も電話をかけるが、一向にアイツが出る気配はない。
雲行きが少々怪しい。雨が降ってきそうだった。
そういえば、こんな日は“膝痛い~。白銀くんおんぶー”
なんて冗談交じりにアイツはよく言っていた。
この状況でそんな事しか思い出せない自分が少し情けない。
と、いうよりもアイツの行く場所に見当がつかない。今更ながらアイツの事を知らなすぎた事に気づいてしまう。
アイツの事を、誰よりも知っていると思っていたのに。
不意に、インターホンが鳴った。
―晴子!?
スリッパが脱げるのも気にせずに、俺は玄関へと走る。
「晴子―!?」
ドアを開け放つと、そこには真剣な顔をした純夏の姿があった。
―――――――――――――
冷たい雨が降り始める。
いつの間にかアタシが辿り着いたのはかつての学び舎だった。
春休みだからか、人の影はないはずだった。
「―あら? 柏木さん?」
居ない、と思っていたはずなのに……そこには恩師である神宮司先生が傘を差し、佇んでいる。
まるで、アタシを待っていたかのように。
「……とりあえず、いらっしゃい? そんな所に立ってたら風邪引いちゃうわよ?」
今は、その暖かさが嬉しくて。涙がこぼれる。
雨粒と涙は一緒になって、アタシと白銀君とのカンケイのように、頬を伝って落ちていった。
先生は何も言わずに、アタシに温かいココアを入れてくれる。
砂糖にミルクがたっぷり入った、きっと甘くて美味しいココア。
「―そういえば、柏木さん。バスケットの調子はどう?」
「あはは……膝、壊しちゃって……辞めちゃったんです」
「……そう。あ、え、えーと……」
「あはは。いいんですよ。きっと、アタシには向いてなかっただけですから」
きゅっと力が入ってしまう。
外はまだ、冷たい雨がざぁざぁと音を立てて降っていた。
応援を受けて、まだ頑張れると思った。先短いかもだけど俺頑張る!