09/02/04 22:07:46 Mwl4RS1T
12.
「…母さん…?」
俺がイチジクの容器を手にしているのを見て、母さんがはっと息を呑むのが分かった。
その顔が、あっという間に蒼白になる。
「優ちゃん、だ、ダメっ!」
母さんは、鋭い声を上げると、俺の手からその容器をひったくった。
「母さん」
俺は呆気に取られて、母さんを見つめる。屑篭を漁ったという僅かな罪悪感があった。
「…あ、あのね…」
だが、母さんはそんなことを責める余裕もないように言う。
「ほら、母さん…あのさ、そう…妊娠したせいか……ちょっと、便秘気味だったの」
母さんはしどろもどろにそう続ける。
「…そんなの、優ちゃんに見せたくなくて。ホントごめんごめん」
「…」
母さんは俺を少し窺うような目で見たあと、バツが悪そうに笑って見せた。
「ごめんね、いきなり」
母さんはそのまま、後ろに下がって廊下に出ると、ごゆっくり、と言って
脱衣所の扉をガラガラ…と閉めた。
俺は、しばらくそのままで、脱衣所に立ち尽くしていた。
※本日はここまでで。続きます。