07/04/02 19:35:32 nbVbHRKi
答えて下さった方ありがとう。苦手な方ごめんなさい。
>>625からつづきます
「人間、ですか」
驚きを隠せないという声。それも無理はない。
「夢を見たの」
遠くに揺れる木を眺めながら、私は口を開いた。
「私は人間になって、あの人と一緒に小道を歩いている」
今朝食べたご飯の話。くだらないジョーク。自分の好きな音楽―
彼の他愛もない話に、私は笑顔で頷く。ふたつの足はふわふわと地面を捕らえる。
彼を真横から見上げた。普段はあまり見れない横顔がよく見えて、胸が弾む。
そうだ。人間が手を繋いでいるのを見たことがある。あれは、愛情の証なのだ。
自分の手を絡めようと、彼に近づく。そっと、手を伸ばす。
触れた瞬間、ぱちん、と弾けるように、目が覚めた。
「素敵な夢だった…」
少年は目をパチパチさせて私を見ている。変な女だと思われたのだろう。
一笑に付されるかと思ったが、そうはせず、まじまじとした顔で訊いてきた。
「その人は、姉さんの大切な人なんですか?」
「ええ、それはもう。私は、彼の為に走っているの」
「俺は人間なんて想像したことないですけど」
「ごめんなさい。私、ちょっと変よね」
少年は空を仰ぎ、でも、と続けて凛とした声で言った。
「大切なひとの為に走るっていうのは、わかる気がします」
この子にも、大切なひとはいるのかしら。