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【感染症と人の戦い】国立感染症研究所情報センター長・岡部信彦 2008.11.16 02:19
■新型インフルエンザに備えよ
よく「新型インフルエンザはいつ発生するのか」と聞かれるが、それは誰にもわからない。ただ一つ言え
るのは過去の経験からインフルエンザは数十年おきに新たな型が生まれ、大流行となっている。これを
押しとどめる方法を人類は持っていないということだ。
過去の経験からすれば、何も対策を取らない場合、国内で17万~64万人が死亡する可能性があると
も推計される。新型インフルエンザが発生する経路の一つとして、病原性の高い鳥のウイルスが変異して
人間に感染すると考えられている。新たな感染症は当然、人間に免疫がない。「インフルエンザはかかっ
たことがある」という人も、ウイルスのタイプが違えば、残念ながら免疫がない。だからひとたび発生すれ
ば、瞬く間に感染が広がってしまう。
14世紀の欧州で大流行した「ペスト」の犠牲者は約3000万人ともいわれ、人口のおよそ3分の1を死
に至らしめたという。これはもともとクマネズミなどの感染症で、古代から地球上にあった。それが欧州で
森林が開墾され、東方からの交易路をたどって欧州の都市に流れ込み、感染が広がったようだ。つまり
文明生活の発達が、爆発的な感染をもたらしたといえるのだ。
では、さらに文明が高度化した現代社会はどうか。残念ながら、医学が進歩したにもかかわらず、感染
症が広がるリスクは、むしろ高まっている。
その顕著な事例が5年前に発生したSARS(新型肺炎=重症急性呼吸器症候群)だ。国際都市・香港
を中心に世界約30カ国・地域に感染を広げ、わずか数カ月で約8000人が感染、1割が死亡した。原因と
なったSARSコロナウイルスは、もとはコウモリが持っていたウイルスといわれる。それが中国でハクビシ
ンから人間へ感染し、世界中にめぐらされた航空網を伝って香港から瞬く間に世界中に広がった。
欧州を中心とした中世のペストは感染拡大に3年かかった。たった数カ月でアジアから欧米に広がった
SARSの事例は、現代社会が交通網の発達で便利になった半面、感染症が拡大しやすい環境にあるこ
とを見せつけた良い例だ。