08/09/06 16:26:08
これで、原始の内部で何が起きているかを調べるかなり簡単な方法が出来た。熱せられた元
素(たとえば水素)から発せられた光がプリズムを通過すると、非常にはっきりしたスペ
クトルが現れる。このスペクトルは軌道上の電子の振動によるものなので、その軌道についての情
報を知ることが出来るのだ。スペクトル中の輝線と暗線(放出線と吸集線という)は個々の元
素に対応しているので、恒星がどんな元素で出来ているかすら調べることが可能になる。
ボーアは水素原子のスペクトルの知識を用いて、水素原子の内部で何が起きているかを説明した。
それでもまだのこされた問題は多かった。ニュートンがその著書「プリンピキア―自然哲学の数学
的原理」の中で太陽系を説明したときには、その数字で惑星運行の有様を正確に描写でき
た。だがボーアの数学では、そこまで正確に原始内部の電子の挙動を説明できなかった。ドイ
ツの物理学者アノルト・ゾンマーフェルトが電子軌道を楕円と考えたほうがうまく原始を説明できると
したときでさえ、問題解決にはならなかった。その後の12年間、量子理論は混沌とした
ままで、一歩進んで二歩下がるか、あるいは運が良くてせいぜい現状維持という状態だっ
た。1922年、ボーアは優秀な若き学生ヴェルナー・ハイゼンベルクと出会い、手詰まりを認めた。
原始はものではないのだ、とハイゼンベルクにいった。