09/12/01 00:19:47
アスベストを吸って、悪性中皮腫や肺がんになったとして、労災を認められる人は年間1000人を超えています。
しかし、なぜがんの発生率が高まるのかは、これまでわかっていませんでした。
このメカニズムを、岡山大学の 地球物質科学センターの 中村栄三教授らの研究グループが初めて解明しました。
カギとなったのが、患者の肺の中にある、 「アスベスト小体」と呼ばれる物質でした。
「ここでお団子みたいになっている串がアスベストの繊維です。この周りにタンパクがついている。タンパクも合わせた全体が“アスベスト小体”と言われています」(中村栄三 教授)
このアスベストと鉄を含むタンパク質のかたまりの中に、発がん物質である放射性元素の「ラジウム」が 海水中の100万倍から1000万倍の濃度で含まれていたのです。
「信じられなかった。とんでもない量なんです」(中村栄三 教授)
体内で濃縮されたラジウムから出たアルファ線という放射線は細胞の中の核やDNAを傷つけます。このため、がん細胞が出来る可能性が高くなるというのです。
では、なぜ、ラジウムが蓄積されていたのでしょうか?
ここで、重要な役割を果たしていたのが「鉄分」でした。アスベストの多くには鉄分が含まれていますが、それが肺で特殊なタンパク質に結びつきます。このタンパク質がラジウムを吸着する性質を持つのです。
このため、体の外へ排出されるはずのラジウムが肺にたまり、がんの原因となっていました。
「アスベストの問題というよりも、呼吸で取り込む『鉄』の量が問題を起こしている」(中村栄三 教授)
アスベストそのものよりも鉄分に原因があるとわかったことでこんなことも明らかになりました。実は、たばこの中にも、鉄分が含まれているのです。たばこの中の鉄分が肺に入ると、ここでも特殊なタンパク質が増えて、ラジウムを吸着していました。