04/11/21 15:05:03
分子精神科学研究チーム・チームリーダーの吉川武男氏は、穏やかな口調でそう振り返ります。
「これまで、ずいぶんフラフラと寄り道しながら来ました。」と吉川氏自身がいう通り、
その経歴は、物理の教師だった父君の影響もあって高校卒業後、まずは東京大学理?タに入学。
基礎科学科を卒業し、相関理化学専攻ということで修士課程に進んだが1年で退学し、
大阪大学医学部に学士入学。卒業すると今度は、前述の東京医科歯科大学へ進む。
「最初に東大に入った頃は、ちょうど分子生物学の大きな発見が相次いだ時期で、
特に制限酵素が発見され応用され出したというニュースには、これで遺伝子操作が可能になるんだなと、
生物学に無知な私にも熱い雰囲気が伝わってきました。そんなこともあって、
相関理化学を専攻した大学院では生物物理系の研究室に籍を置いたのですが、
生命現象により深く結びついた分野をやりたい気持ちが次第に大きくなり、
大阪大学の医学部に入り直す決意をしたのです。当初は分子生物学の方法論を使い
癌の研究をしたいと思っていたのですが、免疫学の権威、岸本忠三先生の研究室に
出入りさせていただくようになり、在学中は免疫の研究の手伝いをさせてもらいました。
ところが、いざ卒業となったときにふと考えてしまったのです。当時の免疫の分野は
いろいろな生物現象が分かっていたのですが、正体不明の液性、細胞性因子が多くて、
自分には複雑すぎて展開が読めませんでした。それならいっそまだ研究があまり進んでいない
未開拓の分野に進んだほうが、やりがいもおおきいんじゃないか……と思うようになったのです」